どうぞお手柔らかにお願いします。
「………そろそろ、かしら。」
「………"あの"戦いで私は何もかもを失った。………残ったのは、末子であるあなただけ………」
「………"それ"は、あなたが持っていなさい。私達の中で一番、"彼ら"の力を引き出せたあなたなら、大丈夫………」
「………私にできなかったことを………いつかあなたにもできる、守るべきものを、守ってあげて。」
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「……………久しぶりに見たな、あの時の夢は。」
X780年、フィオーレ王国某所の街道沿いの木にもたれかかる、白が基調のフード付きローブを着た小柄な青年は長めの昼寝から目覚めて起き上がり、フードを外した。左側が青髪、右側が緑髪という特徴的な髪色をしたその青年は、緑色の左目と青色の右目を擦りながら空を見上げると、ガバッと立ち上がった。
「………また寝過ぎた。1時間くらいの予定だったのに、気づけばもうすぐ夕方じゃないか。フェルトー!?」
すると、青年が寝ていた木の枝の上にあった、40cm程の白い毛玉がモゾモゾと動いた。そして程なく、その白い毛玉の正体である白く丸いフクロウが眠そうに翼を広げパタパタと降りて青年の頭の上に着地した。
「相変わらず俺も、フェルトも、これだけは治らないな………」
青年は、フェルトと呼ばれた寝ぼけたままのフクロウを頭に乗せたままあくびを噛み殺すと荷物をまとめ、地図を広げた。
「この調子だと………日暮れまでには次の町に間に合うかな。少し急ごう。」
ホー、とフェルトの気の抜けた返事を聞き、青年は街道を走り出した。そんな青年の荷物の1つには"リューク"と、彼の名前が刺繍されていた。
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「ようやく到着………なんだが、これはマズいな。」
日暮れ前に最寄りの町へ到着したリューク。しかしその町の一部の家屋からは黒煙が上り、所々から悲鳴や怒号が聞こえていた。
「フェルト、戦闘だ!!いつものように頼む!!」
リュークは換装魔法で"鉄の剣"と"ファイアー"の魔道書を取り出して町中へ走り出し、フェルトは上空へと高く飛び上がった。
「ギャハハ、金目のものをよこせ!!」
「いやーっ、助けてーっ!!」
「どこぞの山賊か!!そこまでだ!!」
村人の女性を襲っていた山賊を見つけたリュークは山賊めがけて"ファイアー"による火の玉を撃ち込んだ。
「ぐあっ!!……てめぇ、邪魔や抵抗をするやつは残らず死ねっ!!」
女性からリュークに狙いを変更した山賊は斧を手に突撃し、大きく振り下ろした。
「くたばれ!!」
「そんな大振り、当たるか!!」
「ぐはあっ!?」
斧の振り下ろしをサイドステップでかわしたリュークは隙だらけの山賊を"鉄の剣"で斬り上げ、一撃で仕留めた。
「まずは1つ!!……大丈夫でしたか?」
「はい……あ、ありがとうございました………」
「町の南なら敵はいません。そちらへ避難してください。」
「わ、分かりました!!………あの!!大したものではありませんが、これを………!!」
「調合薬………感謝します!!では!!」
助けた村人から調合薬を貰ったリュークは町の中心へ向かった。するとそこには山賊の集団が略奪を行っていた。
「ああ?何だお前?」
「剣なんか構えて正義の味方気取りか?じゃあそのごっこ遊びに付き合ってやるよ!!」
「(剣と長物が一人ずつ。)」
「死ねぇっ!!」
山賊二人がそれぞれ剣と長物を構え向かって来たが、リュークに焦りは無かった。まず剣を持った山賊が剣を振り上げる前にリュークは"鉄の剣"と"ファイアー"から"細身の槍"に持ち替え、相手の射程外から突き倒した。
「ぐあっ!!」
「甘い!!」
「隙ありだ!!」
「!!」
だが長物を持った山賊がリュークの"細身の槍"を弾き飛ばした。
「死にさらせぇ!!」
「そうは行く、かっ!!」
「なぁ、っ!?」
だが即座に体勢を立て直したリュークは"手斧"を出し、力で山賊の長物をへし折るとその"手斧"を投擲し、撃破した。
「つ、強ぇ………」
「山賊に負けるような鍛え方はしてない。………それと、気づいてないとでも思ったか!?」
ブーメランのように戻って来た"手斧"をキャッチしたリューク。だが即座に"手斧"から"鉄の弓"へと持ち替えると後ろを向き、矢を3発放った。すると建物の陰に隠れて背後からリュークを狙っていた山賊3人に矢が命中し、山賊は倒れた。
「ぐあ……っ!!」
「何故、バレた……!?」
「背中に、目がついてやがるのか……?」
「背中に目?………残念、正解は"上"だ。」
リュークが上を指差した先、はるか上空を飛んでいたフェルトはフクロウでありながら魔力と魔法を有する立派な魔導士であった。その魔法とは"視覚共有"、フクロウ特有の優れた視覚によって上空から戦場や戦況を把握し、それをリュークに共有する事で彼は有利に戦いを進めていた。
「残りは頭と思われる奴を含めた数人、だがこちらは騒ぎを聞きつけて近づいて来ているから問題無し。問題は、東から急接近している"増援"か………」
フェルトは東から何者かが急接近をしているのを捉えていた。それを確認したリュークは息をついた。それと時を同じくして、頭領を含めた残りの山賊がリュークの前に現れた。
「随分と好き勝手やってくれたな、このクソガキ!!俺様が誰だと思って邪魔してくれてんだ!?」
「一介の旅人がただの山賊の名前なぞ知る訳無いでしょう。」
「なめやがって!!てめぇらまとめてやっちまえ!!」
「まとめて、ねぇ………願ってもない、かかって来るといい。」
山賊達はリュークを取り囲んだが、リュークは余裕すらある笑みを見せすと魔法を発動した。すると衣装がフード付きローブから東洋風の装いに変わり、武器も紅く妖しく刀身の光る"キルソード"の二刀流になっていた。
「"クラスチェンジ"、剣士。」
「格好が違うだけで何だ!?」
「これで終わりだ!!」
それぞれの武器を手に、一斉に襲いかかった山賊達。しかし次の瞬間、リュークは山賊の包囲網から出ており山賊達は同時に血を流しながら倒れた。
「な、何が起こった!?」
「遅い。ところで、残りはお前だけだが、どうする?」
「っっ、どこまでも……なめやがってぇ!!」
山賊頭は怒り心頭の表情でリュークに斧を振りかざした山賊頭。それを一度かわしたリュークだが、構え直した山賊頭は先程よりも何倍もの速さで突撃をしてきた。
「!!」
「山賊だから魔法が使えないとでも決めつけてたか!?くたばれぇ!!」
身体強化の魔法でパワーとスピードを増幅し距離を詰めた山賊頭。確信を持ってトドメの一振りをかざした山賊頭、だが振り下ろした後に期待していた手応えを山賊頭は得られなかった。
「なっ!?」
「スピードが上がったのは、そちらだけではない。」
リュークの魔法、"クラスチェンジ"。換装魔法の応用で編み出したこの魔法は使用する事で指定した兵種に変更し、その兵種に応じた能力上昇を行うものである。ここで剣士にクラスチェンジしたリュークは速さと技が上がった事で山賊頭を越える敏捷性を得て、山賊頭の攻撃を容易くかわしたのだった。
「眠りの時間だ!!」
そして山賊頭の攻撃をかわしたリュークは、分身したかと思うと姿を瞬時に消し、さらに次の瞬間には山賊頭を必殺の一撃で斬っていた。
「ぐはあああっ………!!」
必殺の一撃で山賊頭を撃破できた事を確認したリュークは、"キルソード"を納めた。しかし警戒は解かなかった。
「くそっ、こんなの、聞いて…ねぇ………」
「大した事無い山賊で助かった、が………!!」
理由は、東から急接近していた正体不明の"増援"。そのスピードはリュークや、"増援"の様子をモニターしていたフェルトの想定以上であった。
「………連戦確定か。」
「………ぉぉぉ………」
そしてその"増援"は、火の玉となってリュークめがけて上空から突っ込んで来た。
「ぉぉぉおおお………!!」
「"クラスチェンジ"………」
「おおお、らあああっ!!」
「アクスアーマー!!」
守備力に長けたアーマーナイトにクラスチェンジし、大盾を構えたリューク。しかし落下の力が乗った火の玉の勢いを殺すまでにリュークは5m後退したのであった。
「痛っ………!!」
だがその火の玉の正体、薄着にマフラーといった変わった組み合わせの衣装をした、桜髪の少年は炎を拳に纏い再びリュークへ向かって来た。
「そこだぁっ!!」
「ふんっ!!」
だがリュークもやられっぱなしではない。今度は少年の炎の拳を大盾で防ぎきると、"ハンマー"による豪快な横薙ぎで少年を弾き飛ばした。
「随分な挨拶だ……ねぇ!!」
「おわあっ!?」
ライナー性の弾道を描き、吹き飛ばされた少年。しかしその少年が空中で一回転してから受け身を取って着地し、再度リュークに突撃する様に彼は溜め息をついた。
「しぶといなぁ………!!」
「うおおおっ!!」
リュークは魔道士へとクラスチェンジし、少年めがけて渾身の魔法を放った。
「一度落ち着け!!"ボルガノン"!!」
炎の上位魔法である巨大な火球は少年にぶつかると視界を覆う程の大きな爆発を起こした。その間にリュークは下がり、今度はアーチャーにクラスチェンジして"長弓"を手に様子を窺った。
「これで止まると、いいんだが………」
少年と同じ炎属性の上位魔法なら相手を殺さず動きを止めるだけのダメージを与えられるだろう、そして爆炎で視界を遮る事で距離を取る隙を生み出せる、その2つの目論見で"ボルガノン"を放ったリューク。
「すぅーーーーっ…………」
「は?」
しかし、その爆炎を少年がものすごい勢いで吸い込む様を見たリュークは思わず素っ頓狂な声を出したのだった。
「炎を………食べてる?」
「…………んっ。ごちそうさん。」
「…………あ。」
そして少年が爆炎を全て飲み込んだその時、リュークは少年の正体を見破り、青ざめた。
「"火竜の………」
「
「咆哮"ッ!!」
"ボルガノン"の倍近くの勢いの炎が少年の口から放たれたのに対し、リュークは緊急回避を取ったが爆炎のブレスは彼の左肩を掠り、思いっきり顔をしかめた。
「いっ、たぁ……っ!!」
「しょうぶはこっからだ!!"火竜の鉄拳"!!」
「させるものか……"エルウィンド"!!」
少年の追撃を風魔法で阻止したリュークだが、その表情に余裕は一切無かった。
「クソッ、最悪の相手だ!!」
「まだまだ、燃えて来たーーっ!!」
「……こうなったら仕方無い。」
するとリュークは痛む左肩を何とか動かし、左手を目の前に掲げた。その左手の薬指には、虹色に輝く宝石の付いた指輪が嵌められていた。
「そこまでやるのならば、覚悟して貰おうか!!」
その指輪へリュークが魔力を籠めながら、呪文を唱えた。
「
その瞬間。指輪の宝石が虹色から青色へと変化し、そして宝石と同じ青色の眩い光を放った。
「っっ!!なんだ!?」
その光が視界を覆ったのは一瞬だった。しかし光が収まり、視界が晴れるとリュークの横には新たな存在が現れていた。
『……さて、随分難しい状況に巻き込まれたみたいだね。』
「ですね。……行きましょう、マルス。」
青い炎のようなオーラを纏い、剣を携えリュークの横に浮遊していた青年。マルスと呼ばれたその青年は、リュークの言葉に頷き、携えていた剣である"ファルシオン"を抜刀した。それを見てリュークは"レイピア"を取り出し、さらにマルスと同じロードに"クラスチェンジ"すると彼と同じように構えた。
『ああ。共に行こう!!』
「お願いします!!」
続く
ここまでありがとうございました。
今回の主人公達の大まかな設定をこちらに記載します。
使用魔法については次回、細かいプロフィールはその次にまとめます。
・リューク
【性別】男
【誕生日】4の月20の日
【身長】162cm
【初期兵種】旅人(兵種ボーナス無し、全武器種レベルD)
使用魔法により適宜クラスチェンジ。
【来歴】
大陸を気ままに放浪している旅人。
平時は昼寝や居眠りの多いのんびりとした青年だが、困った人は見捨てないお人好しの正義漢。
【CV】子安武人
本作の主人公。
外見のイメージは赤→緑に変化して左右逆転、身長が少し縮んだリュールの色違いが、FEヒーローズの召喚士のローブを着ているイメージ。名前の由来も、リュールからFTの世界観に合いそうな形に変えた感じです。某球団の内野手は無関係です。
出自については、最初から隠すつもりは無いですがある段階まで言及もしないので、コメントなどで聞かれても返しません(これが答えになりそう)
・フェルト
【性別】♀
【誕生日】2の月2の日
【体長】40cm
【来歴】
リュークの相棒で、飛行と隠密に優れた伝書フクロウ。
こちらも居眠りは多いが魔力を有し、戦闘では主にリュークのサポートを行う。
【CV】木村珠莉
リュークの相棒枠。
ヒーローズのフェーちゃんやフェーニックス所長と同種の伝書フクロウ。滅竜魔導士に対してのエクシードの立ち位置です。
喋らせる予定は(少なくとも今は)無いです。