FAIRY EMBLEM   作:jyosui

124 / 125
※今頃ポケモンチャンピオンズでポケモンバトルに勤しんでるやろなー、と思いながらの予約投稿です。ゲーム楽し過ぎて投稿スピード落ちてるのはごめんなさい。

さておき、今年の子供英雄は風花雪月の三級長+フェリクス、イングリットか
わァ………あ………(溢れ出す涙)

お前よぉ、エルディミの武器が例の短剣な時点でアカンし、時期的にダスカーの悲劇直前っぽいからグレンご存命やろ………?

他の子供英雄と比べてダントツに"悲劇の手前"度が高いの刺さる………!!


107章 霧中の先に

4日目のバトルパート、"タッグバトル"。その第3試合の妖精の尻尾vs剣咬の虎はナツ、ガジル、スティング、ローグの4人の滅竜魔導士に加えリネンの乱入とリュークの指名により"トリプルバトル"に様変わり。しかし闘技場に降りて早々にリュークは"術式"でナツとガジルを閉め出し、1人でスティング、ローグ、リネンを前に構えた。

 

「くっそ!!どうやったら解除するんだこの"術式"は!?」

「何だよガジル、おめーレビィから教わってねーのかよ。」

「何でここでアイツの名前が出るんだよ!?」

「………ちぇっ、使えねーな。」

「ンだとコラ!?セイバーの連中やリュークより先にテメェからぶっ飛ばしてもいいんだぞ!?」

「上等だコラ!!全部燃やし尽くしてやるよ!!」

 

所変わって医務室。中継で映し出された闘技場の映像を、ルーシィはポラリスを膝に乗せ共に観ていた。

 

「………。」

「どうしたの、母さん?」

「………ううん。ほんのちょっと、驚いただけ。」

「驚いた?」

「そ。………あれを、"親の顔"って言うんだろうな、って。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「頑張って、父さん!!カッコいい姿、期待してるね!!」

 

いまいちやる気の無かったリュークの目の前に出て、上目遣いで迫ったポラリス。するとリュークは優しく微笑んでからポラリスの頭をくしゃっと撫でた。

 

「仕方ない。なら期待に応えられるよう、頑張るとしよう。」

 

そう言って、リュークは医務室を出た。その時の微笑みは、ルーシィが見たことの無いものだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………とんだウソつきじゃない。………あんたもう十分に、"親"の顔だったわよ。」

 

==========

 

「さて………」

 

リュークは審判団の方を見た。

 

「始めて貰えますか?人待たせてるので。」

「え。あ、はい………では、お待たせしました!!試合開始!!」

 

試合開始がコールされたと同時に、動き出したのはスティングとローグ。

 

「俺達を1人で相手するなんてふざけた事言ったのを………」

「後悔させてやるよ!!」

「………。」

 

だが双竜の拳はまだ、リュークには届かなかった。

 

「誰も1対3をするとは言っていないぞ。」

「「!!」」

 

双竜を止めたのは2体の霧の兵隊。続けてリュークの周りに武器、兵種のバラバラな10体現れたのだが、この12体の霧の兵隊は普段彼が生み出すものとは全然違った。

 

「"紫煙騎兵団(パープルヘイズ)・十二魔将"………特別に、一味違う兵力をお見せしよう。」

 

暗黒教団に伝わる伝説の戦士、十二魔将。リュークは"紫煙騎兵団"でそれを再現し、普段より多くの魔力を注がれた12の兵隊をスティング、ローグ、リネンにけしかけた。

 

「この程度で………!!」

「邪魔だ!!"白竜の鉄拳"!!」

「"影竜の斬撃"!!」

 

しかしそこは剣咬の虎が誇る双竜。スティングとローグはそれぞれの攻撃で向かって来た霧の魔将を容易く蹴散らした。

 

『気をつけて!!』

「「!!」」

「ち………"神霧の霞斬り"!!」

「「ぬぐ………っ!!」」

 

霧の魔将に陽動させた隙に双竜の背後に上忍へ"クラスチェンジ"していたリュークは回り込んでいた。しかし紋章士ティバーンと"化身化"していたリネンの声かけにより双竜の防御態勢が間に合い奇襲は失敗に終わった。

 

「(リネンに読まれてるな………こっちが先か!!)」

 

竜特効の霧を纏わせた戦技の一撃が上手く決まらなかったのを確認したリュークは標的を残りの魔将と交戦しているリネンに変更し飛びかかった。

 

「"神竜の燕返し"!!」

 

桃色の波動を纏った飛行特攻の一振り。今度は綺麗に捉えたハズだった。

 

「!?」

 

しかしその一振りは空振りに終わった。リネンはその場から消え、その場に残ったのは青紫の火の玉のみだった。

 

「鬼火………いや、"狐火"!!」

『そんな様子見はやめて………』

「!!」

『私達と遊んでよ!!"四牙"!!』

 

紋章士ティバーンはフェイク。本当は紋章士ニシキのスキル"狐火"で化かしていたリネンは奥義"四牙"で霧の魔将を一掃し更にリュークへと噛み付いた。

 

「読んで来るか………っ!!」

『そりゃあ、あなたのやり方は知ってるからね!!』

 

共闘した経験があるから、と言う理由だけではない。リネンは彼の戦い方の"師匠"を知っている。リュークと比べるとあまりにも短い時間であるが、同じ師からの薫陶を受けている。故に、本人は苦手意識を持っていてもある程度の予測は可能なのである。

 

「全く、面倒だなぁ!!」

『褒めてくれてありがとう!!今の内に、決めて!!』

「!!」

「"白竜の………」

「"影竜の………」

 

リネンの噛みつきを"絆剣リベラシオン"で受け止めたリューク。だがその間に、態勢を立て直していたスティングとローグは咆哮(ブレス)を放つ準備が整っていた。

 

「………なら。」

『!!』

「"神竜の撃鉄"!!」

『っぐぅ………!!』

 

リュークは"絆剣リベラシオン"を手放した。それにより均衡が破れ前のめりに崩れたリネンを逃さず"神竜の撃鉄"で吹き飛ばし、手応えを確認する前に次の行動に移った。

 

「"神霧の竜鱗"!!そして………!!」

「「咆哮"!!」」

 

防御態勢を整えた所に、双竜の咆哮が飛んで来た。

 

「………!!」

 

十重二十重に張られた霧の盾。しかし双竜の、竜殺しの咆哮はそれを容易く貫いてリュークに炸裂し、爆発と土煙を上げた。

 

「やったか!?」

「………そう簡単に………」

「!!」

「やられるかよ!!お返しの、"神竜王の咆哮"!!」

 

だが土煙の中からリュークは返しの咆哮を放ち、それはスティングとローグに命中。

 

『大丈夫!?』

「問題無い。だが………」

「なぜ、俺達の咆哮を食らって、反撃できる程ピンピンしてる………!?」

 

スティングとローグもリュークの正体は知っている。その上で、特効ダメージをまともに受けたハズなのに反撃できたのかが2人には不可解だった。だがその答え合わせはすぐに土煙が晴れると共に出された。

 

「………流石は、滅竜魔導士だ。"神霧の竜鱗"に"魔封じの盾"に"聖盾"の奥義、咄嗟に張れる最大防御を容易く貫いて来た。」

 

そこそこのダメージを受けていたリューク。だが致命傷を免れていたのは、"ある手段"で竜特効を無効にしていたからである。

 

「"始原の宝杯"………"アイオテの盾"とはわけが違うのは覚悟していたけど、まさか使い切りとは。"神器錬成"の5倍の魔力は注ぎ込んだハズなんだけどなぁ………特効を無くすのは難しいな。」

 

その"ある手段"とは"始原の宝杯"、紋章士ベレトの世界にて、"神祖"と呼ばれた者が作り出したとされる金色の杯。その加護により所持者の持つ特効を打ち消し、更に反撃しやすくする"応撃"の効果もあり、それで双竜の咆哮のダメージを抑えた。しかし本家と違い、リュークの再現では使い切りの消耗品にするのが限界だった。

 

「………興醒めだな。」

「興醒め、とは?」

「1人で俺達3人を相手する、なんてカッコつけておきながら随分とコソコソと逃げ腰だからな。」

「………つまり?」

「ダサいったらありゃしないって意味だよ。小手調べはそこまでにして、本気でかかってこいよ。」

 

スティングの挑発。だがリュークも即座に返した。

 

「そりゃあ、小細工の効かない格上だったジュラさんとは違うからな。」

 

その言葉に引っかかったのか、スティングの眉がピクッと動いた。

 

「………俺達が小細工に翻弄される格下とでも言いたいのか?」

「その通りだよ、"挑戦者(チャレンジャー)"。本気を出して欲しいならそれなりのものは見せてくれないと。」

「てめ………!!」

 

鼻で笑いながら挑発し返したリューク。その態度にスティングが突っかかろうとしたがリネンが肩を掴んで止めた。

 

「ストップだ、スティング。」

「なんだよリネン………!?」

「ああやって怒らせて、周りを見えなくさせて隙を作るのはリュークさんの常套手段。乗ったらダメ、自分のペースを崩さないこと。」

「………なるほど。」

「………分かったよ。」

 

するとスティングとローグは更に魔力を籠めた。

 

「"ホワイトドライブ"。」

「"シャドウドライブ"。」

 

それぞれ白い光と黒い影を纏い、魔力を増幅させたスティングとローグ。

 

「"クラスチェンジ"、兵法者。そして、"ビターブレイド"、あとは"ツイスター"、"ロリポックス"、"アルクロワッサン"、"ダンブラザーズ"、"ティラミストーム"………そして出でよ、黒鷲天馬隊。"応撃の構え"。」

 

多数の武器を出し、その中から自らは"ビターブレイド"を手にして、他の武器は生み出した天馬騎士の部隊に持たせ、更に"始原の宝杯"と同じ効果、万全な反撃態勢を取る計略である"応撃の構え"を取り、次の攻撃に備えた。だがその光景に、スティングだけでなくローグの額にも青筋が走った。

 

「………テメェ、死にたいみたいだな。」

「………ここまで馬鹿にされるとは。」

「(………何が目的………!?)」

 

スティングとローグが怒り、リネンが戸惑う理由。それはリュークの出した武器がどれも"ふざけている"からだ。

 

「(チョコの剣、ソフトクリームの槍、キャンディの斧、クロワッサンの弓、団子の暗器、あとは名前からしてティラミスの魔法………どれも、お菓子の武器!?)」

 

リュークや、その取り巻きの霧の天馬騎士隊の持つ武器。それはどれもほのかに甘い香りを発する、お菓子でできた武器である。

 

「絶対に何か企んでる、気をつけて!!」

「………その必要は無い。」

「ここまでナメた奴は初めてだ………!!ここで、潰してやる!!」

 

猛然と突撃した双竜。対してリュークはあくまでも平静だった。

 

「………まぁいいや、こっちの方が都合がいい。」

 

そしてチョコの剣、"ビターブレイド"を片手で構えると反対の手で"竜石"を握った。

 

「"竜神化"。」

 

"竜石"による身体強化でドラゴンフォースの疑似再現を行ったリュークは、突っ込んで来る双竜に合わせるように"ビターブレイド"を振るった。

 

「はあっ!!」

「「!?」」

 

このお菓子武器、見た目はふざけているがれっきとした武器である。例えばこの"ビターブレイド"、威力自体は"鉄の剣"と遜色無い。見た目以外で違う点は2点。1つは"お菓子としては"硬いが金属製とは比べるまでも無く、脆いこと。フルスイングで振るわれた"ビターブレイド"は双竜をかっ飛ばした反動で砕けた。そしてもう1つ。

 

「………やっぱり、あんまり美味しくないや。」

 

それは食べられること。あくまでも武器として加工された物なので味は二の次だが体力回復や糖分補給の為のその場しのぎの非常食としては使える。そして砕けたチョコの破片を更に噛み砕いて飲み込むとリュークは更に煽った。

 

「しっかりしてくれよ!!このままじゃ、俺は菓子ごときに足止めされるような雑魚の挑発にまんまと乗った間抜けみたいじゃあないか!!」

「「………潰す!!」」

「………"鬼神の呼吸"………そこ!!"旋風槍"!!」

 

挑発に乗って再び突っ込んで来た双竜に対してリュークはソフトクリームの槍、"ツイスター"を手に取り大きく横に薙いだ。しかしスティングは光速で、ローグは影となってかわした。

 

「そんな遅い攻撃、当たるかよ。」

「影は捉える事ができない。」

 

そこから反撃を仕掛けようとした双竜。だがリュークもここは通さない。

 

「いいや、当てるとも。そのための"応撃の構え"だ。」

「「!?」」

 

双竜の反撃が入る、その直前に霧の天馬騎士が割り込みキャンディの斧、"ロリポックス"を振り下ろし攻撃と共に叩き割った。

 

「もう忘れてるみたいだね、俺は1人で戦わない卑怯者だって!!」

『………忘れてるのは、そっちもじゃない?』

「………!!」

『行くよ、ラタトスク。全力で、"激突"するよ!!』

 

リュークが双竜とやり合っていた間、闘技場の反対側に回っていたリネン。彼女は"化身化"する紋章士を紋章士ラタトスクに切り替えると大きな栗鼠の姿でリューク目掛けて突進。

 

「"ロングアーチ"、そして"全身全霊"!!」

『やあああっ!!』

 

リュークは"ツイスター"の槍を、投げ槍の戦技で放ってから"ロリポックス"の斧に持ち替え、渾身の大振りを選択。しかし紋章士ラタトスクのスキル"激突"は、距離を取れば取るほど力と速さが上がるもの。最高速度の捨て身タックルはリュークの"ロリポックス"を粉砕し、その勢いのままリュークを"術式"の壁まで突き飛ばした。

 

「………ち!!"ダンブラザーズ"!!」

『当たるもんか!!』

「当たらずとも止まってもらう!!そこの2人もな、"ティラミストーム"!!」

 

再び距離を取ってから再突撃を仕掛けようとしたリネン。だがリュークは三色団子の暗器"ダンブラザーズ"と、ティラミスの嵐を巻き起こす魔道書"ティラミストーム"で進行を塞いで追撃を塞いだ。

 

「………こいつは、手強い。」

『スティング、ローグ、何度でも言うよ。落ち着いて、惑わされないで。』

 

双竜を窘めながら足踏みをしたリネン。すると彼女の周囲に傷を癒す霧が発生し彼女や双竜の体力を回復させた。これが"癒し手"として9つの世界を渡り、傷ついた人々を癒したラタトスクの、紋章士としての能力である。

 

「………やっぱり、こっちの手がある程度読まれてるのはキツイな。」

『………恐らく、残り5分ちょっと。無駄にできる時間はもう無いんじゃないですか?』

「確かに、10分と時間を設定した以上決めきれないとダサいね………どうしたものか。」

 

だが言葉と裏腹に、リュークの余裕は崩れない。

 

「それじゃあ、決めさせて貰おうか。」

 

すぅ、と大きく息を吸い込んだリューク。

 

『来る………!!』

「上等だ………」

「跳ね返して返り討ちにしてやる………!!」

 

3人の取った選択は防御並びに回避の態勢。それでリュークの大技を凌ぎ、カウンターで一気に勝負を決める手に出た。それを見たリュークは………ほくそ笑んだ。

 

「ハズレだ、ガキ共。」

「「『!?』」」

「奥義。」

 

そしてリュークは吸い込んだ息を吐いた。

 

「"幻霧の伏竜殿"。」

 

口から放たれたのは今までに無い高密度の霧、それが一瞬にして闘技場全体を包み込んだ。それによりスティング達の視界が濃霧に遮られただけでなく、観客も闘技場の様子が見えなくなった。その間の闘技場内はと言うと、上下左右前後、全ての方向から霧の槍が殺到し3人に襲いかかった。

 

「「『がは………!?』」」

《光を通さず、さりとて影も生まず………そして我が霧の騎兵が無限に潜んでいるこの"神殿"、お前達ごときに攻略できるかな?》

 

いくら払っても、紋章士ラタトスクの回復効果で上書きしようとしても即座に霧が押し潰してしまう。その霧の全方向から紫煙騎兵団が神出鬼没で現れ、その場を完全に支配した。

 

「………どこまでも馬鹿にしやがって!!」

《馬鹿にされたくなければ見つけてみな。3分だけ時間をやるから。》

「言われなくて、も………?」

「………なん、だ!?」

《どうした?3人とも"鼻が効けば"一発で見つかるものだと思ったが。》

『………やられた!!』

 

==========

 

『………まさか、こんな形で"最悪の相性"を覆すとは。』

 

リュークの発動した"幻霧の伏竜殿"により観客席から見えなくなった闘技場。観客席からは不満の声も上がり始める中、メイビスはボソッと呟いた。

 

「初代は霧の先を見えておられるのですか?」

『いえ。ですが、ここまで詰めたら完全勝利(チェックメイト)です。』

 

首をかしげる一同に対し、メイビスは説明を続けた。

 

『滅竜魔導士の強みは竜の力を使う、同属性の吸収による強化と無効化、そして単純な五感の強化の3つ。そのうち五感の強化が厄介で、恐らく2人の滅竜魔導士だけでなく獣人の紋章士を扱う彼女もそうですが、リュークの主戦術である霧の撹乱も音や臭いで見破ってしまうのです。その中でより消しにくいのは臭いの方ですが………まさか、あんな手札を隠し持っていたとは。』

 

するとメイビスは首を横に向けた。その視線にいたのは、キャンディを手にご満悦のアスカ。

 

『お菓子の武器を出したのは、完全に相手を挑発し、相手の判断力を鈍らせる為だと思っていました。実際その効果もあるのでしょうが、真の目的はあの霧を出すまで私も気づきませんでした。』

 

==========

 

『(………やられた!!)』

 

再度、内心で毒づいたリネン。その理由は、ここでようやくリュークの作戦に気づき、自分の読みが完全に外れたから。

 

『(お菓子の武器は"仕込み"を隠す為の"カモフラージュ"だと思い込んでいたけど、こっちが"本命"の"仕込み"だったんだ!!)』

 

"化身化"の紋章士を鼻の効く紋章士フランネルに切り替えたリネン。しかしいくら嗅いでも鼻に入って来るのは敵の臭いでは無く、砂糖の甘い臭い。

 

『(本来なら霧でいくら視界を塞いでも鼻と耳が良い私達なら見破れる。特に臭いは音と違ってそう消せるものじゃない………だからリュークさんは、お菓子の甘い臭いを充満させる事で自分の臭いを隠した!!)』

 

お菓子武器を多数用意し、それを積極的に砕いていたのはお菓子の甘い臭いを闘技場内、そして自分につける事で相手の嗅覚を封じるため。

 

『(霧で視覚を、お菓子で嗅覚を封じられた。触覚と味覚はあまり意味をなさない、となると残り………)』

《来ないのか?なら尻尾巻いて逃げるがいい………"幻霧の大魔神"。》

 

すると霧の中から幻影の竜が現れ、吠えた。

 

《グオオオォォォッッッ!!》

『(咆哮で、聴覚も塞ぎに………五感を、奪いに来た………!!)』

 

顔をしかめながら、それでも僅かな情報を探ろうと耳と鼻を澄ませたリネン。

 

「………ぉい、ローグ!!俺は味方だ!!」

「………れはこっちのセリフだ!!何故俺を攻撃する!?」

『まさか、同士討ち………!!止めないと………!!』

『(待ちな。死にに行くつもりか?)』

 

霧の中からリュークが紫煙騎兵団をけしかけてスティングに闇魔法を、ローグに光魔法を当てる事で混乱させ同士討ちにまで持ち込んだ。耳を澄ませてようやくそれに気づいたリネンは止めようとしたが、紋章士ティバーンが待ったをかけた。

 

『(今突っ込んでも、同士討ちが3人になるだけだ。)』

『だけど………!!』

『(はっきり言うぞ。お前も、俺達も、あいつらも、リュークの策に気づけなかった時点で完敗だ。)』

『………!!』

『(ここが戦場ならもう逃げの一手なんだが………今回はそうも行かねぇ。となると残る手はこの霧を何とかするしかねぇんだが………)』

 

紋章士ティバーンはため息をついた。

 

『(生憎、広範囲を払うような技は不得手な奴ばかりだ。あの"化石親父"でもいればいくらかは楽だったが………)』

『"化石親父"?』

『(………また今度話す。それよりも………)』

『その中でも比較的得意なのは………アシュ、交代!!』

 

リネンは"化身化"を紋章士ラタトスクから紋章士アシュに切り替えた。

 

『開神の力を以て、この霧を"開く"!!"壁炎"!!』

 

紋章士アシュの"開く"特性を乗せた、炎を纏ったレーザー。縦に横にと放たれたそれは確かに霧を"開いた"。

 

「そうか、その手があったか。」

『………!!』

「だが、3手ほど足りなかったな。」

 

だが霧を払った先にあったのは"影"。空を覆い尽くす、霧の竜騎士の群れが遠距離武器を構えていた。

 

「見下される気分はどうだ?」

 

竜騎士の中心にいたリュークは下からの返事を待たず、右手を上から下ろした。

 

「"灰燼射撃"、始め。」

 

真上の、それも相手の射程外から降り注ぐ、槍に矢弾の大雨。

 

「続けて"車懸"、そして側面から"猛火計"………すり潰せ。」

 

矢弾を出し切った霧の竜騎士の半数は近接武器に持ち替え急降下し時間差の突撃。もう半分は炎魔法を出したかと思うと自らを着火させ、無数の火の玉として側面から突撃。それを確認して、リュークは見慣れない魔道書を手にし、ここでようやく紋章士の顕現をした。

 

熾火せ(ともせ)、煌炎の紋章士(エムブレム)。"クラスチェンジ"、大賢者(アークセイジ)。」

 

顕現したのは紋章士リリーナ。魔法攻撃にかけては右に出る者はいない彼女を顕現して繰り出す魔道書とは。

 

「………アイズが作った魔道書。どんなものか、"渡す"前に試し撃ちと行こうか。」

 

魔道書に魔力を流し込みながら、リュークは最終準備に取り掛かった。

 

「"誘引の計"。」

 

残った霧の竜騎士で防戦一方の3人を中央に"引き寄せ"るのは容易であった。

 

「………これで、終わりだ。」

 

突き出した右手を照準として狙いを定め、魔力を解放したリューク。

 

「全天88星、光る………!!」

 

==========

 

その詠唱が闘技場に響き、最初に反応したのは青い天馬のヒビキ。

 

「まさか、あの魔法は………!!」

 

当然である。この魔法は彼が教えた魔法である。他にも、妖精の尻尾の観客席もにわかに騒がしくなり始めた。

 

「ちょっと待って、あの魔法って………」

「あいつ、いよいよ何でもアリだな!!」

『………でも、"本人"の使い方からして相応の溜めが必要なのでは………まさか!!』

 

メイビスが振り向いた先に座っていたのは、その魔道書の"作者"。その"作者"はニコリとだけ微笑んでから話し始めた。

 

「僭越ながら、"お妃様"への贈り物として書き上げました。」

 

そして視線を闘技場に戻し、呟いた。

 

「丁度良い。試し撃ちついでに、リベンジも果たしてしまいなさい。」

 

==========

 

そしてついに、その魔法が放たれた。

 

「"ウラノ・メトリア"!!」

 

繰り出される星々の爆発。それはルーシィが放つ"本家"のそれと比べると威力も落ち、爆発もコンパクトなものだった。それでも威力は十分、対象の3人だけでなく残っていた霧の竜騎士にも命中し、霧の兵隊は全て霧散した。代わりに巻き起こった土煙が晴れてからようやく、リュークは地面に降り立った。

 

「("スターライト"を参考に書かれた"ウラノ・メトリア"の魔道書、威力の割には最低限の溜めで放つには十分………と。いくら里一番の知恵者いえど、神器を一晩二晩はめちゃくちゃだけど、これならルーシィの助けになる。感謝しないとね。)」

 

パタン、と"ウラノ・メトリア"の魔道書を閉じたリューク。その目の前には大ダメージを受けた剣咬の虎の3人が膝をついてリュークを見上げていた。

 

「もう一度聞こう。ろくに戦わせてもらえず、いいように翻弄された挙句地面に転がっているのを見下される気分はどうだ?」

「「………!!」」

「……………。」

「不機嫌な竜にちょっかい出したらどうなるか、よく分かった………いや、"思い出した"だろう?そこんとこ、お前のとこのボンクラ(マスター)に言っておけ。」

 

淡々と述べた後、リュークが"ウラノ・メトリア"の魔道書の代わりに出したのは"リザーブ"の杖。広範囲の味方を回復させるその杖に魔力を籠めると、目の前で膝をついていた3人の傷が癒えた。

 

「「「!?」」」

「さて、これで"前座"はおしまい。断つ鳥跡を濁さず、"主役"に出番を明け渡すよ。」

 

くるりと踵を返したその瞬間、火炎と黒鉄の竜巻が闘技場の端で巻き起こった。

 

「"神器錬成"、"封印の魔道"、そして"蒼炎の斧"………せいっ!!ぬぅん!!」

 

するとリュークは"神器錬成"で"フォルブレイズ"の魔道書と"ウルヴァン"の斧を出し、"フォルブレイズ"を火炎の竜巻の中に放ってから"ウルヴァン"を黒鉄の竜巻の中に投げ込んだ。そこでようやく2つの竜巻が止んだ。

 

「「………ごちそうさん。」」

「それはそれとして………」

「よくも俺様を差し置いて1人で楽しんでくれたな。あいつらを片付けるのは俺様だってのに。」

「んだと!?俺1人で十分だって何回言ったら分かるんだ?お前バカか?」

「誰が誰に向かってバカだって!?」

「いいぜ、あいつらより先に俺がお前とリューク倒してもいいんだぜ!?」

「やってやろうじゃねぇかこの野郎!!」

「………勘弁してくれ。それより向こうはお待ちかねのようだよ?」

「「「……………。」」」

「残り20分………時間は十分だろ?」

「10分もありゃ十分だ。」

「いーや5分だ。」

「んだと………」

「張り合うな。それより、追加の援護はいるかい?」

「「いらねぇ。」」

「言うと思った。じゃ、あとは任せた。」

 

リュークはそこで下がり、代わりに今まで待ちぼうけを食らったナツとガジルが前に出た。

 

「それじゃあ、第二ラウンドだ。安心しな、さっきのリュークと違って、正面から叩き潰してやるから、かかってきな。」

 

 

続く




・"始原の宝杯"
特効無効と"応撃"効果を持つ、風花雪月でお馴染みのぶっ壊れアイテム。これ持たせたベレ先か三級長を戦場のど真ん中に放り込むだけでノーマルくらいなら終わるレベルのチート。
"神器錬成"で神器まで再現できるようになったリュークですが、さすがにこれまで再現できたら話にならなくなるので消費アイテム扱いにしました。

・お菓子武器
シリーズお馴染みの、いわゆるネタ武器。フライパンやおたまで相手を殴り倒したり、大根二刀流したりとかですね。実用性皆無………かと思いきや錬成すれば誰でも扱えたりとか、見た目に反して性能はガチなパターンもまれにあったり。
んでエンゲージのネタ武器は、お菓子の武器です。武器威力も大した事ないし、消費アイテムとして使えば回復しますけど普通に"きずぐすり"使った方がいいレベル、見た目特化の文字通りネタ武器………ですがリュークは思わぬ使い方をする事に。

・"幻霧の伏竜殿"
高密度の霧を広範囲に展開、霧の"神殿"を形成して敵を閉じ込めるリュークの新奥義。敵の視界を制限する上に前後左右上下からノーモーション、ゼロ距離で紫煙騎兵団を出し滅多刺しにできる。また今回は使わなかったが"神霧の竜鱗"をやたらめったら出す事で霧の迷宮を形成する事も可能。

・"あまいかおり"戦法
霧で視覚を塞いだところで、相手は滅竜魔導士やら猛獣に変身するリネン。嗅覚で居場所を看破されてしまうので無意味………
そ・こ・で
のお菓子武器です。紫煙騎兵団使ってまで使い倒しの壊しまくりでお菓子の、お砂糖の甘い香りを周囲にぶち撒けて相手の嗅覚を封じました。

ナメた見た目の武器で相手を挑発して、相手を怒らせて視界を狭める間に仕込む………と言うミスリードで、リュークのやり方を知るリネンも騙しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。