FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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因みに皆さんがよく知る、CVがリンと同じのまんまるピンクボールのスペルはKIRBYです。
関係無い話ですが、Youtubeにあるカービィの読み聞かせを聞いてみると、あまりにもあきれかえるほど平和な世界とイラスト、そして大本さんの声で邪な心が吹き飛びます。ひたすら本読んでるメタナイト卿もカワヨ。


5章 DEAR KABY

エバルー屋敷での戦いを終え、目的の本である"日の出(デイブレイク)"を持って屋敷を後にした一行は依頼主であるカービィ・メロンの邸宅へ向かっていた。

 

「この本、"日の出"はエバルーがケム・ザレオンに無理矢理書かせた、自分が主人公の冒険小説だった。構成も文体も酷くて、とてもじゃないけどケム・ザレオン程の文豪が書いたものじゃなかったわ。………だからこそ、何か秘密があると思ったの。」

「そうなのか?」

「ああ、さっき読ませて貰ったけど、人が変わったかのような酷い文章だった。………普通に本屋で並んでたら軽く目を通したらすぐ捨ててただろうけど、しっかり読むと魔法の痕跡があった。ルーシィはよく気づいたものだと思うよ。」

「というかリュークあの後何やってたんだよ?」

「星霊界を通ってたナツには言われたくないんだけど………まぁ、エバルーの書斎やらを漁って悪事の証拠を色々と集めてたよ。まとめてシロツメの町役場に出して来たからそのうち逮捕なり何らかの処分があるでしょう。」

 

==========

 

そして依頼主のカービィ・メロンと対面すると、ルーシィは"日の出"を差し出した。

 

「な、何のつもりでしょうか………?私は確か、破棄して欲しい、とお願いしたハズです。」

「破棄するのは簡単です、カービィさんにでもできる。」

「だったら、私が………こんな本、見たくもない!!」

 

奪い取るように"日の出"を受け取ったカービィ。そこにルーシィが言葉を続けた。

 

「あなたが何故この本の存在を許せないかが分かりました………父の誇りを守る為です。あなたは、ケム・ザレオンの息子ですね。」

「!!な、何故それを………」

「この本を読んだことは?」

「父から存在は聞いていましたが、読んだことは………ですが、駄作だと。父はこれを書いた事を恥じていました。」

 

そしてカービィは31年前、父のケム・ザレオンが"日の出"を執筆した後の事を話し始めた。

 

エバルーの監禁から解放され、3年ぶりに家に帰ったケム・ザレオンは帰宅早々に自らの利き腕を鉈で断ち絶筆した事。3年家族を放ったらかしにしたと思ったら腕を断った父が許せなかったカービィは衰弱していくケム・ザレオンに父親失格と、吐き捨てるように言った事。そして間もなく自殺した父に最初は憎んでいたもののそれが後悔に変わってしまった事。

 

「だから、せめてもの償いに、父の遺作であるこの駄作を………父の名誉の為に消し去りたいと思ったんです。」

 

そう言ってマッチに火をつけたカービィは炎を"日の出"に近づけた。だが、その瞬間本が光り始めたのだった。

 

「な、何だこれは………!?」

「ケム・ザレオン、本名ゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけました。」

「文字が浮かび上がった!?」

「"DAYBREAK(日の出)"から、"DEARKABY(親愛なるカービィへ)"………!!」

 

この本が本来渡るべき人に渡った時に発動した魔法。これにより表紙の文字が入れ替わった。さらに、表紙が入れ替わったかと思うとその本はひとりでに開き、中身の文字も次々と浮かび上がり、宙を舞っては入れ替わって再び本へと収まっていった。

 

「彼が作家をやめた理由、それは最低な本を書いてしまった事と同時に最高の本を書いてしまった事かもしれません。カービィさんへの手紙という、最高の本を。」

 

そしてしばらくすると全ての文字が入れ替わり、全く別の本としてカービィの手に収まった。

 

「父さん………」

 

本をめくり、冒頭をその場で読んだカービィ。そこにはエバルーが主人公の駄作は無く、ケム・ザレオンが息子のカービィに伝えたかった言葉が綺麗な文体で記されていた。それを読んだカービィはポロポロと涙をこぼし始めた。

 

「私は、父を………理解していなかったようだ………」

「当然です。作家の頭の中が理解できたら、本を読む楽しみが無くなっちゃう。」

「ありがとう。この本は燃やせませんね。」

 

すると、さっきまで黙っていたナツが口を開いた。

 

「じゃあ俺達も報酬いらねーな。」

「だね。」

「え?」

「はい?」

「依頼は本の"破棄"だろ?達成してねーし。」

「い、いや………そういう訳には………」

「いらねぇモンはいらねぇよ。」

 

ウソでしょ、と戸惑うルーシィを余所にガハハと笑いながら帰りの支度をするナツ。

 

「かーえろっ。メロンも早く帰れよ、じぶん家に。」

「!!」

「え?」

 

=========

 

「はぁ〜〜〜終わった!!」

「凄いため息だね。」

「そりゃそうだろ………ナツは相変わらずだし、ルーシィは思ってた2割増しのお転婆っぷりだし、危なっかしいったらありゃしない。」

「でも全部上手くいったから良かったじゃねぇか。」

「………あのねぇ。」

 

依頼が終わり、帰路に着く一行。その中でリュークは一際大きなため息をついた。ギルド一の問題児ナツに新入りルーシィを任せたらどうなるか分かったものじゃない、という理由で同行したリュークだが蓋を開ければルーシィも中々のお転婆っぷりを発揮。リュークの中でのルーシィの評価は「目を離したらマズい」で固まったのだった。そのルーシィは、ナツが報酬の受取を拒否した事に怒っていた。

 

「信じらんない!!普通200万をチャラにするかしらーーー!!」

「依頼に達成してないのに貰ったら妖精の尻尾の名折れだろ。」

「あい。」

「全部うまくいったからいいじゃないのよぉ!!………でも、あの人達、お金持ちじゃなかったのよね………あの屋敷も見栄を張る為だって言ってたし。」

「借金しようが人生壊れようがあの本だけは、という執念だろうね。ただ今回は、筆者のケム・ザレオンの執念が上回った結果だね。」

 

すると、一行の会話の話題がケム・ザレオンに移った。

 

「あの小説家、スゲェ魔導士だったんだな。」

「30年も前の魔法が解けないなんて相当だよ。」

「昔は魔導士ギルドに所属してたみたいなのよね。そして、そこでの冒険の数々を小説にしていたの。」

「どの作品も面白くてね、一人で放浪してた時には小説に出て来た場所を巡ってみたりなんかもしたっけ。それだけに絶筆したって聞いた時は驚いたけど、こんな事があったなんてねぇ………」

「ほんと、憧れちゃうなぁ………」

 

ケム・ザレオンへの"憧れ"を口にしたルーシィ。すると、ナツがニヤニヤと笑い始めた。

 

「やっぱりなぁ〜。」

「ん?」

「前にルーシィが隠したあの紙の束………」

「!!」

「自分で書いた小説だろ。」

「〜〜〜!!」

 

瞬く間に顔を真っ赤に赤らめたルーシィは思わず大声を上げた。

 

「ぜ、絶対に他の人には言わないでよ!!」

「何で?」

「え………めちゃくちゃ気になるんだけど………一回読ませて貰ってもいい?」

「こういう人が出てくるからよ!!まだヘタクソで読まれたら恥ずかしいの!!」

「ええ〜そんな事言わずに、冒頭だけでも。」

「絶対にダメ〜!!というかリュークも何でこんな食いついてるの!?」

「リュークも本好きだもんな。ヒマだと大体寝てるか読書か釣りか武器磨いてるかだし。」

「あい、それにレビィと会えば必ず本の話してるね。」

 

そうしていると、ルーシィがふと何かに気づいた様子で話題を変えた。

 

「ところでリューク。小説で思い出したんだけど………さっき出してた紋章士、セネリオって言ってたわよね?」

「そうだけど………何かあった?」

「……………もしかして、紋章士の中に、"蒼炎の勇者"アイクっている?」

「………おっと?」

 

驚いた顔をしたリュークを余所に、ルーシィは続けた。

 

「やっぱり。セネリオが"蒼炎の勇者"の参謀で合ってるとしたら、あたしの部屋で見せてもらったマルスに、ハルジオンで見たリンがそれぞれ"英雄王"と"風の公女"って説明がつく。」

「………ありゃりゃ、これは完全にバレてるパターンか。」

 

そしてルーシィはリュークに一つの結論を告げた。

 

「リュークの紋章士って、"炎の紋章"シリーズの英雄から来てる?」

「………正解。ただ決定打がセネリオは予想外だよ、相当読み込んでるね?」

「何度も読み返した、あたしのお気に入りの一つだもの。えーいいなー、色々とお話聞いてみたいなー。」

「ルーシィ、有名なのか、その"炎の紋章"ってのは。」

「有名って言っていいレベルのシリーズ作品よ。特に人気な作品は何度か劇にもなってるし。」

 

"炎の紋章"。軍記物語と冒頭小説を合わせたようなスタイルの英雄譚シリーズである。特徴としては登場人物がリュークの扱う紋章士である事、そして原作者不明であるものの数百年以上前から発行されていた歴史ある作品である事が挙げられる。

 

「でも、何でリュークが"炎の紋章"の英雄を?」

「紋章士の指輪を守ってた俺の先祖の仲間が原作者だからだね。」

「ええっ!?」

「詳しい事は知らないけど、紋章士が元々異界由来の力だから昔は今程の力を出せなかったらしいんだ。何とか紋章士本来の力を取り戻そうと試行錯誤した末に、

 

「本に残してこの地にも伝承として伝われば本来の力を取り戻せるのではないか。」

 

という考えで紋章士の口伝を元に作られた………って聞いてるよ。」

「そんなことが………」

「他にも本来の力を取り戻すまでに色々あったみたいだけど、なんせ何百年、何千年前の話だから流石にそこまでは分からないかな。………しかし、ここまで詳しい子がいるのは喜ぶべきか悲しむべきか。」

「というと?」

「そこまで詳しいって事は俺の手札は半分くらいルーシィには割れてるって事になる。手札の数と初見殺しをウリに戦ってるこっちからすると、万が一ルーシィが敵になった日には厄介じゃ済まないなって………」

「ちょっと怖い事言わないでよ!!」

「すまない、冗談だ。お詫びに、初仕事成功祝いでマグノリアに戻ったら夕飯を奢るよ。」

「本当!?やったー!!」

「リューク、俺達もいいよな!?」

「えー!?まぁ、暴れなければ?」

「よっしゃー、リュークのおごりだ!!たらふく食うぞ!!」

「あいさーっ!!」

「………ナツとハッピーは加減できると助かるんだが………」

 

様々なハプニングが発生したものの、こうしてルーシィの初クエストは成功に終わり、一行はマグノリアへと帰ったのだった。

 

 

続く




・"炎の紋章"
軍記物語と冒頭小説を合わせたような英雄譚の小説シリーズの総称。何百年も前から発行されている歴史あるシリーズで、特に人気な作品は絵本や劇にもなっている。
原作者は不明とされていたが、リュークの発言により彼の先祖の仲間だった者が原作者だと明かされる。
制作背景は、異界から流れて来た紋章士の力が元の世界にあった時の力を引き出せない状態を打破するものであり、

「本にして皆が読んでくれる事で紋章士が伝承として伝われば本来の力を取り戻せるのではないか。」

という理念の元作られとされる。
メタな事を言えば、Fateシリーズの知名度補正(日本ではマイナー英霊のクー・フーリンを日本で呼んだらヨーロッパで呼ぶ時と比べて弱体化する、とかヴラド三世を自国のルーマニアで呼べば最大限の力を発揮できる、ってやつです)を意図的に作ろうとしてできた作品です。

内容は、原作ファイアーエムブレムのお話そのものです。
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