結果発表ォォォーーーッッッ!!(CV某ヤドキング風)
(括弧内は属性と武器予想)
男性1位 シグルド (赤、新型ティルフィング)
男性2位 シルヴァン (青、破裂の槍)
女性1位 つばさ (緑、原作の風魔法からどれか)
女性2位 アクア (無、魔法………なのか?)
印象としては、久しぶりに順当な結果だな(ただし男性3位のフォデス、お前だけは認めないからな?と言うか何故こんな人気なん?)、と言うのど#FE票が凄まじかったなと言う印象です。
武器予想ですがアクア以外はこれで決まりじゃないですかね、ただアクアは赤以外満遍なく色々持たされて実装されてるので属性以外の予想のつけようが無い(笑)
そしてシャドウズ杯も3級長に並んでつばさが選ばれましたね。一瞬「え、つばさの闇堕ちOKなんだ」と思いましたがそもそも闇堕ち展開をギリギリで乗り越えたが故のカルネージフォームでしたね。アレだ、多分インバースみたいになりゃ解決か。ロボ娘カムイの先例があるからアトラス特有のメカメカしい異形も問題無く落とせそうですね。
大魔闘演武1日目が終わった夜。競技パートでは出遅れた妖精の尻尾の2チームだがバトルパートでルーシィの勝利目前の奮闘とリュークの大金星で持ち直して終わったのだった。
「この調子で登り切ってやろうじゃあねぇか、ガキ共!!リュークの言った通り、4日後には全員にワシらの尻尾を見せてやろうではないか!!」
酒場に集まりいつも通りのバカ騒ぎを始めた妖精の尻尾の魔導士達。完勝とはいかなかったが勝利以上の"勢い"を手に入れた事で万年最下位からの脱出を越えて優勝も見える位置にいけた事に喜びながら酒をあおる一同。
「申し訳無いですね、私まで招いていただいて………」
「遠慮は無用ですぞ、アイズ殿。それとも………こう言う騒がしいのはお嫌いでしたかな?」
「野蛮だったら考えますが………こう見えて騒がしいのは好みなんですよ。」
応援席に招かれたままに、宴会にも招かれたアイズはマカロフ、そしてふよふよ浮いているメイビスと盃を交わしながら話していた。
『竜族はもっと静謐を好むものだと聞いていますが………』
「私達の部族が異端なのは事実ですからね。我々ソラネルの民程人間に寄った種族は無いでしょうね………なんせ、変身に必要な"竜石"を紛失した"長寿なだけの人間"から始まった部族ですし。」
店の反対側にいたルーシィの近くから「クシュン!!」とくしゃみの音が聞こえた。だがそれにアイズは気づかず話を続けた。
「そんな"神竜様"や、異界の人間の英雄である紋章士を一種の信仰対象としていた部族ですからね。人間の喧騒の中にいるのが心地良いのですよ。」
アイズの言葉に、意外そうに頷くメイビスとマカロフ。
「我々の部族や昔話がご所望でしたら、また時間を作ってお話ししましょう………部族の語り部の家系で小説家ですから、お話は得意ですよ?」
『竜族の語り部のお話………楽しみにしています!!』
「………ところで話は変わりますが。」
「………リュークの事ですか?」
「ええ。あれほど、何と言うか………"落ち着きが無い"彼は見たことが無いので。」
「………ええ、状況は理解しています。私としてもあれほど焦って、苛ついているリューク様は見たことが無いです。」
「そうでしたか………」
「………それほどの"ナニカ"を、感じたのでしょうね………昨日の、その少女に。」
==========
「どこへ行くつもりかな?」
「!!」
そのリュークはクロッカスの裏路地にいた。その目の前にいるのは黒ずくめの少女。
「先程の戦い、見ていました………勝利、おめでとうございます。」
「はぐらかそうとしても無駄だ。」
「………ただの散歩です。」
「ただの散歩に忍の歩法は不要のハズだけど?」
「……………。」
「"妖精の尻尾の敵になるつもりは無い"………昨日の言葉を信じるならば君の目的は剣咬の虎の魔導士、特に"双竜"のどちらかと言う話になるが………」
リュークはため息をついた。
「詳しく話して貰えないか?」
「へ………?」
思わぬ言葉に変な声が出たマーク。だがそんなものはお構い無しにリュークは続けた。
「ここまで来たら君に手を貸す、と言ったんだ。」
「………どうして………?」
「昨日から変わらないよ。1日経っても答えは出てないが、変わらずに"君は見逃したらダメ"だと本能が告げている。ならば、いっそ騙されたと思ってついて行った方が分かる事もあるだろう、ってね。」
「………!!」
フードの端をキュッと握ったマーク。だがすぐにマークは首を横に振った。
「………ダメです。これは、あたしがやらないといけないんだ。」
「………ならば、交渉決裂だ。」
リュークは"絆剣リベラシオン"を抜いた。
「今まで何人殺したかは知らないけど………君みたいな、まだ幼い子が殺しをするのを見過ごす訳にはいかない。心苦しいが、大人しくしてもらうよ。」
「………!!」
「………全く、何でこうも見ず知らずの女の子に俺はここまで………」
「……………。」
何度目かのため息をつきながら白銀の剣を構えたリューク。
「………ここは譲れない。"アイツ"だけは、ここで殺さないと………!!」
「……………。」
「そこを、どいて!!」
リュークに向かって全速力で突撃して来たマーク。その手にはいつの間にか槍が握られていた。
「(速い………!!)」
「はっ!!」
「ちっ………!!」
昨日と違い、雑念に囚われている訳では無い。ただ、想定される幼さに合わずマークの能力がリュークを凌駕する程の高さであったのだ。
「(やっぱり………!!力も硬さもスピードも、上回っている!!それでいて同じ換装魔法の使い手………このままじゃダメだな。)」
このままただ打ち合うだけでは負ける。そう察したリュークは攻め方を変えた。
「"ランスバスター"。」
槍砕きの剣に持ち替えたリュークは"武器破壊"による武器折りの剣術を交えマークの槍を破壊。
「
「!!」
マークは新たに槍を出すもリュークはその前に彼女の真上に飛び上がっていた。
「"クラスチェンジ"、レヴナントナイト。」
霧の魔竜に騎乗したリュークは"勇者の斧"を手にして、紋章士つばさと紋章士シーダと共に空で態勢を整えた。
「準備はいいですか?」
『いつでも行けるよ!!』
『ええ、羽ばたきましょう!!』
「では………セッションスタート!!」
編隊を組みながら降下したリューク。
「せやっ!!」
「っ………!!」
「もう一撃!!」
「きゃ………っ!!」
リュークよりも能力が上回っているマーク。だがそんな彼女の弱点は、小柄であるリュークよりも更に小さい体格。
「(悲しいかな、"強いチビ"が嫌がる事は自分自身が一番分かってる!!)」
そんな"強いチビ"に対する作戦。それは上から重量を押し付ける事とリュークは判断した。重量のある"勇者の斧"で真上から振り下ろす、そこにレヴナントナイトのスキル"見下す者"が加わり上から押し潰すような攻撃でリュークは対抗した。
「今です!!」
『オッケー!!シーダ!!』
『任せて!!』
「っ、く………!!」
そこに紋章士つばさの槍、紋章士シーダの風魔法の追撃が入りマークは槍を手放し体勢も完全に崩れた。
「眠ってもらうよ!!」
「………!!」
その機を逃さず勝負を決めるべく、紋章士つばさと紋章士シーダの攻撃の間に上空へ飛んでいたリュークは"勇者の斧"をマークへ振り下ろした。
「な………っ!?」
「……………。」
しかしリュークの渾身の一撃は、"勇者の斧"がマークの槍に砕かれた事で失敗に終わった。
「はあっ!!」
「っち!!」
返しの一薙ぎを間一髪で飛び上がりかわしたリューク。だが彼は渾身の一撃を防がれた以上に驚をを顕にする理由があった。
「その槍………!!」
それはマークの手にある槍だった。それはただの槍では無く、しかもリュークが"見覚えのある"槍だった。
「………紋章士を見ても驚かないなとは思ったけど、"そう言う"事ですか。」
『『………。』』
「"マルテ"の槍って事は………ヘクトルですね。」
すると、マークの後ろに青い炎のような魔力が渦巻き、まもなく形を成した。
『悪いな、えっと………マーク。つい出て来てしまった。』
「ううん、助かった………ありがとう、ヘクトル。」
現れた紋章士ヘクトルを見て、リュークは少しだけ得心した表情を見せた。
「"繋がりにくい"紋章士が何をしていたかと思えば………なるほど、マークについていたとは。」
『悪いな。俺やエリウッド達はこいつの"子守"を頼まれてな。』
「………なるほど。1人を除いて人選の法則が見えた。なら昨日の逃げ足の速さはシグルドか。それで………誰の差し金です?」
『悪いが、こいつとの約束で言えねぇな。そこまで分かるお前なら勝手に答えにたどり着きそうだがな。』
「………その言い種、退いてはくれなさそうですね。」
『おう。ついでだ、お前がどれだけ強くなったか見てやる。』
何度目のため息か、数えるのをやめたリューク。
「フェルト。見張りはいい、攻撃に参加してくれ。」
「ホーッ!!」
「"クラスチェンジ"、鍛冶。そしてつばさ、"エンゲージ"行けますか?」
『任せて!!』
「よし。それじゃ………」
「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」
紋章士つばさと"エンゲージ"したリューク。右手にはエンゲージ武器の槍"エセリアルフェザー"を、左手には"手斧"を持って構えるとマークも手にしている武器、"氷雪の槍"の異名を持つ槍"マルテ"を構えた。
『そぉ………れっ!!』
"手斧"を投擲したリューク。それをマークは"マルテ"で難なく弾いたが、そこで響いた金属音が"セッション"の始まりだった。
「ホーッ!!」
『私だって!!』
『貫いてくれる!!』
吹き荒れる風の刃と槍の突き、払い、薙ぎ。それを交互に織り交ぜた波状攻撃で攻め立てるリューク。
『(ヘクトルの"適応能力"を攻略するなら、交互に攻める!!)』
紋章士ヘクトルのスキル"適応能力"は受けた攻撃に応じて守備もしくは魔防を上げるもの。その対策にリュークは物理攻撃と魔法攻撃を交互に繰り出していて、1つの武器でそれができる"エセリアルフェザー"を手に取ったのも自然な流れではあった。
『"マハザンダイン"!!』
「っ………道を、開けて!!」
だがマークは氷の槍でそれを捌き切っていた。
『せやあっ!!』
「はあっ!!」
そしてリュークとマークは槍を直接交えた。だがその競り合いで押されたのはリュークだった。
『(重っ!?ッ、こいつ………!!)』
予想外に"重い"一撃に気圧されかけたリューク。だが土壇場で踏みとどまった彼はそのカラクリに辿り着いた。
『体格の低さを"重撃"で力に変換したか………!!』
「………小柄には小柄の戦い方がある。あたしの………"師匠"はそう言っていました。」
『ハッ………その師匠の顔、ぜひ見てみたいねッ!!』
その時、フェルトが鍔迫り合いの中に割り込みマークの顔に飛びついた。
「ホッ!!」
「わあっ!?」
『よくやったフェルト!!』
元からフードで狭くなっていた視界が白い羽毛の玉に飛びつかれたマークは姿勢を崩し、その隙にリュークは距離を取った。
『これで決める!!"エアリアルダンス"!!』
リュークと紋章士シーダによる縦横無尽の連撃。だがリュークと斬り結べるだけの実力のあるマークが崩れっぱなしとはいく訳も無く、連撃の大半を捌き防いでいた。
『(ウソ!?あれだけ畳み掛けても全然ダメなの!?)』
『いや、多少は入っています!!それに………』
「……………はぁ、はぁ。」
『"本当の弱点"はこっちだったようだ。』
僅かに肩で息をし始めていたマーク。その原因は"エアリアルダンス"のダメージでは無かった。
『やはり幼いね。スタミナとペース配分が能力についていけてない。』
「………!!」
幼く身体が未成熟であるが故のスタミナ不足と、その少ないスタミナのペース配分の拙さ。リュークの本当の狙いは連撃で消耗させ、疲れさせる事だった。
『大人相手に頭で張り合おうとは千年早い。』
「っ、あああっ!!」
『っと、危なっ!!』
声を上げ、"マルテ"を思いっきり薙ぐマーク。だがリュークはその寸前に紋章士シーダに回収され空へと逃げた。
『さて、そろそろ終わらせよう。ありがとうございます、つばさ、シーダ。』
空へ逃げ切ったリュークは懐の"竜石"を手にすると着地しながら"エンゲージ"する紋章士を切り替えた。
『
紋章士つばさから切り替えたのは紋章士ピアニー。
『良い子はもう寝る時間だ。』
「っ!!させ………」
『おやすみ。』
エンゲージ武器の魔道書"スリープ"の一撃を不意討ち気味に放ったリューク。
「う………ず、る………い………」
避ける間も無く当たってしまったマークはたちまち睡魔が襲い、まもなく重い瞼が落ちた。
『よっと。』
そのまま倒れようとしていたマークを受け止めたリュークは紋章士ピアニーとの"エンゲージ"を解除するとマークをおぶった。
「さてと………フェルトもありがとう。」
「ホ。」
『おいおい、呆気ない幕引きだな。もう少し戦ってあげても良かったんじゃあ無いか?』
「ヘクトルが戦いたいだけじゃないですか、それ。」
『そりゃあ、あんな早くに切り上げられたらな。理由を聞いてもいいか?』
「1つは続けてたら俺が死ぬから。俺より能力の高い、ほぼ同じ魔法の使い手………謂わば俺の"上位互換"の奴が
『もう1つは?』
「この子と戦う理由が、疑う理由が無くなったから。」
『……………。』
理由は何であれ、紋章士が力を貸している。リュークにとってその事実は、どんな言葉や態度よりも信用と信頼をおけるものであった。
「ヘクトル、いくつか質問いいですか?」
『どうあれ俺達は敗者だからな、勝者には従うぜ。ただし、答えられる範囲でだがな。』
「分かりました。ではまず確認です。」
するとリュークは紋章士の名前を列挙した。
「パオラ、シグルド、エリウッド、ルキナ、カミラ、ベレト………全員いますか?」
『ああ、全員揃ってるぜ。』
「なるほど………次。さっき述べた紋章士、そしてヘクトルに"ある共通点"を見出していますが、その条件に当てはまらない紋章士が1人います………もしかしてその紋章士、ルキナがこの子と一番深い繋がりを持っている?」
『それも正解だ。ルキナだけはお前が呼びかけても全く反応無い所で気付いたか。』
リュークは頷き、次の質問を問いかけた。
「この子の師匠の顔が見たい、と言ったけど………アーロンの教え子じゃないですか?彼女の師匠。」
『ほう?』
「今日の槍捌きや昨日の剣術を思い返すと、完全にウチの流派でしたよね?」
『………お前、本当はこいつの正体に気づいているだろ。』
だが紋章士ヘクトルの言葉にリュークは首を横に振った。
「いくつか候補は思い浮かんでいますけど………断定をするにはまだ、"足りない"。」
『……………そうか。』
「だけどなるべく早く答えを出してあげたい………正体が分からない事には味方になり切れないですから。」
マークを背負い直したリューク。
「……………ん。」
何やら寝言を呟いたマーク。声が小さく不明瞭だったので何て言ったかは分からなかったが、リュークは誰かを呼んでいたように感じた。
「誰と勘違いしているのやら。ピアニーの力で眠らせたから、幸せな夢を見ているといいんだけど。」
『………。』
「………なんですかヘクトル、その目は。」
『いやぁ、何でも。』
「何でもどころか、全部分かってますよね?」
『まぁな。じゃあ最後に一言伝えておくか。』
紋章士ヘクトルは一拍置いて伝えた。
『俺達は変わらずお前達の味方だ………そしてこいつも、必ず心強い味方になる。』
「………そうですか。」
紋章士ヘクトルとの会話はここで終わった。そのままアンナの店までマークを送り届けたリュークは宿へと戻った。
==========
「〜〜〜♪」
『リネン。ごき、げん?』
その頃。リネンはホクホク顔で鼻歌交じりに宿へと歩いていた。
「そうだね。目一杯歌えて、お小遣いも手に入ったからね………明日の食べ歩きのお金にできる。」
『ふふ………たたかい、そっちのけ。』
「どうせ出番は無いし、やる気があんまりだし。」
「あんな息のつまる"マスター"と、その虎の威を借る狐の名声の為に戦うなんて正直アホらしい。だったら酒場で応援歌の1つでも歌ってた方がうんと有意義。真面目に臨めるユキノが羨ましいよ。」
その理由は剣咬の虎のマスター、ジエンマとの確執だった。実力を買われスカウトされたリネンだが、本人としては旅芸人を辞めるつもりなど微塵も無くむしろ旅芸人の合間にギルドの魔導士として活動したいくらいのスタンスだった。しかしそれが弱肉強食、勝利至上主義のジエンマとはとことん合わなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「くだらん。最強のギルドの魔導士が、旅芸人などと………無益な活動をするな、恥ずかしい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「………思い出すだけでイライラして来た。」
早々に交友関係ができ、親友もできたからギルドに残っているが、そうでなければギルドを抜けているだろう………そう断言できる程、ジエンマとその娘ミネルバとは仲が悪かった。
「………よし!!もうちょっと歌ってから帰ろう!!」
『………ほん、とに、だい、じょうぶ?』
「いいのいいの、補欠枠なんて形だけで出番なんて無いんだから。」
リネンが向かったのは街を横断する水路にかかった橋。
『………あそこ、の、はし?』
「そう、前にも来たけど覚えてる?」
『うん、よく………こえ、が、ひび、く!!』
その橋の下は声の響き方がちょうど良く、かつ人通りも少なく、更に水路に映る夜景が綺麗なのでリネンはクロッカスに来た時の歌の練習場所にしていた。
「………あれ?」
『だれ、か、いる。』
だが今回は珍しく先客がいた。
「あれは………エルザさんと、確か、ミストガン………さん、だったっけ?頭巾の下、あんな顔だったんだ。」
その先客とはエルザと頭巾を外した"ミストガン"、つまり。
「どう言う事だ、ジェラール?」
「理由はいくつか考えられるが………とにかく、その"ゼレフに似た魔力"はまだ感じられない。」
「物騒な魔力を感じないのなら、今の所はいいんじゃないか?」
「だといいがな。」
「『……………。』」
それをリネンと紋章士リアーネはこっそりと見ていた。聞き耳を立てようとしたが2人はは小声で話していて距離もあったので、リネンが聞き取れたのはエルザの相手の名前のみであった。
『………あ。』
「何をしているんだ、リネン。」
「シモン!?しーっ、しーっ!!」
「何だ、どうしたんだ急に。」
「歌の練習をしようと思ったらエルザさんが男の人と密談しているのが見えたんだ。」
「密談?相手はギルドの人間か?」
「そう、ミストガンって人。何かエルザさん、違う名前で呼んでいたけど、確か………」
『ジェラー、ル?』
「そうそう、そんな名前だった。」
「 」
その瞬間、シモンの顔色が一変した。それに気づいたリネンはどうしたのかと聞こうとしたが、その前にシモンはガシッと、荒っぽく彼女の肩を持った。
「わっ!?どうし………」
「その相手の顔は見たか。」
「え?」
「どうなんだ。」
「い、いや………暗くて、よく………」
「ならばそのまま忘れて帰れ。」
「一体急に………」
「今すぐ帰れ!!」
「!!」
「………分かったな?」
「……………。」
『………リネン。かえ、ろ?』
「………分かった。」
「それと、この事は他言無用………特にカグラとミリアーナには絶対に言うな。いいな!?」
「………うん。」
有無を言わせないシモンの圧に押され、リネンは紋章士リアーネと共に踵を返した。それを見届け、シモンは橋の下へ向かった。
「………あまり目立った事はするなよ?」
「分かっている。これ以上ウルティアにどやされたくないからな………リュークが間に合って助かった。」
「無理もするなよ。」
「………ああ。おやすみ、エルザ。」
「うん。」
ジェラールが帰ろうとしたその時だった。シモンが到着したのは。
「待て、ジェラール。」
「「!!」」
エルザとジェラールが動く前にズンズンと迫ったシモンはジェラールの胸ぐらを掴んだ。
「生きていたか、ジェラール。」
「………ああ、みっともなくな。シモンの方こそ、生きていて良かった。」
「貴様ッ、言うに事欠いて………!!」
シモンが振りかざした拳を、ジェラールは避けも防ぎもせず受けた。エルザはシモンを止めようとしたが、ジェラールはそれを静止させた。
「待ってくれシモン!!これには訳が………!!」
「いいんだ、エルザ。シモンには、俺を殴る理由も資格もある。」
「……………。」
だが、シモンは胸ぐらを掴んだまま追撃をしなかった。
「………勘違いするな、俺はもうお前を恨んでいない。」
「………?」
「お前の事は今も許していないし、恐らくこの先も許さないのだろう………だが、俺個人は今更お前に復讐しようだとかは思っていない。」
「シモン………」
「だが、全員が全員俺みたいに割り切れている訳じゃない。妹もミリアーナも、俺には隠してるつもりだろうがお前を必ず殺すと躍起になっている。」
「……………。」
「そして………今さっき、お前が死に追いやったアーロンの孫に顔を見られたぞ。」
「「!!」」
「あいつはまだお前が祖父の仇だと気づいていないし、厄介事になる前に帰らせた。だが勘も鼻も利くあいつなら気づかれるのも時間の問題だ………後は分かるな?」
シモンは畳み掛けるようにジェラールに告げた。
「お前が本当に罪を償うつもりでいるのなら、血を見る前にこの街から出ていけ。」
それを言い切ってようやく、シモンはジェラールから手を離した。
「………忠告、痛み入る。ありがとう………シモン。」
そう告げるとジェラールは頭巾を被り、ミストガンとしてその場を去った。しばらくの沈黙の後、シモンはエルザに謝罪した。
「………すまない、エルザ。」
「シモンが謝る事ではない。あいつは………」
「………何があったのかは知らないが、"赦した"のだろう?」
「!!」
「エルザらしいな。それに、何の事情があるのかは知らないが"あの姿"は他の皆も彼を赦しているのだろう?」
「……………。」
無言で俯くエルザに、シモンは微笑みかけた。だがすぐ真顔になると、話を続けた。
「さっきジェラールに言った言葉は本心だ。俺はジェラールを憎んではいない。」
「シモン………」
「どうあれ俺達は自由を得た。仲間はそれぞれの自由へと進み、俺は妹と再会でき、新たな友も得る事ができた………そして失踪していた仲間や友も帰還した今、復讐を"生きる糧"にする理由が無いからだ。」
「………そうか。」
「だが全員がそう割り切れる訳じゃない。俺の妹、カグラは再会した時には復讐心のあまりに怨刀なるものに手を出していたし、先にカグラと出会っていたミリアーナが同じギルドに入ったのはその復讐心に賛同した面があるからだ。そして一番の懸念は、アーロンの孫だ。」
「………剣咬の虎のリネンの事か。」
「知っているなら話は早い。………あいつは祖父の仇の名前も顔もまだ知らない。5年前に見つけ出して訃報を伝えた時から今まで聞かれても教えてもいないし、カグラとミリアーナにもリネンにジェラールの事は話さないでくれと頼み込んである。」
「………何故許せない相手にそこまでする。」
「俺の偽善と自己満足だ。ジェラールのせいでこれ以上血が流れるのを、誰かの人生が狂うのを、見たくないだけだ。」
「………変わらないな、お前は。いつも周りや私に気を遣っている。」
「もし"万が一"があった時、ジェラールを守れるのはお前だけだ………俺の話は以上だ。」
「重ね重ね感謝する。」
「俺はカグラやミリアーナと同じくらい、お前や妖精の尻尾も応援している。頑張れよ。」
「ありがとう………シモンは無理をするなよ。」
こうしてエルザとシモンは話を終え、それぞれの宿に戻った。
「………そっか。」
橋の上からリネンが聞き耳を立てていた事に気づかず。
「あの男が………おじいちゃんを。」
==========
「ふぁあ………ぁっ」
「ホー。」
「分かってるよ………流石に、人おぶって寝ないって………」
大あくびをしながらマークを送り届ける道中のリューク。
「………随分その子にご執心ね。」
「!!」
声をかけられ振り返るとそこにいたのは腕を組み、ジト目でリュークを睨みつけるルーシィだった。
「あんたに浮気ができるなんて思って無かったわ。」
「……………。」
「………冗談よ。だからそんな困り果てた顔しないで。」
どうすれば良いか分からないような困り顔になったリュークを見るとルーシィは表情を崩した。
「………その子について何か分かった?」
「………この子、マークの目的は剣咬の虎の誰か、多分滅竜魔導士のどちらかを殺そうとしていること。戦闘能力としては体格以外のほぼ全能力俺よりも上で、使用魔法も俺と同じ、さらに流派も同じ系統ときた。そして"繋がりにくい紋章士"は全員この子に手を貸していた。」
それを聞き、今度はルーシィが困り顔になった。
「この子が紋章士を?」
「うん。危うくこの子と紋章士ヘクトルの"マルテ"で差し貫かれるところだった。」
「"マルテ"………神将器の槍、って事はリュークが竜族なのも気付いてる?」
「みたい。」
しばらく考える素振りを取ったルーシィ。
「紋章士の力を行使できる上に、戦い方までリュークそっくりなのは大きなヒントになりそうね。それだとあたしまで引っ張られる理由が分からないけど。」
「………本当、なんなんだろうね。まだ判断材料が足りないけど、そろそろ解決しないと後に響くからなぁ。」
「本当そこは頼むわよ?さっきラクサスに散々愚痴られたんだから………"今のリュークはどうかしてる"だの"何かあったらお前があいつを止めるんだぞ"とかって。」
「………いやー。はは、耳が痛い。」
「自覚はあったんだ。」
「そりゃあ、ね。熱と言うか勢いに任しすぎたところはあったと自覚してるよ。俺としては冷静沈着、冷酷無比のクールな頭脳派として売り出すつもりだったんだけどね。」
リュークの言葉にルーシィとフェルトは思いっきり吹き出した。
「………揃って何がおかしいんだ?」
「くくっ………だって、ねぇ、フェルト。」
「ホホ………ククッ。」
「売り出し方とか、くっ、そんなの、あははっ、考えた事無いでしょ?マークが寝てるんだから、興味も無いくせに変な事言って笑わせないでよ!!」
「ホホホッ、ホッホーッ………!!」
「好き勝手言ってくれる………」
「………でも。」
「でも?」
再び笑顔を見せたルーシィ。だが今度のそれはリュークを面白がるそれとは少し違う満面の笑顔だった。
「ものすごくカッコよかったわよ………あたしの愛しい神竜様。」
「………それはどうも。勝利の女神を喜ばせられたのなら何よりだ。」
「………ホー………。」
惚気は他所でやってくれ、と言わんばかりのフェルトのジト目を尻目に笑い合ったリュークとルーシィ。その後しばらく他愛のない話をしつつアンナの店に到着しマークを預けると宿へと戻った。
「今日以降はどこ泊まってもいいんだね。」
「えーでもウチの宿既にパンパンだよ?」
「初日に宿取らなかったのが響いたな………」
「昨日はアンナの店に泊まったのよね?」
「姉妹用の空き部屋を臨時で使わせて貰ってるだけで、本来宿じゃないからね………無理言って泊めて貰ってる所に俺まで居座るのは難しいよ。」
「そうよね………」
「新しく部屋取れたらいいんだが………探してみるか。それまでは空いたスペースで雑魚寝でもするよ。」
「それでいいなら構わないけど………あれ、ちょっと待って。」
「?」
ルーシィが何かに気づき、リュークの左肩を触った。するとその辺りが不自然に濡れていた。
「濡れてた?」
「うん。左肩の周りだけ、不自然に。」
「ええ?気づかなかったな。」
「ホー、ホホッ?」
何でだろうと考えていたリュークとルーシィ。するとフェルトがある指摘をした。
「マークの頭のあった場所?」
「ふむ………つまり。」
「………泣いてた?」
「でも、なんで?」
「………考えるのは明日にするよ。今考えたら、確実に寝れなくなる。流石に明日寝不足で行った日にはラクサスがキレる。」
「本当頼むわよー。あたしやチキにまで愚痴られるんだから。」
「………本当、気をつけるよ。」
宿についた2人と1羽。するとリュークは風呂を浴び、寝間着に着替えると空いたスペースに布団を敷き即座に寝息を立てた。
ドタバタに始まったリュークの大魔闘演武、その1日目がようやく終わったのだった。
続く
・"竜石"を紛失した"長寿なだけの人間"から始まった部族
事実陳列罪。
竜に変身して戦う展開あると思ったんですけどね。
蓋開けりゃ初めましての名前も知らん妹にお守りとして渡したまま「1 2の………ポカン!」してましたわ(笑)
・マークの能力
換装魔法の使い手な上に、"神器錬成"で"マルテ"を繰り出し、更には"繋がりにくい紋章士"であった紋章士ヘクトルまで顕現………
これは一体どう言う事でしょうねぇ!?(特大のすっとぼけ)
しかも体格以外の能力はリュークを超えていて?流派もリュークと酷似している?
着々と答え書いてるつもりでやってますがあくまでもリュークは気づいていないのでもう少しだけこの茶番にお付き合いくださいませ。
・"繋がりにくい紋章士"一覧
パオラ、シグルド、エリウッド、ヘクトル、ルキナ、カミラ、ベレト
ルキナ以外はある共通点で括ってます。因みにルキナだけ仲間外れな理由もちゃんとあります。
・リネンとジエンマ、ミネルバ親子の確執
旅芸人とギルドの魔導士を兼業しようとしてる人が"アレ"と合うハズも無いので、まぁ順当です。
同時期に入ったユキノをはじめ、ギルドの魔導士と交友関係を早々に築けたので残ってますがそうでなければ辞表ごと顔面殴りつけて出てってやる、くらいの好感度です。
・シモンのジェラールへの感情
一言で言うならば「許さんけど憎んでもない」です。
理由としては、死ぬつもりだったのが無事で、妹との再会も果たし新たな友も出来た上に行方不明だった友も見つかったので満たされる事もあったが、再会した妹のカグラがミリアーナと共に復讐心を燻ぶらせていたのが原因です。
以下時系列
シモン、ミリアーナ、ショウ、ウォーリーの4人で始まった旅だがあるタイミングで解散(定期的に連絡は取っている)
↓
ミリアーナがカグラを見つけ、シモンに連絡
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シモンが来るまでの間にカグラとミリアーナのジェラールへの復讐心が増幅。カグラは「兄の人生をめちゃくちゃにした元凶」として怨刀"不倶戴天"を手に取る。ミリアーナもそれに同調しジェラール必滅を願うように
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シモン到着。再会を喜ぶも妹と親友が心の内に復讐心が渦巻いているのに気づく
それを目の当たりにした事から、リネンにアーロンの訃報を伝えた際にジェラールの事は伏せ、更にカグラとミリアーナにもジェラールの事を口止めしていた。
リネン自身も祖父の仇の事を詳しく聞かなかったのでジェラールの事は知りませんでした。
今 ま で は、の話になりますが。