朝、無数に突き刺さる鋼鉄の杭によって見るも無残な姿になったギルドを見たリューク。
「フェルト!!」
「ホーッ!!」
「リン!!」
『いつでもいけるわ。』
直ぐ様フェルトにギルド内の偵察を任せ自分は"キルソード"を、顕現していた紋章士リンは"キラーボウ"を構えた。
「……………。」
『どう?敵は何人?』
「………いや、敵はいないようです。ですが、警戒だけしましょう。」
武装を解かないままギルドに入ろうとしたリューク。だが、ギルドの入口でミラが声をかけた。
「おはよう、リューク。」
「ミラ、これは?」
「………ファントムよ。」
「ファントム………
幽鬼の支配者。妖精の尻尾と拮抗した実力者の揃う魔導士ギルドだが昔から折り合いが悪く、2つのギルドの魔導士が同じ街に揃うと必ずと言っていい程小競り合いが発生する位には仲が悪いギルドである。
「襲撃は夜中で、誰も怪我人は出てないのが幸いね。」
「マスターは?」
「不意討ちしかできないような連中なんて放っておけ、って。今は他の皆と一緒に地下にいるわ。」
「ありがとう。ちょっと話してみる。」
偵察に出たフェルトを呼び戻し、ギルドの地下に入ったリューク。その途中、怒り心頭の表情のナツとすれ違いつつ樽に座るマカロフのもとへ向かった。
「おおリューク、ようやく来たか。」
「随分手酷くやられましたね。」
「そうか?誰もいないギルドを壊す事しかできん腰抜けに目くじらを立てる必要も無いじゃろて。」
「………そうですね。誰も傷ついていないのならひとまず様子見ですかね?」
「それでよい。」
マカロフは一息ついた。
「どいつもこいつも頭に血が昇っておるからの、お主のような冷静な奴がいで助かるわい。」
「"怒りは使い所が肝心、振り回されてはならん"、と師匠に口酸っぱく言われていたので。」
「その通り、今攻め込めばそれこそ奴らの思うツボじゃ。それに評議会からも何言われるか分からぬからな。」
ギルド同士の武力抗争は評議会から固く禁じられており、破れば即破門にされた例もある。故に、いくら先に攻撃されたからといっておいそれと反撃するのも難しいのが実情である。
「とは言え用心はするべきじゃろうな。」
「ええ、ここまで踏み込んだ攻撃は初めてですもんね。念の為、戦支度が必要な時にできるよう手配します。」
「よろしく頼む。それともう一つ頼んでも良いか?」
「何でしょう?」
「ナツやエルザ達を見張っててはくれないか?一番危ういのはあやつらじゃ。」
「………分かりました。」
「ミラの提案で、ギルドの者はしばらく単独行動は控えるように言ってある。恐らく一緒にいるはずじゃ。居場所はミラに聞いてみると良かろう。」
「分かりました。………では、俺はこれにて。」
「気をつけるんじゃぞ。」
==========
ギルドを後にしたリュークが向かったのはアンナの店だった。
「ギルドの惨状は私も見たし、オークの街の姉妹からも聞いているわ。幽鬼の支配者は何やら仕掛けようとしているって。」
「万が一の時には頼むよ、アンナ。」
「任せてちょうだい。ギルド同士の抗争ははっきり言って興味無いけど、
「頼もしいね、ありがとう。」
もし幽鬼の支配者からの行為がエスカレートし、抗争を起こさざるを得なくなったその時に備えて武器や消耗品の協力を取り付けるのが目的だった。
「それじゃあ、また来るよ。一応、気をつけてね。」
「はーい、またのご来店をー。」
アンナの店を出たリュークは家に帰らず、商店街へと歩を進めた。そこで様々な食料品を買うとある場所へと向かった。
「ミラから聞いた情報だと、ここにいるって聞いたが………確認するまでも無かったか。」
辿り着いたのはルーシィの部屋。チャイムを鳴らすと部屋の主であるルーシィが出て来た。
「リュークも来た、いらっしゃい。人が多くて流石に狭いけど大丈夫?」
「構わないよ、何とでもできるから。それよりも厨房借りていい?色々と買ったから。」
「ありがとう!!明らかに大食らいそうなのが揃ってるから助かるわ!!厨房も自由に使って!!」
大量の食料品を抱え厨房に向かったリューク。部屋の中にはナツ、ハッピー、グレイ、エルザといたがその内グレイがリュークに声をかけた。
「お、リュークか………って、お前が料理作るのか?」
「ああ。今日は"調子いい"気がするし、作るよ。」
「お、おう………」
微妙に歯切れの悪い返事をしたグレイ。それが気になったルーシィはグレイに問いかけた。
「どうしたのグレイ?もしかして、リューク料理下手?」
「ああいや、リュークの飯は基本的に美味いぞ?ただ………」
「ただ?」
「たまに来る失敗料理が強烈なんだ。」
「たまの、失敗………?」
ルーシィの心配をよそに、しばらくするとリュークがいくつもの料理と人数分の取り皿を持ってテーブルに並べた。
「お待たせ。」
「これ全部リュークが作ったの!?食材も調理法も味付けも様々な品をこんなに……!?」
「さぁ、冷めないうちにどうぞ。」
ナツやグレイが凄い勢いで手を伸ばしテーブルの上に並んだ料理を取る横でルーシィも一番手前にあった煮込み料理を取って口に入れた。
「んっ、おいしい!!」
「そう言ってくれるなら何よりだよ。」
「これもおいしい………どこでここまでの料理を覚えたの?」
「料理好きだった母さんにだよ。」
「そうなんだ。あ、これもおいしそう。」
とルーシィが揚げ物を取った瞬間。
「!?!!!?」
ルーシィが思いっきり顔をしかめた。それを見てリュークは申し訳無さそうな顔をし、他の皆は「あーまたか」と言った表情をした。
「………本当に申し訳ない。今日は大丈夫だと思ったんだが………」
「あー引いちまったか。"鋼の味"。」
「鋼の、味………?確かに、鉄みたいな味が………」
「こいつ、たまーに焼き物だろうが揚げ物だろうがデザートだろうが鋼の味になるんだ。」
「何その新手の錬金術みたいなの………?」
基本的には料理上手なリューク。しかし低い確率ではあるが失敗するとどんな料理でも鋼の味になってしまうのだった。
「これの残りは責任持って俺がいただくよ………何でいつまで経っても治らないかな、最近は香りまでは普通だから逆に悪化してるし………」
幸いこの揚げ物以外の料理は成功しており、一同はデザートまで堪能したのであった。
「あー美味しかった。ごちそうさま!!」
「うむ。やはりお前のタルトケーキは絶品だな。」
「それは失敗したことの無い得意料理の1つだからね。ルーシィ厨房貸してくれてありがとうね、後片付けはやっておくよ。」
「いいよ、あたしも手伝うから。」
==========
「さて、この後どうする?」
「どうするって、お風呂入って寝る以外あるの?」
ルーシィの言葉にナツとグレイは膝から崩れうなだれた。
「な、何よ………?」
「つまんねぇ事言うなよルーシィ!!」
「せっかくのお泊り会なんだから遊ぼうぜ!?」
「勝手に来てるのにそんな遊ぶものなんて無いわよ!!」
「そんな事もあろうかと、色々遊べるものを用意して来たぞ。」
「「流石エルザ!!」」
「何なのよその無駄に息の合ったコンビネーションは!?」
「一応、襲撃者対策のお泊り会だよな?………まぁ、いいか。」
「ホー………zzz。」
「これぞ青春、盛り上がるぞ!!」
エルザの持ち込んだカードゲームや盤上遊戯で遊び始めた一同。
「さて、どっちがジョーカーかな?」
「いや、そっちだろ?ほら正解、あがりだ。」
「だァーーッ、また負けた!!」
「リュークだけ未だ無敗かよ………」
「そりゃあ、皆顔に出るもん。特にナツ。」
「くそおっ、こうなったら別のゲームだ!!」
ババ抜きをはじめとしたカードゲームから始まり、
「何で!?また一回休み!?」
「3回連続で一回休みなんてついてないね、ルーシィ。」
「そう言うリュークは3回連続でいい効果引いてるが………ルーシィから運吸ってたりしないか?」
「いや、そんなスキルは無いはずだけど………まぁ盤上遊戯はすごろく含めて全体的に得意ではあるかな。」
「くっそぉ、負けてられるか!!」
すごろくや、他の盤上遊戯を遊び盛り上がった一同はそのまま深夜になるまで遊び倒したのであった。
==========
「ふわぁ………っ。寝落ちしてたのか………」
いつの間にか寝落ちしていたリューク。寝起きの感覚がいつもと違うと感じて時間を見るとまだ未明の時間帯だった。
「むー………緊急時以外でこんな時間に起きるの、初めてじゃないか………?」
夜遅くまで遊んでいた興奮からか、普段なら絶対に起きない時間帯での起床。寝ぼけて思考がまとまらない状態ながらリュークは辺りを見回した。
「………皆寝てるか。………そう言えば風呂入ってなかったし、入るか………」
寝ぼけながら、床に雑魚寝しているナツやグレイをフラフラとよけながら浴室へ向かった。
「ふわぁ………浴室は、こっちだっけ………」
浴室を目指し、脱衣所に入ったリューク。するとリュークはあるものに気がついた。
「あの首飾り………」
"チェンジリング"の際にルーシィが身に着けている事に気付いた首飾り。細くも丈夫な組紐のような紐に、"飾り気の無い銀の指輪"が通してある、非常に簡素な首飾り。
「(………ルーシィが"これ"を持ってたのはビックリしたな………)」
改めてその首飾りを確認しようとしたリューク。しかし、"普段身に着けているもの"が"脱衣所に置かれている"のはどういう事か、寝ぼけながら下着姿になったリュークは気づけなかった。
「へ………?」
「ん………?」
「皆が寝ている間に入りそびれたお風呂に入っておこう」という気持ちで入浴していたルーシィはタオルも巻かず生まれたままの姿で浴室から出て脱衣所に移動したのだった。そこに誰か、それもギルドで一番寝起きの悪いリュークが上裸でいる事など夢にも思わず鉢合わせてしまったのだった。
「ーーーーー!!」
「!!!?!?!!」
悲鳴をあげようとするも他の皆が寝ている事を思い出し、声を押し殺したルーシィ。そこでようやく状況を理解し慌てて回れ右をしたリューク。
「「……………」」
「………み、見た………?」
「……………ごめん。」
「………そ、そのまま向こう向いてて………」
「………あ、ああ………」
思いっきり気まずい雰囲気になりながらもルーシィは顔を真っ赤にしながら着替え、リュークも脱いだ服を着直した。
「着替え終わったから、次どうぞ………」
「うん………本当すまない。」
そう言って着替え終わったルーシィは脱衣所を出て、リュークは服を脱いでシャワーを浴びた。
==========
翌朝、ルーシィの家を後にして一同はギルドへと向かった。
「しかし珍しい事もあるもんだな、リュークが先に起きてたなんて。」
「あい、多分初めてだよ。」
「………たまにはあるんだよ、そう言う日も。」
「本当か?あのリュークがか?何かあったのか?」
「………何も無いよ。」
「………。」
「まぁ良いではないか、リュークにも早起きをする時だってあろう。さて、ギルドへ行ってどうするか………」
エルザが今後どうしようかと話していると、目の前から一人の女性が一同に向かって走って来た。
「………アンナ?」
「リューク、ここにいたのね!!大変よ!!」
「何かあったのか?」
「とにかく急いで!!」
何やらただごとでは無いのを察し、困惑しながらもアンナに連れられ来たのはマグノリアの南口にある公園。
「何の人だかりだ………?」
「ちょっと通してちょうだい!!」
できていた人だかりをかき分け、アンナに案内されたのは公園の中央に生えた大木。
「!!」
「う………!!」
そこには一同にとって顔馴染みのある3人の男女が磔にされていた。
「レビィちゃん………!!」
「ジェット!!ドロイ!!」
ボロボロで気を失った状態で磔にされていたのはレビィ、ジェット、ドロイのシャドウ・ギアの3人。そして3人をこのような姿にした下手人は、レビィの腹部に描かれたマークで明らかだった。
「ファントムの、紋章………!!」
ギルドのみならず、ギルドの魔導士をも傷つけた幽鬼の支配者への怒りを露わにする一同。すると、人だかりをかき分けマカロフもやって来た。
「マスター………」
「ギルドのボロ酒場まではガマンできたんじゃがな………」
傷だらけにされた、愛する我が子の姿を目の当たりにしたマカロフは、悲しみから怒りへとその表情を変えた。
「ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ………!!」
語気を強めたマカロフは持っていた杖をへし折ると、青筋を浮かべながら怒気のこもった声で言い放った。
「戦争じゃ。」
これが妖精の尻尾と幽鬼の支配者。2つの大きなギルド間の戦争の幕開けとなった。
続く
・リュークの料理の腕
料理好きの母親から教わった料理はどれも10人が食べれば9.5人は「美味しい!」というレベルのものではあるが、料理に失敗するとどんな料理だろうが問答無用で後述の鋼の味になってしまう。昔はどの料理が鋼の味になってしまったかは一目瞭然だったのだが、リュークの料理スキルが上がった事が仇となり、今では食べるまで分からないロシアンルーレット状態となっている。尚、鋼の味になってしまう確率は(得意料理を除いて)10±5%(調子次第で変動)。10%といえば低い確率ではありますが、
ファイアーエムブレムの10%前後の必殺はバカスカ食らうし(実話)、
ポケモンなら命中90%を3回連続で外す事もありますし(実話)、
パワプロなら2回連続で大怪我して決め球のフォークがしょんべんフォークに様変わり(実話)。
そのくらいの確率です。
・鋼の味
新紋章のクリスから始まり、歴代のマイユニットに引き継がれる伝統の味(風花雪月のベレトスやシェズ、エンゲージのリュールは厳密にはマイユニットでは無いらしい)。烈火リメイク出たらマークがプレイアブルになると思うけど、多分マークも鋼の味。
文字通り鋼を食べたような味で基本的にはマズいが、食べると守備がほんのり上がる。
・ラッキースケベ
参考にしたのは次回登場予定の紋章士の支援会話です。
???「うおっ!?お前の裸を見た記憶が………!!」
???「あれ?僕が君に裸を見せた事あったっけ?いや、温泉入った時は見せたかもしれないが………そこまで驚く事かい?」
???「いや、そうじゃないんだ。………お前じゃないお前との記憶だ。」
???「はい?」
Q:何でこんな描写入れたんですか?
A:つまりそう言う事です。
さてこっからバトル満載になる予定です。やるぞー!!