FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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よもや一万字超えるとは………勢いって怖いなぁ
まぁ投稿間隔が固め打ちなところを見るに、全体的に勢いで本作やってる私ではあるのですが………


14章 HEROES

レビィ、ジェット、ドロイ。シャドウ・ギアの3人が幽鬼の支配者(ファントムロード)の魔導士の襲撃を受け磔にされた事件を期に全面戦争へと突入した妖精の尻尾(フェアリーテイル)。所属する殆どの魔導士がマスターのマカロフを総大将として幽鬼の支配者の本拠地へと攻め込んだ中、ルーシィは病院に搬送されたシャドウ・ギアの3人のお見舞いに来ていた。

 

「レビィちゃん………ジェット、ドロイ………」

 

==========

 

「ルーちゃん、小説書いてるんだって?」

「もう広まってる………」

「私、書くのは全然だけど本読むのは大好きなの!!良かったら読ませてくれない?」

「ま、まだ人に見せられるようなものじゃないし、そもそもまだ途中なんだ………」

「じゃあ完成したら読者1号になっていい!?」

「う、うん………」

「わーい!!約束ね!!」

 

==========

 

「………許せないよ、あいつら………!!」

 

同い年の同性というのもあり、ルーシィにとってはギルドに来て初めての友達と言える関係のレビィが酷い目に遭わされた事に、ルーシィは涙を流しながらも怒りの表情を露わにしたのだった。

 

==========

 

「はぁー、それにしても置いてかれちゃったなぁ………」

 

しばらくしてギルドに帰ろうとしたルーシィ。すると急に雨が降り出した。

 

「やだ、天気雨………?」

 

予想外の雨に、傘を持っていないルーシィは走って戻ろうとしたその時、通りの向こうから一人の女性が歩いて来た。

 

「しんしんと………そう、ジュビアは雨女。」

「はぁ?」

「あなたは何女?」

「あの………誰ですか?」

「………楽しかったわ、ごきげんよう。」

「え?何なの!?」

 

よく分からない絡み方をしてから傘を差して去ろうとする女性に困惑するルーシィ。すると、今度は地面からモノクルを着けた男性が現れた。

 

「ノンノンノン、

ノンノンノン、

ノンノンノンノンノンノンノン。

3・3・7のNO(ノン)でボンジュール。」

「また変なの出た!?何なの一体!?」

 

驚くルーシィをよそに、モノクルの男は傘の女性に話しかけた。

 

「ジュビア様ダメですなぁ〜、"標的"を前に仕事放棄は。」

「………あら、この娘だったの?」

「?」

「申し遅れました。私の名前はソル、ムッシュ・ソルとお呼びください………ルーシィ・ハートフィリア様。」

「!!どうして、それを………!?」

「幽鬼の支配者のエレメント4たる我々がお迎えに上がりました。」

「ファントム………!!あ、あんた達がレビィちゃん達を!!」

 

幽鬼の支配者屈指の実力者であるエレメント4。そのエレメント4の魔導士に、ギルドの仲間にも名乗っていない自分の本名を言われ困惑しながらも星霊の鍵を取り出し、戦おうとしたルーシィ。しかし次の瞬間、水の塊がルーシィの全身を包みこんだのだった。

 

「んっ、ぐ………ぶはっ!!な、何よコレ!?」

「ジュビアの"水流拘束(ウォーターロック)"は決して破られない。」

「あぶっ!!………ん、ふ、んんっ………」

 

藻掻けど足掻けどジュビアの繰り出した水の塊からは抜け出せず、星霊の鍵をも落として抵抗する術が無くなってしまった。

 

「(まずい…息……が………だれ、か……………)」

「捕獲完了。」

「ん~~〜、勝利(ビクトワ〜ル)!!」

 

そして息が続かなくなり、気を失う寸前。ルーシィの胸元が微かに青く光った。

 

「「………?」」

 

何の光か。ジュビアとソルがそれを確認しようとした瞬間。ルーシィを拘束していた水の塊が一瞬で凍りつき、砕け散ったのだった。

 

「な………っ!?」

(クワ)っ!?」

「っっっ!!ゲホッゲホッ………!!」

「ジュビアの"水流拘束"が、破られた………!?」

「まさか、伏兵………!?」

「(グレイ………じゃ、ない。今の氷は………!?)」

 

突然の事態に、ジュビアとソルのみならずルーシィも困惑していた。

 

「(何も分からないけど………今は!!)」

 

だが、ルーシィはいち早く立ち上がると落とした鍵に目も暮れず走り出した。

 

「(目的は知らないけど、狙いはあたし!!なら………捕まる訳にはいかない!!)」

「逃がさない。」

 

逃げようとするルーシィに再び"水流拘束"をしようと試みたジュビア。しかし、今度は上空から風の刃が飛んで来てジュビアを真っ二つに切り裂いた。

 

「ホーッ!!」

「フェルト!!ありがとう!!」

 

風の刃を飛ばしたのはフェルトだった。だがフェルトの攻撃はジュビアには全く効いていなかった。

 

「ジュビアの体は水でできている………」

「!!………ホホーッ!!」

 

しかしフェルトも攻撃が効かないとなれば切り替え、ルーシィの前に飛ぶと「ついて来て」と目配せをしてその場を離脱した。

 

「逃がさない………!!」

 

フェルトのナビゲートを頼りに狭い路地右に左に入り、地の利で二人の追手を撒こうと走るルーシィ。

 

「ノンノンノン。我々から逃げられるとは思わない事です。」

「………追い詰めた。」

「回り込まれた………!!」

「ホーッ………!!」

「今度こそ捕まえてあげる………」

「!!」

 

ジュビアが再びルーシィと、ついでにフェルトを捕まえようと手を翳した。

 

「ここまでだ!!」

 

その瞬間、1台の魔導二輪がジュビアとソルを轢き飛ばした。

 

「大丈夫か、ルーシィ!?」

「リューク!!」

「フェルト、よくやった!!ルーシィの警護は任せる!!」

「ホー!!」

 

万が一に備え留守番として1人ギルドに残りつつ敵襲への備えをしていたリューク。そんな時に街の上空から偵察していたフェルトが、ルーシィが襲撃されている現場を発見し急行したのである。

 

「………で、ファントムがうちの可愛い新人に何のようだ?」

 

リュークは魔導二輪から降りると"鉄の剣"を正面に向けた。その鋒の先には水となって魔導二輪の突撃を受け流したジュビアと、地面に潜りかわしたソル。そのソルが、リュークの問いに答えた。

 

「これはこれは"青燎"のリューク様、はじめまして。我々は………」

「エレメント4、大地のソルに大海のジュビアだろ?立ち話をしに来たんじゃ無いんだ、さっさと用件を言え。」

「おやおや、聞いた話と違って血の気の多い方だ………我々はジュード・ハートフィリア様の依頼により、ハートフィリア財閥のご令嬢たるルーシィ・ハートフィリア様のお迎えに上がりました。」

「………!!」

「………ハートフィリア、ねぇ。」

 

ハートフィリア。その言葉を聞く度に顔を強張らせるルーシィをちらと見たリュークだが、すぐに視線を相手に戻した。

 

「財閥の長であり、ルーシィ様の父親であるジュード様から、ルーシィ様を探し出し連れて来るようにと直々に受けた依頼です。………さぁ、ルーシィ様の身柄をこちらに。」

「………今は財閥なのか。」

「………?」

 

それに対し、リュークは"鉄の剣"を向けたままソルの言葉を突っぱねた。

 

「ハートフィリア家の何某と、お前達の所のマスターに伝えておけ。お迎えに来るなら礼儀作法を一から学んで出直しな、話があるなら正面から来い、と。」

「ほう………では、渡してくださらないと?」

「指一本触れさせるか、お前らみたいなチンピラごときに。」

 

その瞬間、周囲から水がリュークに集まり包み込もうとしていた。

 

「ならばあなたから眠って貰いましょう。"水流拘束"。」

「………覚醒めよ(めざめよ)、絆の紋章士(エムブレム)!!」

 

ジュビアの"水流拘束"がリュークを包み込もうとしたその瞬間。リュークの呼びかけによって顕現した紋章士は手にしていた剣をリュークと同時に振るい"水流拘束"を霧散させた。

 

「なっ………!!」

「クロム!!」

『ああ、俺に続け!!』

 

紋章士マルスの活躍した時代から2000年。マルスから受け継がれた"神剣ファルシオン"を手に絶望の未来を変えたマルスの子孫にして聖王、紋章士クロムは傭兵に"クラスチェンジ"したリュークと同時にジュビアへと斬りかかった。

 

「『ぜやぁっ!!』」

 

だがジュビアは水となり、リュークと紋章士クロムの斬撃をいとも容易く流した。

 

「あなた達ではジュビアに勝てない。諦めてルーシィを………」

『それはどうかな?』

 

リュークでも紋章士クロムでも無い声が聞こえたかと思ったその刹那。雷の光線がジュビアを貫いた。

 

「きゃああっ!?」

『闇雲に攻撃していると思ったかい?残念だったね、これも策の内さ。』

『後ろは頼んだぞ、ルフレ。』

 

エイリークとエフラムからなる聖魔の紋章士と同じく、絆の紋章士もマルスの子孫である聖王クロムと、彼のの"半身"とも呼ばれる軍師ルフレの2人で構成された紋章士である。

 

『もう一発!!』

 

再びジュビア目掛けて"トロン"の魔道書で雷の光線を放った紋章士ルフレ。だが、その追撃は競り上がった地面に防がれた。

 

「ノンノンノン、私がいる事をお忘れなく。」

「だったら………!!」

『こっちは俺達の番だ!!』

 

今度は得物を"アーマーキラー"に持ち替えたリュークと紋章士クロムが競り上がった地面を砕き、さらに追撃でソルを狙った。

 

「『デュアルアタック!!』」

「そうはさせない。"水流斬破(ウォータースライサー)"!!」

『読み通り!!"エルウィンド"!!』

 

しかしソルは地面に潜って二人の攻撃を避け、その隙にジュビアが水の斬撃を繰り出すも紋章士ルフレが風の刃で相殺した。

 

「面倒な相手だな。」

『だが、押しているのはこちらだ。』

『その通り。これ以上長引かせても彼女を危険に晒すだけだ、一気にたたみかけよう!!』

「ええ!!」

『任せろ!!』

 

紋章士ルフレの"七色の叫び"による鼓舞で能力を上げ、リュークと紋章士クロムは息を合わせた。

 

「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」

 

紋章士クロムと"エンゲージ"したリュークはエンゲージ武器の"サンダーソード"を構えた。

 

『俺が道を切り開く!!』

 

そして素早く斬りかかったリューク、だがジュビアは水となってそれをかわし、ソルもひらりとかわした。

 

「何度やっても、ジュビアは斬れない。」

「いささか単純な攻撃のようですな?」

『………ふっ、残念だったな。』

 

次の瞬間、リュークの周囲に無数の落雷が発生しジュビアとソルに直撃した。斬撃は効かないが雷魔法は効くジュビアと、雷魔法は防ぐが斬撃は効くソル。その2人を同時に相手取る為の、斬撃と雷魔法を両立させた"サンダーソード"である。

 

「何!?」

「ぬぅっ、"岩の協奏曲(ロッシュコンセルト)"!!」

『単純なのは、どちらかな!?』

 

大ダメージを受けたジュビアと比べ余裕のあったソルは無数の岩の塊を飛ばして来たが、今度は流れるような斬り込みで岩を弾きながら接近し、強烈な横薙ぎを食らわせた。

 

「ノン………ここまでとは、聞いていない!!」

『これで終わりだ!!』

 

雷を纏わせ、上段から斬り下ろしたリュークだがソルは再び地面に潜った。

 

『ちぃっ!!』

 

そんなソルが出て来たのはルーシィの目の前。

 

「!!」

やあ(サリュ)。」

「しま………っ。」

『させないよ。』

 

ルーシィを人質に取りリュークの動きを止めようとしたソル。だがそれを見抜いていた紋章士ルフレがその前に立ちはだかった。

 

「ほう………ですが、見たところあなたが使う魔法はどれも市販品レベル。それで私の最大の魔法を防げますかな?"石膏の奏鳴曲(プラトールソナート)"!!」

 

巨大な岩の腕で紋章士ルフレを排除しようとしたソル。だが紋章士ルフレはそれに狼狽えるどころかニヤリと口角を上げた。

 

『読みが甘いね。』

「何ですと………?」

 

岩の腕に押し潰されるかに思えた紋章士ルフレ。だがそうはならず、ガキン、という音と共にソルの繰り出した岩の巨腕は止まった。ルフレは"鋼の剣"で受け止めていたのだった。

 

『僕は魔法だけじゃなくて剣も使えるんだよ。』

「ほう………ですが、その程度で止められると………」

『止めて見せるとも!!"リザイア"!!』

 

すると闇のオーラがソルの周りに纏わりつき、ソルを拘束すると同時に生命力と魔力を急激に吸い始めた。

 

「の、ノォーン!?」

 

急に力が抜け、岩の巨腕を保てなくなったソル。それを見て紋章士ルフレはリュークに向けて叫んだ。

 

『今だ、リューク!!』

『分かった!!そぉ、らっ!!』

 

紋章士ルフレの合図と共にリュークはジュビアを掴み、水に変わる前に投げ飛ばし、同時に"リザイア"でソルを拘束していた紋章士ルフレもソルをジュビアの投げられた方向へ投げ飛ばした。

 

『"ギガサンダー"!!』

 

そしてすかさず"ギガサンダー"を撃った紋章士ルフレ。だが"ギガサンダー"を撃ったのは敵では無く、"神剣ファルシオン"に持ち替えていたリューク。リュークはその"神剣ファルシオン"を天に掲げて"ギガサンダー"の雷を纏わせ、ジュビアとソルの方向へと駆け出した。

 

『"ギガサンダーソード"!!』

 

紋章士クロムのエンゲージ技、"ギガサンダーソード"でジュビアとソルを纏めて斬り上げ、打ち上げたリュークはすぐに飛び上がり、同時に紋章士ルフレも飛び上がった。

 

『戦局を………』

『運命を………』

『『変える!!』』

 

そして空中で連続攻撃を繰り出し、

 

『"ボルガノン"!!』

『"天空"!!』

 

トドメの"ボルガノン"と"天空"でジュビアとソルを地面に叩き付け、大きな土煙をあげた。

 

『『………。』』

 

大技を叩き付け、地面に着地したリュークと紋章士ルフレ。だが"エンゲージ"状態を解除したリュークの表情は微妙なものだった。

 

「………仕留め損なったか。」

『逃げられたようだね。』

 

土煙が晴れると、そこにジュビアとソルの姿は無かった。意識を飛ばさずにギリギリで持ちこたえた2人は土煙に乗じて逃げてしまったのだ。

 

『どうする?追いかけるか?』

「………いや、追いません。」

『そうか。まぁ、そう言うと思ったさ。』

「色々理由は出せるけど、今のルーシィを1人にはできない。」

 

そう言うとリュークは座り込んでたルーシィに駆け寄った。

 

「大丈夫かルーシィ!?怪我は!?」

「え………あ、うん………大丈夫。」

「そうか………良かった。」

「………。」

 

心の底からホッとした表情をしたリューク。それに対してルーシィは雨で濡れた地面に座り下を俯いたままだった。

 

「さぁ、一度ギルドに戻ろう。濡れまま座ってると風邪ひくよ?」

「……………。」

「タオルは………無いか。とりあえず俺の上着使ってくれ、無いよりはマシだと………」

「………いいのかな?」

「ん?」

「あたし………ギルドにいて、いいのかな………?」

 

するとルーシィはポロポロと涙を流し始めた。

 

「あたしの、せいで………ギルドが壊されて………レビィちゃん達が傷ついて………そして全面戦争になって、他の皆も傷つく………」

「………。」

「全部………あたしの、せいなんだ………」

 

次第に涙は大粒のものとなり、気づけばボロボロと涙が止まらなくなり、嗚咽していた。

 

「それでもあたし………このギルドにいたいよ………!!妖精の尻尾が、大好きなの………!!」

 

するとリュークはルーシィの前でしゃがみ、目線を合わせて話し始めた。

 

「そう言ってくれるなら、ナツと一緒に君を誘って良かったと、心の底から思うよ。」

「っっ………でも、あたしのせいで………!!」

「そんな事誰も思わないと思うけどなぁ………そうだ。」

 

すると、リュークはいたずらっぽく笑った。

 

「じゃあ、そんなルーシィを誘った俺は"共犯者"な訳だ。」

「へ………?どういう………?」

「何があろうと、最後までルーシィの味方をするって事さ。全部俺が何とかするから、どーんと任せてくれ!!」

「………ぐずっ、えぐっ。」

 

堂々と言い放ったリュークだが、彼の予想に反してルーシィは再び嗚咽をしたのだった。

 

「うーん………こう言って泣かれるとなぁ。フェルト、俺はそんな頼りないか?」

「ホーッ。」

「生活態度がダメ、だって?俺と同じ寝坊助なフェルトに言われる筋合いは無いと思うんだが?」

「ホー、ホホーッ。」

「ちょっと待て、今のは聞き捨てならないぞ?」

 

リュークとフェルトがちょっとした言い争いをし始めた時、ルーシィはくすりと笑った。

 

「………ふふっ。」

「「!!」」

「………ごめんね。そして、ありがとう。」

「………うん。やっぱりそうじゃなくちゃ。それじゃあ、ギルドに戻ろう。」

 

==========

 

リューク、フェルトとルーシィが戻ってから少しして、幽鬼の支配者の本拠地に攻め込んだ魔導士達が帰って来た。だがそれは勝利の凱旋では無かった。

 

「相手の風魔導士の不意討ちでマスターが魔力を奪われ重体、今は東の森のポーリュシカさんの所に搬送された………更には怪我人多数と来たか………」

「ミストガンは居場所知れず、ラクサスも当てにならない………正直、戦況としては最悪だね。何よりも総大将(マスター)がいないのが辛いわね。」

 

総大将のマカロフが敵の魔法で魔力を奪われ戦線離脱、それに伴い撤退するもマカロフが倒れた事による動揺と撤退時に受けた追撃により少なくない負傷者が出ていた。

 

「大砲やトラップの類を始めとした防衛戦の備えは一通り準備してある。戦況、戦力、その他考えても防衛戦にするしか無いな。」

「そうね………後は指揮官の問題だけどリューク、あんたになると思う。今マスターの代わりに戦術指揮ができて、かつ余力があるのはあんたしかいないが、できそう?」

「任せてくれ、カナ。その為に戦術を勉強してきたんだ。」

 

負傷者が多い中で負傷しておらず、かつ比較的冷静なカナと今後の方針を話し合っていたその時。ギルド中に地震と間違える程の地響きが襲った。

 

「な、何だ!?」

「………ファントムか!!」

「皆、外だー!!」

 

偵察に出ていたアルザックの声に全員が外に出ると地響きの正体が判明した。ギルドの裏にある湖を六足で歩く建物、幽鬼の支配者のギルドそのものであった。 

 

「(湖からの襲撃は考えたが、ギルドごとは流石に想定外だ!!そこまでの備えは無い………!!)」

 

だがそれだけでは終わらなかった。

 

「魔導収束砲"ジュピター"用意………消せ。」

 

幽鬼の支配者のギルドから現れた砲台。そこからギルドを街の一部ごと吹き飛ばす砲撃が繰り出されようとしていた。

 

「(魔導収束砲………!!そこまでを受け止める術は………!!)」

 

リュークが全員に伏せるよう命じたその時、彼の横をエルザが通り抜けた。

 

「エルザ!?」

「換装!?おい待て!!」

 

ギルドの魔導士の制止を振り切ったエルザは超防御力を誇る"金剛の鎧"に換装し仁王立ちしたのだった。

 

「ギルドはやらせん!!」

「よせエルザ!!死んじゃうぞ!!」

「………エルザだけに任せる訳にはいかない!!」

「おい、リュークまで!!」

 

するとリュークは懐から一個の飾り気の無い銀の指輪を取り出すと自らの身に着けている指輪にコツンと当ててからエルザに投げた。

 

「受け取れ!!」

「指輪………?これは………!!」

「いいから持ってろ!!"クラスチェンジ"、マージカノン!!」

 

そしてリュークは"マージカノン"の大筒を取り出し弾をこめた。

 

「撃て。」

「"ピアシングシェル"、"全弾発射"!!」

 

"ジュピター"の発射と同時に、貫通力に長けた砲弾を全弾射出したリューク。だが砲身の大きさは覆せず、やがてリュークの放った砲弾は"ジュピター"を止めるには至らなかった。

 

「ぐっ………!!」

「間に合え、"マジックシールド"!!………そしてエルザに力を!!焔向え(たちむかえ)、封印の紋章士(エムブレム)!!」

 

エルザが防御体勢を取り身を固めたのと同時に、リュークは素早くモンクへと"クラスチェンジ"し、魔法攻撃を軽減する"マジックシールド"を展開、さらに紋章士を呼び起こす呪文を唱えるとリュークがエルザに渡した指輪が光り始めた。

 

「ぐっ、ぐうううっ………!!」

 

そしてその数秒後、"ジュピター"はエルザに激突。リュークの砲撃と"マジックシールド"でいくらかは軽減しているものの、それでも一人で受け切るものではなくその勢いにズルズルと後退していた。

 

「うっ………ぐ、ああっ………!!」

 

"金剛の鎧"にヒビも入り始め、防御の構えも保てなくなりそうになったその時。少しだけエルザにかかる負担が和らいだ。

 

「………!?」

『ここからは、僕も力を貸そう。』

「リュークの、紋章士………?」

『僕はロイ、紋章士ロイ。今は君に力を貸そう。』

「感謝する!!」

 

炎を纏った剣を手に、エルザと共に"ジュピター"を防ぐ紋章士ロイ。その紋章士ロイと"シンクロ"した事によるステータス上昇と、その際に発動するスキル"踏ん張り"の合わせ技でエルザは"ジュピター"の砲撃を前に踏み止まった。

 

「『ああああああっっ!!』」

 

そしてエルザと紋章士ロイが咆哮と共に拳と剣を突き出すと"ジュピター"の砲撃は霧散したのだった。

 

「うおおおっ!?」

「魔導収束砲を、止めきった………!!」

「……………!!」

 

だがエルザも無事とは言えず、"金剛の鎧"は粉々に砕け散りエルザ自身も地面に膝をついた。

 

「ぐ………っ。」

『よく凌いだ。』

「はぁ、はぁ………助力、感謝する………」

 

するとリュークが飛び出して来た。

 

「大丈夫か、エルザ!?」

「ああ、助かった………この指輪は?」

「"写しの指輪"、紋章士を移して他人に紋章士の力を渡す指輪だよ。………すまない、咄嗟にはこの方法しか思いつかなかった。」

「いや、これでギルドや皆を守れたんだ。感謝している。」

「………後は俺に任せて、次の出番まで休んでてくれ。」

「………そうさせて貰おう。これは返すぞ。」

 

エルザは"写しの指輪"をリュークに返すと、続けて出て来たナツの肩を借りギルドの中へ下がり始めた。すると、幽鬼の支配者のギルドからマスターのジョゼの声が放送で聞こえた。

 

《マカロフ、そしてエルザも戦闘不能。貴様らに最早勝ち目は無い………ルーシィ・ハートフィリアを渡せ、すぐにだ。》

「「「「「断る!!」」」」」

《渡せ。》

 

ルーシィを渡せ、と再三迫るジョゼと、口を揃えて拒む妖精の尻尾の押し問答。すると、ギルドに向かっていたエルザとナツが叫んだ。

 

「仲間を売るくらいなら死んだ方がマシだ!!」

「俺達の答えは何があっても変わらねぇ、お前らぶっ潰してやる!!」

《ほう………ならば、貴様らに残された選択肢は2つだ。》

 

すると、幽鬼の支配者のギルドから無数の兵士が現れ次々と湖に飛び込んで向かって来た。

 

《我が兵に殺されるか、"ジュピター"で死ぬか、再装填までの15分で選ぶ事だ。》

 

そう言い残し、ジョゼは音声を切った。残ったのは、動揺の走る妖精の尻尾の声と湖に飛び込んで向かって来るジョゼの兵士の喚声のみだった。

 

「おい、さっき以上のが飛んで来るのか………?」

「エルザが一発防ぐのがやっとの奴がまた………?」

「兵士もろとも撃つのか………?」

「いや、あれはジョゼの魔法、人造兵士の幽兵(シェイド)だよ。」

「人造兵士!?じゃあ向こうはどんだけ"ジュピター"を打とうが関係無いってのか!?」

「くそっ、どうすれば………!!」

 

広がる動揺。それを止めたのはリュークの一喝だった。

 

「狼狽えるな!!」

 

いつも以上に通る声で吼えたリュークに、場は静まった。

 

「砲台ごときでいい気になってるだけで、相手はギルドの魔導士を出す度胸すらない臆病者!!恐るるに足らん!!」

「だ、だがあの"ジュピター"は………」

「俺達は誰だ!?毎度色んなモノを壊しては評議会の目の敵にされてる、魔法界の鼻つまみ者の妖精の尻尾だ!!あんな砲台もいつものように叩き壊すだけだ!!そして叩き壊せば残るのはただの木偶人形と腰抜けの大軍のみ、俺達の敵じゃない!!」

「「「「「!!」」」」」

 

力の籠もったその言葉に、妖精の尻尾の魔導士達の動揺は消えた。そこに、カナがリュークに話しかけた。

 

「そうは言うけど、状況は最悪だよ。覆せるんだね?」

「ああ、ひっくり返して見せる!!」

「………そこまで自信あるなら乗ろうじゃないか!!皆それでいいね!?」

 

異論は出ず、帰って来たのは喚声だった。マカロフ(マスター)無き妖精の尻尾の指揮官はこの瞬間リュークとなった。

 

「最初の命令は2つ!!1つは絶対に死ぬな!!そして2つ、ルーシィを全力で守れ!!」

「「「「「オオオオオオッッッ!!」」」」」

 

最初の命令を告げたリュークは湖の方を見た。すると、ジョゼの幽兵軍団の先頭が岸に上陸したのを確認し、前に出た。

 

追求めよ(もとめよ)………」

 

指輪を目の前に掲げ唱えた呪文。それはかつての世界にいなかった、"この世界で見つかった紋章士"。

 

「開王の紋章士(エムブレム)!!」

 

顕現されたのは、白と金を基調とした重厚な鎧とマントに身を包み、斧を携えた青年。

 

『僕の出番かい?』

「はい。この苦境を切り開く、その為に力を貸してください!!」

『了解した。君の指示に従おう、リューク。』

「よろしくお願いします、アルフォンス!!」

 

アスク王国の王子、紋章士アルフォンスはかつて彼の父の愛斧"グリトニル"を構え、紋章士アルフォンスと背中合わせでリュークは長柄の"ポールアクス"を構えた。

 

 

続く




まずは新アイテムの紹介です。

・写しの指輪
紋章士の力を入れる事ができる、飾り気の無い銀の指輪。
紋章士の力が入れてあり、かつ紋章士が眠っている状態で無ければリュークじゃなくても内包された紋章士と"シンクロ"、"エンゲージ"が可能になる。
移す方法は、入れたい紋章士を思い浮かべながら写しの指輪をリュークの持つ紋章士の指輪に当てること。

今回はエルザに"ジュピター"の砲撃を耐えて貰うために、"踏ん張り"のスキル(ポケモンの頑丈みたいな、HPを1残すスキル)を持つ紋章士ロイの力を入れてエルザに渡した、という流れです。
リュークはこの"写しの指輪"を何個か持っているので、今後エルザ以外の仲間に渡す場面はあるかもしれません。

そして、ついに出せましたオリジナル紋章士!!1弾目はヒーローズからアスク王国王子アルフォンス!!紋章士としての詳しい特長や性能は次回に回しますが、原作のエンゲージにヒーローズ枠として参戦したヴェロニカが伝承Ver.で来ているのに対してアルフォンスは総選挙Ver.で考えて来ました!!
いやーオリジナル紋章士を考えるにあたって、アルフォンスはヒーローズのロード枠な訳で考えたものの(大人の事情もあり)中々実装数が増えず、諦めるかリーヴ混ぜたるかみたいな事も考えましたが総選挙アルフォンスのおかげでまとまりました!!

オリジナル紋章士は考えてると「武器種被り考慮しなけりゃ絶対に原作でもこの紋章士いたよなー」とか「この紋章士来るならこの人もありやろ」などと興が乗って15人くらいアイデアが出てきてるので、その人達も順々に出して行きたいなぁと思いますのでお楽しみに!!
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