FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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シャドウズで満を持してアイクが登場ですが今年の漢字にもなった熊になりましたね………ゴリラは安直というかネットミームに侵され過ぎなので無いと思いましたが、ディミトリと被るとは言えもっとガリアのネコ科に走るかと思いました。

それはそれとして年内投稿はここまでですかね。もしかしたら設定集は出すかも。
今年もありがとうございました。
ここでキリ良く星空の鍵編を終わらせれたので来年からは大魔闘演武編に入ります。現時点で色々と仕込んでますので来年も見ていただけると幸いです。

それではどうぞ!!


91章 悪夢と幸夢

『「うおおおッッッ!!」』

 

最後に残った六魔将軍、ブレイン2世ことミッドナイトを倒すべく突撃開始したリュークとナツ。

 

『"神竜王の………』

「"火竜の………」

『「鉄拳"!!」』

「………!!」

 

神竜と神霧そして紋章士チキの力を合わせた神竜王の力と、炎竜王の炎、それぞれの力を纏った拳でブレイン2世に迫る2人。相手の"屈折"で軌道を曲げられないように工夫しながらの攻撃だった。

 

「"火竜の鉄拳"………と見せかけて"鉤爪"!!」

『"神竜王の影打"!!そして"神竜王の撃鉄"!!』

「ぐはっ………!!」

 

パンチと見せかけてのキックや、ワンテンポ遅らせた衝撃波攻撃。的を絞らせない攻撃は着実にブレイン2世を追い詰めていた。

 

「ぐ………こうなったら、奥の手だ。」

『「………!!」』

 

すると突然ブレイン2世の身体が数倍大きくなり、大きな悪魔のような風体となると鋭い爪をリュークとナツの腹に突き刺した。

 

『……………。』

「がッ、は………!?」

「どうだ!?これが僕の本当の力!!」

 

そして爪を横に薙ぎ、2人を真っ二つに斬り裂いた。

 

「大いなる犠牲の前には………」

『だから。』

「!?」

『しょっぱい、と言ったハズだ。』

 

だが真っ二つになったハズのリュークが喋り始めると、周囲を濃霧が包んだ。

 

「は?」

『喰らえ、"幻霧の大魔神"。』

 

そしてブレイン2世が状況を把握する前に、今のブレイン2世の数倍大きい竜が霧の中から現れ上半身を食い千切った。すると霧が即座に晴れ、無傷のナツとリューク、そして尻餅をついたブレイン2世が現れた。

 

「ん!?今確か腹を………」

『幻覚だよ。これで心を折りに来たんだろうけど………想像力が足りないよ。』

 

光を"屈折"させる事による幻覚。だが相手が悪かった、人間の恐怖と竜の恐怖は尺度が違う、故にブレイン2世の幻覚はリュークを騙せず、逆に"幻霧の大魔神"による幻覚の竜で幻覚を食らい、ブレイン2世を慄かせ幻覚も解除させたのだった。

 

『魔法もしょっぱければ、恐怖の尺度(スケール)もしょっぱいな。これがお前の限界、お前の負けだ。』

「……………!!」

『ナツ、決めるぞ。』

「おうよ!!これで終わりだ!!」

 

だがブレイン2世は諦めていなかった。

 

「お前達は、僕の"大いなる犠牲"の真の力をまだ見ていない………父上と同等のこの魔力を、見ていない!!」

 

するとブレイン2世が大技の構えを取った。

 

「我が前にて歴史は終わり、無の創世記が幕を開ける………開け、鬼哭の門!!"ジェネシス・ゼロ"!!」

 

それはマスターゼロの奥義。無数の亡霊が現れリュークとナツに襲い掛かった。

 

「無の旅人よ!!その者達の魂を、記憶を、存在を食い尽くせ!!」

『………!!"紫煙騎兵団(パープルヘイズ)"、"一斉突撃"!!』

 

リュークは"神霧の大魔神"で出した霧を全て霧の兵士に変え突撃させた。だが"無の旅人"なる亡霊の数は"紫煙騎兵団"の数より遥かに多く、瞬く間に蹴散らされた。

 

「無駄だ!!この魔法の前には全てが(ゼロ)となる!!消えろ、ゼロの名の下に!!」

『ぐ………っ!!』

「ぐあっ!!」

「永遠の虚無に、永遠の悪夢に呑まれて消え去れ!!」

『「……………!!」』

 

無数の亡霊はリュークとナツの逃げ場を封じ、次々と食らいつくと瞬く間に闇の中へと呑み込まれていった。

 

==========

 

「……………。」

 

"エンゲージ"状態の解かれたリュークが目を開けると、そこは一面の闇だった。

 

「永遠の虚無、永遠の悪夢………か。」

 

闇に呑まれる直前のブレイン2世の言葉を反芻しながら辺りを見回したリューク。

 

「"久しぶり"、だな。」

 

次の言葉がこうなった理由。それは単純に彼がこの光景に見覚えがあったからである。

 

「………"あの日"から、幾度と無く見た光景だ。」

 

アクノロギアの襲撃でソラネルの里(ふるさと)が滅んだ、その日から頻繁に夢の中でこの光景を見て魘されては寝汗でびっしょりになって起きたのだった。

 

「そして母さんが亡くなってから、毎日のようにこの光景が俺を苛んだ。」

 

ひとりぼっちになってしまった自分を映しているように見えたこの光景はまさに、彼が見た悪夢そのものだった。

 

「………だけど、この光景を見る回数は一人旅がフェルトとの二人旅になってから少し減って………そしてナツに誘われてから、激減した。」

 

妖精の尻尾に加入し、多くの仲間に出会えた事でリュークの寂寥感は薄れた。それと共にひとりぼっちを思い出させる悪夢の回数は激減した。

 

「妖精の尻尾に入ってからは悪夢が減り、代わりに皆に囲まれた幸せな夢を見る回数が多くなった。その回数が更に増えたのは、ルーシィが入ってからの激動の数ヶ月。」

 

ルーシィの加入と共に大きな事件が立て続けに起き、悪夢を見る暇も無くなっていた。

 

「………そして"あの日"を境に、俺は悪夢を見なくなった。」

 

ソラネルの里での戦いで己の過去を清算し、そしてルーシィへ告白し結ばれた"あの日"。そこからリュークは一度も悪夢を見なかった。

 

「ナツとルーシィのおかげで、俺は悪夢から解放されて幸せな夢を見て眠れるようになったんだ………なら!!」

 

リュークは"絆剣リベラシオン"を抜剣した。

 

「奪われるものか、奪わせるものか!!こんなもの………恐るに足らん、斬り裂いてくれる!!」

 

虚無の中で剣を構えた瞬間、目の前に小さな光が差し込んだ。リュークはその小さな光に迷い無く鋒を差し込むと光を広げようと力を籠めた。

 

「ん、ぐぐぐ、っ………!!」

 

いくら力を籠めても光は広がらなかった。だがここで諦めるリュークでは無かった。

 

「これしきの悪夢で、諦めてたまるか………!!今度は、俺が悪夢から救い出す番だッッッ!!」

 

すると、リュークの指輪"炎の紋章"が光り輝き出した。

 

「俺が、悪夢を幸夢に、塗り潰してやるんだ!!」

 

その光は更に強くなり、手元が見えなくなるまで目映く輝き出したその時、リュークは力一杯叫んだ。

 

夢遊め(まどろめ)、幸夢の紋章士(エムブレム)!!」

 

それはリュークの頭に浮かんだ、新たな紋章士を顕現する為の呪文。悪夢を祓い、数百年かけて手に入れた幸夢を取り戻す為の祈り(ねがい)に応える為に顕現したもの、

 

『おはよう!!』

 

それは正に、絵本から出て来たかのような、花の意匠があしらわれた衣装の"妖精"だった。

 

『"久しぶり"ね!!』

「………?」

『………やっぱり覚えてないのね。じゃあ改めて、私はピアニー、夢の国アルフの妖精よ。よろしくね!!』

「よろしくお願いします、紋章士ピアニー。」

『そんなかしこまらなくてもいいのに。あなたが幼い頃、夢の中で一緒に遊んだ仲だよ?』

「………とんと、覚えてないですね………」

『いいの、大人になったら忘れちゃうものだから………だから、違う形でも(紋章士として)、私を呼んでくれて嬉しいの。』

「…………。」

『それで、私はあなたの祈り(ねがい)でここにいるけど………怖い場所ね。』

「ええ、俺が大昔に見た悪夢そのものです………力を貸してくれますか?」

『もちろんよ!!存分に使って!!』

「了解………!!なら、この悪夢を終わらせるために………"エムブレム・エンゲージ"!!」

 

新たなる紋章士、紋章士ピアニーと"エンゲージ"したリュークは"絆剣リベラシオン"を握り直し、足を踏み変えた。すると黒一色だった足元が小さな花畑に変質した。

 

『!?』

 

その花畑に足を踏みならした瞬間に感じた違和感。でもそれは良い意味の違和感であった。

 

『身体が軽い………これなら!!』

 

花畑の正体は、紋章士のシンクロスキル、"夢心地"によるもの。生み出されたのは夢の中を疑似再現する地形、名付けて夢空間であり、ここにいる味方はそのまま夢の中のように身体が軽く感じるのだ。

 

『おおおぉぉぉッッッ!!』

 

身体が軽くなった事で光に差し込んだ剣も振りやすくなり、少しずつ光を広げ始めた。

 

『(手応えはある、が………時間がかかる!!モタモタしてる訳にはいかないが………!!)』

「手伝える事はあるか!?」

『ナツ!!どうやってここに………!?』

「何かピカピカ光ってるから来た!!んで、この光こじ開ければいいんだな!?」

『そうなんだけど、拳を突っ込める程の広さは、まだ………!!』

 

そうしていると、紋章士ピアニーが話しかけた。

 

『(………実はね、リューク。私、お友達も連れてきてるの。)』

『お友達!?』

『(そう。花園で一番遊んだ友達。そして、互いを"はんぶんこ"した、一番のお友達。彼女の力も、この光を開けるのに使えるハズよ。)』

『………ナツ、行けるか?』

「ああ、よく分かんねぇけど任せな!!」

『なら………!!』

 

"写しの指輪"をナツに投げ渡したリューク。ナツが受け取ったのを確認すると、リュークは頭に浮かんだ呪文を唱えた。

 

追進め(つきすすめ)、開妃の紋章士(エムブレム)!!』

 

リュークの呪文により、ナツに渡した"写しの指輪"が輝き出し、間もなく新たな紋章士が現れた。

 

『状況は把握しました!!アスク王国のシャロン、これよりあなた達の力となりましょう!!』

 

槍を持って現れた紋章士の名はシャロン。アスク王国の王女であり、紋章士アルフォンスの妹である。その紋章士シャロンはリュークとナツを見てから、ナツに声をかけた。

 

『ではあなたですね!!よろしくお願いします!!』

「ああ、頼むぜ………!!」

「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」

 

早速紋章士シャロンと"エンゲージ"したナツはエンゲージ武器の槍、"フェンサリル"を手に取ると穂先に炎を纏わせ、リュークが剣を突っ込んでいる光に差し込んだ。

 

『『うおおおおおおッッッ!!』』

 

剣と槍に力を籠め、光を斬り裂こうとした2人。

 

『『だっらぁぁぁぁぁぁ!!』』

 

そして咆哮と共に全力を籠めると得物を思いっ切り振り下ろした。すると光が縦に裂け、人が通れる大きさになった。

 

『よし!!』

『こうとなったらやる事は1つ!!』

『『突撃だーーーッ!!』』

『『(おーっ!!)』』

 

そのまま脇目も振らず光に飛び込んだ2人。すると元の場所に無事帰還、"ジェネシス・ゼロ"による闇から脱出したのだった。

 

「ぐっ、Rシステム………!?いや、これは………"リアルナイトメア"!?」

 

脱出した先には、何やら苦しそうにしているブレイン2世。

 

「まさか、小娘………無限時計の制御を、乗っ取ったとでも言うのか………!!」

 

ブレイン2世が苦しそうにしていた理由。それは無限時計に取り込まれたルーシィが逆に無限時計の制御を乗っ取り、"リアルナイトメア"をブレイン2世に発動して悪夢を見せたからである。一面の闇に差し込み、リュークとナツがこじ開けた小さな光はルーシィの介入によってできた"ジェネシス・ゼロ"の綻びだったのだが、そんなものはこの場面では関係無い。

 

『面倒な事してくれたなぁ!!だがいい加減年貢の納め時、ねんねの時間だ!!』

『見てな、今度こそお前をぶっ飛ばす!!』

 

紋章士ピアニーのスキル"夢心地"による夢空間とエンゲージスキル"やさしいゆめ"でナツの動きを軽くし、ブレイン2世の対応できない速度で炎と"フェンサリル"の槍で攻め立てる。すると紋章士シャロンのスキル"並走"によりリュークの後隙が無くなり、即座に追撃でエンゲージ武器の魔法"スリープ"でダメージを与えながらブレイン2世に眠気を与えた。

 

「うっ………!!」

『そのまま寝てなぁ!!』

「ぐっ………何故だ、大いなる犠牲で得た力が、通じないはずが………!!」

『何が犠牲だ、くだらねぇ!!』

「貴様らに何が分かる!!捨てる想いが強ければ強い程、力が強大になる!!だから僕は父上と再会する未来を捨て、父上に匹敵する力を得たのだ!!」

『分かって無いのはお前だ、ブレイン2世、いや、ミッドナイト!!400年前に全てを失っても、それで得るものなんて何にも無かった!!』

『本当に必要なのは、その心を捨てるんじゃなくて背負って向き合う事じゃねぇのか!?』

 

ミッドナイトは知る由もないが、リュークもナツも一番大切なものを失った経験がある。だがミッドナイトと違うのはそれを手放すのでは無く受け入れた上で、それを新たに得たものを守る為の糧として背負った事にある。

 

『『何にも背負おうとしてないお前に、俺達が負けるかよ!!』』

「黙れ黙れ黙れ!!今度こそ闇に呑まれ消え去れ!!」

 

再度"ジェネシス・ゼロ"を放とうとしたブレイン2世。

 

『同じ手は………』

『食らうかよ!!』

 

だがリュークはエンゲージ武器を斧"親愛の花"に、ナツは"開神の刃"に持ち替えると亡霊の群れを両断し距離を詰めた。

 

「!!」

『いい子にしてな!!"ゆめのつづき"!!』

『開いてやる!!"あなたと共に"!!』

 

紋章士ピアニーと紋章士シャロンのエンゲージ技を叩き込んだリュークとナツは武器を手放し、両手の拳に渾身の魔力を籠めた。

 

『"双神の逆鱗"!!』

『"紅蓮火竜拳"!!』

「ぐあああっ………!!」

 

2人の連続攻撃をまともに食らい吹き飛ばされたブレイン2世。そのまま彼は戦闘不能になり、戦いは終わりを迎えた。

 

『『………ふぅーっ………!!』』

 

勝利した2人は深く息を吐き、"エンゲージ"を解除した。

 

「ありがとうございました、ピアニーにシャロン。そして、これからもよろしくお願いします。」

『こちらこそよろしくね!!』

『私もよろしくお願いしまーす!!よーし、英雄友達略して英友千人の次は紋章士友達略して紋友千人作りますよー!!』

「流石に紋章士は千人もいないかと………」

「んな事よりさっさとルーシィ連れて帰ろうぜ。」

「そうだね。ここに長居する理由も無いし帰ろうか。」

《そうねー、それにしても疲れたわ………》

「「………ん?」」

 

ナツから"写しの指輪"を返して貰いながら帰る準備をしたリューク。すると2人はある違和感を感じ取った。

 

「………ルーシィ。」

《どうしたの?》

「君は今、どこにいる?」

《どこに、って………あれ?》

 

ルーシィの声は聞こえる。何なら気配も感じる。だけど姿はどこにも見えなかった。

 

《………ちょっと待って、今猛烈に嫌な予感が………》

「………まさか。」

 

導き出された結論。

 

「無限時計と、融合しちゃったってのか………!!」

《いやぁーーーっ!!》

 

ブレイン2世を止めるため無限時計の制御を乗っ取り"リアルナイトメア"を発動したルーシィ。その代償として無限時計と融合してしまった彼女の悲鳴は周囲一帯に響き渡った。

 

==========

 

「どーすんだよこれ!?ルーシィはでっかい鉄の魚になっちまったって事か!?」

《………あたしはハッピーのエサになっちゃったんだ………》

「いやハッピーもそこまで食い意地張ってないでしょ………」

「お前は何でそんな落ち着いていられるんだよ!?」

《そうよ!?あたしがこんな姿でも良いって事!?》

「………あのな。」

 

ルーシィが無限時計と融合してしまい、大パニックのナツとルーシィ。一方のリュークはやれやれとため息をついていた。

 

「理由は2つ。1つは俺までバタバタしてたら収拾つかないから。もう1つは、まだ完全に消えてない事が分かったから。」

 

そう言うとリュークは"炎の紋章"を掲げた。

 

「"炎の紋章"は紋章士を通じて繋がっている一対のペアリング。その反応が消えてないならルーシィはまだ完全に溶けきってない、つまり救い出す手はまだあるって事だ………そっちに答え合わせと解説があるなら応答願うよ、ウォーレン。」

「《!?》」

 

するとウォーレンの"念話"が繋がった。

 

《よーーーーーやく応えてくれたな、リューク!!いつまでシカトしてんだよ!?》

「悪い、それどころじゃなかった。それで、何か情報はある?」

《さっきギルドから連絡が来たんだ。そっちに繋ぐぜ。》

 

ギルドに"念話"を繋いだウォーレン。出たのはレビィとアイズだった。

 

《聞こえる?》

「聞こえるよ。それで?」

《確認だけど、ルーシィちゃんは今無限時計を操れる状態だね?》

《はい、できます。》

《無限時計の動力源は生体リンクになっていた星霊魔導士から吸い上げた魔力なんだって。》

 

無限時計を封印したウィル・ネビルは星霊魔導士を生体リンク魔法による封印の鍵として、六魔将軍はそれを破壊する事で封印を解除し、反動で星霊魔導士は100年の時を奪われ半死半生の砂像に変わってしまっていた。

 

「………つまり、奪われた時を返せば元に戻る、と………」

《その通り。そして動力源を失った無限時計はバラバラになって、どこかへと"散ってゆく"、との事だ。》

「………おい、ちょっと待て。」

 

待ったをかけたのはナツだった。

 

「散ってゆく………って、じゃあルーシィはどうなるんだ!?」

《分かっているのは、融合から解放される事まで。解放されてどうなるかは判明していない………最悪、部品と共にどこか遠くへ飛ばされるかもしれない。》

「……………。」

「おいおい、他に何か方法はねぇのかよ!?」

《………大丈夫。》

「ルーシィ?」

《あたし、やってみる!!》

 

ルーシィがどこか遠くへいってしまうかもしれない。その心配をよそに、ルーシィは決意を固めていた。

 

《それで大勢の人が助かるなら、どこかに飛ばされるくらいの事、リスクでもなんでもない!!》

 

なんでもない、そう言い切れる理由がルーシィにはあった。

 

《あたしは妖精の尻尾の魔導士!!ジュードとレイラの娘!!そして………ミッシェルのお姉さん!!やってみせる!!》

 

それに、と続けた。

 

《あたしはひとりぼっちなんかじゃないもん。見守ってくれてる皆がいて、星霊がいて、紋章士がいる。》

 

そして、と締めの言葉を紡いだ。

 

《どこに飛ばされても、時間がかかっても、絶対に迎えに来てくれるでしょ?》

 

その言葉を向けられた人はニッと口角を上げ、指輪の嵌められた左の拳を突き上げた。

 

「ああ、どこへだって飛んでみせる。………頑張れ!!」

《任せて!!必ず戻るから!!》

 

==========

 

その後、リュークとナツはグレイ、フェルト、リネンと合流し、竜化したリュークの背中に乗り無限城を脱出。

 

《出られた?》

『ああ、いつでも始めてくれ。』

《分かった………お願いね、ホロロギウム、アルム、ベレト、ヴェイル、セイズ、グルヴェイグ、クワシル。》

 

時に関係する星霊と紋章士の力を借り、ルーシィの無限時計の操作が始まった。

 

「おーーーい!!」

『!!』

 

地上まで降り立とうと降下したリューク。するとリュークの姿を見て呼ぶ声が聞こえたのでそこへ向かうとそこには妖精の尻尾の突入組に加え、その突入を手伝った青い天馬(ブルーペガサス)の一夜、そして敵だったレギオン隊がいた。

 

「………話には聞いていたが、これは驚愕の香り(パルファム)………!!」

「竜族、とは………よもや、伝承の存在が………」

 

一夜や、先に見ていたマリーヒューズ以外のレギオン隊は竜化したリュークの姿に目を見張っていたが、当のリュークは構わず着陸すると背中の皆を降ろし竜化を解いた。

 

「ふぅ………少しだけ休む、魔力を使い過ぎた。」

 

その場にドカッと座ったリューク。その前に、レギオン隊のリーダーであるバイロが跪き、頭を下げた。

 

「妖精の尻尾を巻き込んだ事、そしてあなたの想い人を危険な目にあわせた事を、ここに深く謝罪する次第です。」

「………顔を上げてください。」

「……………。」

「謝罪しないといけないのは、貴方方の信仰にとやかく言った俺も同じです。失礼致しました。」

「………ではここは互いに、一度水に流しましょう。」

「ええ、他に何かあればマスターにお願いします。」

 

ここで和解したリュークとバイロ。

 

「ただし。」

「ただし?」

「あなたの部下に言い聞かせておいてください………次ルーシィに色目使ったら容赦はしないと。」

「………キツく言っておこう。」

 

その間、妖精の尻尾の面々が囲っていたのは完全な余所者のリネンだった。

 

「それで、お前が"協力者"か?」

「ええ。剣咬の虎(セイバートゥース)の魔導士で旅芸人のリネン・テイラーよ。別件でこの事件の調査をしていたところを、縁があってリュークさんと出会ってそのまま共闘させて貰ったわ。」

「ギルドを代表して、私から感謝申し上げる。それで、リネンも紋章士を使うと聞いたが………」

「はい。私のおじいちゃん、アーロンから受け継いだものです。」

「アーロン………!!」

「………あなたも、おじいちゃんの事を?」

「名乗るのが遅れたな。私はエルザ・スカーレット。僅か数分の間ではあるが………アーロンから剣を教わった"最後の弟子"だ。」

「………そっか。おじいちゃんはリュークさん以外の人の心の中にいるんだ。それが知れて、共闘した意義が増えて嬉しいよ。」

 

こうして少しの間雑談をしていると、無限城に動きがあった。

 

「………始まった。」

 

無限城から1つ、また1つと青い光が飛び出し、地上へと降り注いだ。その光は時が経つに連れ数と輝きを増し、いつしか流星群のように空から降り注いだ。

 

「休憩おしまい!!」

 

リュークは立ち上がると再び竜へと変身。

 

『フェルト………そしてリン、ルフレ、クロード、頼むよ。』

 

竜の姿となったリュークの鼻先にフェルトが止まり、その背後に紋章士リン、紋章士ルフレ、紋章士クロードと目に自信のある紋章士が控えた。

 

『無限時計が崩壊すれば、ルーシィが出て来るハズ………見つけたらすぐに報告して。』

 

青い光によって方々に散っているのは動力源にされていた星霊魔導士の魔力と、無限時計の部品。それにより無限城はみるみる内に崩壊を始め小さくなっていた。リュークが竜化したのも、フェルトと目に自信のある紋章士を顕現したのも、その崩壊と共に出て来るに違いないルーシィを少しでも早く見つけ救出する為である。

 

『……………。』

 

数分か、数十分か、あるいは一時間か。ひたすらに青い光を四方八方に飛ばしながら崩壊する無限時計とにらめっこを続けた一同。その瞬間はついにやって来た。

 

『『『いた!!』』』

「ホーーーッ!!」

 

3人の紋章士とフェルトの声が重なった。それがスタートの合図となり、リュークは大地を蹴り上げ翼を広げると最高速度で飛び出した。

 

『ーーーーー!!』

 

弓から放たれた矢のように、ひたすら真っすぐ。躊躇いも振り返りも無く、ただただ一直線に空を駆けるリュークの視線の先には、無限時計から解放され流れ星のような光の筋に混ざって落ちてゆくルーシィの姿。

 

『!!!!』

 

最高速(げんかい)の、その一歩先へ。更に強く羽ばたき、リュークはギアを上げルーシィとの距離を詰めた。

 

「ルーーーシィィィーーー!!」

 

そしてルーシィを目前にして竜化を解除すると両手を前に広げ、ルーシィをキャッチ。背中から翼だけ生やすとフワッと着地してルーシィを降ろした。

 

「………ただいま。」

 

少しだけ頬を赤らめ、涙目になりながらも笑いかけたルーシィ。彼女が全くの無事である事を確認できたリュークはぎゅっと、強く抱きしめた。

 

「………ちょっとだけ、いたいかな。」

「………いやだ。」

「……………。」

 

顔が見えなくても、いや、リュークがどんな顔をしているか、見るまでも無かった。

 

「必ず戻るって言ったじゃん。信じられなかった?」

「それとこれとは話が違う………帰って来ないかもしれないって思うと、生きた気がしなかったんだぞ………!!」

「………なによ。離れる時はあんなに冷静でカッコよかったのに。」

「君とナツが慌ててる所に、俺まで慌ててたら誰が収拾つけるんだよ………!!」

「………はいはい、そう言う事にしておくわ。」

「……………。」

「………全く、しょうがないわね。」

 

するとルーシィはリュークに応じて、ギュッと抱き返した。

 

「大丈夫。まだあんたを1人にはさせないから。だから今は………ただいま。泣き虫でさみしがりやな神竜様。」

「………うん。おかえり。お転婆で向こう見ずな………手のかかる君。」

 

父の遺品から始まった、星空の鍵を巡る物語はこうして幕を閉じた。

 

 

続く




やっぱり勢いで書いてるなー、と思うのは、ピアニー出すの決めたの前話書いてる時だしシャロン出すの決めたのはブレイン2世が"ジェネシス・ゼロ"撃った辺りでした。ですがポッと思いついた割には上手く入れ込めたと思います。

そんな2人の性能はこちら!

◎ピアニー(和氣あず未)
◯呪文:夢遊め(まどろめ)、幸夢の紋章士(エムブレム)
◯登場作品:ヒーローズ
◯髪色と服の色:金髪、白地に緑
◯シンクロスキル:
・信義
周囲5マス以内の仲間の隣接マスに移動可能
・妖精の誘い
ターン開始時、自身を中心とした縦3列、横3列の敵を幸運の半分%でスリープ状態にする
・夢心地
行動後、周囲5マスに夢空間(味方の武器の重さが半分になる地形効果)を発生させる
◯エンゲージスキル:
・やさしいゆめ
隣接する行動済の味方を再行動させ、攻速+5する"やさしいゆめ"コマンドを使用可能
◯エンゲージ武器:
・スリープ(魔法、射程1-2)
戦闘後、相手をスリープ状態にする
・親愛の花(斧、射程1)
力の代わりに幸運の値を用いてダメージ計算を行う
・幸福の花(魔法、射程1-2)
スリープ状態特効(威力3倍)
◯エンゲージ技:
・ゆめのつづき
相手の魔防-30%の攻撃後、周囲7マスに夢空間を発生させる
◯Style Bonus:
・竜族=妖精の誘い
指定範囲の相手を幸運%でスリープ状態にする
・魔道=ゆめのつづき
スリープ状態の相手に対して威力1.5倍("幸福の花"の特効と重複する)
・飛行=信義
周囲5マスの味方の周囲2マスに移動可能
◯コンセプト:
味方には幸夢を、相手には微睡みを。眠った相手には強力な目覚めの一撃をお見舞い!!

味方に幸せなを夢見させて強化する、という方向で一貫させていただきました。武器の重さや攻速をイジって「夢のように身体が軽い」をイメージしてこの形になりました。

◎シャロン(内田真礼)
◯呪文:突進め(つきすすめ)、開妃の紋章士(エムブレム)
◯登場作品:ヒーローズ
◯髪色と服の色:金髪、白地に金
◯シンクロスキル:
・密集
戦闘時、力、魔力+周囲3マスの味方の数
・幸運の応援
隣接する味方の幸運+7する"応援"コマンド使用可能
・並走
自分が行動済でかつ周囲3マスの味方が相手を倒した時、自分を再行動させる
◯エンゲージスキル:
・魔光
技%で発動。相手の守備、魔防-30%かつ相手の奥義以外のスキルによるダメージ軽減無効
◯エンゲージ武器:
・フェンサリル(槍、射程1)
ターン開始時、周囲3マスの敵の力、魔力-3
・グラズヘイム(魔法、射程1-2)
自分の周囲3マスに味方がいる場合戦闘中、幸運+5
・開神の刃(槍、射程1)
自分の周囲3マスに味方が4人以上いる場合、必殺のダメージが4倍になる
◯エンゲージ技:
・あなたと共に
強力な攻撃の後、自分と周囲3マスにいる行動済の味方1人を再行動させる
◯Style Bonus:
・竜族=並走
自分が敵を倒した時、周囲3マスの一番近い味方を再行動させる
・連携=幸運の応援
対象の幸運+10
・騎馬=密集
周囲5マスの味方の数だけ能力上昇
◯コンセプト:
味方(ともだち)の数だけ能力上昇!!"並走"で味方と共にどこまでも!!

最近のシャロン(総選挙とつながり英雄)を元にした結果、明らかにスキルがインフレしてて頭悩ませました。なんでここでインフレの事考えないといけないんだよ(笑)
特に最近のシャロンの武器についてるあの効果どう落とし込もうと考えたのが"並走"でした。何か勝手にヴェロニカ王女の手掴んで連れ回してるイメージですが(恐らく花嫁シャロン&ヴェロニカのせい)、そう言えばあの2人中の人が義姉妹なんすね。


では来年はついに大魔闘演武編!!前書きにも書きましたが、色々仕込んでぶっこむのでよろしくお願いします!!

それではよいお年を!!
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