FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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2話連続投稿の前半です。

4日目の競技パート、海戦(ナバルバトル)です。
つまり、そういう事です


104章 水底に沈む

4日目を迎えた大魔闘演武。残す競技は少なくなっているが、妖精の尻尾はAチーム、Bチーム共に大健闘をしており、下馬評を覆して優勝圏内に入っていた。1日目、2日目の競技パートこそつまずいたがバトルパートは全ての試合で引き分け以上を勝ち取っているのが最大の理由である。

 

そんな4日目の競技パートは海戦(ナバルバトル)。球状の水中闘技場に各チーム1人ずつ入り、外に出たら負け。最後まで残った者が勝者となる。ただし、最後の2人となった時、5分以内に場外に出た者は最下位となる。

 

「また変わった競技だな………」

「だけど、ウチにはとても有利な競技じゃない?」

「だな。ウチのジュビアと向こうのルーシィ、どっちも水辺の戦いには滅法強いのが行ってるからな。」

 

水を操るどころか自身を水に変えられる、まさに"水のエキスパート"であるジュビア。そして星霊の中でもトップクラスの攻撃力を誇るアクエリアスの鍵を持つルーシィ。昨日に続いてワンツーフィニッシュも夢じゃないというのが妖精の尻尾全体の認識だった。

 

「出し惜しみはナシ!!一気に片付けるわよ、アクエリアス!!」

「オオオッ!!水中は私の庭よォ!!」

「させない!!"水流台風(ウォーターサイクロン)"!!」

 

水中の闘技場は瞬く間に激流と渦潮で荒れた。他の出場者は近づく事すらかなわないレベルのものだったがこれでは終わらない。

 

「互角………!!」

「1人で互角なら、2人で!!いくよ、アクエリアス!!」

「指図すんな!!お前が私に合わせるんだよ!!」

「分かってるわよ!!"星闘衣(スタードレス)"、アクエリアスフォーム!!」

「!!」

「そして重ねがけよ!!竜穿ろ(ほえろ)、選択の紋章士(エムブレム)!!"エムブレム・エンゲージ"!!」

 

星霊の力を自らに宿す"星闘衣"と、紋章士の力を自らに宿す"エンゲージ"。それの重ねがけはリュークも驚きを隠せなかった。

 

「………マジか。」

 

しかも"エンゲージ"した紋章士カムイもまた、水に縁のある紋章士。

 

『アクエリアスの激流に、カムイの咆哮を乗せる!!"竜穿砲"!!』

 

2人………否、3人分の激流が水中闘技場に渦巻く。しかも"竜呪"によるデバフも撒き散らされた形となり、攻撃はおろか思い通りに泳ぐのも難しくなる勢いだった。しかしそんなものでジュビアも引き下がれない。

 

「水中でジュビアに勝てる者などいない!!第二魔法源の解放により身につけた新必殺技………"届け!!愛の翼!!グレイ様ラブ"!!」

「恥ずかしいからやめろーっ!!」

 

トンチキな技名と"ご指名"のあったグレイの叫びはともかく、その威力は本物であった。愛の力で増幅した激流はアクエリアスと紋章士カムイの激流とぶつかり、水中闘技場はどんな凄腕の船乗りが乗った船でもひっくり返す荒れた海のような様相を見せた。そんな激流に魔導士いえど人が耐えられるかと言えば否、次々と選手が場外へ押し流され気付けば水中闘技場に残っていたのは3人。ルーシィ、ジュビア、そして剣咬の虎のミネルバ。

 

「フフ。」

 

不気味な笑みを浮かべたミネルバ。

 

「え?」

 

すると何故かジュビアが水中闘技場の外に出されていたのだった。

 

「きゃうん!!」

『ジュビア!?』

 

不自然に追い出されたジュビア。

 

『(こいつの魔法だ、間違い無い。何の魔法か分からないけど………)』

 

未知の魔法の行使を確信したルーシィは最大限の警戒を以てミネルバを見た。

 

《ここで5分間ルールの適応です。今から5分の間に場外となった方は最下位となってしまいます。》

 

最後まで緊張感を保つ為の措置。そのカウントダウンが始まった。

 

「妾の魔法ならさっきのように一瞬で場外にするのも容易いが………それでは興が削がれるというもの。故に………耐えて見せよ、妖精の尻尾。」

 

次の瞬間、ルーシィのすぐ横が歪んだかと思うと高熱で爆ぜた。

 

『きゃあっ!!………くっ!!』

 

追撃は防ごうとエンゲージ武器"夜刀神"を構えたルーシィ。

 

『あぐっ!?』

 

だが今度は頭上から鉛のような重たい"何か"がルーシィを襲い構えは容易く崩された。

 

『っ、糸口が………!!』

 

だがミネルバはルーシィに攻略の糸口を与えず、未知の魔法でルーシィを攻め立てた。

 

『きゃあああっ………!!』

 

ミネルバの猛攻にルーシィは反撃できずにいると、"星闘衣"と"エンゲージ"の時間切れとなってしまった。

 

「っ………!!やられてばかりじゃ………っ!?」

 

次の星霊を開門しようと懐の鍵に手を伸ばそうとしたルーシィ。だが、あるはずの鍵が無かった。

 

「あれ、あたしの鍵が………いつの間に!?」

 

ベルトごとミネルバに鍵を奪われていたルーシィ。星霊を呼び出せず、"エンゲージ"もできない。

 

「うあああっ!!」

 

反撃手段を失ったルーシィはそのままミネルバに場外まで吹き飛ばされそうになったが、何とかギリギリで踏ん張った。

 

「んんん………ん!!」

「ほう。」

「あぐ………っ!!」

 

展開は一方的だった。反撃できないルーシィはひたすらミネルバの謎の魔法を受け続け、何度も場外に飛ばされそうになったがすんでのところで踏ん張り続けた。

 

「こんな所で落ちたら………」

「!」

「ここまで繋いだ皆に合わせる顔が無い!!あたしは皆の気持ちを裏切りたくない………だから、絶対に、諦めない!!」

「……………。」

 

するとミネルバは突如攻撃をやめその場に留まった。するとカウントダウンが止まった。5分が経過し、ペナルティが無くなったのだった。そして時間が経った事でルーシィに勝機が舞い込んだ。

 

「(ここまで時間が経てば"エンゲージ"できる!!ここで………)」

 

その時だった。ミネルバの表情が豹変し、先程とは比べものにならない密度の魔法がルーシィを襲った。

 

「ああああああ!!」

「頭が高いぞ妖精の尻尾!!我々を何と心得るか!?我らこそ天下一のギルド、剣咬の虎ぞ!!」

「きゃあああっ………!!」

 

強烈な魔法をまともに受けたルーシィは紋章士の顕現をする間も無く場外へと飛ばされようとした。だが次の瞬間、ルーシィの周囲が歪むと彼女は何故かミネルバの前に出現し、追撃を受けていた。

 

「虫けらが、調子に乗るで無い。」

「ぃ、あああっ………!!」

 

強烈な一撃を加えては己のもとに引き寄せ、次の強烈な一撃を加える………その繰り返しだった。

 

「なんで場外に出せるのにわざわざ戻して………」

「………痛めつける為か。」

「もう勝負はついてるだろ………!!」

 

最早勝負ではなく私刑(リンチ)。仲間がそれを受けているのを黙って見ている事しかできないのを嘲笑うかのように、剣咬の虎の魔導士はごく一部を除いて馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。

 

思わず飛び出しそうになったナツ。だがグレイとエルザがそれを全力で抑えつけた。

 

「何すんだ!!このままじゃルーシィが………」

「お前なんかよりも真っ先に飛び出したい奴がこらえてんだろ!!」

「………あいつが飛び出さない限り、ダメだ。」

 

エルザの視線の先。

 

「……………。」

「………分かってんだろうな。」

「………分かってる。」

「間違えても飛び出すんじゃあ………」

「分かってるから黙ってろクソガキ!!」

 

怒りと苛立ちのままに激昂したリューク。その拳からは血が滲み床へと滴っていた。

 

「これは競技(ゲーム)だ。これは競技(スポーツ)だ。殺し合いじゃない、殺し合いじゃない………」

 

うわ言のように、歯ぎしりをしながら呟くリューク。だが彼はギリギリで踏み止まっていた。ここで飛び出しでもしてリューク本人、または妖精の尻尾そのものが失格にでもなればそれこそルーシィへの裏切りになるからだ。

 

「(………だがここで前のめりにならないのが、ジジイがこいつを"調整役"に選んだ理由か。)」

 

妖精の尻尾は前のめりになりがちな人間が多い。そんな中で、誰よりも前のめりになりたいはずの立場で一歩退ける点をラクサスは素直に評価していた。後にその信頼が大惨事になる事を知らずに。

 

「どうした、最後まで諦めないのでは無いのか?」

「……………。」

 

絶え間無い攻撃の末、最早ルーシィに抵抗する力は残っていなかった。水中を漂う、と形容した方がいい状態のルーシィを見てようやくミネルバは私刑の手を止めた。

 

「虫けらの分際で調子に乗ればどうなるか、その姿を仲間に見せるがいい。」

「………。」

 

ルーシィの頭を掴み、そのままボロボロの身体を彼女の味方に見せつけようとしたミネルバ。だがその時、白刃がミネルバの脇腹を掠った。

 

「!?」

 

ふと見ると、ルーシィの手にはいつの間にか"細身の剣"が握られていた。

 

「貴様………」

 

紋章士の力をより活かす為に、リュークやエルザから教わっていた換装魔法。それを無意識に発動して出した"細身の剣"での攻撃………正確に言えば攻撃ですら無かった。

 

「ーー、………、ー、ーー………」

 

何て言っているか、目の前のミネルバにすら聞こえない。意識があるかすらも分からない。死に際の悪あがきにすら見えないようなささやかな、最後の反撃。だが最後まで諦めない、その姿勢はミネルバの癇に障った。

 

「見苦しい虫め。」

「     」

 

頭を掴んでいない方の手に魔力を溜めたミネルバ。それが命中すればルーシィはまず助からない。だがそれを止められる者は運営を含め誰もいなかった。

 

「目障りぞ。」

 

そしてその魔力が死に体のルーシィに放たれようとした。

 

「ぐああああああっ!?」

 

だがその寸前。急にミネルバが叫び声をあげ苦しみ始めた。

 

「いま、の、は………!?」

 

突然全身を襲った痛み。その反動でミネルバはルーシィから手を離した。完全に意識を失っていたルーシィは木の葉のようにふわふわと水中を漂ってから場外へ落ちた。そのまま自由落下したルーシィだが、地面に激突する寸前に彼女の身体を受け止める者がいた。

 

「っ!?しまった………っ!!」

 

思わず壁を殴りつけたラクサス。その理由はルーシィを受け止めた者が、今の今まで自分の目の前にいた男だったからである。

 

『………お疲れ様。』

 

その男は回復用の杖に魔力をこめると癒しの光がルーシィを包み、彼女の呼吸が僅かに安定した。

 

『………さて。』

 

ルーシィを地面に寝かせると回復用とは別の杖と紋章士の指輪とは異なる指輪を身につけたリュークがミネルバを睨みつけた。そのリュークはジュラを倒した紋章士クルトと"エンゲージ"している状態だったが、雰囲気がその時とはあまりにも違い過ぎた。

 

『"フラッシュペイン"。』

 

ドス黒い闇のオーラを纏ったリュークから放たれたのは、対象の痛覚に直接、しかも瞬時に作用する闇魔法。紋章士クルトと"ある条件下"で"エンゲージ"した時にのみ使用できるエンゲージ武器である。

 

「ぐあ、あああっ………!!」

『わめくな。』

 

断続的に放たれる闇魔法に、"剣咬の虎最強の5人"の筆頭とされるミネルバを以てしても痛みに身を捩らせた。

 

『それでも最強ギルドの魔導士かよ………』

 

だがリュークは攻撃の手を止めなかった。

 

『虫けらにかまれたくらいで………"虫刺され"ごときでぴーぴーやかましいんじゃクソったれがァ!!』

 

闇のオーラを纏ったリュークの表情、特にその目は人がしていいそれでは無かった。

 

それは誤って尾を踏んだ者を、

あるいは無謀にも守っていた宝を奪おうとした者を、

もしくは蛮勇を以て挑みに来た者を、

または好奇心で逆さに生えた鱗を触れようとした者を、

 

不届き者を焼き尽くし、殺し尽くさんとする、怒り狂った竜のそれだった。

 

『"神器錬成、烈火の魔道"………』

 

続けて出したのは、あまりにも禍々しい魔道書。それを開くと杖と指輪………"テュルソスの杖"と"魔道の指輪"で射程を伸ばし、苦しむミネルバに追撃を加えた。

 

『貴様のエーギルを捧げろ。"エレシュキガル"。』

「ぐああああああ………!!」

 

強大な闇魔法を受け、更に苦しむミネルバ。するとミネルバから吸い取った"エーギル"なる生命力の一種をルーシィへ横流しした。

 

「てめぇ………よくも御嬢を!!」

『!!』

 

するとスティングを先頭にルーファス、オルガら剣咬の虎の魔導士が一斉に闘技場へと降りて来た。

 

「許可も無いのに外部からの攻撃とは、ルール違反もいいところではないか?」

「どう落とし前をつけるつもりで………」

『"クワドペイン"。』

 

スティング、ルーファス、オルガが同時にリュークへと迫ったが、紋章士クルトの"魔法拡散"によって範囲の広がった"フラッシュペイン"による痛みで地面に縫い付けた。

 

「「「ぐぁ………っ!?」」」

『ルールだ?偉そうに。競技に殺し合いを持ち込んだ連中が、俺に講釈垂れるな。反吐が出る。』

 

更に踏み込んで追撃を仕掛けようとしたリューク。

 

「待て!!」

「止まれ!!」

『!!』

 

だがいち早く降りて来たナツとガジルがリュークを止めにかかった。

 

『邪魔をするな。』

「「!?」」

 

しかし、力自慢であるはずのナツとガジルを軽くあしらって突き飛ばすと、数歩前に出てからリュークは3種類の魔道書を一気に出した。

 

『"ホリゾ・ディザスター"。』

 

紋章士セネリオのエンゲージ技"ディザスター"のように炎、雷、風の魔法を次々と横一列に放ち、壁を作った。

 

「おいクソチビ!!」

『………。』

「テメェ何やってんのか、分からん訳ねぇよな!?人殺しの怪物にでもなるつもりか!?」

 

ラクサスへの返事は、自嘲気味の乾いた笑いだった。

 

『いいじゃねぇか、人殺しの怪物。』

「ぁあ!?」

『見殺しにするのが人の理なら、俺は人になんかなりたくないね………ルーシィを連れて下がってろ、今回ばかりは邪魔だ。』

 

吐き捨てるように言うと、リュークは魔法の壁の向こうのラクサスやナツ、ガジルの声を無視して、痛みから立ち上がった剣咬の虎の魔導士を再度血走った目で睨みつけた。

 

『誅戮の時間だ。楽に死ねると思うなよ。』

 

==========

 

「ぐ………すまないね………」

「無理すんな!!いくら竜族だからって歳なんだろ!?」

「まだまだ現役のつもりでいたが、いやなものだね………!!」

 

応援席から飛び出す際に腰をやってしまったアイズはマックスやウォーレンら、応援席にいた妖精の尻尾の魔導士に支えられながら闘技場に向かっていた。

 

「一体何が起きてるんだ!?」

「………紋章士クルト、そのもう1つの姿。」

「もう1つの姿?」

 

アイズは話し始めた。

 

「祖国再興の為、仲間と共に光の道を進むか。復讐の為、一人闇の道を進むか。紋章士クルトの元となる人物は、その葛藤に悩まされた。そしてその葛藤は紋章士となっても"陰陽交差"という形で残り、"光の使徒"か"闇の使徒"を選ぶ事になる。」

「じゃあ、あの禍々しい姿は"闇の使徒"ってやつを選んだのか!?」

 

"闇の使徒"、紋章士クルトのエンゲージスキル"陰陽交差"によるもう1つの姿。それは大幅な能力上昇と引き換えに味方からの干渉を………"味方との絆"を拒絶するものである。

 

「どちらかと言えば強い怒りに引っ張られたのでしょうが、この際は変わりません。問題は………」

「問題は?」

「どこで威力を溜めたか。あれだけの威力、味方への攻撃を相当行っているはずですが………」

 

紋章士クルトは味方への攻撃、敵への回復と言った"利敵行為"で強化を重ねるのが特徴。では今回、剣咬の虎をワンサイドゲームに追い込めるまでの利敵行為(強化)をどこで重ねたのか。

 

「あの血………そう言う事かよ!!」

「なんだよラクサス!?」

「自傷は立派な利敵行為だってことだろ………!!」

 

血が滲む程拳を固く握り締め、爪を突き立てて堪えていたリューク。その自傷が利敵行為の判定にかかっていたのだった。

 

「まさかあいつ、最初から………!!」

「それはねぇよ、ガジル。準備はしてたかもしれんが………最初からやるつもりなら、あいつは黙ってやるタイプだ。」

 

魔法の壁の攻略を急ぎながら、陣頭指揮を執っていたラクサスは内心でほぞを噛んでいた。

 

「(つまり、耐えたが"ライン越え"だったって話だが………クソッ、俺が招いたミスだ。あいつなら飛び出さないと高を括ってた、あいつにとってのルーシィを小さく見ていた!!)」

 

ルーシィを小さく見ていた。それを指摘したのはラクサスだけではなかった。

 

『………あーあ、やっちまったな。気の長いあいつが一番キレる選択肢を的確にぶち抜きやがった。』

『調子に乗ったニンゲンには相応しい末路だろうよ。せいせいするぜ。』

『ネサラ………いじわる、いわ、ない!!たすけ、ない………と!!』

『そうは言っても、今の我々には何もできない。』

 

獣牙の紋章士達が話しているその側にいたのはリネン、ローグ、フロッシュ………剣咬の虎の中で一部始終を見て笑っていなかった数人なのだが、リネンが酷く怯えた表情をしていた。

 

「リネン、だいじょうぶ?」

「………ごめん。」

「何があった。」

「………幼い頃お祖父ちゃんが、一度だけブチギレた時を思い出しちゃって………その時は怒りの矛先が自分じゃなかったから耐えられたけど、今回は………」

 

リネンは"竜の怒り"を見たことがあった。それはリネンに向けられたものでなく、彼女を害そうとした者へ向けられたが、今回のそれは違う。リネン本人に向いているかは不明だが少なくとも剣咬の虎(こっち)を向いていた。

 

「………止める方法は無いのか?」

『………"あった"な。貴様ら自身の手で壊したが。』

 

ローグの質問に、紋章士カイネギスは厳しい現実を叩き付けた。

 

『怒りに身を任せ、味方に対しても心を閉ざしている………あやつが最も大切にしている者の声ならば、あやつの心を開く"鍵"となっただろうが………』

「………まさか。」

「その、まさかだよ、ローグ。」

『文字通り、"逆鱗に触れた"ってやつだな。トドメを刺そうとしなかったらまだ耐えたハズだが………』

『先日、私は忠告したハズだがな………敗者の骸を辱め、弄ぶのは弱肉強食(自然の理)ではないと。』

「………他に、手はないのか。」

『倒すのが手っ取り早いな。あそこまで膨れ上がったあいつを止められるなら、の話だが。あとは………あの紋章士をどうにかするんだな。』

 

紋章士ティバーンは続けた。

 

『紋章士を"眠らせる"事ができるのなら簡単だが、それができるのは神竜王の一族だけだ。』

「………でも、リュークさんはその一族の"最後の生き残り"。」

「……………!!」

『どっかにあいつかルミナの隠し子でも生き残っていれば話は変わるかもだが………まぁいないだろうな。』

「……………!!」

『ま、あそこの連中にはいい薬になっただろう………あんな"災害"から生還できたら、の話だが。』

 

==========

 

『どうした、立てよ。』

 

場所は戻って闘技場。怒り狂ったリュークの猛攻はミネルバ、スティング、ルーファス、オルガを圧倒していた。小細工も防御も不要の、ただただ膨れ上がった力で捻じ伏せていたのだった。

 

『お前らが"虫けら"と嘲笑った奴は限界まで立ち向かったぞ。そのくらいの根性見せられないで、何が最強だ、笑わせてくれる………なぁ、セイバーのマスターよ。』

 

リュークの怒りの矛先は、観客席に座るジエンマに向かった。

 

『この馬鹿共の勘違いのそもそもの原因はお前だろ。ただの力比べを殺し合いにして、それをケラケラ笑うとか………どういう教育してんだ。』

 

だがジエンマは無言で、その場に鎮座したまま不動だった。

 

『………言の葉も話さんか。』

 

するとリュークは躊躇いなく"フラッシュペイン"を放った。

 

「!!」

『だったらそのまま、遺言すら残さず死ね。』

「ーーー!!」

 

複数回"フラッシュペイン"を放ったリューク。魔法が効いている様子で顔をしかめたジエンマだが、それでも無言のままだった。それを見たリュークは怒りに失望の混ざった目でジエンマを睨み、右手に禍々しい闇を集めた。

 

『我が"逆鱗"を引き抜いた報いを受けろ………"ボーアΧ"。』

「む、ぅ………っ!?」

 

命中すれば問答無用で相手を瀕死に追い込む闇魔法、"ボーアΧ"。

 

『終わりだ………くたばれ。』

 

続けて右手に闇を纏わせ、"フラッシュペイン"でジエンマにトドメを刺そうとしたリューク。

 

「………させない!!」

 

だが魔法が放たれる寸前。黒い影が闘技場に乱入するとそこから何かが高速で飛び出し、リュークの右手に命中。"フラッシュペイン"は不発に終わった。飛び出したものは1本の矢、そしてそれはリュークの右手首に突き刺さっていた。

 

『………何の用だ。』

「………あなたを止める為です。」

 

矢を引き抜いたリュークの視線の先にいるのは、黒ずくめの少女。その少女、マークは弓の神器"ソグン"を手にしていた。

 

『何故邪魔をする。お前には関係の無い事だろう。』

「………生憎と、関係あるのです。あなたが"悪者"になれば、あたしが困るんです。」

『意味が分からないな。………最後通牒だ、どけ。』

「………!!」

 

怒気をはらんだ睥睨。だがマークは黒ずくめの外套からでも分かる幼い身体にも関わらず微塵も退かなかった。

 

「………ルキナ。」

『お任せください、マーク………いや、■■■■。』

「………絶対に止めて見せる。"エムブレム・エンゲージ"。」

 

紋章士ルキナと"エンゲージ"したマークは異界の神槍"ゲイルスケグル"を手元でくるりと回してから構えた。

 

『邪魔をするなら誰であろうと、踏み潰す。』

『………今度は、あたしが救う番なんだ。』

 

 

続く




という訳で、リューク再度の闇堕ちでした。
喧嘩っ早い訳じゃないけど、あれされてブチギレないのも解釈違いだなーでもどう暴れさせてやろうか………って所に紋章士クルトがミラクルフィットしたのが紋章士クルト実装の決め手となりました。

では改めて紋章士クルトの全情報の解禁です。

◎クルト(羊宮妃那)
◯呪文:疑欺け(あざむけ)、影狼の紋章士(エムブレム)
◯登場作品:シャドウズ
◯髪色と服の色:灰色、黒地に紺
◯シンクロスキル:
・魔法拡散
魔法(攻撃魔法、回復魔法の両方)を広範囲に切り替える事ができる(後述※1)
・光は此処に
必殺ダメージを軽減する(2倍)
・すべては闇に
自分もしくは味方を攻撃、または敵を回復した時、戦闘後自分の力、魔力を巻き込んだ人数×5上昇させる(3ターン、重複可)
◯エンゲージスキル:
・陰陽交差
"エンゲージ"状態の時、光の使徒と闇の使徒を切り替える"陰陽交差"が使用可能(後述※2)
◯エンゲージ武器:
・ラウアウルフ(魔法、射程1-2)
騎馬特効
・王家の宝剣(剣、射程1)
重装特効
・フラッシュペイン(魔法、射程1-10)【NEW】
対象に超強力な攻撃
必殺が出やすいが、相手から攻撃された時、反撃不可
闇の使徒の時のみ使用可能
◯エンゲージ技:
ノナボルガノンEX
3×3マスに強力な魔法攻撃
◯Style Bonus:
竜族=光は此処に
必殺回避+30
魔道=魔法拡散
魔法を広範囲にした時の威力、回復量の減少を-10%にする
連携=すべては闇に
味方へのダメージを5減らす
◯コンセプト:
広範囲魔法で一網打尽に!!味方を欺くことで己を更に超強化!?

※1
広範囲と威力、回復量の割合は以下の通り
クアド:2×2、85%
クロス:十字方向、75%
ベルチ:1×5、75%
ホリゾ:5×1、75%
エクス:斜め十字方向、75%
ノナ:3×3、60%

※2
光の使徒:
HPが0になった時、10%回復して復活する(1回きり)
闇の使徒:
HP2倍、その他全ステータス+10になる代わりに味方からの干渉(回復、応援、踊る/歌う、連携、スキル、持ち物交換、支援効果など)を一切受け付けない【NEW】

"寝返らない闇堕ち"なので、いわゆる"孤絶"の方向性で定めました。闇堕ちディミトリは会話がまともにできなくても辛うじて回復とか踊りは受けてくれますが、それすら弾く状態です。
また"フラッシュペイン"の射程ですが、シャドウズの魔法の射程が実質無限なのを反映させました。

・自傷行為
そもそもは、最初は飛び出そうとする自分を抑える為に、拳に爪を立て自傷行為をしていた。ただしライン越え=ミネルバが少しでもルーシィを殺そうとした瞬間に飛び出して殺してやる、という心積もりで紋章士クルトをスタンバイ。
そしてこの行為が"自分に攻撃し続けている"判定となり、結果力と魔力カンスト越えの化物が爆誕して防御させる暇無く蹂躙してました。

・怯えるリネン
一度だけブチギレたアーロンを見た事があったリネン。その時はアーロンの目の前でリネンをいじめた子供や、その後抗議に来たいじめっ子の母親達を一喝したのだが、あまりのブチギレっぷりにリネンは「この人を怒らせたら終わる」と心に深く刻まれていた。
そのブチギレ方とリュークのブチギレが重なって見えた上に、今度は怒りの矛先が自分達に向いたのに気づいたリネン。すると、まさにヘビに睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。
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