山賊を退治したのも束の間、炎の滅竜魔導士の少年との勝負になってしまったリューク。想定を遥かに越えた少年の能力を前に悠長な事はできないと判断したリュークは"クラスチェンジ"と並ぶ彼の魔法にして"切り札"を顕現させた。
『共に行こう!!』
「お願いします!!」
「はああっ!!」
先程と比べ格段に速い身のこなしで少年に接近したリュークは"レイピア"を勢い良く突き出したが、少年はその突きを身軽にかわした。
「おっと!!あたら……」
『そこだっ!!』
「うぉ……いてぇっ!?」
しかし、間髪入れずに青い炎のようなオーラを纏った紋章士マルスが追撃をしかけ、少年を掠った。さらにたたみかけるようにリュークが切り込み少年に迫った。
「おらあっ!!」
「!!……見切った!!」
黙ってやられるつもりは無い少年は炎を纏い腕をぶん回したがリュークはその攻撃を見切り、素早く回避した。
「っっ………つえーな、おまえ!!」
「……そう思うなら、退いて貰えると嬉しいのだが……」
「うおおっ、もえてきたーーっ!!」
『……やはり、逆効果みたいだね。』
「でも、マルスとの"シンクロ"で相手の攻撃を食らわずに済んでます。」
紋章士を顕現する"シンクロ"状態。これはただ紋章士を顕現するだけでなく、顕現した紋章士に応じた能力を得る事ができる。マルスの場合は速さや回避と、それを活かした連続攻撃が特長である。
「(後は、どう切り抜けるかだが………)」
目の前の少年が賊の一味で無いことはとっくに理解しているリューク。戦いがそこまで好きでもない事もあり、終始どう殺さず上手いことやり過ごすかを考えていた彼だが、ここで事態が急変した。
「ナツーー!!」
「ハッピー!?」
羽根の生えた青猫が慌てた様子で少年のもとに飛んで来た。そしてそれに続いて偵察を続けていたフェルトも降りて来た。
「どうした、ハッピー!?」
「やみギルドのまどうしがいっぱいこっちにむかってきてるよー!!」
「……本当か、フェルト?」
「………ホー。」
「申し訳ない。こちらも余裕が無かったんだ。」
「報せていたんだけど」と言いたげに不満げに鳴いたフェルトに対し、生返事で返したリューク。その間にも山賊を束ねていた闇ギルドの魔導士が大挙してリュークと少年を取り囲んだ。
「仇討ちとは、闇ギルドにしては殊勝だな?」
「仇討ち?私は"ビジネス"の邪魔者を排除しに来ただけだが?」
「………世辞を使った俺が馬鹿だった。」
闇ギルドのマスターと思しき男の返答に、盛大に溜め息をついたリューク。すると、少年が驚いた顔をした。
「おまえ、やみギルドのにんげんじゃなかったのか?」
「全く関係無い、通りすがりの旅人だが!?」
「なんだよ、じゃあそういえよ。」
「………問答無用で突っ込んで来たのはどこの誰だよ。」
「おっと、わるかったな。オレはナツ、よろしくな!!」
「ナツか。俺はリューク、よろしく頼む。」
自己紹介を終えたリュークとナツは背中を合わせ戦闘の構えを取った。
「行くぞ!!」
「まかせろ!!」
リュークは紋章士マルスと共に、ナツは炎を纏って闇ギルドの魔導士の一団へと突撃した。
「はああっ!!」
「ぐあっ……!!」
「くたばれっ!!」
『させるものかっ!!』
「うお………っ!?」
「そこっ!!」
「がぁ、っ!!」
素早い身のこなしと紋章士マルスとの連携攻撃を以てリュークは敵を次々と薙ぎ払い、
「おお……らぁっ!!」
「「ぐあああっ!!」」
「この、ガキ!!」
「ハッピー!!」
「あいさーっ!!」
「なっ、飛んだだと!?」
「"火竜の咆哮"!!」
「「「おあーーーっ!!」」」
圧倒的な火力と、相棒であるハッピーのアシストによりナツは敵を一網打尽にしていた。しかし、闇ギルドの魔導士はリーダー格を含めまだ残っていた。しかし同時に"切り札"のその先、"奥義"をリュークも残していた。
「そろそろ決着をつけましょう、マルス!!」
『ああ。心を、一つに!!』
するとリュークは再び紋章士の指輪を掲げた。
「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」
リュークと紋章士マルスが同時に呪文を唱えると、リュークの指輪から放たれた光が二人を瞬く間に包みこんだ。その光は数秒にして消えたが、そこに紋章士マルスの姿は無く、代わりにリュークの出で立ちが大きく変わっていた。衣装はマルスに良く似た、白を基調とした服装と金の防具の輝かしいものになっており、青と緑に分かれた髪色の内、青かった左側の髪が明るい青に変化していた。
『………行くぞ!!』
紋章士の力をその身に宿し、一体化するリュークの奥の手、"エンゲージ"。紋章士マルスと、その"エンゲージ"状態となったリュークは新たに使えるようになったエンゲージ武器の"レイピア"を構えた瞬間、文字通りの"神速"を以て周りにいた魔導士5人を一瞬にして斬り伏せた。
「はや……っ!?」
「うおーーっ、オレも負けてられるか!!」
その速さに闇ギルドの魔導士が怯んだ中、ナツはより闘争心を燃やし、リュークに負けじと魔導士を倒し回り、気づけば残りはマスターの男のみとなっていた。
「あとひとりか!!あいつはおれが……!!」
『待て、少し耳を貸せ。』
リュークはナツに一言二言耳打ちをした。
「……そうか、なんかへんだとおもったがそういうことか。」
『気づいてたとはね、流石は滅竜魔導士ってところか。という訳で、頼むよ!!』
「ああ、まかせろ!!」
耳打ちを手早く終わらせると、マスターの男と相対した。
「作戦会議は終わりかね?」
『他愛もない雑談だよ。策を練る程の相手でもないみたいだし。』
「言ってくれるではないか……だが、これを見てもか?」
するとマスターの男の周りにいくつもの魔法陣が現れ、そこから無数の魔法弾が機関銃のように射出された。
「死ぬがいい!!」
それに対し、リュークは刀身の輝き始めた"レイピア"を頭上に掲げた。
「剣一本で捌き切るつもりか?」
『輝く一撃を………!!』
そう言い切るとリュークは踏み込み、最高速度で駆け出した。その速さたるや、魔法弾の弾幕を瞬きの内にすり抜け、マスターの男の目の前に迫るものであった。
「なっ………!?」
『"スターラッシュ"!!』
紋章士毎に存在する、"エンゲージ"状態でのみ使える必殺技、エンゲージ技。マルスのエンゲージ技、"スターラッシュ"は防御をする暇も与えない神速の9連撃である。
「がは……っ、こんな、はずで、は………」
『これが、紋章の導きだ。』
"スターラッシュ"を受け、後方へ吹き飛ばされたマスターの男は木に激突し、そのまま地面に崩れ落ちた。それを見届けたタイミングで"エンゲージ"状態が解除された。
「時間内に済んで良かった。またお願いします、マルス。」
『ああ。お疲れ様。』
そしてマルスに声をかけたリュークはマルスとの"シンクロ"も解除し、武器をしまって戦闘態勢を解いた。
「さて、ようやく終わったか………」
と、小さくあくびをしたリューク。しかしその瞬間、討ち取ったはずのマスターの男がリュークの背後に現れた。
「油断したな……!!」
先程までリュークが戦っていたのは分身魔法による偽物で、本物は近くに身を潜め、隙を窺っていた。そして偽物を倒し、隙を見せたリュークの死角からマスターの男が迫り、ナイフを突き立てようとした。
「………読み通り。」
だが、リュークは狼狽える訳でも慌てて構え直すでもなく、ただ立ち尽くしながら呟いた。
「世迷いゴハァっ!?」
リュークにナイフが突き刺さろうとしたその時、横からナツが炎を纏った突進でマスターの男を突き飛ばしたのだった。
「隠れ方がお粗末だったね、おかげで上から丸見えだったよ。」
フェルトからの視覚情報により、リュークは最初からマスターの男が分身魔法を用いて不意討ちを狙っていた事に気づき、それを逆手に取った作戦に出た。それは自分を囮に相手を釣り出し、そこを横からナツに奇襲を仕掛け返す事であった。
「作戦に乗ってくれてありがとう。では、トドメは任せるよ。」
「よっしゃあ!!"火竜の………鉄拳"!!」
「ぐわぁぁぁ!!!?」
作戦は見事に決まり、あとはナツが追撃の一撃を加え勝負あり。吹き飛ばされたマスターの男は家屋に激突し、そのまま戦闘不能となった。
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その後、闇ギルドや山賊の引き渡しや助けた町人からの歓迎などもあり、リュークが町を出発したのは翌日になってからだった。しかし、今回はリュークとフェルトだけでなく、ナツとハッピーも一緒だった。
「まさか行き先が同じマグノリアだったなんてね。」
「オレたちはフェアリーテイルのまどうしだからな。」
「フェアリーテイル?」
「オイラとナツのいるまどうしギルドだよ。」
「魔導士ギルド………そう言えば、そんな感じの建物もあったな。」
「リュークはどうしてマグノリアに?」
「マグノリアを拠点にしてる、知り合いの行商人に用があってね。」
リュークとナツの目的地が同じマグノリアだったのも理由としてあったが、もう一つ理由があり、それは昨晩の会話にあった。
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「なぁ、"イグニール"ってしらないか?」
「イグニール?」
「ああ、オレのとうちゃんなんだ。」
「どうだろうな………特徴は何かあるか?」
「ああ、でっかいドラゴンだ。」
「ドラゴン………ドラゴンかぁ、うーん………」
「なんかしってるのか!?」
「いや。竜の知り合いはいたが、イグニールって名前は聞いた事は無いな。」
「おまえもドラゴンにあったことあるのか!?」
「………随分と昔の話だけどね。」
「ほんとうか!?おまえのしりあいのドラゴンのことをおしえてくれよ!!」
「構わないよ。その次はイグニールについて聞かせてくれ。」
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自分の周りにはいなかった、"ドラゴンを知る人間"であるリュークに興味を持ったナツ。一方で旅が長く他人と話し込む機会の少ないリュークも興味津々のナツにつられ久しぶりに話が弾んだ。これがきっかけで不思議と気が合った二人は、取り留めもない話をしながら目的地へと歩いていた。
「そういえば、リュークはこのさきどうするんだ?」
「うーん………用事が済んだらまた旅に出るかな。」
「どこへいくんだ?」
「決めてないな。特に帰る場所も無いし今まで通り、大陸をフラフラとまわるかな。」
「……………」
少し考える素振りを見せたナツ。すると、彼はリュークにこう問いかけた。
「なぁ、リューク。」
「なんだい?」
「うちのギルドにこないか?」
「ギルドに?」
「ああ、オレたちのギルド、フェアリーテイルに!!」
続く
今回はリュークの戦闘に不可欠な要素のした紹介です。
="クラスチェンジ"=
換装魔法の応用魔法。特定の兵種に変更する事で能力の変化と使用武器を切り替える。仕様としては以下の通り
・初期状態では能力変化が無い代わりに全ての武器種を使用可能(武器レベルD)、兵種変更により能力が変化し、その兵種に対応した武器レベルも上昇する。
・上級職、最上級職の方が能力上昇が大きいが消費魔力も高い
・後述のシンクロ、エンゲージをしている紋章士によって兵種特性は変化する(紋章士の出身作品の特性に準拠する)
=紋章士の指輪=
・リュークの切り札である、異界の英雄である紋章士が宿る指輪。原作エンゲージの指輪と違い、一つの指輪に複数の紋章士が宿っている。
・この指輪に魔力を籠める事で、紋章士を顕現し共に戦う"シンクロ"と、その紋章士と一体化して戦う"エンゲージ"が使える。
・"シンクロ"状態になると対応した紋章士が共に戦う他に、紋章士に応じた能力上昇がある
・紋章士と一体化する"エンゲージ"を使うと、さらなる能力上昇に加え強力なエンゲージ武器とエンゲージ技が使えるようになる。しかしエンゲージ状態には制限時間があり、再び使うまでにインターバルを置く必要がある
・また、指輪に付いている虹色の宝石(ヒーローズのオーブみたいな感じ)は、"シンクロ"で顕現する紋章士に応じて色が変化する。
紋章士については、原作エンゲージに出てくる指輪・腕輪の紋章士の他に独断と偏見で「このキャラ紋章士に落とし込んだら面白いやん?」なオリジナル紋章士を出そうかと思っています。