ハルジオン沖に浮かぶ小さな島、ガルナ島。"悪魔の島"と呼ばれ、地元の漁師はおろか命知らずの海賊すら近寄るのを拒むこの島の依頼を無断で持ち出したナツ、ハッピー、ルーシィ、そして彼らを連れ戻そうとして巻き込まれたグレイ。
そんな彼らを待ち受けていたのは悪魔に変貌する呪いを受けた島民、その原因となった"紫の月の破壊"という荒唐無稽な依頼。更にはかつてグレイの師匠、ウルが命懸けで封印した悪魔デリオラと、そのデリオラの復活を目論む"零帝"改めグレイの兄弟子リオン率いる一味であった。
一度体勢を立て直すべく村に戻った一行だが、零帝一味の幹部として動いていた、魔導士ギルド
「あ、アクエリアスは敵味方関係無しに、大波を起こすのよ………」
「キーッ!!う、うかつでしたわ………」
星霊を操られる、という"天敵"との戦いで圧倒的に不利だったルーシィがとった策、それは彼女の切り札である星霊アクエリアスだった。元々召喚者であるルーシィを巻き込んでの激流で攻撃するアクエリアスの性格を計算に入れたルーシィは、まんまとアクエリアスを操ったシェリーを巻き添えにする事に成功した。
「しかし、
「それが何?あんたさえフラフラにできれば、岩人形は倒さなくていいの………」
アクエリアスの攻撃をもろに受けて互いにフラフラになっていたルーシィとシェリー。
「じゃあ、これで………どうかしら!?」
「んぎょ!!………わ、わたくしが………負け………」
だが一足早く立て直したルーシィがラリアットを決め、シェリーを沈めたのだった。
「たとえ私の命の灯が消えようとも、零帝様への愛に偽り無し。」
「死にゃしないわよ、大袈裟ね!!」
「アンジェリカ、私の仇を………」
シェリーが気絶したのと同時に、シェリーが連れていた数メートルサイズの大きな鼠、アンジェリカが跳び上がった。
「チュー!!」
「え?こいつ人形じゃないの!?」
動こうとしたルーシィだが、ここで魔力が底をつき、ルーシィは力無く砂浜に座り込んでしまった。
「(やだ、足が動かない………!!)」
「チュー!!」
「あ、ああ、ああああああ………!!」
上空からルーシィを仕留めようと降下してくるアンジェリカ。動けないまま悲鳴をあげるしかできないルーシィ。もうダメだと目を瞑ったルーシィを、アンジェリカが捉えようとした、その瞬間。
ザン
「チュウゥゥゥーーー!!」
「!!」
二筋の剣閃が同時に走りアンジェリカを斬った。そしてアンジェリカは断末魔をあげながらドシンと音を立てて倒れた。
「エルザ、前から思ってたんだけど剣は誰に教わった?」
「私のは我流だが。」
「そうか………なんかたまに剣筋が俺のと似てる時あるんだよね。」
「リュークにエルザ!!」
アンジェリカの撃破を確認したリュークとエルザはルーシィの方を見た。だがその瞬間、他愛もない会話をしていた二人はルーシィを憤怒の表情と共に鋭く睨みつけた。
「あ………(そうだ、あたし達ギルドの掟破ってS級に来てたんだった………!!)」
「………何か言う事は?」
「ご、ごめんなさい………」
蛇に睨まれた蛙のように動けないルーシィはリュークの、聞いたことの無いようなドスの利いた声に謝るしか無かった。
「ルーシィ、大丈…ぶ。」
そんな時に運悪く、ルーシィの様子を見に来たハッピーが合流。状況を察したハッピーは来た道を引き返そうとしたが背中を向けた瞬間に矢がハッピーのすぐ横を掠めた。
「次は当てる。」
「………!!」
逃げるのを諦めたハッピーは呆気なくエルザに捕まった。
「バカ一人と一匹は確保。あとはもう一人のバカだけか………」
「ナツはどこだ。」
するとルーシィが話し始めた。
「ちょっと聞いて!!勝手に来ちゃった事は謝るけど………今この島は大変な事になってるの!!氷漬けの悪魔を復活させようとしてる奴等がいたり、そいつらの魔力で村の人達が苦しんだり………とにかく大変なの!!」
「「………」」
「あたし達………なんとかこの島を救ってあげたいんだ。」
リュークとエルザに対して島の状況を説明し、必死に訴えたルーシィ。それに対してのリュークの返答は、剣をルーシィの首元に突き付ける事だった。
「身の程をわきまえろ。」
「………!!」
「今さっき死にそうになってた奴が、島を救えるとでも?」
「う………っ。」
「………人を助けたいという優しさ、勇気は結構。だが、それで身を滅ぼすようじゃ話にならん。」
剣を下ろしたリュークだが、言葉は続けた。
「早死にしたくなければ、諦める事を覚えるか、あるいはもっと強くなるかだ。とにかく、まだ君が来ていい所では無い。」
「……………。」
「他にも言いたい事は山とあるけど………今は他の皆を探すのが先決か。」
「ルーシィ、状況を説明しろ。」
「は、はい………」
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「悪魔の呪いに、氷漬けにされたゼレフ書の悪魔デリオラ、封印を解く"
零帝の一味により破壊された村に住んでいた、悪魔の呪いを受けた村人達が避難した村の資材置き場のテントにてルーシィから話を聞いたリュークとエルザ。
「で、どうするつもりだ。」
「………どうだろうね。ひとまずナツを捕まえてから考えるよ。」
「捕まえる、と言ってもナツの居場所が分かるのか?」
「まぁ、ね。一応フェルトにも捜索を頼んではいるけど正直無くても検討はつく。」
そう言うとリュークは立ち上がった。
「という訳で、俺は先に行く。後は頼むよ、エルザ。」
「分かった。」
リュークはテントを出ると、とある場所へと迷わず一直線へ向かった。
「ナツみたいなのはとりあえず騒ぎの中心に行けば見つかる。つまりは、氷漬けのデリオラが置かれ、零帝一味が"月の雫"を使おうとしている、あの遺跡。」
森の向こうに見える遺跡。一連の騒ぎの中心となっている所でならナツが見つかると確信し、リュークはその方向へとまっすぐ向かった。
「ホーッ。」
「フェルト、ナツはいたか?」
「ホーホッ。」
「見えないか。まぁここにはいるでしょ、それよりも遺跡の構造を見てくれ。」
「ホッ!!」
フェルトに新たな指示を出し、再び歩を進めるリュークだが、そこに待ったがかかった。
「いたぞ、妖精の尻尾の魔導士だ!!」
「さっきいなかった奴だ、新手か!!」
「………。」
布で顔を隠した零帝の手下に囲まれたリュークだが、彼は周りの敵に一瞥すらせず指輪を掲げた。
「
リュークの呼びかけに応じて顕現されるは黒を基調とした鎧に身を包んだ妖艶な女性。
『あら、今回は私なのね。てっきり、あの子の出番かと思ったけれど。』
「ええ。今回は夜を終わらせるのでは無く、月を隠すような暗い夜が欲しいので。」
『そう。なら私に任せてちょうだい。』
「お願いします、カミラ。」
顕現した紋章士カミラと話すリューク。だが、それを零帝一味は許さなかった。
「敵に囲まれて呑気にお話とはな!!」
「邪魔立てする者は容赦しない!!」
「一斉にかかれ!!」
零帝一味は一斉にリュークへと殺到し、持っている武器を振りかざした。だがその瞬間、リュークは姿を消した。
「消えただと!?」
「どこへ行った!?」
「上だ!!」
零帝一味が空を見上げると、リュークは魔導二輪に乗り空を飛んでいた。
「"エムブレム・エンゲージ"。」
そしてリュークは紋章士カミラと"エンゲージ"すると魔導二輪を騎竜のように操り転回しながらエンゲージ武器の"ボルトアクス"を構えた。
『纏まってくれて好都合………可愛がってくれる。』
くるりと回すと特徴的な形の刃から雷を迸らせる"ボルトアクス"に、更に炎を纏わせたリュークは急降下し、零帝一味の集団の中心に"ボルトアクス"を振り下ろした。
『"暗夜爆砕陣"!!』
エンゲージ技の一振りによって自分に斬り掛かった零帝一味を一掃しただけでなく、辺りを火の海にしたリューク。
『さてと、邪魔者はどかせた。』
『(それで、結局どうするの?あの赤髪の子は、皆を回収したらすぐに帰還するつもりみたいだったけど。)』
『そこはまだ考えているところです。ただ………』
『(ただ?)』
『デリオラが復活したら説教どころじゃ無くなるので、その妨害はひとまず徹底的にやります。』
そう言って遺跡手前まで来たリュークは地面に手をついた。だがその瞬間、辺りを地響きが襲った。
『!!』
地響きはすぐに収まった。だがリュークが目の前の遺跡に目をやると、遺跡は少し傾いていた。
『やはり、ナツがこの中にいるのは確定か。やる事やって、とっ捕まえるとしよう。』
するとリュークは地面に手をついた。
『ここだな………"龍脈"、起動!!』
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「建物曲がったろ?これで月の光は地下の悪魔に当たんねーぞ。」
「なんてことを………妖精の尻尾め………!!」
「ほう、遺跡の支柱を半分破壊して傾かせた事で月の光を届かせない作戦でしょう。見かけによらず切れ者ですな。」
リュークの予想通り、ナツは遺跡の下層で支柱を破壊して遺跡を傾けせ、デリオラに月の光が当たらないようにした。
「オラアッ!!」
「!!」
そして手足に炎を纏ってブースター代わりとして上層にいる零帝、リオンに殴りかかった。
「本物はこっちだ。」
しかしナツが殴りかかったリオンはただの氷像であり、本物のリオンはその隙に氷の造形魔法で出した鳥の群れを飛ばした。
「だらあっ!!」
「くっ!!」
「"火竜の咆哮"……オォっ!?」
だがナツは炎を撒き散らして防御と反撃を一度に行い、更にはブレスを放った。だがその瞬間、ナツの足下の床面が崩れた事で狙いが逸れた。リオンはそれを見て零帝一味の参謀面をして控えている仮面の老人、ザルティに目を向けた。
「運が良かったですなぁ、零帝様。」
「とぼけるなザルティ。床が崩れたのは貴様の魔法だろう。」
「お見通しでしたか………でしたら分かってくだされ。デリオラを復活させるまであなたを失う訳にはいかないのです。」
それを聞いたリオンは辺りを凍らせ始め、ナツとリオンを囲む闘技場のように形成されるとザルティを閉め出した。
「出ていけ、こいつは俺一人で倒す。」
「おやおや………」
ザルティを排し、ナツとの一対一の戦いをしようとしたリオン。だがその瞬間、リオンの形成した氷の一角が破壊された。
「「!?」」
「………」
乱入してきたのはリューク。紋章士カミラとの"エンゲージ"は解除されていたが"シンクロ"は維持した状態で入るとナツに向かってまっすぐ歩いてきた。
「リューク!?」
「………歯食いしばれ。」
そう短く言い、リュークはナツに近づき渾身の右ストレートを放って殴り飛ばしたのだった。
「おがっ!?リューク、何しやがる!?」
「何しやがるってのは俺のセリフだこの野郎!!ギルドの掟を破り、俺との決闘の約束を次の日に反故にして、挙げ句お前が連れて来た
氷の壁に激突したナツの胸ぐらを掴み怒鳴るリューク。だが、リュークが更なる言葉を続けようとした時に氷の鳥の群れが飛んで来た。氷の鳥の群れはリュークとナツの前に出た紋章士カミラのスキル、"龍脈"によって生み出された炎の壁によって阻まれた。
『あら、取り込み中に横槍なんて無粋ね………いけない子。』
「………」
「………チッ。鬱陶しい。」
リオンの邪魔を受けたリュークは露骨に舌打ちをしてからナツの胸ぐらを離した。
「………こんな所じゃろくに説教できない。後にするよ後に。」
「お、おう………で、リュークはどうするんだ………?」
「デリオラを見てくる。せいぜい目の前の魔導士から痛い目にあっておきな。」
「なんだとぉー!?」
リュークはその場を後にし、遺跡の下層へと向かった。
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「これがデリオラか………」
最下層に辿り着いたリュークの目の前には、氷漬けにされた大きな魔物、デリオラが置かれていた。
「天井が開いている………ここから月の光を当てて氷を溶かそう、と言った所か。ナツが傾けたからそれは通用しなくなったが。」
だがここで再度地響きが発生した。その地響きは先程同様すぐに収まったが、今度はナツが傾けた遺跡が元に戻っていたのだった。
「傾きが戻った!?今のは………」
『(………この感覚、間違いないな。)』
『(そうね。私もこの感覚は知っているわ。)』
「ベレトとセリカ………その組み合わせはつまり、ナツが破壊する前まで時を戻されたって事ですか。」
原因を解析しつつ、リュークは天井を見上げた。時間としては夜になっており、空は暗いが月は見えなかった。
「まだ月は見えない、なら今のうちに………!!」
「ほっほっほ、これで元通り。」
「!!」
リュークの目の前に現れたのは仮面を被った老人。零帝一味の参謀として暗躍していたザルティであった。
「お前か、時を戻したのは。」
「おや、もう見抜いておりましたか。流石は"青燎"、かなりの洞察力ですな。」
「………厄介な。」
「厄介なのはお互い様でしょう。よもや、月の光が届かないよう空に雲をかけるとは。」
時間になっても月が出ていない理由、それは遺跡の上空に発生していた局地的な雲が月を隠していたからである。
「しかも、我が"時のアーク"で巻き戻しても消えないと来た………どのようなカラクリか、ご教授願いたいものですな。」
「俺が教えなくても、お得意の観察眼で見つければよろしいかと。違いますかね………"議員先生"?」
「議員先生?ほっほっほ、何の事やら。」
「仮面で隠そうが視線で分かるんだよ………評議会におつかいで行く度に向けられた、露骨なまでに人を品定めするような不快な視線は。」
「……………」
「評議員が悪魔の復活に加担とは、バレたらマズいどころの騒ぎじゃないはずだけど?」
「………ほっほー、これはこれは。予想を遥かに越えた洞察力、このザルティも感服致しました。故に………あなたには消えてもらう他ありませんな。」
ザルティから放たれた殺気を感じ取り、リュークも構えた。
「(カミラ、ここで"シンクロ"を解いたら上の雲はすぐ消えますか?)」
『(いいえ。シンクロスキルとしてではなく、私やカムイが本来持つ力を利用した"龍脈"だから、すぐには消えないわ。)』
カミラやカムイの本来の"龍脈"、それは力の集まる地を起点に発動する事で地形や天気などを変えるものである。シンクロスキルの"龍脈"と異なり、発動できる場所は限られ使用する魔力量も多い代わりに効果の大きさや持続時間が長いのが特徴である。その力を使って雲を生み出し、月の光を利用した"月の雫"の儀式を阻止していたのである。
「………ならば大丈夫ですね。カミラ、ありがとうございました。」
するとリュークはカミラとの"シンクロ"を解除。
「
『焦らず戦おう。』
時を巻き戻せる"天刻の拍動"を使えるベレトに切り替え、武器を構えたのだった。
続く
・龍脈について
本作のリュークはカムイもしくはカミラと"シンクロ"または"エンゲージ"をしている時、2種類の"龍脈"を使えます。
A.FEエンゲージでのスキルとしての、地形効果を生み出す能力
B.FEifでの、カムイや王族達が特定のマスで使える、地形効果などのギミックを起動する能力
Aの"龍脈"はどこでも無制限に使える代わりに持続時間は短い
Bの"龍脈"は使用できる場所と回数は限られる代わりに持続時間は長い
という差です。折角なら同じ"龍脈"を使うのにも地形効果を生み出すだけでなくifの時みたいに天地を派手に変えるようなド派手なものをしたいなという考えからのものです。