そして、ついにお気に入りが200件に乗りました!!これだけ読んでいただけるとは光栄です、ありがとうございます!!
さて今回からいよいよ、自分が一番楽しみにしていた大魔闘演武編です。新要素、新キャラ、新紋章士がたくさん、設定が固まった状態で控えていますのでお披露目するのが楽しみでしょうがないです!!
それに伴い(今更ですが)原作改変が結構起きる見通しなのだけは留意していただけると助かります。
無限時計を巡る事件から数日のこと。天狼組の帰還からようやく落ち着きを取り戻したギルド内での一幕。
「しかし、まさかセイバーの魔導士と共闘する日が来るなんて思わなかったぜ。」
それはウォーレンの発言だった。その発言に残留組は驚いた顔をしていたがリューク達天狼組はピンと来ていなかった。
「そんな変なギルドだったのか、リネンの所属するギルドって。」
「天馬やラミアを差し置いて、現在最強の魔導士ギルド、剣咬みの虎セイバートゥース。そことウチが共闘なんて今までまず無かったからね。」
「そう言うものか、ロメオ。」
「だがそんなギルド、今まで聞いたことも無かったぞ?」
グレイの疑問にアルザックとビスカ、そしてマックスが答えた。
「7年前はそんなに目立って無かったんだ。」
「皆のいない間に急成長したギルドなの。」
「ギルドのマスターが変わったのとものすごい魔導士が5人加入したのがキッカケだね。」
「たった5人でそんなに変わるものなの?」
「長い歴史を見たら1人ぽっちで戦局がひっくり返った事象はいくらでもあるからね。」
ここでウェンディが爆弾を落とした。
「因みに私達のギルドは何番目くらいなんですか?」
「それ聞いちゃうの?」
「聞くまでも無いと思うけど………」
返答は大方の予想通り。
「最下位さ。」
「超弱小ギルド。」
「フィオーレ一弱いギルド。」
「あああごめんなさいいい………!!」
「………だから、"セイバーと共闘なんて"、って話か。」
するとダン!!と立ち上がったのが1人。それは予想通り、ナツだった。
「かーーーっはっは!!そいつは面白ェ!!」
「は?」
「だってそうだろう!?上にのぼる楽しみがあと何回味わえるんだよ!!燃えてきたぁーーーっ!!」
いつもの調子のナツに、しょんぼり気味だったギルドの魔導士達に笑顔が戻った。
「………でも、どうやって最強になるんだい?返り咲くにも7年でできた溝は相当なもののハズだけど。」
「そりゃあ、強ぇ奴ら纏めてぶっ飛ばすんだよ!!」
「………あのさぁ。」
あまりにも通常運転に呆れ顔のリューク。
「それがナツ兄!!すぐにNo.1になれる方法が1つだけあるんだ!!」
「本当か!?」
ロメオの言葉に食いついたナツ。だが残留組は一斉に表情を変えた。
「な!?」
「まさか………!!」
「それは………!!」
「ダメだ!!"アレ"には絶対参加しねぇって言ったろ!!」
一斉に慌て出すロメオ以外の残留組。その狼狽えようにマカロフが残留組を纏めていたマカオに問いかけた。
「"アレ"とは何じゃね、4代目?」
「その呼び方やめてくれねーかな、"6代目"。」
マカロフを6代目と呼んだマカオ。それはマカオから返上されたマスターの座をギルダーツに渡したものの、当の彼は
「ガラじゃねぇ。」
と置き手紙で断り再び旅に出た。そんな彼が5代目として成した事は2つ。1つは破門の身だったラクサスの帰還を正式に認める事。もう1つはマカロフを次のマスターに任命した事。故にマカロフは6代目なのであった。
「んで、"アレ"とは何じゃ?」
「いや、マスター相手にも言えねぇ………でも、"アレ"だけはもう出たくねぇ!!」
マカオの言葉に次々と頷く残留組。マカロフは諦めてロメオへ視線を向けると、ロメオは話し始めた。
「ナツ兄達がいない間に、フィオーレ一のギルドを決める"祭"ができたんだ。」
「"祭"と来たか………」
「フィオーレ中のギルドが集まって、魔力を競い合うんだ。その名も………大魔闘演武。」
大魔闘演武。その響きに天狼組は食いついた。
「おおーーーっ!!」
「大魔闘演武!!」
「楽しそうですね。」
「まさに"祭"か。」
「なるほど、そこで優勝すれば………」
「そう!!フィオーレ一のギルドになれる!!」
「「「おおっ!!」」」
盛り上がる天狼組。だがこれは残留組とは更に溝を広げるばかり。
「無理だよ!!天馬やラミア、それに剣咬の虎も出てるんだ!!」
「過去の祭じゃ俺達ずっと最下位だったってのに………!!」
「いくら天狼組が帰って来たと言っても、7年のブランクは無茶だ!!」
こうなると決定権はマスターに委ねられるのが習わしとなるが、
「優勝したらギルドに3千万J入るんだぜ。」
「出る!!」
「マスター!!」
ロメオが優勝賞金に言及した途端にマカロフが食いついた。これで止めようが無くなった。
「その大会いつやるんだよ?」
「3ヶ月後だよ!!」
「十分だ!!それまでに鍛え直して、妖精の尻尾をもう一度フィオーレ一のギルドにしてやる!!」
かつての栄光を取り戻す為の妖精の尻尾の挑戦が、今始まった。
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「………お、帰って来た。」
「ホー。」
机に大魔闘演武の資料を広げペンを走らせていたリュークと、資料整理を手伝っていたフェルト。そこに最強チームの面々が帰って来たが、満面の笑みを浮かべていたのはウェンディだけで他は微妙な表情だった。
「その感じ、そう都合は良くいかなかったかな?」
「うん………やっぱりそう都合の良いものは無かった。」
「と言うかほぼ取り付く島もなかった。あのばーさんの人間嫌いは筋金入りだな。」
「リュークが付いてきてくれたら何か変わったかな?リュークは人間じゃないし。」
「俺が行ったところで結果は変わらないでしょ。竜族の中でも相当人間寄りだぞ、俺は。」
大魔闘演武出場にあたって最大の課題は7年間のブランクを埋めること。先刻、残留組との組手で思わぬ苦戦を強いられた事でそのブランクが見えた事でその重要性は更に増した。その一環で最強チームは街外れの森に住む薬師ポーリュシカを訪ねたのだが結果は門前払いに近い有様だったのだ。
「収穫無し………と言うにはウェンディだけ事情が違うみたいだけど、どうしたの?」
「はい!!実はポーリュシカさん、エドラスのグランディーネだったんです。」
「………ほう?」
ポーリュシカの正体、それはエドラスのグランディーネだった。数十年前にアースランドに迷い込んだところ彼女はマカロフに助けられて以来アースランドを気に入り定住するようになり、助けられた恩返しとして妖精の尻尾の顧問薬剤師をしていたのだ。
「それでこれを渡されたんです。」
「………魔法書、かな?」
「はい。"ミルキーウェイ"、"照破・天空穿"………2つの滅竜奥義です。」
「グランディーネがポーリュシカに、教えそびれた魔法を伝えていたみたい。」
「なるほどね………じゃあウェンディはキッカケの1つを掴めた訳だ。」
「はい!!」
だがポーリュシカに訪ねて収穫があったのはウェンディのみ、他はスタートラインから動けていない。
「………まぁ、飲むだけで強くなる薬なんてそう都合良くは無いよね。あったとしても代償とか怖いし。」
「ならどうするのよ?他にあるとしたら………え、竜の生き血を飲むと強くなる、って何かの伝承で読んだような………」
「………それは冗談だよね?冗談って言ってくれないといくらルーシィでも………」
「冗談に決まってるわよ。」
心の底からホッとした表情の後、リュークは広げた資料をまとめながら答えた。
「となると、"正攻法"で行くしか無いよね。」
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「………ねぇ、ルーシィ。」
「なぁに、リューク。」
「俺達、合宿に来たんだよね?」
「そうだよ?それが今更どうしたの?」
7年のブランクを取り戻し、他の魔導士を追い抜く。それには近道を探すよりも正直に特訓するべきと言う結論に至り、天狼組はいくつかのグループに分かれ特訓を開始した。その中でリュークや最強チームは、ジュビアとシャドウ・ギアの3人を加えアカネビーチでの海合宿を敢行した。
「………何で俺達はバレーをやってるんだ?俺達が出場するのってバレーの全国大会だっけ?」
「違うわよ………訓練は午後から、午前中は目一杯遊ぶって話だったじゃん。」
「………だよね。いや魔法がバカスカ飛んでたから混同してるのかと思って。」
だがメリハリは大切、まずは遊び尽くそう!!となり海と砂浜で遊び倒した一行はビーチバレー大会を行っていた。しかしここで物言いが発生した。
「おいちょっと待て!!それはズルじゃねーのか!?」
「ビーチバレーは1チーム2人だろ!!何で6人もいるんだよ!?」
ビーチバレーは1チーム2人が一般的で、この時もそのレギュレーションでやっていた。しかしリュークとルーシィのチームはと言うと、紋章士が召喚され計6人で自陣を守っていたので、対戦相手のジェット、ドロイペアから物言いが飛んで来たのだった。
「そうは言っても魔法ありのレギュレーションだし………こっちの魔法は数の暴力が本質みたいなとこあるし………」
「なのに召喚魔法ダメって言われちゃったらあたし達丸腰で魔法打ち返さないといけなくなるじゃん。ねー。」
「ねー。」
「ルーシィはともかくリュークは違うだろ!!」
「ナツとエルザのハイブリッドみたいな奴が召喚魔法しかないみたいな口振りをするな!!」
『………どうでもいいのでさっさと始めませんか?何で僕がこんなくだらない戯れに………』
『………確かに。俺やディミトリはともかく、セネリオとルフレが選ばれたのは何でだろうな。』
『………何でだろうねクリス、あまり深く考えるな、と言われてる気がする。』
『まぁたまにはいいじゃないですか。やるからには………全力で行きましょう!!』
紋章士セネリオ、紋章士ディミトリ、紋章士クリス、紋章士ルフレを顕現し、インドアバレーさながらの6人で挑んたリュークとルーシィ。
「お願いします!!」
『そこ………です!!』
『でやあっ!!』
リベロの役割を担ったリュークがジェットの攻速サーブを受け止めると紋章士セネリオがトス、それを紋章士ディミトリが怪力を活かしたパワースパイクでドロイ諸共吹き飛ばした。
「ゲームセット!!勝者はリューク、ルーシィペア!!」
「「イエイ!!」」
「くっそぅ………!!」
「レビィにいいところを見せたかったのに………!!」
以降の試合も紋章士ディミトリにマークが集まったタイミングで影を潜めていた紋章士クリスが飛び込み攻撃を仕掛けたり、紋章士ルフレのフェイントを織り交ぜた緩急が決まり勝利を重ね、そして。
「決めるんだ、ルーシィ!!」
「えーいっ!!」
最後はリュークの高く上げたレシーブを、セッターを通さずルーシィがスパイクを決めた。
「ゲームセット!!これで全試合終了、優勝者は全勝を収めたリューク、ルーシィペア!!………ペア?」
決勝戦の審判をしたレビィの疑問符をよそにリュークとルーシィはハイタッチした。
「やったぁ!!」
「よし!!俺達の勝ちだ!!紋章士の皆も、ありがとうございました!!」
『久しぶりにこうして身体を動かせて良かった。礼を言うのは俺の方だ。』
『確かに、たまにはこういう身体の動かし方もありだったな。』
『無事優勝できて良かったよ。』
『………二度とこんな事に呼ばないでください。』
優勝した2人は、旅館に戻ってからの夕食におまけが付く事が決定した。
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その後海水浴と昼食を挟んで午後を迎え、それぞれの課題や目標をもとに特訓を開始した一行。
「………準備はいい?」
「いつでも行ける。」
リュークは砂浜でエルザと剣を構え対峙していた。
「よし………フェルト!!」
「ホーッ!!」
フェルトの鳴き声が合図となり、2人は同時に斬り込んだ。
「ふん!!」
「はっ!!」
砂浜と言う足の取られる場所での斬り合い。だが2人の真の特訓はここからだった。
「ホホーッ!!」
「「!!」」
10秒後、再び鳴いたフェルト。すると換装魔法でリュークは長槍に、エルザは戦斧に切り替えた。
「出し負けか………!!」
「はあっ!!」
「そう簡単に、行くか、よっ!!」
武器の相性では最悪のリュークはエルザの戦斧の横薙ぎをバックステップでかわすと、更に後退しながら砂を巻き上げた。
「私に目眩ましは通用しないぞ!!」
「知ってるよ!!」
間合いを取りながら防戦一方のリューク。
「ホホーッ!!」
更に10秒後、もう一度フェルトが鳴くとリュークは弓矢へ、エルザは短剣の二刀流へ切り替えるとエルザは更に接近。
「距離を詰めれば、私の………」
「と、思うじゃん?」
「!!」
長槍に続いて弓矢。ならば距離を詰めたらいけると判断したエルザはリュークに急接近。だが誤算はリュークの弓は至近距離にも対応している"短弓"であったこと。
「避けるか。」
「これならどうだ?」
「なんの、"近距離連射"!!」
矢を番える間に連撃を仕掛けたエルザだがその攻撃は、予め連射の用意ができていたリュークの戦技によって阻止された。
「ホホーッ!!」
「「!!」」
10秒毎のフェルトの鳴き声。その度に異なる武器種へと切り替え、相性の良し悪しに関わらず10秒間戦い、10秒経ったら更に別の武器種へ持ち替えそれで戦う。
「「はっ!!」」
リュークとエルザはどちらも刀を選択すると即座に居合斬りを繰り出し、刃は互いの首元で止まった。
「………相打ち、引き分け、と言ったところか。」
「僅かにエルザが早かったのを、踏み込みで補ってトントンか。少し休憩してから仕切り直しだね。」
それをどちらかが一本取るまで続ける。換装魔法に必要なスピードと判断力、そして武器の相性に左右されない技術や対応力を鍛える為の特訓だった。
「しかし純粋な斬り合いだとこちらが押され気味だね。」
「当たり前だ。私は換装魔法一本でやっているんだ、"器"が違うとは言えどもそこで負けていては立つ瀬が無い。………それにしても。」
「?」
「意識してから剣を交えると、初めて剣の使い方を教わった時の事を思い出す。」
「………ああ。まぁ、そりゃあそうさ、同じ人から教わってるんだから。」
リュークは休憩終わりと言わんばかりに立ち上がり、再び剣を構えた。
「なら改めてウチの剣術習うか?今なら二番弟子の座が空いてるよ?」
「いいや、遠慮する。欲しいモノは目で盗んでみせるさ。」
「そうか。それはそれとして、明日以降ウチの一番弟子の剣は見てやって欲しい。今は魔力を上げる特訓をやってるけど、武器戦闘の特訓もしたいと言ってたからね。」
「了解した。では………再開しようか。」
「次は一本取らせて貰うよ。」
こうしてしばらくの間打ち合いを続けた2人。気付けば夕方になっており、そこで1日目の特訓は終わった。
==========
「しっかしボロい宿だなー。」
「そうか?俺は風情があっていいと思うけど。」
日が暮れ、予約した旅館に戻った一行。ナツがボヤく程ボロい訳では無いが、古い安宿なのは事実であった。
「前泊まった所はもっと豪華だったじゃん。」
「あれは元々ロキが女の子誘う為に取ってたリゾートホテルだからね。目的が違う。」
「どのみち、今のウチの懐事情じゃあそんな所は無理だ。」
「そんな事よりメシだメシー!!」
食事を楽しみにしていたドロイを先頭に、宿の浴衣に着替えた男性陣は食事部屋へ向かった。
「「「なぁ………っ………!?」」」
「どう言う、事だ………!?」
「………ハァー………。」
襖を開けてお披露目となったのは"惨状"。
「誰だよ………」
そしてグレイが叫んだ。
「女達に酒を飲ませたのはーーー!!」
部屋に転がるは10本以上の空の一升瓶。その中身の行き先は、"惨状"の元凶のお腹の中。
「足りん!!酒が足りんぞ!!」
「目が………めがまわりゅ〜………」
「グズッ………ウェンディ〜しっかり〜………!!」
「ねーねージュビア、あそぼ〜よ〜。」
「アッハハハ、たっのしーっ!!」
見事なまでに酔っ払っている女性陣。浴衣がはだけてはしたない事態になっていようがお構い無しである。そのカオス極まる惨状に、男性陣は自分達の分の料理まで食べられている事が気にならないくらいに開いた口が塞がらなくなっていた。
「………ルーシィだけじゃ無いのかよ。」
ため息が止まらなくなったリュークはちらと部屋を見回した。
「こぉらっ!!ちゃんと走りなさい!!アンタは馬なのよ!!」
「オイラはネコだよ………」
「………
リュークの予想通り、フェルトは部屋から逃げ出していた。どこへ逃げたのか。
「ふふっ、そうなのですね。」
「ホホ、ホホーッ。」
幽霊として様子を見に来た初代マスター、メイビスと屋根の上で他愛も無い話をしていた。
「………で、どうするのこれ?」
「クソ面倒くせ………あだっ!?」
愚痴るグレイに飛んで来た空の酒瓶。
「何をボサッとしているんだグレイ………酒を注げ………さもなくば酒を注げぃ!!」
「エルザさんダーメーでーす!!グレイ様はジュビアの、ジュビアのものなんですー!!」
「ええい離さんかっ!!」
怒り上戸に絡み酒のコンボをグレイにかますエルザに、グレイは自分のものだと泣きじゃくる泣き上戸のジュビア。
「………じー………」
「………。」
「じー……………」
「……………。」
その頃、よろよろとリュークに近づいたルーシィは彼の事をじーっと見つめ始めた。そしてしばらく見つめ合っていると。
「あー!!リュークが2人いるー!!うわーい!!」
「ルーちゃん、リュークが2人いるわけ………できなくもないのか、あはっ、あっはははっ!!」
「………ジェット、ドロイ。レビィって飲むとああなるの?」
「いや初めて見たよあんなレビィ。」
「チームで飲む事はあったけどあんだけ飲んだ事は無いからな。てゆーか何でリュークは冷静なんだよ。」
「そりゃあ3回目にもなればね………」
「ねーねーあそぼーよー!!」
「どわあっ!?」
ルーシィに引っ張られた挙句バランスを崩し押し倒されたリューク。これがきっかけとなり男性陣は次々と魔境に引き摺り込まれた。
「さぁさぁグレイ様、お一つどうぞ。」
「ち、ちょっと待て、おい………」
「グレイ様のいじわる………グスッ、ジュビアの水着はちゃんと見てくれなかったし、ジュビアのお酒も飲んでくれない………だったら、グスン、いっそジュビアを飲んで〜!!」
「誰かーッ、助けてくれー!!」
半溶けになりながらグズるジュビアの身体に沈み始めるグレイ。
「全くだらしがないな!!座れ!!」
「もう座ってます………!!」
「正座だ。」
「もう正座してます………」
「ええい、口答えするな!!」
「「ヒィ〜〜〜ッ!!」」
怒り狂うエルザに理不尽な説教を受けるジェットとドロイ。
「アッハハハ、ヒック、ルーちゃん大胆!!」
「………他人事だと思って………」
「そのまま"ちゅー"しちゃえ!!」
「なっ、いきなり何を………」
「んー。」
「待てバカ、本気にする奴がどこにいる!?クソ、何で酔ったら力強くなるんだよ!?」
「……………。」
ただ1人無事のナツは呆然と惨状を見ていたがついに叫んだ。
「ダーーーッ!!これは妖精の尻尾存亡の危機だ!!男共集まれ、作戦会議だ!!」
この惨状を何とか収めないといけない。そう決起したナツ。
「いい?あんたはロバよ、ロバなのよ!?」
「あい………」
「グレイ様………好き好き〜。」
「やめろー!!俺まで溶けるー!!」
「おのれどこ行った!?」
「足下で………」
「死んでます………」
「………おいおい。」
だがハッピー、グレイ、ジェット、ドロイは動けず。ナツは頭を抱えそうになりながら、まだ解決策を出せそうなリュークの方を見た。
「………!!」
ゲラゲラと笑い転げるレビィの横でルーシィに押し倒され、キスを迫られているのを抑えながらリュークは必死に口をパクパクさせて何かを伝えようとしていた。
「(ムリ)」
「………。」
「(ム★リ)」
「……………全滅、だと?」
膝から崩れ落ちたナツ。すると彼の目の前に1枚の丸まった紙切れが飛んで来た。
「ん………?」
紙切れを広げるとそこにはリュークの筆跡で指示が書かれていた。
「きったねぇ字………えーと、"ウェンディをひなん"?」
リュークを見ると、彼はルーシィを抑えながら「ウェンディの方を見ろ」と言わんばかりに首を動かし、目配せをした。
「………ああ。」
「きゅ〜〜〜………」
「………生き延びろよ。」
ナツは目を回して大の字で転がっているウェンディを拾い上げ、カオス極まる部屋から脱出した。
「(………さて、どうしたものか。ルーシィは3回目だから何とかなるにしても………)」
すると、上から押さえつけてくるルーシィの力が弱まった。
「ねぇ………あたしの事、嫌いになったの?」
「はい?」
目を潤ませ、少しだけ不機嫌そうにルーシィはリュークに迫った。
「さっきからこっちを見てくれない、余所見ばっかり、ちゅーも拒否された………」
「………悪いけど、こんなカオスの中でファーストキスは嫌だってだけだよ。」
「それだけ?」
「それだけ。」
ようやく手を離したルーシィ。それによりリュークはようやく起き上がれたが、まだ彼女は彼を逃がすつもりは無い様子。
「じゃあ証明してよ。リュークのいつもの言葉がウソじゃないって。」
「……………はぁ。」
面倒な事になったな、と言葉を心の中に押し込んだリューク。
「(俺が奥手のヘタレなのは、認めるけどさ………)」
はぐらかすのはダメそうと判断したリュークはズイッとルーシィに接近。
「ん………。」
「!?」
反応できる前にリュークはルーシィの首元まで顔を近づけ、そこにキスをした。
「………!?」
「
「……………ほぇっ?」
「………わお、大胆。」
まさかの行動にルーシィは放心状態、レビィもゲラゲラ笑うのをやめていた。
「………さて、それじゃあ俺は先に風呂入ろうかな。せっかくの露天風呂だし、騒がしくなる前に堪能しないと。」
そう言い残し、リュークは先に食事部屋を後にして浴場へと向かった。
==========
「………やべ、のぼせたか?」
先に露天風呂に浸かっていたリューク。しかし早々に火照って熱い感覚があった。
「………いや酔っ払ったな。場酔いだ場酔い。そうでなきゃ、"あんな"事しないって………」
さっきの事を思い出し首をブンブンと横に振るリューク。
「……………。」
そのまま風呂の中に身を沈めたリューク。誰もいない中で静かに浸かっている内に心が落ち着くと、彼はふと空を見上げた。
「………星空。」
日が暮れ、太陽の代わりに夜を照らすのは満天の星空。
「………ここで歌の1つでも詠めたらオシャレだよな。」
誰もいない露天風呂に、静寂に包まれた中、星空で一句詠もうとしたリューク。
「……………。」
早い段階でお目当ての星を見つけた彼だが、そこからが難航した。
「………こぐま、極星、北辰………うーん、しっくり来ないな。」
自分が一番好きな星を真っ先に見つけ、選んだはいいものの、そこから繋がらずうんうん唸り始めたところで、塀の向こうから聞き慣れた声によって静寂が終わりを告げた。
「………酔いが醒めてるといいけど。」
酔っ払ったままで入ったが為に足を滑らせたり溺れたりしないよな、と一抹の心配を抱えるも、これ以上聞き耳を立てるのもなと塀の向こうへ向けていた意識を戻すと、自分の入っている男風呂の方にも人が入って来たのに気づいた。
「………んん?」
入って来たのは男性陣、しかし様子がおかしかった。と言うのも"騒がしい"が人の形をしているような連中が無理に気配を隠そうと息を潜めながら動いているのだ。
「さっきは散々ナメた真似をしてくれたな………!!」
「見せて貰うぜ、スッポンポン!!」
「ま、お約束だしな………」
「それより腹減ったぁ………」
合宿の温泉ではお約束ののぞき。
「……………。」
今までなら「勝手にやって手痛いしっぺ返しでも食らうがいい」くらいのスタンスで、参加も咎めもしない程度のリューク。だが今回は事情が違った。
「おやおや皆々様方、お集まりのようで。」
「おっ、リュークも参、加、す………?」
のぞきを敢行しようとしたナツ、グレイ、ジェット、ドロイ。リュークに声をかけられ振り向いた4人の表情は、リュークの顔を見て一変した。
「………で、誰をのぞくつもりか、聞かせて貰おうか。」
「「ヒィッ………!!」」
「「ま、待て、話せば………」」
「問答無用!!」
ブチギレたリュークを見た次の瞬間、4人に"ギガサンダー"の雷が落ちた。
「やれやれ………今ので完全にのぼせた。先にあがるよ。」
頭に血が上ったからかのぼせ気味のリュークはそのまま露天風呂を去り、さっさと着替えた。
==========
「ぷはーっ。」
風呂から出たリュークは宿の共用スペースでラムネを手にしていた。
「牛乳と迷ったけど、火照った身体に炭酸がしみる〜。」
「ホー。」
「そう言えばさっきはどこにいたんだ?」
「ホホー。ホー。」
「そんな事より一口ちょうだい?どうやって飲むのって話と、そもそもフクロウって炭酸飲んで大丈夫なの?」
いつの間にか帰って来ていたフェルトをいつものように頭に乗せてソファで寛いでいたリューク。
「じゃああたしが一口貰うね。」
「あ。」
すると後ろからヒョイとラムネの瓶がひったくられた。
「ぷはーっ、生き返るーっ!!」
「………随分大きな"一口"だこと。」
ルーシィはラムネをぐいっと飲んでから瓶をリュークに返した。だが帰って来た瓶に半分程入っていた中身は空になっていた。
「それで、なんで首を抑えているんだ?首痛めたのか?」
「誰のせいだと思ってんのよ、誰の!!」
顔を真っ赤にしながら片手で首を抑えていたルーシィ。だがリュークはからからと笑った。
「とんと記憶にありませんなぁ。げに恐ろしきはお酒の魔力哉、と。」
「ゔーーーっ、全部分かって言ってるーーー………!!」
「大勢の前で恥ずかしい思いをしたのはお互い様だから、ここはおあいこと言う事で。」
「むーーーっ。」
納得のいかない態度のルーシィはむくれ顔のまま隣に座った。
「………で、酔いは醒めた?」
「………おかげさまで。」
「しかし全員弱いとは思わなかった。カナ以外あまり飲んでるイメージは無かったけど、ここまで弱いのが集まるとは………」
「どうにか強くなる事はできないかなぁ。」
「基本は遺伝って言うからね、カナみたいなウワバミになるのは無理だろうね。」
「そっか………ところでリュークは強いの?」
「………さぁ?そもそも酒をあまり飲まないと言うか、甘味の方が好きと言うか………」
「何よ、限界を知れって言うクセに自分の限界を知らないなんて。」
「………俺の正体忘れてない?」
「?」
「酔って暴れ回る竜を、君達は抑えられる?」
「あ。」
「………戻って来てから俺は、人と生きる為に意識的、無意識的の両方でかけてた"リミッター"を外す特訓をしている。そんなのが竜になって今日の君達と同じノリで暴れたらどうなるでしょうか、お答えどうぞ。」
「生意気言ってすみませんでした。」
「………まぁ今日の事は切り替えて、明日からまた頑張ろう。お酒は控えるように。」
「うん、気をつける………それじゃ、戻ろう。」
「そうだね。」
こうして合宿1日目が終わった。尚、予算の都合大部屋を借りた一行は襖またはカーテンで男女を分けて寝る予定だったのだが、2人が戻ると何故か3つに分けられていた。何故3つかと言うと、
「「「「ごゆっくり〜。」」」」
「「……………」」
男女に加えて2人分の布団が敷かれたスペースがあり、リュークとルーシィは問答無用でそのスペースに割り振られたのだった。
「何と言うか、余計なお節介ね………」
「なんか、「ジュビアがグレイ様と………」って聞こえる気がするけど、新手の幻聴だよね?」
「………寝ましょう。明日も特訓だし。」
「それじゃ、おやすみ。」
消灯後、疲れも溜まっていたからかスッと眠りについた2人。翌朝、起きて早々に仲間達から、
「何も起きなかったので期待外れだ。」
などとボロクソに言われ、
「「解せぬ。」」
と声を揃えたのは余談である。
続く
と言う訳でまずは合宿回でした。今回は特に新要素がある訳じゃないですが、その分遊びました。
・リュークとポーリュシカの関係
普通に人間判定でアウトです。竜族とか関係無いレベルでリュークが人間過ぎます。
・ビーチバレーネタ
いけしゃあしゃあとインドアバレーを始めるリューク、ルーシィペア。召喚した紋章士はまぁ中の人ネタです。それだとセネリオがセッターでディミトリがスパイカーなのは逆かもしれませんが、セネリオは飛び跳ね回ってるよりもセッターの方が似合うし、ディミトリもセッターよりも怪力でスパイクぶち込んだ方が合ってるのでこうなりました。
尚リュークの食事に付くハズのおまけは酔っ払った女性陣が食べてしまっているのでリュークはありつけていません。
・リュークの好きな星
北極星です。いつの夜でも輝いて旅の標となる"導きの星"である点が気に入っています。
次回は星霊界行くのと