これからも頑張りますのでお付き合いいただければと思います。
マグノリアから列車でしばらく行き、峡谷を越えた先にあるクローバーの街。そこでは地方ギルドマスター連盟の定例会が行なわれようとしていた。連盟に加入している妖精の尻尾からも当然、マスターのマカロフも参加するのだが、今回はその付き添いとしてリュークも同行していた。
「そう言えば最近のルーシィの調子はどうじゃ?」
「だいぶ仕事の流れは掴んだみたいですね。頭のキレや咄嗟の判断力には長けているみたいで、飲み込みも早いですが好奇心や謎の度胸に振り回されてるのが欠点、という所ですかね。」
「真面目じゃのう。もっとこう、浮ついた話は無いのか?」
「何を期待してるんですかマスターは………ついでに言っておきますと色んな意味であまりにも危なっかし過ぎてそんな感情抱く暇無いですよあの子。」
「面白く無いのう………もっとこう、ガキ共の青春を肴に酒を飲みたいのじゃが。」
「変な事言ってないで、会場に着きましたよ。」
定例会の会場に到着したマカロフとリュークは会場内へと歩を進めた。
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その後しばらくして定例会は恙無く終わり、マスターやその同伴で来た魔導士との交流会を兼ねた立食パーティが開かれたのだった。
「あら〜♡、この子がウワサの"青燎"ちゃんかしらマカロフちゃん?」
「そうじゃ、ボブ!!こいつがリュークじゃ!!」
「そうなのね〜♡ウワサからどんな子が来るかと思ったら随分と可愛い子じゃないの♡」
「だがのんびりしているようで中々の魔力を持っている。よくもまぁこんなのが眠ってたな。」
「お褒めに預かり光栄です、マスター・ボブにマスター・ゴールドマイン。」
リュークは日本酒を何合も飲み完全に酔っ払っていたマカロフと、マカロフと交流のある
「それに聞いたわよ、どっかの権力者をコテンパンにしたって。」
「おーっ、それは新入りのルーシィじゃ!!あいつはいいぞ、特に乳がいい!!」
「きゃ〜エッチ〜♡」
「………マスター………」
「元気があるのはいいが、テメェんとこはちょっとやり過ぎじゃないか?評議員の中にはいつか妖精の尻尾が町一つ潰すんじゃねぇかって懸念してる奴もいるらしいぞ。」
「いやぁ、耳の痛い話です………」
ゴールドマインの忠告は尤もで、実際評議員にはこのような考えをする者は少なからずおり、その中には妖精の尻尾を取り潰すべきと声をあげる者もいる。しかし、そんな忠告は酔っ払ったマカロフには馬の耳に念仏であった。
「うひょひょ、潰されてみたいのぉ〜ルーシィのおっぱいで〜!!」
「マスター、それはライン越えてますよ。」
「もう、自分トコの魔導士に手ぇ出しちゃダメよ♡」
そうしていると、ギルドから手紙が届いた。
「マカロフ様、ミラジェーン様からお手紙が届いてます。」
「ん?」
マカロフが手紙を開くと魔法でミラの姿がホログラムのように浮き上がった。
「マスター、定例会ご苦労様です。」
「どうじゃ、こやつがウチの看板娘じゃあー!!どうじゃめんこいじゃろ〜〜ぉ!!」
「マスター………」
ミラの姿が映る手紙を周囲に見せびらかし、自慢げに笑うマカロフ。しかし、その笑みは手紙の続きを聞き消えた。
「実はマスターが不在の間とても素敵な事があったんです。なんと、エルザとナツとグレイがチームを組んだんです。もちろんルーシィとハッピーも。」
「何!?」
「は?」
「ね、素敵でしょ?私が思うに妖精の尻尾の最強チームができたと思うんです。一応報告しておこうと思ってお手紙にしましたー♡それでは〜。」
「「……………」」
ミラからの手紙を聞き終わったマカロフとリュークは瞬く間に冷や汗をダラダラと流し始めた。そして酔いも完全に覚めたマカロフは地面に倒れ、リュークも臨戦態勢かと思う程に雰囲気を変えた。
「な、なんてことじゃあ………本当に、町一つ潰しかねん!!」
「………すみません、通信用
リュークは会場にあった通信用魔水晶を借り、ギルドに通信をかけた。
《はーい、こちら妖精の尻尾です………ってあらリューク、おつかれさま。手紙は届いたかしら?》
「ミラ!!エルザ達はどこへ向かった!?」
《エルザ達?うーん、詳しい事は分からないけど、マグノリア駅から列車に乗って行ったわ。確か………そうそう、ちょうどクローバー方面に乗って行ったらしいわ。》
「………分かった、ありがとう。」
通信を切ると、リュークはすぐに支度をした。
「マスター、ちょっと行ってきます。」
「うむ………頼む、最悪の事態になる前に止めてくれ………!!」
「はい!!」
そう言うとリュークは急いで会場を出て、換装魔法で魔導二輪を出しながら紋章士の指輪を掲げた。
「
顕現したのは白馬の王子様を彷彿とする出で立ちの紋章士。紋章士の中でも一番の機動力を誇る者。
『紋章士シグルド、ここに。』
「
『承知した。』
魔導二輪に魔力を流し込み、走り出したリューク。そして魔導二輪が最高速度に乗ったそのタイミングでリュークは再び紋章士の指輪を掲げた。
「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」
紋章士シグルドと"エンゲージ"したリューク。スキル"迅走"により機動力を格段に上げたリュークは瞬く間にクローバーの駅から線路に入り、マグノリア方面へと激走した。
『とりあえずは峡谷を越えた先のオシバナ駅まで行くよ!!後の事はそこで考える!!』
依然最高速度を保ったまま、リュークは峡谷に架かる線路を走り抜けた。
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「ん………?」
しばらくして、峡谷を抜けたリュークはシグルドとの"エンゲージ"は時間経過で解除されたものの"シンクロ"は維持したままオシバナ駅の目前まで来た。しかしオシバナ駅には何やら異常事態が発生しているのが見て取れた。
『何かが起きているようだな。さて、ここから君はどうする?』
「そのままホームに突入します。………こういう騒ぎの真ん中にはあいつらもいる気もしますし。」
『分かった。十分時間が経ってるから再度の"エンゲージ"も可能だ、私も他の紋章士も準備はできている。』
「了解です!!では、突入!!」
魔導二輪のギアを変え、飛行モードに切り替えたリュークは線路からホームへと飛び上がり、顔馴染みの魔導士が武装した集団と睨み合っているその中心に着地した。
「やっぱりか。」
「もう一人!?」
「リューク!?」
「エルザ、状況説明!!」
「
「………後で詳しく!!」
暗殺依頼ばかり受けていた事で破門となった闇ギルド鉄の森。そのリーダーである死神"エリゴールが集団呪殺魔法"呪歌"を使用しようとしているのが今の状況であった。それをエルザの簡潔な言葉で何となく理解したリュークは迷わずアーチャーに"クラスチェンジ"して"キラーボウ"を取り出すと天井付近に鎌を持って浮かんでいたエリゴールを狙った。
「おっと。」
だが、リュークの一射目はエリゴールの風魔法で打ち落された。
「………!!」
「何度狙っても同じだ。」
リュークは諦めず、矢を手元でくるくると回してから弓に番え、もう一射放った。それに対してエリゴールは再び風魔法で矢を打ち落とそうとしたが、今度の一射はエリゴールの風を貫通し、エリゴールの肩に命中した。
「ぐあっ!?」
「風を貫く"月光"の矢、よく効いただろ?」
貫通力の高い"キラーボウ"に、守りを貫く奥義"月光"を合わせて矢を命中させニヤリと笑ったリュークに対してエリゴールは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ちっ………これ以上"計画"を邪魔されては困る、やれ。」
「!!」
エリゴールの指示で、複数の鉄の森の魔導士が武器を構え向かって来たが、そこに剣を構えたエルザが割り込み、撃退した。
「助けは不要だったか?」
「いいや、助かる。」
「ナツ、グレイ!!エリゴールを追いかけろ!!」
「「あいっ!!」」
普段は仲が悪くケンカばかりのナツとグレイだがエルザの一声で肩を組み、肩を負傷したままホームから離脱したエリゴールを追いかけた。
「リューク、敵の数は?」
「フェルトはおするばんしてるから正確な数は分からないが………ナツとグレイを追いかけた奴を抜いて、大体50ってところかな。幸い、大した使い手はいない。」
「ならば大丈夫だな。」
エルザが換装魔法で剣を出したのと同時にリュークはアーチャーへの"クラスチェンジ"を解除して"鋼の剣"を出し、更に紋章士の指輪を掲げると鎧姿の紋章士を顕現した。
「
『シグルド殿の言った通り、こちらは準備完了している。』
「では、お願いします!!」
リュークとエルザ、そして紋章士リーフが剣を構えたのを見て鉄の森のメンバーも動き出した。
「換装魔法か、へっ、魔法剣なんざ珍しくもねぇ!!」
「その人数で何ができる!!」
「女は生かしておけよ!!」
鉄の森のメンバーの中で剣を扱う者が一斉にリュークとエルザに斬り掛かった。
『好きにはさせない!!』
それに対し紋章士リーフが"マスターランス"を敵の剣士達の中心に投げ、隊列を崩した。それがリュークとエルザが斬り込む合図だった。
「そこだっ!!」
「はあっ!!」
リュークは武器を"鋼の槍"に切り替えて相手の射程外から薙ぎ払い、エルザは素早い身のこなしで敵の中に切り込んで次々と剣士達を倒した。
「ちっ、なら飛び道具だ!!」
剣士をあらかた倒したリュークとエルザに今度は遠距離魔法を放とうとする敵が複数現れた。だが二人は全く動じず、リュークは"長弓"に切り替えて狙撃し、エルザはリュークよりも早く武器を長槍に換装し薙ぎ払った。
「やっぱり換装の早さはエルザには敵わないか。」
「お前と違って私は換装一本でやってる。そこで負けていては私の立つ瀬がない。」
「そう言われて引き下がるのも面白くないからね、そろそろギアを上げるとしようかな。」
「望むところだ、一掃する。」
「リーフ!!」
『任せてくれ!!』
「『"エムブレム・エンゲージ"』!!」
「換装、"天輪の鎧"!!」
リーフと"エンゲージ"したリュークと、"天輪の鎧"を身に纏ったエルザ。ここで二人は勝負を決めに行った。
「"
まずはエルザが頭上に浮かんでいた剣を周囲に走らせ、周りの敵をまとめて撃破。
「ちょっと待て、今エルザって言ったか………?まさか、妖精の尻尾最強の女、"
「くそっ!!だったら遠距離で………ぐわっ!?」
『させるものか!!』
"光の剣"による光魔法でエルザへの遠距離攻撃を防いだリューク。だが、今度はリュークの背後を狙い長物を持った敵が殺到。
「"妖精女王"は後回しだ、まずは男の方を殺せ!!」
『俺は、逃げない!!』
それに気づき、振り向いたリューク。するとその手にあった"光の剣"は"キラーアクス"に変わっており、一振りで纏めて敵の長物を叩き落とすかへし折った。そして追撃で無防備になった敵を纏めて薙ぎ払ったのだった。
『はああっ!!』
「「「ぐわああっ!?」」」
『次は、そこだっ!!』
再度振り向いたリュークは"キラーアクス"を投擲する態勢に入ったがその瞬間、"キラーアクス"は"マスターランス"に切り替わり、遠くの相手に真っ直ぐ飛んで行き仕留めたのだった。瞬時に有利な武器に切り替えるスキル、"即応"の効果でエルザに負けない超速の武器の切り替えに鉄の森は対応できずその数をどんどん減らした。
「これで終わりだ!!"循環の剣"!!」
『"テトラトリック"!!』
複数の剣を円形に舞わせたエルザと、様々な武器を五月雨式に繰り出すリュークのエンゲージ技が決まり、鉄の森のメンバーは逃げ出したわずかな者を除いて全員倒したのだった。
「ルーシィ、逃げ出した奴を追え!!」
「え、ええーっ、あたしが!?」
「頼む!!」
「はいいっ!!」
ルーシィを睨みつけて逃げた者を追わせたエルザは換装を解いたが、その表情には若干の疲労が見えた。
「……………。」
『大丈夫か、エルザ?魔力使い過ぎてないか?』
「大丈夫だ。それよりも、駅の周りにいる市民を避難させなければ………!!」
『あっ、もう行ってしまったか。詳しい事聞きたかったんだが………』
そう言ってエルザはホームから駅の入口へと走って行った。リュークはそれを追いかけようとしたが踵を返すと"光の剣"を出し、光の斬撃を飛ばした。
「ぐはあっ!?」
『狸寝入りとはね。ただ、永眠したく無ければ降参するんだな。』
「ぐ………くくっ。」
『何がおかしい?』
「そろそろ、エリゴールさんの"魔風壁"が発動する………俺達の勝ちだ。」
『"魔風壁"………?まさか!!』
リュークは急いでホームを後にし駅の外を見た。すると、駅は壁のように行く手を阻む暴風に包まれていた。
『エルザ、これは!?』
「くそっ、エリゴールにしてやられた!!奴の目的はこの駅ではないのか!?」
『………!!』
リュークは直ぐ様引き返すと、先程の鉄の森のメンバーが逃げようとしていたのを発見した。
『逃がすかぁっ!!』
「ひいっ!?」
"マスターランス"を目の前に投擲し、メンバーを止めたリュークはリーフの"エンゲージ"が解除されたのも構わず"鉄のナイフ"を首元に突き付けた。
「エリゴールの目的は何だ、言え。」
「へっ、言う訳………」
「状況を分かってないらしいな。」
「ひ、ひいっ………!!」
「……………。」
「え、エリゴールさんは、"粛清"を果たす。俺達の仕事と権利を奪い、虐げた老いぼれマスター共を纏めて呪殺し、復讐を………!!」
「そうか。よく分かった。」
「がっ、は………」
聞きたい事を聞いたリュークはメンバーの鳩尾にナイフを持っていない方の拳をめり込ませ、意識を刈り取った。
「狙いはクローバーの街、定例会か………!!くそっ、油断していた………!!」
オシバナ駅はブラフで、エリゴールの本当の目的はクローバーの街の定例会である事を知ったリューク。だが、知っただけでは足りない。
「(シグルドの"オーバードライヴ"かセネリオの"ディザスター"、もしくはカムイの"竜穿砲"………いや、確実性が無いし、そもそも次の"エンゲージ"までインターバルが必要だ………どうする!?)」
続く
あまり登場する紋章士に偏りは出したくないですが、それでもシグルドは機動力強化があまりにも便利過ぎるので出番多そうな予感。味方に渡すとアホ程便利で、敵に回すとバカ程厄介でしたね………
・リュークとエルザの換装スピードについて
基本的にはエルザの方が速いです。換装魔法専門のエルザと、そうでないリュークの分、差がついてます。
例外としては紋章士リーフです。エンゲージスキルの"即応"があればエルザと大体同速での換装が可能ですし、そもそも紋章士リーフの特性が"幅広い武器種を使い分けて戦う"なので"シンクロ"状態でも他の紋章士と"シンクロ"や"エンゲージ"している時よりも換装スピードは速いです。
まとめると、
エルザ≒リューク(リーフと"エンゲージ")>リューク(リーフと"シンクロ")>リューク(他の紋章士と"シンクロ"or"エンゲージ")≒リューク(素の状態)
となります。