オリ主が司波達也のライバル(自称)になる話   作:zhk

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意外ッ!それは青春ッッ!!というお話


せっかく高校生になったんだからさ、もっと高校生しろよ

 駅までの帰り道は、微妙な空気感だった。(原作通り)

 

 微妙というか、もうよくわからん空気感だった。(脱線)

 

 成り行きで残った深雪のクラスメイトである光井ほのかと北山雫両名を帰り道に誘ったまではいい。一触即発一歩手前まで行ったのだから、少しくらい気まずくなるのは仕方がないところではある。だがよくわからん空気感はそれが原因ではなく・・・・・・

 

 「「じゃんッ!けんッ!!ぽん!!!」」

 

 路上にて男子高校生が真剣な面持ちでじゃんけんに興じているというこの状況のせいである。

 

 颯真、レオの両名は某休載続きでずっと船に乗ったままなジャンプ漫画の主人公の必殺技ポーズを取りながら、一歩も譲らず真剣勝負に興じている。お願いだからどちらか一歩譲ってほしい。通りを歩く主婦や他学生の生温かったり冷ややかな視線が痛くて仕方がない達也である。

 

 3年間通る道なのだからスタート3日目にして曰くがつくのは避けたい。せめて学外は平穏で居たい(願望)

 

 何があったのか。それは5分きっかりしっかりみっちりかけて落下した颯真を加え(達也としてはアホを放置して一刻も早く帰りたかった)帰路につくべく、校門をくぐったすぐあとだった。

 

 「なぁ、普通に帰るのつまらなくない?」

 

 唐突に颯真がそう投げかけた。

 

 また何か始まった。そう面々が各々顔に呆れやら苦笑やらを浮かべる中、知った事かと颯真は語りをやめない。

 

 「昨日から俺たちは高校生になった。そうだな諸君!?」

 

 「おっ、そうだな」

 

 後ろ手を組み軍事教官のような口ぶりの颯真に淡泊な返しのレオ。

 

 「高校生において最も重要なこととは何か、美月!」

 

 「へっ!?え、えっと、勉学―――」

 

 「ちっがうぁ!!エリカ!!」

 

 「鍛錬?」

 

 「ちっ⤵がぁ⤴う!!!我が終生にして運命にして永遠のライバル達也ぁ!!!答えろぉ!!!!」

 

 「研究」

 

 「ちっがぁぁぁぁああう!!!!!!」

 

 空を仰ぎ叫ぶ。隣でほのかがひっと小さな悲鳴を上げた。普通の反応を久しぶりに見た気がする達也であった。他のメンバー順応性が高すぎる!(楽〇)

 

 「固い・・・固いぞお前たち!そんな心持で高校生になったのか!?恥を知れ俗物!!」

 

 「ネタが古いって」

 

 「ハマーン・カーンですね!」

 

 「美月あなた思ったより引き出し多いのね」

 

 「眼鏡なので!」

 

 「眼鏡関係なくない?」

 

 うーんバカが伝染してきている。よくない。これはひじょーによくないと、達也は死んだ目で悟る。まだ3日経たずでこれなのかと、眼前の赤猿の影響力に呆れを通り越して最早感心さえ湧いてくる。

 

 「で?結局何が言いたいんだ?」

 

 とはいえ早く帰りたい事実に変わりはないため、さっさと答えろとせっつくと

 

 「まぁまぁまぁまぁ焦るんじゃないライバルよ」

 

 とニヤリとしたどや顔が返って来る。うん殴りたいこの笑顔。

 

 「そう俺たちは高校生、ならば優先すべきことは勉学でも鍛錬でも研究でもない!」

 

 「いや勉学はしないとだめだと思う」

 

 雫の冷静すぎるつっこみに一同大きく頷くが、そこはやはり話を聞かない中条 颯真。ブレーキなんてものは母親のお腹の中どころかもっと前の段階でどこかに落として来た男。止まる事なくむしろ熱は上がっていく。

 

 「そう、俺たちが謳歌すべきこと、それは!ずばり!!青春だ!!!」

 

 「青春?」

 

 達也のオウム返しに、颯真はサムズアップで応える。

 

 「高校生の3年間が机の上でかりかりしてるだけなんてもったいねぇ!この一秒一瞬、欠片たりとも無駄には出来ない!学生の3年は超超超貴重!!もったいない時間の使い方なんて出来やしない!!そうは思わないか野郎共ォ!!!」

 

 「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

 

 熱量の差がすごい。校門の前でスーパー戦隊レッドのようなポーズを取る颯真に対し、シーンという悲しい沈黙が流れる。が、

 

 「返事が聞こえねぇぞおまえたぁち!!!!!!」

 

 「「「「「「「お、おー・・・?」」」」」

 

 そんな程度でくじける貧弱メンタルをこのバカが持ち合わせているわけもなく、煽り上げた結果なんとも不揃いな歓声が飛ぶ。これには面々の中でもノリが良さそうなエリカでさえも置いてけぼりである。先を歩み過ぎているこの男(ポジティブシンキング)

 

 「と、いうわけで青春第一弾だ!」

 

 掛け声とともに掲げられる握りこぶし。なんだ?喧嘩か?と一昔前のヤンキー漫画の発想を浮かべる達也だったが、

 

 「じゃんけんで負けたやつ次の電柱まで全員の荷物もとーぜ!」

 

 「お前の青春それでいいのか?」

 

 あまりにも小学生すぎる。公共機関の発展によって並んで帰るという風習自体が廃れてきているとはいえ、なんというかあまりにも幼稚だ。今日日小学生でもやらんとは思うが、こいつの精神は小学生並であったなと再認識。

 

 「ほらほら、お前らみんなやるぞやるぞ!」

 

 「はぁ・・・やらなきゃ本気ダダ捏ねそうだこいつ」

 

 「女子もやる感じ?さすがに全部はキツイんじゃない?」

 

 「確かに。じゃあ男子は強制参加で、女子は希望者だけ参加にするか!」

 

 「おい待て中条なんでさらっと男子は強制なんだ?」

 

 「へ?なんでやらないなんて選択肢があるんだよ」

 

 「お前なぁ・・・」

 

 きょとんとお前は何を言っているんだと言いたげな顔をする颯真だが、はっきり言ってそっくりそのまま返してやりたい達也である。

 

 「あぁ、なるほど?負ける事にビビってんだな?」

 

 「は?」

 

 「案外ビビりなんだな達也ぁ?そんなので俺のライバルを名乗れるのかー?」

 

 ライバル(非公式)が何を言ってるのやら。というよりライバル解任は達也としてもありがたい限り。さっさと見切りをつけてくれれば、あとは時間がすべて水に流してくれる。溜息をつき、くだらないと一言吐き捨てようとして。

 

 「は?お兄様はビビりではありませんが???」

 

 「深雪ぃ?」(大困惑)

 

 まさかのお兄様ガチ勢深雪様乱入である。

 

 「お兄様がビビッて引き下がるなんてありえません。全戦全勝、一切の荷物をその手に触れず第一高校前駅までたどり着くこと必至です!」

 

 「み、深雪?待ってくr」

 

 「ほう?しかし相手は達也終生のライバルであるこの俺と、俺の右腕ウェストキャッスル西城がいるんだぜ?それは慢心じゃあないか深雪さんよォ?」

 

 「芸名みたいにするな!あと同じこと2回言うんじゃねぇよ!」

 

 「ウェスト・・・キャッスルww」

 

 「てめぇ?なぁに笑ってんだぁ??」

 

 渦中の達也をほっぽり出して、バチバチと稲妻を飛ばし合う深雪と颯真。どうしていつも俺の話なのに俺が頭数入っていないんだろう・・・と、達也は頭を抱えたくなる気持ちをぐっとこらえる。エリカとレオの口喧嘩は、もういいやいつもの事だし。

 

 「まぁまぁ待て落ち着けみy」

 

 「それにお兄様なら三種ではなく、出す手を二種に絞っても勝てることでしょう!」

 

 「深雪?」

 

 「おいおいおいおい正気かぁ?そいつは『勇敢』じゃあない。『蛮勇』って言うんだぜぇ深雪さんよぉ?」

 

 達也もそう思います(ワイト小並感)

 

 「じゃんけんを二種に狭めるってことはよぉ?それはつまり、じゃんけんで出せる手が二つしかなくなるってことだぜ?」

 

 「おんなじだったな」

 

 「おんなじだったわね」

 

 冷静なツッコミが飛ぶが華麗にスルー。

 

 「それでも、お前の親愛なる兄であり俺のライバルはこの背負う物を決める(誇大広告)にて、縛りを設けてこの俺に勝つと!そういうわけだな!!」

 

 「ええ・・・勝つわ。私のお兄様なら、グーを出さずとも」

 

 厳しいですね(遠い目)

 

 普通に考えれば三択で一つ潰されたら勝ち手が一つしかないわけで。そうなればまず勝てないわけで。

 それがわからないほどうちの妹はバカではないと思っているのだけれど、どうやら颯真のバカパンデミックはもう既にかなり深刻な影響を与えているらしい。俺が何とかしなければ(使命感)

 

 「そこまで言うなら受けてやろうじゃないか!この俺永遠のライバルこと中条颯真と、ウェストキャッスル西城がなぁ!!!」

 

 「もっといい異名なかったのか・・・」

 

 バカの反芻は続くが、場の雰囲気はそのバカが実際握っているのには違いない。深雪は先ほどからふんすと洗い鼻息をしながら達也を期待の視線で指し穿つ。可愛すぎるなうちの妹は。額縁で飾っておきたいくらいだ(サイコ兄さま)

 

 引くに引けないとはまさにこのこと。しかし達也も人の子やばっ子四葉っ子(ネタバレ)。愛するマイスイートハート深雪の期待とあらば、背負わずしてなんとするか。じゃんけん縛りがなんのこと!どけ!俺はおにいちゃんだぞ!!(鼓舞)

 

 「ほう?向かってくるか達也よ・・・」

 

 「しなければ終わらない。俺は早く家に帰りたい」

 

 「達也さん本音駄々洩れです」

 

 おっといけない。

 

 「さっそく始めるか もたもたすることもない……一瞬でカタをつけよう」

 

 颯真の面持ちが劇的になる。比喩でもなんでもなくなんというか線と彫りが深くなったように感じる。これが凄みか、初めて見たな漫画みたいだ。

 縛りじゃんけん。背後に期待を既に背負うハンディマッチ。一対二?という不利盤面だけれど、

 

 「ああ、そうだな。ところで……」

 

 達也は、知っている。

 

 「()()()()()()()()」 

 

 この中条颯真という男は、なんだかんだフェアであることを大変重視するという性格であるということを。

 

 「………」

 

 「………」

 

 数秒の沈黙。そして、颯真の答えは。

 

 「当然ッ!『俺達も』だッ!!」

 

 うんバカでよかったこいつが。

 

 「祖先から受け継ぐ『フェアなじゃんけん』!それこそが流儀ィ!!!同じ土俵、グーを縛るじゃんけんこそ!!」

 

 「アホだこいつ」(諦め)

 

 レオが遠い目をしている。お前も苦労しているんだなと、達也は内心合掌しつつこれからも飼い主よろしくとエールを送る。悪いがこの面倒をみるなんて死んでもごめんである。

 

 「さぁ!!いくぞぉ!!じゃんけん!!!」

 

 高らかな前口上が空に轟き、そして―――

 

―――

 

 

 「何故だ・・・!?なぜ俺はあいつに勝てない!!」(ダリル並感)

 

 駅目前までの数戦全敗をこの男中条 颯真は期していた。

 

 面白いほどの百面相のまま項垂れ膝をつく彼へ、憐れみ諸々の感情をこめて一同は見下ろす。そりゃは勝てはしないだろうと。

 だってこの男、絶対に最初にパーを出すのである。

 

 グーを縛った時点で勝ち札はチョキしか存在しない。にもかかわらずこの男、律儀にも最初はグーからの次手をすべてパーを繰り出したのだ。癖づいているにしてもバカすぎる。本当に高校生?(n回目)

 

 ちなみにウェストキャッスルことレオも気づいたのか(颯真が気づかないのがアホすぎるのだが)、校門をくぐって以降ずっとこの男は通学カバン三つを背負って歩いているわけだ。

 

 「だから言ったでしょう?中条君といえど我がスーパーデラックスお兄様に勝てるわけなどないのです」

 

 「司波さんお兄さん絡むと急にアホになるよね」

 

 「司波さんッ・・・語彙力がぁ!!」

 

 「構いませんよ美月、語彙力の一本くらい」(???)

 

 語彙力って一本二本で数えられる物的概念だったのか。さすがは我が妹、いつも新たな発見をもたらすな(現実逃避からの盲目の愛二連コンボ)

 

 「ちくしょう……やっぱりマコーラ調伏しなきゃか……ふるべゆらゆら……最強の後出し虫拳を!」

 

 「バカ言ってねぇでさっさと立てアホチビ赤猿」

 

 「は?今レオチビって?今チビって言ったァ!?チビは身体的特徴であってデメリットではないんですぅ!!」

 

 「リーチがないって致命的よね」

 

 「エリカぁ!!てめぇ!!!」

 

 姦しい会話は留まる事を知らず、繋ぎ繋ぎで終わりが見えない。

 

 高校生とは本来こういうものなのだろうと、達也は思い始める。もしやこの環境に柔軟に適応していない自分こそが異常なのか?わからない……高校生がわからない……

 

 とまぁそんなこんなをしていれば、リニア式の小型キャビネットが続々と駅へとたどり着く。騒がしき一日も、どうやら終わりが近いらしい。

 

 「それじゃあ、私達はこの辺りでお先に失礼しますね」

 

 キャビネットを背に深雪が一言述べると、一旦喧騒は静まり帰る。

 

 「そっか。じゃあまた明日だな」

 

 「気を付けてくださいね!」

 

 「テロリストが襲ってきた時のイメトレはしっかりしとけよ達也」

 

 「お前は俺をなんだと思ってるんだ?」

 

 「ライバルであり親友でありブラザーだな!」

 

 「全部なった覚えはないぞ」

 

 呆れで目を細めながらそう返し、達也と深雪は並んでキャビネットへと乗り込む。窓越しにぶんぶんと三者三様の手を振り方で送り出す友人たちの姿は、徐々にスピードが上がるにつれて小さくなって、気づけば見えなくなった。

 

 「なんというか、騒がしすぎる一日だったよ」

 

 「濃密でしたね」

 

 「濃すぎる。これじゃあ体が持ちそうにない」

 

 主にうるさすぎる一人が原因であるのだが。本当にどうしたものかと悩んでいると、くすくすと愛する妹が微笑む。

 

 「どうしたんだい?」

 

 「いえ、少しうれしくて」

 

 「うれしい?」

 

 怪訝なオウム返しに、深雪はええと答える。

 

 「ああやって、笑い合って騒ぎ合う生活というのは、どこか夢物語でした。四葉の家に生まれ、レールの上を歩くことが多かったですし」

 

 「まぁそれはそうだけれど。だから珍しく悪乗りしていたのか?」

 

 「学生の三年間は貴重というのは、まったくもってその通りだと私も思いましたので。それに、私とお兄様であれば特に……」

 

 言葉を濁した深雪がその先に何を言いたかったのかは、達也も理解している。学生という身分の前に、深雪は四葉家当主候補であり、自身はそのガーディアンという立場がある。卒業した後、今のように自由に遊んでいくというのは非常に難しくなる。深雪が当主に選ばれればなおのことだ。

 

 「とはいえ、あいつの問題行動は困ったものだよ」

 

 暗くなりかけた話題を閑話休題し、目下最大の脅威であるあのミニマム赤猿を思い出す。

 

 「でもおもしろい人ですよ?見ていて飽きませんし」

 

 「第三者であればね。関わられればたまったものじゃないよ」

 

 「そうでしょうか?」

 

 にっこりと飛び切りの笑顔で彼女は言う。

 

 「きっと、お兄様にとってよい友人になると私は思います」

 

 「……だとしても、もう少し落ち着きは持って欲しいものだよ」

 

 深雪の言葉の裏に、多くのしがらみの上での意味があることは達也も理解している。忙しく腹立たしく騒がしい日常が始まりそうだけれど、まぁ飽きない生活ではありそうだと、達也は来るであろう未来に思いを馳せて、今一度溜息を吐いた。

 

 けれどそんな彼が、わずかに口角をあげている点をお兄様至上主義な深雪が見逃すはずもなく、にこにこと満足げな笑みの意味を、終ぞ達也は知る由もなかったのだった。

 

 

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