大した作品では無いかもしれませんが、来年も引き続きご愛顧いただけると幸いです。
ジェラールを倒し、野望は阻止された。しかし、"エーテリオン"の魔力を蓄え切れなくなった楽園の塔は魔力を放出しながら自壊を始めたのだった。
「魔導二輪が出せたら楽だろうけど………ごめん、魔力不足だ!!」
「悔やんでもしょうがない!!とにかく走れ!!」
崩れる床や壁、そして当たれば無事では済まない高濃度の魔力の奔流を避けながら、リュークはアーロンに肩を貸しシモンを背負い、エルザはナツを背負い塔を下りようとしていた。
「おわっ………!!こっちはダメだ!!」
「ならばあっちからだ!!」
通れる道を探しながら、脱出を諦めず走り続けるリュークとエルザ。
「うわあっ!?」
「うあっ!!」
だが"エーテリオン"の魔力量は塔を形成する
「
「若様。」
「拒否する。」
「若様!!」
「"命を粗末にするな"。"自己犠牲は最後の手段だ"。俺にその言葉を徹底的に教えこんだのはあなただ。」
「………それは若様、あなたが。」
「そして、"どうすれば仲間を生かせるかを考えて戦え"と説いたのもあなただ。………自分の教えに自分で背くのは、弟子として見たくないよ?」
「………。」
「そんなに死にたいのなら、帰った後に"若様に刃を向けた不届き者"として死ね。俺がこの手で介錯してやる。」
「………若様。」
「話は終わりだ。行くよ。」
「……………。」
そう話している間にも、リュークは懸命に頭を働かせていた。
「(どうすれば皆は助かる!?魔力を吸収………いや、"奥の手"を以てしても器として足りない!!どこかに魔力を逃がす………そこまでの力も、悔しいが俺には無い!!紋章士の力………無理矢理引き出せても1人、誰の力なら………!?)」
しかし、"エーテリオン"の魔力はリュークの手には余るものだった。
「(クソッ………"所詮は人"、か、今になってジェラールの煽りが刺さる………ああ情け無いったらありゃしない!!人に"しか"なれない自分が恨めしい!!こういう時………マルスなら、アイクなら、紋章士の皆ならどう動く!?母さんなら、祖父さんなら………"初代様"なら。そしてかの"●●●●様"なら、どうやって皆を救う!?考えろ考えろ考えろ………!!)」
考えを巡らせるも空回りばかりで時間だけが過ぎ、焦りの表情が色濃くなって来たリューク。そんな時だった。
「………リューク。」
「何だ!?」
「ナツを、頼む。」
「は?」
エルザはナツをリュークに託すと、まだ無事な魔水晶の塊と向き合った。
「おい、何を………?」
すると、エルザはその魔水晶に手を突っ込んだ。
「あぐっ………ううっ!!」
「エルザ!!何をしている!?」
声を荒げたリューク。するとそれを聞いてかナツも起きた。
「エルザ………?」
「"エーテリオン"を止めるにはこれしかない。」
「"エーテリオン"を、止める………?」
「………まさか、エルザ。」
エルザはにこりと笑った。
「私が"エーテリオン"と融合して、抑える。そうすれば………」
「バカヤロウ!!そんな事したらお前が!!」
「よせ!!まだ方法は………!!」
「時間が無い。何も心配しなくていい、必ず止めてみせる………!!」
「そう言う事を言っているんじゃない!!」
「よせーーーっ!!」
魔水晶に自らの身体を更に突っ込むエルザ。それを止めようと走り出すリュークとナツだが、人2人を抱えるリュークとダメージの残るナツは思うように前に進めなかった。
「ナツ。リューク。私は妖精の尻尾の皆無しでは生きていけない。仲間のいない世界では生きていけない。………私にとってお前達は、それほどまでに大きな存在なのだ。」
「エルザ………」
「そんなの、命を投げ出す理由にならない!!やめろ!!」
だがエルザは更に自分の身を深く、深く入れた。
「私が皆を救えるのなら、迷いなど無い。この体など、くれて………」
そうして、エルザが魔水晶に全身を突っ込んだ………その寸前。
「!?」
エルザの身体は魔水晶の外、リュークの横に投げ出されていた。
「な、何が………!?」
「………言ったはず。死に損ないの老骨の為に命を投げ出す馬鹿がどこにいるのか、と。」
エルザのいた、魔水晶の中。そこには、紋章士ユーリスの"トリック"でエルザと入れ替わったアーロンがいた。
『………これで満足か?』
「………ええ。最期に"守り人"らしい事ができて、本望です。」
「………"守り人"らしい!?本望!?ふざけた事を抜かすなこの愚か者が!!」
満足そうに笑ったアーロン。だがそれを見てリュークは激昂した。
「さっきの言葉を聞いていなかったのか!?死ぬなら帰ってからと言ったはずだ!!これは命令だ、そこから一刻も早く出て来い!!」
「若様………」
一息ついて、アーロンは話し始めた。
「………どの道間もなく死ぬなら、こうして死にたいのです。」
「何!?」
「シモンの致命傷を治す為に、儂は残り僅かな寿命を捧げました………保って3日、と言ったところでしょうか。ならば、その僅かな命は若様達を守る為に使いたい。」
「ふざけるな………ふざけるなよ、この大バカ野郎が………!!」
拳を硬く握り締め、涙を流しながらアーロンが入った水晶を睨むリューク。だが、睨む"だけ"に留まっていたのは、リューク本人がこの方法が最良の手段である事を認めていたからである。
「………お強くなったとは思いましたが、泣き虫なのだけは変わりませんな。」
「………うるさい!!思い出話の時間は無い!!」
「ええ。お話したい事は山とありましたが、時間がありません。なので、これだけはお伝えしましょう。」
"エーテリオン"の魔力がいよいよ抑えきれなくなり、魔力が暴発し始めている中、アーロンは最期の言葉を告げた。
「若様………いや、"■■■"リューク様。僅かながらあなたの側で成長を見守り、共に戦えた事を光栄に思います。三代に渡り"■■■"に仕える事のできた儂は、一番幸福な"守り人"であったでしょう。」
「アーロン!!なぁにが光栄だ!?臣下の礼すら取ってない奴がほざくなぁ!!」
「よい土産話ができました。………さらばです、リューク様。あなた様の旅路が、良きものとならん事を。」
「アーロン!!待て、行くな!!アアアロオオオン!!!!!!」
その瞬間、暴発していた"エーテリオン"の魔力は一処に集まると、竜巻のような挙動で打ち上がった。空中へと打ち上がった"エーテリオン"の魔力はそのまま空に溶け込むように消え、辺りには静寂が訪れた。
「……………。」
楽園の塔はその存在を消し、更地となった島の一部のみが残った。そんな殺風景島に立つナツ達と、そんなナツ達を迎えに来た、ルーシィ達の脱出組が合流し、喜びを分かち合う中。
「ホー?」
「……………。」
その輪から外れ、1人呆然と空を見あげていたリューク。そんな彼の目の前に指輪が1つ、空から落ちたのだった。
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戦いが終わった。妖精の尻尾の一同はエルザのかつての仲間達と共にアカネビーチへと戻り、身体を休めた。翌日、ジュビアは先に帰るもエルザのかつての仲間達はエルザと共に、8年の空白を埋めるように共に過ごし、共に笑い、そして彼らを妖精の尻尾へ誘ったのだった。
「……………。」
そんな中、リュークは1人砂浜に座ってはフードを被ったまま水平線を眺めていた。
「ここにいたんだ。」
「………ルーシィか。」
「ナツがようやく起きたわ。それにシモンも、無事起きたって。」
「………そうか。それは良かった。」
「……………。」
リュークがどんな顔をしているか、そんなものはルーシィじゃなくても容易に分かるものだった。顔を見ようとした瞬間フードで隠すところでルーシィの認識は確信に変わった。
「………俺はもう少しここにいるから、先戻ってていいよ。夕食の時間までには戻るから。」
だがルーシィは横に座った。
「ここにいても、面白くは無いよ?」
「面白いからここにいる訳じゃ無いわ………そんな震えた声して、放っておけないよ。」
「……………ごめん。」
「謝らないでよ。………大切な人だったんでしょ?」
リュークはしばらく沈黙してから一息つき、話し始めた。
「………ああ。俺の祖父さんと母さんに仕えた人で、聞いた話によると祖父さんの幼馴染らしい。そして主君の息子である俺に対して、武器の使い方や戦術だけで無く人として、人を率いる者としてどうあるべきか。本当に色々な事を教えてくれたよ。」
「……………。」
「俺にとっては本当にいい師匠だったけど………同時に、今思えば記憶のある前に父さんを亡くした俺にとっては、あの人を父親同然に見ていたのかな。」
「………それだけリュークにとっては大切な人だったんだね。」
「うん………くそっ、話してたら涙が止まらなくなった。どうしてくれる?」
「ええっ!?どうしろって言われても………?」
「冗談だよ………確かに涙は止まらないけど、少しだけ気分が楽になった。ありがとう。」
「………どういたしまして。」
照れくさそうにフードを更に深く被ったリューク。しばらくその場に留まっていたが、やがて目元を拭いフードを下ろして立ち上がった。目は泣き腫らしていたが、振り切った目をして少しだけ笑みをこぼした。
「悪いね、付き合わせてしまって。」
「ううん。でも強いね、リュークは。もう立ち直ってる。」
「………今まで多くの別れを経験したから、流石に乗り越え方も覚えた。それに………ひとしきり泣いて、悲しんだ後は前を向いて笑顔で今日を、明日を生きる事。それが、自分を愛してくれた者への一番のお返しになるから。」
そう言うと、リュークはアーロンの置き土産である指輪をしまった。
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その後リュークは涙を見せる事無く、笑顔で皆との輪の中に入っていた。
「なるほど………いい事が聞けた。ウォーレンの話と合わせたら俺も"思念伝達魔法"をものにできるかもしれない。」
「それは良かった。ところで、何故"思念伝達魔法"を?」
「フェルトとの連携がより良く取れるかなと思ってね。今までは離れていた場合勘やその場のノリみたいな不安定なものに頼らざるを得なかったからね。」
「そう言う事か………しかし、二度もフクロウに俺の"闇刹那"を攻略されたと思うと、フクロウがトラウマになりそうだ。」
「ホホッ!?」
「冗談だ。」
エルザのかつての仲間の中で、特にシモンとは馬が合ったようで彼と話す事が多かった。
「………で、この後どうするんだ?ナツやエルザは君達を妖精の尻尾に、って言っていたけど。」
「………確かに、それも悪くないな。でも俺は、もう一つやりたい事がある。」
「それを聞いても?」
「妹に会いたい。」
「妹………か。そうだな、それはぜひ会いに行って欲しいな。お兄ちゃんが生きていたって知れば喜ぶに違いないから。」
「ああ………必ず会いに行くさ。」
こうして交流をしつつ数日後。ギルドに戻る前の最後の夜となった。
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「全く大丈夫なのか?明日帰るというのに………」
「ホー………?」
明日にはチェックアウトをし、ギルドに帰るというのにモノを散らかし放題のまま遊びに出ていたナツとグレイに呆れながら、リュークとフェルトは荷物を纏め始めていた。すると、ルーシィが尋ねて来た。
「リューク!!ナツとグレイ見てない!?」
「いや、下へ遊びに行ってるけど?どうしたの?」
「ショウ達がいないの!!そしてそれをエルザに伝えると、"花火"の準備をしろ、って言われて………」
「"花火"………そうか、そう言う事か。」
"花火"という単語を聞き、リュークは荷造りの手を止め立ち上がった。
「フェルト、彼らを探してくれ。」
「ホーッ!!」
「よし、行こう。」
「行くってどこへ?それと、"花火"って?」
「………仲間の門出に送る、祝砲だよ。」
フェルトは窓から飛び出し、リュークはルーシィを連れて下へと降りた。
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フェルトを頼りに、消えたショウ達4人を探し当てたリュークとルーシィはそのまま砂浜へ直行。するとそこには小舟に乗り海へ出ようとするショウ、シモン、ミリアーナ、ウォーリーの4人と、先に到着したエルザ、ナツ、グレイ、ハッピーがいた。
「と、止めるつもりなら無駄だゼ、俺達は自分で決めたんだ………」
「………。」
「俺達はずっと塔の中で育ち、これから初めて"外"の世界に出ようとしている。分からない事や不安な事がいっぱいだけど、自分達の目でこの外の世界を見たいんだ。」
そしてショウは続けた。
「もう誰かに頼って生きたくも無いし、誰かの為に生きるのもゴメンだ。これからは自分自身の為に生きて、やりたい事を自分の手で見つけたい………これが、俺達の自由だ。」
「……………。」
「だから、俺達は姉さんとは一緒に行けない。………せっかく誘ってくれたのに、ゴメン。」
それを聞き届けたエルザは黙って頷くと返事を出した。
「その強い意志があればお前達は何でもできる。安心したよ。」
するとエルザは換装を行った。妖精の尻尾の紋章が描かれた旗を携え、同じ紋章の描かれたマントの鎧を来たエルザは旅立とうとする4人に話し始めた。
「だが、妖精の尻尾を抜ける者には三つの掟を伝えねばならない。心して聞け。」
「抜けるって、入ってもねェのに………!?」
動揺するショウ達を差し置いて、エルザは続けた。
「一つ!!妖精の尻尾の不利益になる情報は生涯他言してはならない!!」
「………?」
「二つ!!過去の依頼者に濫りに接触し、個人的利益を生んではならない!!」
「ギルドの不利益な情報なんて持ってないゼ?」
「依頼者って何?」
「姉さん………」
「………エルザ。」
「そして………三つ!!」
最後にして、エルザが一番伝えたかった掟。それを彼女は、涙ぐみながら告げた。
「たとえ道は違えど強く、力の限り生きねばならない!!決して自らの命を小さなものとして見てはならない!!そして………」
涙が抑えきれず、泣き出すエルザ。だがそれでも、彼女ははっきりと言葉にした。
「愛した友の事を!!生涯忘れてはならない!!」
その言葉を聞きショウ、シモン、ミリアーナ、ウォーリーの4人もつられて号泣し始めた。
「妖精の尻尾式壮行会、始めェ!!」
旗を高らかに掲げ、壮行会の始まりを告げたエルザ。するとエルザの後ろに控えていた面々が動き始めた。
「心に咲けよ、光の華!!」
ナツが口から火の玉を放つと、空高いところで爆ぜ、大きな花火となった。
「氷もあるんだぜ。」
「じゃあ、あたしは星霊バージョン!!」
続けてグレイとルーシィが、それぞれ氷と星霊の力による花火を打ち上げた。
「
『分かったの!!』
「『天まで届け………!!"ファイアワークス"、発射!!』」
マージカノンの大筒を出したリュークは、アーロンの持っていた指輪の紋章士の1人、紋章士レギンと共に特大花火を打ち上げた。ナツ、グレイ、ルーシィ、リュークの打ち上げる彩り豊かな花火はビーチにいた人達を釘付けにした。そんな中でエルザは、花火の音に負けない声でショウ達に語りかけた。
「………私だって、本当はお前達とずっといたい。だが、それがお前達の足枷となるなら………この旅立ちを私は祝福したい。」
「逆だよエルちゃぁぁぁん………!!」
「俺達がいたら、エルザは辛い事ばかり思い出しちまう………!!」
「どこにいようと、お前達の事を忘れはしない。そして、辛い思い出は明日への糧となり私達を強くする。誰もがそうだ、人にはそれができる。」
「『……………。』」
「強く歩け。私も強く歩き続ける。この日を忘れなければ、また会える……………元気でな。」
「姉さんこそ………!!」
「ああ………エルザ、必ずまた会おう。それまで、元気でな。」
「バイバーイ、エルちゃん!!」
「ゼッタイまた会おうゼ!!約束だゼ!!」
「………ああ、約束だ。」
こうしてショウ、シモン、ミリアーナ、ウォーリーは船出し、砂浜から見えなくなるまで特大の花火は打ち上げられたのであった。
『………見えなくなったね。』
「………そうですね。」
『………届いたかな?』
「届いたはずです。」
最後の花火を打ち終え、大筒を降ろしたリュークだが、彼は紋章士レギンと共に夜空を見上げた。すると紋章士レギンに加えパオラ、クリス、エリウッド、ユーリス………いつの間にか出てきていたアーロンの紋章士も空を見上げた。
『ええ、きっと届いたはず。』
『………空から見ていてください、アーロン。』
『僕達が、君の分まで彼の力になるよ。』
『という訳で………よろしく頼むよ、若旦那。俺様達を上手く使ってくれよ?』
「………ええ。よろしくお願いします。」
花火の残滓も消えた夜空は、その代わりに星がまたたいていた。そしてその星空に、一筋の小さな流星が流れた。
続く
という訳でシモンは生存です。本人の交友関係からして、だーいぶ後に出番は少しあると思います。
そしてアーロンの遺した紋章士5名はそのままリュークにスライドします。もしかしたら後々ルーシィに持ち主がスライドするかもしれませんが。
・ファイアワークス(砲弾)
威力:-
命中:-
射程:3-8
効果:味方の頭上に撃つ花火。撃たれた味方は1ターン敵に少し狙われやすくなる。
タゲ管理用の砲弾。紋章士セネリオの"囮指名"より強制力は低めの代わりに離れた味方のタゲ管理が可能になる。