他の生徒達が混乱する中、勇斗達七人はすぐに行動に移る。
「サンダァー、フラッシュ!」
最初に動いたのは勇斗だ。素早くカイザーソードを呼び出し、エクスカイザーの必殺技のサンダーフラッシュでトラウムソルジャーの群れの中に切り込む。
炎と雷を纏った必殺剣はトラウムソルジャーの群れを切り開く。そして、丁度勇斗の一撃で一直線に道が開かれたと同時に他の六人も駆け出す。
「こんのぉ!」
「近づくんやない!」
メガとギャイの魔法が左右に分かれたトラウムソルジャー達を吹き飛ばし、その後をハジメ、すず、アーシュの比較的戦闘力の低い三人が続く。
「させまセン!」
殿になったサーヴァが背後から襲い掛かろうとする三人の撃ち漏らしのトラウムソルジャーを迎え撃つ。
正面から切り込んだ勇斗が一気に階段までの路を確保すると同時にアーシュ達が続くと言う策はうまく行った様子だ。
大技で広範囲を巻き込みながら道を切り開くことも出来たので、アーシュ、すず、ハジメの三人も無事に階段側に逃れられ、サーヴァが殿で迎えあった事で背後から襲われる事なく、無事に逃げられた。
だが、トラウムソルジャーの追加が召喚され、他の生徒達の逃げ道を塞ごうとする。同時に、勇斗達の行動を見て混乱から立ち直った生徒達が戦闘を開始した。
「急げ! メルドさん達の行動を無駄にするな!」
今度は前後に挟まれる形となったトラウムソルジャーをカイザーソードで切り捨てながら叫ぶと他のクラスメイト達はパニックになりながらも階段に向かってがむしゃらに駆け出した。
隊列などあった物では無いが、トラウムソルジャーも背後を勇斗達に抑えられているのだから、条件はこちらの方が有利だ。
「良くやった! そのままお前達だけでも逃げろ! 光輝! 龍太郎! お前達も早く行け!」
「そんな! メルドさん達を置いて逃げるなんて真似が出来るわけ無いじゃ無いですか!」
メルドは逃げ道を確保した勇斗達の行動に笑みを浮かべながら光輝と龍太郎にも逃げる様に促すが、二人はそれを聞き入れようともしない。
他の生徒達もパニックになりながらトラウムソルジャーと戦っているので思う様に退避が進んでいない。いや、寧ろ冷静に行動できた勇斗達が例外と言うべきか。
ある程度すずが最悪の事態の想定、主にゲームなどのダンジョンに詳しいハジメの考えを聞きつつ、その際の対処方法を話し合っていた為だ。
『モンスターハウス』への転移は一番危険性の高い罠と考えていたので、モンスターハウスに飛ばされた場合の対処も何パターンか考えていたのだ。仲間達が纏まった状態で中心に飛ばされたのなら、勇斗の大技で道を開き、出口までの逃げ道を確保してそこで迎え撃つと言うのもその一つだ。
そんな中、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。
そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。
死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの剣を持つ腕と体が切り裂かれた。
それを成した本人の勇斗は残りのトラウムソルジャーを切り捨て、倒れた女子生徒に手を貸して立ち上がらせる。
「早く前に! 冷静になれば勝てない相手じゃ無い! 此処の力じゃ俺達が上だ!」
そう言う勇斗をマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。
ハジメは周囲のトラウムソルジャーの足元を崩して固定し、足止めをしながら周囲を見渡す。
誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。アランと言う騎士が必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。
纏まって対処出来ているのは勇斗を中心とした自分達七人だけだ。
その勇斗はサーヴァやメガ、ギャイと共に逃げ道が塞がらない様にトラウムソルジャーの中で立ち回りを続けている。後方支援としてアーシュとすずが魔法で戦っているが、すずは攻撃系の魔法は完全に専門外なのだ。
「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……天之河くん!」
毎回勇斗にボコボコにされているし、勇斗達には白けた目で見られているが、こう言う時には光輝のカリスマ性に頼るしか無い。
そう考えてハジメは走り出す。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。
「待て、ハジメ!」
「しゃーない! 勇斗君も行って!」
「此処は私達に任せて下サーイ!」
「ハジメ君だけだと逃げ切れないかも知れないからさ!」
ギャイ、サーヴァ、メガの三人にハジメを追いかける様に促される。仕方ないと考えながら勇斗もそこを離脱する。
ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。
障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルドも障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。
「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も勇斗達に続け!」
「嫌です! 俺はあいつとは……あんな卑怯な奴とは違うんです! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」
「くっ、こんな時にわがままを……」
卑怯でもなんでもない。寧ろ、勇斗は全員が生き残れる様に行動しているのはメルドから見ても明らかだ。
一気に道を開いて仲間達共に逃げ道を確保した。卑怯ならば道を開いた後、さっさと階段を登って上に逃げるだろうが、それでも今は無駄にこの場に残ろうとしている光輝よりも、メルド達にとっては助かる。
そして、勇斗達は今もクラスメイト達が逃げるまで逃げ道を維持してくれている。それなのに、勇斗への敵愾心から卑怯と叫んで逃げようとしない。そんな光輝にメルドは苦虫を噛み潰したような表情になる。
何より、この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。
だが、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。
その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということと〝勇斗に続く〟がどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。
まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。
模擬戦で勝った勇斗の方が冷静に正しい判断が出来ているのに対して、負けた光輝が過信したままと言うことに頭が痛くなってくる思いだ。
しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。
その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。
「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」
雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。だが、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。苛立つ雫に心配そうな香織。
(これが勇斗との差、なのかもな)
メルドはそう思わずにはいられない。光輝と違い周りにイエスマンは居らず、他者の意見も聞き入れることができるのが、勇斗なのだろうと。
その時、一人の男子が光輝の前に飛び込んできた。驚く一同に飛び込んできたハジメは必死の形相でまくし立てる。
そんなハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。
いつも苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。
光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。
その方向にはトラウムソルジャーを相手右往左往しているクラスメイト達がいた。
訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。
効率的に倒せているのが、アーシュ達五人だけだから、敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さが命を守っているが、アーシュ達五人以外はそれも時間の問題だろう。
呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。
「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」
「下がれぇーー!」
〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。
そんな中、駆けつけた勇斗がカイザーソードを振り翳し、
「サンダー、フラッシュ!」
必殺の一撃でベヒモスの突進を正面から受け止める。技の破壊力を持っての一瞬の拮抗、これでメルドやハジメ達が逃げる時間は稼げるだろう。
(本物のキングエクスカイザーなら、このまま真っ正面から真っ二つに切り裂いていたんだろうけどな)
ベヒモスとの激突の衝撃でカイザーソードから手を離してしまいそうになる中、己の知る勇者ならばと思うが、自身はエクスカイザーでは無いのだと、ハジメ達が逃げたのを確認して後ろに飛ぶ。
それにより、ベヒモスのパワーを利用して距離を取り、無傷で離れることには成功する。
「ハジメ、奴の足元を錬成しろ! 隆起でも、穴でも何でも良い、突進しにくくしてくれ!」
「う、うん!」
勇斗の言葉に頷いてベヒモスの足元を兎に角錬成する。その隙に勇斗はカイザーソードに変わる新たな剣を召喚する。
「ダ・ガーンブレード!」
ダ・ガーンXの武器であるダ・ガーンブレードだ。そして、その剣を空中に翳すと剣を中心として地球を模した魔法陣が描かれる。
勇者ロボの中では珍しい1号ロボの遠距離型の必殺技であり、それは武器を用いてかな勇者の力を生身で使う際は、強力な魔法攻撃に変わってくれる様子だ。
「ブレスト、アース、バスター!」
魔法陣から放たれた光の本流がベヒモスの動きを止める。突進しようにも隆起や穴でうまく動けない様子だ。
大技と地形を利用しての足止め、その間にもハジメは回復薬を飲みながら、ベヒモスの足元に小規模の落とし穴を作ったり、足枷を付けて地面に縫い付けていく。
「メルドさん、早く!」
「くっ……分かった」
守るべき子供に守られると言う状況に悔しさを覚えるメルドだが、すぐに切り替えて部下に撤退を、主に光輝達を連れて逃げる様に促す。
(……Gストーンは勇気を力に変える命の宝玉……。つまり、俺の意思が折れ無い限りは……)
IDアーマーのガントレットに埋め込まれたGストーンが輝きを増して、ブレストアースバスターの力が増し、ベヒモスの体が後退していく。それを見たハジメも一時錬成をやめてチャンスを狙う。
「これで!」
「どうだ!」
魔力が尽きるのと同時に放つ最後の一撃と、全力で作ったベヒモスサイズの大穴。勇斗の魔力砲により吹き飛ばされたベヒモスが落ちた瞬間、其処に残りの魔力を使い閉じ込める。
勇斗がベヒモスを吹き飛ばした瞬間を見て思わず「おおぉ!」と歓声を上げるメルド達、それでも退避の手を止めないのは流石という所だろう。
そんな勇斗を忌々しげな表情で見つめる光輝には誰も気がついていない。
浮き足立つ生徒達が一時的に背後にいる最大の脅威が消えた事による安堵、そしてわずかに出来た心の余裕にメルドの激が染み込み、光輝の発するカリスマが纏め上げる。
「……よかった……」
「これで何とか助かりそうだな」
後ろにいたすずとアーシュが安堵の声を上げる。ハジメの持っていた最後の魔力回復薬を服用して、勇斗とはハジメもアーシュ達に合流しようとするが、
「勇斗君、危ない!」
アーシュの声が届いたのか、後ろで起こったから気がついたのかは定かでは無い。
だが、勇斗とハジメの真後ろ……ベヒモスを閉じ込めていた地面が爆ぜて、その中から顔の半分が焼け爛れたベヒモスが姿を表した。
残された瞳には憎悪の色を宿して、此方を睨みつけている。
手負いの獣ほど危険なものは無い。
そして、それは絶望という言葉が相応しい力の魔物。
手負いのベヒモスは憎悪の色を宿しながら咆哮を上げて突進してくる。走りにくい様に錬成された石橋など関係ない、石橋を砕きながら迫る姿は先程よりも力が増している様に見える。
(……拙い……)
既に持てる手は打ち尽くした勇斗の頭にそんな感情が浮かぶ。だが、
「っ!?」
目の前に現れる虹色に輝く
「使わせてもらう……」
自分の後ろにはアーシュ達がいるのだ。守りたい人達がいる以上、その力を行使するのを、躊躇する理由など無い。
「広がれ、
全員の視界が虹色の光に包まれた瞬間、ベヒモスの地を砕く衝撃音が消える。そして、光が消えて光が戻ると其処には希望があった。
ベヒモスの突進を片手で受け止める赤と白の鋼の巨人。本来の大きさではなく、人間の倍程度の大きさに抑えられているが、それは。
「待たせたな、勇斗! 私の名はブレイバーン! 私が来たからにはもう安心だ!」
背中にエンブレムを背負いながら空いた手でサムズアップをしながら、そう語りかけてきた。
(いや、エクスカイザーとかじゃないのか、そこは!?)
そして、ブレイバーンを見て失礼ながらそう思ってしまったのは勇斗だけの秘密だったりする。
追加ヒロインは次の内誰が良いでしょうか?
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