FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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7章 呪歌

闇ギルド、鉄の森(アイゼンヴァルト)のリーダー、エリゴールの発動した"魔風壁"によってオシバナ駅に閉じ込められたリュークと、エルザ、ナツ、グレイ、ルーシィ、ハッピーの一行。集団呪殺魔法"呪歌(ララバイ)"を手にしたエリゴールの狙いがクローバーの街で開かれている定例会である事を知った一行は一刻も早く出る手立てを探していた。

 

「くそおおっ!!」

「バカヤロウ、力でどうにかなるんなら苦労しねぇんだよ。」

「力じゃ突破は無理、さらに解除できるはずの解除魔導士(ディスペラー)は裏切りに遭い重症………」

 

鉄の森のメンバーで、"呪歌"の解除を一人で行った解除魔導士のカゲヤマは味方に背中を刺され重症を負い、リュークが回復の杖を使っているがまだ目を覚ます様子は無い。

 

「リューク、あんたは何か無いの?」

「生憎、"魔封じ"をできる紋章士を俺は知らない。負傷覚悟で強引に突っ込むにも、まだ"エンゲージ"するには時間が必要だ。後は"ワープ"でちまちまと一人ずつ外に送るしか無いか………」

 

カゲヤマへの治療を一度切り上げたリュークは"ワープ"の杖に持ち替えた。

 

「………それか地面を掘って外に繋げるか?できるとすればアイクの"破壊"………じゃないな。カムイかカミラの"龍脈"か?でも今から"龍脈"探すのも………」

「地面を、掘る………?」

 

あーでもないこーでもないとブツブツ大きな独り言を話すリューク。すると、それを聞いていたハッピーがハッとした顔をした。

 

「あーーーっ!!」

「何だよハッピー、驚かすな!!」

「地面を掘る、で思い出したんだよ!!ルーシィ、はいこれ。」

 

ハッピーがゴソゴソと風呂敷を漁ると取り出したのは金色の鍵だった。

 

「星霊の鍵………まさか、処女宮のバルゴ!?」

「バルゴ?………ああ、あのメイドゴリラか!!」

「あんた、エバルーから盗って来たの!?」

「違うよ、エバルーと契約解除したバルゴがルーシィと契約したいって言って鍵を渡してくれたんだ。」

「あ、あれが………来たのね………」

 

筋骨隆々のメイドを想像し、震えるルーシィ。だが、彼女は首を振り話を続けた。

 

「何で今になって思い出したのよ?」

「バルゴは地面潜れたから、"魔風壁"の下を通れないかなって。」

「なるほど、やってみるしかない!!」

「分かったわ、ハッピー貸して!!」

 

ルーシィはハッピーからバルゴの鍵を受け取ると星霊を呼び出す詠唱を始めた。

 

「我、星霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼びかけに門をくぐれ………開け、処女宮の扉、バルゴ!!」

 

ルーシィの呼びかけに応じ、メイド服の女性の姿をした星霊、バルゴが登場した。しかし、その姿はエバルー屋敷で見た筋骨隆々の姿ではなく、明らかに美少女と言える姿となっていた。

 

「え!?」

「痩せたな。」

「あの時はご迷惑おかけしました。」

「痩せた、というか別人じゃない!!一体何で!?」

「私は御主人様の忠実なる星霊、なので御主人様の望む姿で仕事をさせていただきます。」

「そうなのね………って、時間が無いの!!契約後回しでいい!?」

「かしこまりました、御主人様。」

「御主人様はやめてよ。」

「………では女王様と。」

「却下!!」

「(完全に鞭を見て言ったね。)」

「では、姫と。」

「そんなところね。」

「そんなところなんかよ!?」

 

ルーシィへの呼び方が決まったところでバルゴは早速動き出した。

 

「では、行きます!!」

 

プールに飛び込むかのように地面に潜り、穴を掘っていくバルゴ。そのできた穴を一行はくぐって行って"魔風壁"を突破したのだった。

 

「外も凄い風だな………!!」

「姫、下着が見えそうです!!」

「まず自分のを隠せば?」

 

すると、ナツが担いで連れて来たカゲヤマが意識を取り戻して話し始めた。

 

「どうせ、今からじゃ追いつけるハズがねぇ………俺達の、勝ちだ………」

「………そいつはどうかな。」

「あれ、ナツは?それに、ハッピーも………」

「………あいつらの全速力は中々だぞ。」

 

そう言うと、リュークは魔導二輪を出した。

 

「………俺も先に行くよ。多分、ナツの事だから加勢はいらないって言うからマスターの所へ先回りできるよう動いてみる。」

「分かった。こちらもすぐに追いかける。」

 

そうして、リュークは魔導二輪に乗り、全速力でクローバーの街へと戻った。

 

「そろそろ時間も十分経ったはず!!シグルド!!再び"エンゲージ"!!」

『ああ、急ごう!!』

 

シグルドとの"エンゲージ"を再び行い、機動力を増幅させたリュークはしばらく線路沿いを走っているとナツとエリゴールが戦っている場所に到着した。

 

『炎と風では分が悪いか………?一太刀浴びせます!!』

 

風に押し返されて炎が中々届かず、押され気味なナツ。その助太刀として、リュークは圧倒的な機動力と勢いをそのまま攻撃力に転用した。

 

『"オーバードライヴ"!!』

「ごあっ!?」

 

"ティルフィング"の剣を構え、エリゴールの風を切り裂いて勢いそのままにエリゴールを撥ね飛ばし、切り抜けたリューク。すると、ナツが怒鳴った。

 

「おいリューク!!抜け駆けすんな、コイツは俺が倒す!!」

『了解した!!ならばそのまま頼むぞ!!』

 

そう言うとリュークはそのままクローバーの街へと走り抜けた。

 

「どいつもこいつも邪魔を………!!」

「テメェの相手はこの俺だ!!」

 

エリゴールはクローバーの街へ先回りしようとするリュークを止めようとしたがナツが殴りかかり、追いかけるのを諦めざるを得なかった。

 

==========

 

「なんじゃと………!?あやつら、こっちに来ているのか………!?」

「ええ。集団呪殺魔法"呪歌"なる笛を持ってマスター達の命を狙う連中を追いかけて………」

「そうか………状況は?」

「ナツが"呪歌"を持つ敵の親玉と交戦中。他のメンバーがそれを追いかけている所です。俺は報告と、アクシデントが起きて"呪歌"がこっちまで運ばれた場合の備えとして先回りしました。」

 

定例会会場に到着したリュークはすぐにマカロフと合流し、状況を説明した。

 

「うむ、ご苦労じゃった。少し休め、万一の戦闘と、あやつらの破壊の抑止に備えて。」

「さらっと無茶言いますね………善処します。」

 

こうしてリュークは少しの間会場内で休息を取った。そして休息を終え会場の外を見るとマカロフが誰かと相対しているのが見えた。

 

「あれは………鉄の森の!!それにあいつが吹こうとしている笛………まずい!!」

 

マカロフと相対しているのが先程ナツが"魔風壁"の外に出したカゲヤマで、そのカゲヤマがマカロフの前で"呪歌"を吹こうとしているのを見たリュークは"鉄の弓"を出してカゲヤマに狙いを定めた。だが、そこに四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のマスター、ゴールドマインに止められた。

 

「待ちな。ここから面白ェとこだからよ。」

「……………。」

 

"鉄の弓"を下ろしたリューク。反対側には青い天馬(ブルーペガサス)のマスター、ボブがナツやエルザを制止しているのを確認しつつ、一堂は事の行く末を見ることになった。

 

「……………」

「どうした?吹かぬのか?」

「……………!!」

「さあ。」

 

これまでの事を思い出してか、"呪歌"を吹くのを迷い躊躇うカゲヤマ。それに対しマカロフは静かに詰め寄り、カゲヤマの顔には焦りが出始めた。そして、場が硬直したその時にマカロフが切り出した。

 

「………何も変わらんよ。」

「!!」

「弱い人間は弱いまま。しかしその全てが悪ではない。弱いから、一人じゃ不安だからギルドがあり、仲間がいて、強く生きる為に寄り添い歩く。不器用な者はより多くの壁に当たり遠回りをするだろう、しかし明日を信じて踏み出せば自ずと力は湧いてくる、強く生きようと笑って行ける。………そんな笛に頼らずとも、な。」

 

カゲヤマの迷い、戸惑いを突く言葉を語ったマカロフ。これで勝負がついた。

 

「参りました。」

 

"呪歌"を手放し、跪いて項垂れたカゲヤマ。それを見たリュークはほっと一息ついてから歩き出し、同じタイミングでナツ達も駆け寄った。だが、ここで終わりでは無かった。

 

《カカカ………》

「!?」

《どいつもこいつも、根性のねぇ魔導士だ………》

 

カゲヤマが手放した"呪歌"の魔笛。そこから声と共に禍々しい煙を吹き出し始めた。

 

《もうガマンできん………ワシが自ら喰ろうてやろう、貴様らの魂をな………》

 

そして禍々しい煙は形を帯び、やがて巨大な樹木の魔物へと変貌した。

 

「な、何だ!?こんなの聞いてないぞ!!」

「こいつ………ゼレフ書の悪魔だ!!」

 

魔笛"呪歌"の正体。それは魔法界最凶の黒魔導士ゼレフが造り出したとされる"生きた魔法"。その総称がゼレフ書の悪魔である。

 

《さて、どの魂から頂こうか………》

 

真の姿を取り戻した"呪歌"はしばし辺りを見回した。

 

《決めたぞ。全員まとめてだ。》

 

そう言って"呪歌"は大きく息を吸い込んだ。辺りの者を永遠の眠りに誘う子守唄(ララバイ)を奏でる為に。だが"呪歌"が息を吸い切ったその瞬間、一本の槍が"呪歌"の喉元を貫いた。

 

《があああああっ!?》

『"ジークムント"の味はどうだ、デカブツ!!』

晴碧れ(はれわたれ)、聖魔の紋章士(エムブレム)、エフラム!!これで集団呪殺の歌は使えまい!!」

《貴様………!!魔物祓いの槍か、小癪な!!》

 

双子の兄妹からなる聖魔の紋章士。その内の兄、エフラムの顕現をリュークが行うとエフラムは"双聖器"と呼ばれた魔物特攻の槍、"ジークムント"を"呪歌"の口に投げ込み呪殺魔法を阻止したのだった。

 

《ならば貴様からだ!!》

「"エムブレム・エンゲージ"!!」

 

狙いをリュークに定めた"呪歌"はリューク目掛けて拳を振り下ろし、リュークはエフラムと"エンゲージ"し、エンゲージ武器の"レギンレイヴ"で弾いた。

 

『………!!』

《ヒトの身で我が拳を弾くか………だがいつまで保つかな?》

『思ったより力があるな………ならば!!』

《死ね!!》

『"オルタネイト"!!』

 

再び拳を振り下ろす"呪歌"。だが今度は俊敏な動きで拳を避けるといつの間にか切り替わっていた剣で連続斬りを繰り出した。

 

『(俊敏な動きは苦手のようですね。ならばここは私が!!)』

《ごああっ!?その剣も、魔物祓いか………!!》

 

"オルタネイト"でエンゲージ先を槍の得意な兄エフラムから、剣の得意な妹エイリークに切り替えたリューク。エンゲージ武器も変わり、"レギンレイヴ"から剣の双聖器、"ジークリンデ"に切り替え大ダメージを与えていた。

 

『ところで、こっちだけでいいのかい?』

《何を………ぐうっ!?》

 

リュークとの戦いに気を取られていた"呪歌"。その隙にエルザが斬撃を加えて"呪歌"のバランスを崩し、さらにナツは"呪歌"によじ登り炎を纏った飛び蹴りを与えた。

 

《どいつもこいつも!!》

「おっと。」

 

反撃として魔力弾を放った"呪歌"。だがナツはそれをかわし、魔力弾はグレイの方向へと飛んだ。

 

「"氷造形(アイスメイク)(シールド)"!!そして、氷造形(アイスメイク)槍騎兵(ランス)!!」

 

それに対してグレイは氷の造形魔法で素早く盾を形成、そして返す刀で無数の氷の槍を出し"呪歌"の腹部に風穴を開けた。

 

「今だ!!」

 

グレイの掛け声でエルザとナツが同時に動いた。

 

「換装、"黒羽の鎧"!!」

「"火竜の煌炎"!!」

 

攻撃力の高い"黒羽の鎧"によるエルザの斬撃と、両手の炎を合わせて振り下ろすナツの打撃により、"呪歌"は定例会の会場目掛けて吹き飛んだ。だがそこにはいつの間にか屋根に登っていたリュークが"ジークリンデ"を手に待ち構えていた。

 

『行きますよ!!エイリーク、エフラム!!』

『(はい!!行きましょう、お兄様!!)』

『ああ!!俺に合わせろ!!』

 

先に紋章士エフラムが飛び出し、エイリークを"エンゲージ"したリュークがそれに続いた。

 

『『"ツインストライク"!!』』

 

エフラムの"ジークムント"による横薙ぎと、リュークの"ジークリンデ"による縦斬りを同時に放つ"ツインストライク"。魔物特攻の十文字斬りは、ナツ、グレイ、エルザの攻撃でボロボロになっていた"呪歌"を四等分に斬り伏せ、機能停止させたのだった。

 

『終わったか………』

『(何とか間に合いましたね。)』

『あのまま放っておいたら、この会場が"呪歌"の下敷きになって粉々でしたね。』

『エイリークに切り替わってて良かったな。"エンゲージ"していたのが俺だったら恐らく間に合わなかった。』

『しかし、あっち走ってこっち走ってで何か疲れた………ナツ、グレイ、エルザが組んだと聞いた時はどうなるかと思ったけど、何事も無く終わって良かった。』

 

一件落着となり、安堵の表情を浮かべながら屋根に腰をつけたリューク。その後彼はマカロフやナツ達と共にギルドへ戻るのだが、後日ナツ達が駅の緊急停止装置を勝手に作動する、魔導四輪の借り逃げ、駅員への暴行が発覚した。これを受けマカロフは頭を抱え、リュークはやっぱりかとため息をついたのだった。

 

 

続く




原作エンゲージだと"ツインストライク"打つ時以外ほぼ出てこない紋章士エフラム。複数の紋章士が内在する指輪はエイリーク以外にもエーデルガルト(+ディミトリとクロード)、クロム(+ルフレ)といますが、ディミトリとクロード、ルフレは絆会話やら何やらで顔を出しますがエフラムはマジで出番が無いんですよね。
エイリークと並んで聖魔の主人公なのにマージで空気なエフラムが寂しい所があったので本作ではエフラムも出てくるようにしました。

と言ってもスキルは据え置きで、戦闘面での差異点としては"エンゲージ"状態でも"オルタネイト"でエイリークとエフラムを切り替えられるようにしました。
因みにエフラムと"エンゲージ"した時のエンゲージ武器は、
・レギンレイヴ(槍、射程1)
騎馬・重装特攻
・アクスバスター(槍、射程1)
相性反転
・ジークムント(槍、射程1)
魔物特攻
の3種としています。
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