リュークvsマークから始まり、そしてマークの正体が………
4日目の競技パート、
『邪魔を、するな!!』
リュークは躊躇無くマークに向けて立て続けにエンゲージ武器"フラッシュペイン"を放った。
『ふっ、はっ………たあっ!!』
だがマークは軽やかな身のこなしで魔法を間一髪で避け続け、リュークとの間合いを詰めた。
『そこっ!!』
そして間合いに入り、"ゲイルスケグル"で素早い突きを繰り出したマーク。
『甘い。』
『!!』
だが紋章士クルトの能力で膨れきった力と魔力を保っていたリュークはその突きを容易く受け止めるとエンゲージ武器の剣、"王家の宝剣"で"ゲイルスケグル"をかち上げた。
『蛮勇が過ぎたな。』
『……………』
『悪く思うな。』
返す刀で"王家の宝剣"を振り下ろそうとしたリューク。
『………あたしが。』
『?』
『仮にも"神軍師"の名を騙るあたしが、無策で飛び込んだとでも?』
『そんなのが揺さぶりになると思ったか!?』
白刃がマークに迫る。だがマークは動かない。絶好のタイミングを逃さない為に。
『………そこ!!』
『!!』
そして僅かな一瞬を突いて、マークは小さな身体を、剣が届かないリュークの懐に滑り込ませた。その手には紋章士ルキナのエンゲージ武器、"裏剣ファルシオン"。
『甘い。』
だが紋章士クルトの強化により、リュークは"裏剣ファルシオン"を素手で止め切るだけの力を持っていた。だがマークにとって剣が止められるかどうかは"どうでも良かった"。
『………この瞬間を待っていた。』
『………?』
マークが狙っていた瞬間。それは自分とリュークが最も接近する、この瞬間だった。狙い通りの展開に持ち込んだマークはぐっと首を伸ばしリュークの耳元で囁いた。
『………"おやすみなさい"、紋章士クルト。』
『っ!?』
『願わくば、その眠りが穏やかであらんことを。』
その"囁き"が終わると、何とリュークの"エンゲージ"が解除された。
「………!!」
『あなたの"怒り"は、ここでおしまい。』
「そう、か………君、は。」
"エンゲージ"が解除され、無防備となったリューク。
『運命を変えます!!』
その隙を逃さず、マークは"裏剣ファルシオン"でリュークを逆袈裟懸けに斬った。
「がっ、は………!!」
必殺の一撃。戦技による"手加減"が無ければ、あわや即死の一撃だった。だが"手加減"したが故に、まだリュークの戦闘の意志は消えていなかった。
「こ、の………っ!!」
『………もう、やめて。』
ふらつく身体を抑え、立ち直ろうとしていたリューク。だが、マークは次の手を打っていた。
『………お願い。この人を止めて………チキ。』
するとマークの目の前に紋章士チキが現れた。
『悪く思わないでね、リューク。』
「………ねぇ、ちゃ………」
現れるや否や紋章士チキによって振り下ろされた拳骨。大ダメージを追っていたリュークは避ける事能わず地面に叩きつけられた。
「っ、ぐ………!!」
頭への強い衝撃で痛みに加え強い目眩に襲われたリューク。だが彼はそれでも立ち上がろうとした。その時だった。
「そこまでだバカヤロウ!!」
「大人しくしなってんだ!!」
ナツとガジルが倒れていたリュークを取り押さえた。
「………ぐ、はな、せ………!!」
「できない相談だ。これを望んでいたクセにな。」
体力の残っていないリュークはナツとガジルに抑えられ無駄な足掻きをしていた所に、ラクサスがリュークの前にしゃがんだ。
「炎、雷、風の防壁………ナツ、俺、ウェンディに食ってくださいって言ってるようなモンだろ、違うか?」
「……………。」
「言いたい事は山とあるし、思う所も色々あるが………とりあえずは、やり過ぎだ、バカタレが。」
雷を纏った手刀。逃げられないリュークは正面からその"おしおき"を眉間にくらい、目の前が暗転した。
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その後、闘技場の修繕や騒動に対する処遇についての協議の為に大魔闘演武は一時中断。その間、リュークは医務室のベッドの上で意識を取り戻した。隣に寝かされているルーシィの無事に安堵しつつ、ラクサスから滾々と説教を受けてから絶対安静という名の謹慎を告げられた彼は、しばらく身体を起こしてボーッとしてから眠りにつかされた紋章士クルトを顕現した。
『………すみません。』
「謝らないでください、クルト。謝らないといけないのは、力不足だった俺の方です。」
『ですが………』
「それでも、と言うのであれば………俺にもう一度、チャンスをください。」
リュークは続けた。
「こんな中途半端な形で終わりたくない。「俺では上手に扱えませんでした」なんて諦めるのは絶対に嫌だ。だから必ずあなたを、胸を張れる形で活躍させます。」
『………分かりました。ではこちらでも考えてみますが………期待して待っていますね。』
紋章士クルトが消え、医務室は静寂に包まれた。聞こえるのはリュークが身動ぎした時の音と、ルーシィの規則正しい寝息のみ。そこに、リュークのため息が混ざった。
「………情けねぇな。怒りのままに暴れたくって………ガキの癇癪そのものじゃねぇか。」
選択を間違えたとは思っていない。あそこで我慢していれば見殺しにしていた可能性は高く、もしそうなったら被害はもっと大きかったに違いない。紋章士クルトを選んだのも、数ある正解の1つだと言える。ただ、怒りを制御できず振り回された事にのみ、リュークは不甲斐なさを感じていた。
「………いつまで、俺はガキのままなんだろうな。」
千年も生きれば人としては十分過ぎる長生きだが、竜族の中ではまだまだ未熟な若者の部類に入る。そのギャップを突きつけられているのが今のリュークの現状だった。
「………早く大人になりたいな。」
ボソリと呟いたリューク。すると、医務室にノックの音が鳴り響いた。
「ん?………どうぞ?」
ギルドの連中でわざわざノックして入る人は少ない。そう感じたリュークは不思議がりながら入室を促した。
「………失礼します。」
控え目に開いた扉から顔を覗かせたのは黒い外套………マークだった。
「………君か。」
「……………。」
「………おいで。」
リュークが微笑み手招きをすると、マークはおずおずと医務室に入り、リュークとルーシィのベッドの間に置いてあった椅子に腰掛けた。
「まずは、ありがとう。俺を止めてくれて。」
「………すみません。ああするしか………」
「いいんだよ。あそこで君が飛び出してくれなかったら………俺は、怒りのまま何人も殺していた。」
「……………。」
「………1つ、聞いてもいいかい?」
「はい。」
「もしかして………俺がこうなる事を、知っていた?」
少しの沈黙の後、マークは小さく頷いた。
「何日目のいつかは分からなかった。でも、あなたが大勢の前で誰かを殺してしまう事は"知っていた"。」
「………大魔闘演武を辞退しろ、と言ってたのはこれの事だったんだね。」
「はい………それが間違いだったのは、今になって知りましたが。」
「というと?」
「もし本当に辞退していたら、今度はルーシィさんは助からなかったかもしれない。」
「そうかもね。でも結果は、俺が人殺しにならずルーシィも助かった………その点では、君のおかげで一番良い未来を選べた、って事かな。」
「………はい!!」
マークはリュークと、自分の反対側で眠るルーシィを一瞥すると心の底からホッとしたような仕草をした。それを見たリュークは、再び微笑みながら優しい声色で話しかけた。
「マーク。」
「はい。」
「改めて、俺を………もしくは俺達を救ってくれてありがとう。俺は、命懸けであの場に1人で立ち向かった君に報いたい。」
「………。」
「その為に、君の目的を………君が"未来からやって来た"目的を、知りたい。」
「ッ!?」
思わず立ち上がり、壁まで後ずさりしたマーク。すると驚きの隠せない、震えた声でリュークに問いかけた。
「どうして、気づいたんですか………?」
「早い段階で"もしや"とは思ったよ。」
「………なんでですか。どうしてそんな、荒唐無稽な事を信じられるんですか?」
「ルキナがいるから。これが答えにならないかな?」
「!!」
「君に力を貸す紋章士はルキナ以外、"保護者"の面が強い人で固まっている………じゃあ何故親のクロムじゃなくて子のルキナなのかって考えたところ、一番しっくり来た答えは"ルキナが時間遡行の先輩だから"だった。………合ってますか、ルキナ?」
リュークの問いに、紋章士ルキナが現れて答えた。
『その通りです。正直、あなたならもう少し早く結論に到達すると思いましたが。』
「………確かに、ここまで"繋がる"なら、もっと早く断定しても良かったかもしれませんね。」
「"繋がる"………?」
「身内にしか明かしていない俺の本名を知っているのは、君が俺の未来の身内だから。ルーシィと同じ戦い方………言い換えるなら"流派"が同じなのは、君が俺の未来の弟子だから。今はルーシィ以外の弟子はいないからね。あと細かいところで言えば………昨日のモモのシャーベットもか。あそこで考え込んだらデートが台無しになるからスルーしたけど、味が失伝してるはずのウチのレシピと同じだった。」
『………そこまで推理できてたら断定してもいいでしょうに。』
「確証が欲しかったんですよ。荒唐無稽とは言いませんが、突飛な発想ではあるので………そしてその確証が得られたのが、ついさっきだったので。」
『その確証を得た理由を聞いても?』
リュークは咳払いした。
「マーク、君がクルトを"眠らせた"から。」
「ーーー!!」
「一度"起動"してしまえば、紋章士の顕現と"エンゲージ"は誰でもできる。でも紋章士の"起動"と、その逆の"休眠"は………紋章士の"出身地"であるエレオス大陸の神竜王、または邪竜の血を引く者しかできない。だけど今現在、この世界でその血を継ぐ者は俺だけだ………俺以外は、何百年も前に死んだからね。」
「……………。」
「でも、君はその力を使った。そしてその事実と、今までの情報と合わせると俺が出せる答えは1つしかない。」
「……………!!」
リュークは深く深呼吸して、その答えを告げた。
「君は未来から来た、俺の娘だね?」
答えは言わずとも、マークの反応で分かった。
「俺や俺達に何かがあった未来を変える為に時を遡った、ってところか。………いやルキナと全く同じじゃん。もっと早く答えだせたよな、これ。考え過ぎるのも考えものだな………」
一息ついて、リュークは改めてマークを正面から見据えた。
「答え合わせ、お願いできるかな?」
「……………。」
少しの沈黙。それを挟んで、マークは己を隠していた外套を脱ぎ捨てた。
「ーーーーー。」
「………これがあたしの、正体です。」
黒ずくめに隠されていたマークの姿がここで明らかになった。
背丈はウェンディより僅かに低いくらい、
青髪に金髪のメッシュが入ったツヤのある長髪は、高めのポニーテールでまとめられ、
今にも泣き出しそうに潤んでいるのは、髪と同じような澄んだ青色の瞳をした丸い目、
顔はルーシィによく似た、でも幼さの残る可愛らしいもの、
衣装は紋章士リュールのものにそっくりな衣装、
紋章士の指輪が嵌められた左手の甲には紺色の妖精の尻尾の紋章、
そして背中にはリュークの剣、"絆剣リベラシオン"。
「………。」
その姿を見たリュークは、己の答えが疑いの無いとのだと確信した。
「………そう言うことじゃあないんだよな………"大人になりたい"ってのは。」
「………?」
「………すまない、こちらの話だ。」
リュークは布団をどかし、ベッドの端を椅子代わりにして座ると、微笑みながら両手を広げた。
「………おいで。」
「!!」
「………未来の俺がどんなだったかなんて分からない。でも………母さんなら、多分こうした。」
「ここまで、とっても。とーっても、頑張ったね。」
「……………」
不安定な足取りで、しかし真っすぐにリュークへと一歩踏み出したマーク。
「………もっと早く気づいてやれなくて、ごめんね。殺気を向けて、辛い思いをさせて、すまなかった。」
「………ううん、あたしが、あたしが………!!」
ぽろぽろと涙を流し始めたマーク。だがリュークはあくまでも優しくなだめた。
「君は謝っちゃダメ。子供は、甘えてナンボなんだから………だから、さっきまで君に剣を向けた、俺でもよければ………おいで。」
「………!!」
ぽろぽろと流れる涙が、ボロボロと多くなった。
「う。と………」
涙を流しながら更にリュークへ歩み寄ったマーク。
「と………とう、さん。」
そして遂に、マークは腕を広げるリュークの懐に飛び込んだ。
「父さん………!!」
「………本当に、よく頑張ったね。」
「う、あ………うあ、ああ、ああっ………!!」
リュークの胸元に顔を埋めたマーク。最初は嗚咽だったがついには抑えきれず大泣きし始めた。それに対してリュークは全く嫌がらず、広げていた腕の片方をマークに回しもう片方でそっと頭を撫でた。
「とう、さん、だ………!!まったく、グスッ、かわらない………!!あたし、の………だいすき、な、とうさんだ………!!」
「………そうか。」
「やっと、とうさん、って、呼べ………うう、あ、あたしね、あたしね………!!」
「ゆっくりでいいんだよ。俺は逃げも隠れも、いなくなりもしないから。いくらでも聞いてあげるから。」
「うん………!!ぐずっ、ひっ、ぐ!!うああ………ッ!!」
「だから………君の本当の名前を、教えて欲しいな。」
「!!」
ハッと顔を上げたマーク。涙や鼻水を拭くものが見つからず、結局既にビショビショにのリュークのシャツの端で拭ってから、マークと名乗った少女は泣きはらした青い瞳をリュークに向け、本当の名を明かした。
「………ポラ、リス。ポラリス・ソラネル・ハートフィリア。」
「ポラリス………
「うん。父さんにつけて貰った、大切な名前。」
「だと思った。………"暗闇でも迷子にならないように"、とか、"皆を導く標となるように"、とか願ったんだろうな、未来の俺は?」
「………すごい。何で、分かったの?」
「………普段考え過ぎなクセに、こう言う時は安直なんだよ、君の父親は。」
「でも………あたしは気に入ってるよ、大好きだよ、この名前。父さんの一番好きな、夜空に輝く星と一緒の名前。」
「………そっか。」
リュークはホッと胸をなで下ろした。すると泣き止み始めた少女、マーク改めポラリスは不思議そうな顔をした。
「………どうしたの?」
「いや、名前聞いたら安心した。」
「安心………?」
その時だった。
「う、うーん………」
「あ、起きた。」
「!!」
「騒がしいわね………一体なに、が………?」
騒がしくて目を覚ましたルーシィ。目をこすりながら周りを見渡すと、そにはリュークに抱きついている、剣を背負った謎の少女。
「誰よその女!?」
………などと問い質す前に、その少女はルーシィの胸元に飛び込んでいた。
「へ………?」
「母さん!!」
「へ?」
「かあさん、だ………ぶじで、ひぐ、よが………っ、あ、うああ………!!」
「へ、なになに急にどうしたのよ………っ、て。」
急に飛び込んで来たかと思えば再び大泣きしながら自分を母さんと呼ぶ謎の少女。一体何事なんだと戸惑うルーシィだが、冷静にその子を観察して、次第に理解し始めた。
「(この声………マーク?でもリュークの剣背負ってるし、服装も似てる………それであたしを"母さん"………)」
ルーシィは戸惑ったままリュークを見た。
「………"そう"言うこと?」
「………うん。"そう"みたい。」
「そっかぁ………いや、もしかしたら、って思ったけど………」
「………だよね。」
2人は困ったように笑った。その間も、ポラリスはルーシィの胸に顔を埋め号泣していた。
「ひっぐ………とうさん、かあさん………!!うう………グズッ、ああ………!!」
「………この泣き虫っぷりは、俺に似たな。」
「………そうみたいね。困ったわ、お世話しないといけない泣き虫が2人に増えたじゃない。」
「誰が誰にお世話されてるって?」
「あははっ、誰でしょう。」
ジト目で睨んだリュークを、からからと笑って流したルーシィはポラリスに目を向けた。
「そう言えば、あんたの名前、まだ聞いてなかったわね。」
「ぐず………ポラリス。」
「ポラリスね。」
するとルーシィはポラリスを抱き寄せた。
「安心して、ポラリス。あたし達は味方でいてあげるから。
「ぐず………ありがと、ありがとう………だいすきだよ………かあさん、とうさん………!!」
そのままリュークとルーシィは、未来から来た娘と判明した幼い少女、ポラリスが泣き疲れて眠りにつくまで側にい続けた。
続く
と言うわけです。
以前私は言いました。リュークの子供を出すのは無理だ、と。
でも今後の展開から、原作から"あること"を変化すればクロムとルキナのオマージュ行けるぞ?となりまして。
なんで出て来て貰いました!!リュークとルーシィの未来の娘です!!詳しいことは次回以降に出しますが今回は出て来た情報だけ載せます!!
○マーク
↓
○ポラリス・ソラネル・ハートフィリア
未来からやって来た、リュークとルーシィの娘。
過去へ来た理由や詳しい性格は現時点では不明。
外見情報は以下の通り。
・身長はウェンディより少し低い
・髪は青色に金のメッシュ、髪型は高い位置で結んだポニーテール
・くりっとした目に髪と同じ青色の瞳
・顔は幼さが残るもののルーシィそっくり
・衣装は紋章士リュールそっくりの装束
・左手には紋章士の指輪と、手の甲には紺色の妖精の尻尾の紋章
・背中に"絆剣リベラシオン"を背負っている
CV:遠藤綾