4月からここまでのお付き合いありがとうございました。これからも続けていくので来年もよろしくお願いします。
では今回はリュークとルーシィで新たな紋章士の顕現に入ります。さて、誰が顕現されるのだろうか………!!
ミス・フェアリーテイルに優勝して賞金を手にしたい。その為にルーシィは強い気持ちで試行錯誤をした。その結果、ルーシィの持つ紋章士の指輪が強く閃いた。何が起きたかと翌朝リュークの所へ持っていくと、400年前にルーシィの先祖がしたように新たな紋章士を生み出した事が発覚した。
「………まさか、ご先祖様に起きた出来事をこの身で再現する事になるとは。」
「一体、何で………?」
「………多分だけど、強く願ったからじゃないかな?」
「強く、願う………?」
リュークは頷きつつ、話を続けた。
「"私の元に来て"という"願い"を魔力に乗せて別の場所、別の次元、別の世界の存在を喚び出す。それが全ての召喚系魔法の"原理"だ。魔力だったり、召喚する存在との絆や信頼関係は確かにより効果的に扱えるようになるけど、そもそも喚び出す理由、願いが無ければ喚べないし、逆にその願いが強い事で覚醒する事もある。………新しい紋章士が生まれたのも、突き詰めれば強く願った、その結果だ。」
「………そうなのかなぁ。」
「というと?」
「確かにあたしは強く願ったかもしれない。でもそれは紋章士という"異界の英雄"を喚び出すには少しズレた理由だと思うんだ。」
「ズレてるというか、俗な願いではあるけど………」
新たな紋章士が生まれたその時。ルーシィが願ったのは"競争相手に負けない輝き、キラメキ"である。根底にある"勝ちたい、負けたくない"という意味では合致しているが、それでも紋章士のような"異界の戦いで活躍した英雄"に願うものとしては少しズレている。だが、リュークはそれでも構わないと思った。
「………けど、純粋に強く願ったのなら、それでいいのだと思う。ルーシィ、指輪を貸して?」
「はい。」
ルーシィから指輪を受け取り、観察したリュークは、少ししてから僅かに頷いた。
「………うん。やっぱり、ルーシィの"その"願いで間違い無いと思う。」
「もしかして、生まれた紋章士が誰かまで分かった!?」
「うん、多分合ってると思う………さて、俺にとっても初めての事だけど、準備はいい?」
「うん、お願い。」
頷いたルーシィを見て、リュークはほのかに光り続けるルーシィの指輪を握り締めると目を閉じ、祈りながら頭に浮かんだ呪文を唱えた。
「まずは………
リュークが唱え終え、目を開いた瞬間。魔力の塊がリュークのルーシィの前に渦巻き、紋章士の形となった。
「ペガサスに乗ってる………女王様?」
「………やはりか。初めてで成功して良かった。」
その紋章士は
『貴方達ですね?この私を、紋章士として顕現したのは。』
「は、はい。」
「………その通りです。クリミア女王、エリンシア。」
エリンシア、とリュークが呼んだ紋章士は2人の返事を聞くとにこりと笑みを浮かべた。
『………はい。かつてのクリミア女王、そして今は清真の紋章士、エリンシア・リデル・クリミア。これより貴方がたの力となりましょう。よろしくお願いしますね、リューク様に、ルーシィ様。』
「あたし達の名前を………!?」
『眠っている間も、貴方達の声は聞こえていましたので。』
前王の嫡子でありながらも跡目争いを避ける為にその存在を隠された姫として育つも、敵国の侵攻によって一度追われた国を取り戻す戦いに巻き込まれた末女王となった人物。そしてその後、動乱に揺れる祖国を守る為に女王となる覚悟を決めた"清真女王"。それが目の前の紋章士、クリミア女王エリンシアである。そんな紋章士エリンシアの顕現を見て、リュークの背後に1人の紋章士が現れた。
『久しぶりだな、エリンシア。あんたも紋章士になったのか。』
『アイク様!!お久しぶりでございます。元気そうで何よりです!!』
『あんたも元気そうで良かった。これからもよろしく頼む。』
『はい、よろしくお願いします。リューク様、ルーシィ様、貴方達を脅かす敵は、この私がぶっ飛ばして差し上げます!!頼りにしてくださいね!!』
「ぶっ飛ばして、差し上げる………?」
「俺からもよろしくお願いします、エリンシア。」
挨拶が終わると、一度紋章士エリンシアは顕現を解除して指輪に戻った。
「すごい、成功ね!!これが、紋章士の誕生………!!」
「まさか、また立ち合うとは思わなかったよ………ありがとう、ルーシィ。」
「どういたしまして。それじゃ、次の紋章士も起こしましょ。」
「(………それにしても予想通り。民を、祖国を守る為女王に………国を守る"光"となる事を決意したエリンシア。ルーシィの願いである"輝き、キラメキ"にも合致する。だけど多分、ルーシィの本命はこっち………!!)」
ふうと息を吐いたは紋章士エリンシアを顕現した時と同じように祈りながら問題の呪文を唱えた。
「
呪文を唱え終え、目を開いたリューク。すると先程と同様に目の前で魔力が渦巻いた。
「顕現は成功!!ただ、どう出るか………!!」
渦巻いた魔力はやがて紋章士の形を取った。だが、様子が違った。
『わ、わわっ………と。』
躓きそうになりながらも着地した紋章士。その出で立ちは戦士や王族には到底見えない………というよりは一見するとルーシィと変わらない普通の、学生服姿の女の子だった。
「あれ?思ってたより何倍も普通の女の子だ………えーと、紋章士、でいいのよね?」
『えっと、あ、はい!!自己紹介しなきゃ!!』
その紋章士は佇まいを整えると自己紹介を始めた。
『えーと、幻影の紋章士!!織部つばさ、18歳です!!紋章士であり、フォルトナエンタテイメント所属のアイドルです!!歌も戦いも全力で頑張ります!!よ、よろしくお願いしましゅ!!』
「(噛んだわ………)」
「(噛んだ………)」
リュークが考え込む中、ルーシィは紋章士つばさと話し始めた。
「つばさってアイドルなの!?」
『はい!!と言っても、まだ駆け出しですけど………』
「敬語じゃなくて良いわよ、あたしの方が年下だし。あたしルーシィ、よろしくね!!」
『そう?じゃあそうさせて貰うね、ルーシィ。』
「でもごめんね………つばさって、本当に戦えるの?見た感じ、明らかに普通の女の子だし、魔導士にも見えないけど………」
『大丈夫、心配しないで!!私は"ミラージュマスター"だから!!』
「ミラージュ、マスター………?」
『そう。ミラージュ………紋章士に近いのかな?と力を合わせて戦うの。見てて………"カルネージ、フォーム"!!』
すると紋章士つばさを桃色の光が包み、瞬く間に学生服から衣装が変わった。白い翼に、馬の耳を模した髪飾りや蹄をモチーフにしたブーツ。合わせてペガサスの意匠が施された、白と桃色のアイドルのような衣装に変わった紋章士つばさは一振りの槍をクルクルと回してからポーズを取った。
「可愛いじゃない、つばさ!!それにその槍で戦うのね?」
『そう言う事。だから任せてって言ったの!!』
「………でもあれ?ミラージュ、って言うのは?紋章士に近い存在って言ってたけど………」
『そうね、ミラージュって言うのは………』
紋章士つばさが戦える原理は理解した。だが紋章士つばさの言うミラージュという存在が見当たらず首を傾げていたルーシィ。すると紋章士つばさの後ろに、青髪の女性が現れた。
『私の事かしら。』
「『うわあっ!?』」
突然現れた女性に、同時に引っくり返ったルーシィと紋章士つばさ。それを見た女性は申し訳無さそうに話し始めた。
『驚かせてごめんなさい。私はシーダ。つばさのミラージュ………ルーシィにとっては、"紋章士の紋章士"って所かしら。』
「そうなんだ。よろしく、シーダ。ところで、何でつばさまで驚いてるのよ?」
『だって、本来ミラージュのシーダは私のこの槍に変身するし、そもそも格好も全然違うもの!!』
紋章士つばさの元の世界のシーダはどこか無機質で、異形めいた見た目をしている他、彼女が
『紋章士になった影響かしらね。つばさの武器となるのでは無く、隣で戦う相棒として存在するのが、紋章士としての私なのかもしれません。それに、生前の姿になった事でつばさと共に戦った時の事も、その前の事もバッチリ覚えているわ。』
『そうなんだ………なら、これからは
『ええ!!ルーシィも、よろしくね!!』
ルーシィ、紋章士つばさ、そしてつばさのいた世界とは少し変容した形でつばさと共に顕現された紋章士シーダの3人が話している中、リュークは頷いていた。
「やはりシーダもいたか。どうやらクロムとルフレと同じタイプの紋章士みたいだね。………しかし、あの様子はやはり時代や文化が全然違う異界の出身みたいだね。どうりでつばさ達の出て来た"幻影異聞録"の世界観がイマイチ理解できなかった訳だ………」
"幻影異聞録"。"炎の紋章"シリーズの作品の1つで、つばさやその仲間が芸能界に生きながら戦いに身を投じる物語なのだがあまりにも他の作品とは世界観の毛色が違うので"最も難解な作品"と呼ばれていたが、つばさの雰囲気から難解であった理由を理解したのだった。
「………しかし、ビックリするくらい打ち解けているな。性格が似てそうだからか?」
ふと見ればルーシィとつばさは何かと意気投合していた。
「………という訳で、力を貸して欲しいの!!」
『ミスコンね。歌、踊り、演技。私がレッスンで習った事をできる限り教える事はできるけど………半端な覚悟じゃ許さないよ?ついて来れる?』
「是非!!お願いします、つばさ先生!!」
『せ、先生!?………ふ、ふふん、そう言う事なら、このつばさ先生にお任せあれ!!』
「………なんだろ、本当に似てるかもしれん。特に放っておくとどこまでも突っ走りそうなところが。お転婆はもうお腹いっぱいなんだけどなぁ………」
『その割には、満更でも無い顔をしてるように見えるわよ?』
紋章士シーダに言われ、複雑な表情をしたリューク。予想通りの反応が帰って来た紋章士シーダは思わずクスリと笑った。
『………ふふっ。』
「何ですかその笑みは。」
『………何でもないわ。ただ、随分と素直な人だと思っただけよ。』
「絶対に変な誤解してますよね!?」
『ふふっ、どうでしょう?』
すると、リュークの紋章士の1人が現れた。
『あまりからかい過ぎないでね。』
『!!』
現れた紋章士に目をやった紋章士シーダ。その瞬間、紋章士シーダは目を大きく見開いてから大きな笑みを見せた。
『マルス様!!』
紋章士マルスに気づいた紋章士シーダは勢い良くマルスに接近し抱きついた。
『久しぶりだね。』
『お久しぶりです、マルス様………また会えて、嬉しいです!!』
『僕もだよ、シーダ。共に過ごして、共に戦える事を、光栄に思うよ。』
『ええ………これからも、よろしくお願いします、マルス様。』
"英雄王"マルスとその妃のシーダ。紋章士となって再会し、熱い抱擁を交わした。
『………あんなシーダ、初めて見た………』
「………凄い。隙が、全く無い。」
「……………」
誰にも付け入る隙の無い、完全無敵な愛の形。マルスとシーダのそれを見たルーシィは思わず呟いた。
「………あたしも、いつか。」
『あ〜。ルーシィ、今どんな姿を想像した?………隣に"誰"を想像した?』
「へえっ!?だ、誰も想像してないわよ!!そう言う、つばさはどうなのよ!?」
『え、ええっ!?えーっと、私は………そう!!紋章士だからそう言うのはいいの!!』
「あーっ、今隠した!!絶対に聞き出してやるわ!!」
「………何と言うか。断じて魔導士と、その魔導士が召喚した存在の会話では無いな。」
わちゃわちゃと言い合うルーシィと紋章士つばさを見ながら、リュークは呟いた。
「だが成功して良かった。………俺も、あの人に少しは近づけたのかな。」
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その後、紋章士エリンシアはリュークの、紋章士つばさはルーシィの指輪に入る事になり数日が経った。
「ふぅ………これでおしまい。ありがとうございます、エリンシア。」
『お疲れ様でした、リューク様。』
新たに加入した紋章士エリンシアとの連携の確認を兼ねて、盗賊団を1人で制圧したリューク。
「正直、誰かと戦う事が真骨頂の紋章士が多いからまだ試せて無い事もあるけど………ルーシィはつばさとの特訓でかかりっきりだし、他の皆も忙しそうだからそこはまた今度かな。」
1週間程かけて新加入した紋章士の確認を実戦で行ったリュークは満足そうに帰路についた。
「ところでエリンシア、紋章士になって日が浅いですがどうですか?」
『はい、問題ありません!!これからもお力になりますよ!!』
「それは頼もしいです。これからもよろしくお願いします。」
『はい、こちらこそ。………それにしても、良い所ですね。あなたのギルドは。良い人達ばかりで、賑やかで………グレイル傭兵団に身を寄せていた時の事を思い出します。』
「かのグレイル傭兵団と比べるとアクの強いというか、ぶっ飛んだ人が多いと思いますがね………こっちは何度振り回された事か。」
『でも、シーダ様が前に言っていたように、振り回されるのも楽しんでいませんか?』
リュークは再び複雑な表情を見せながら頬を指でかいた。
「………やはりそう見えますか?」
『はい、それはとても。それと………』
「それと?」
『………いえ、これはリューク様が自分で気づかないといけない事ですね。どこかの誰か様と違って、あなたは気づける人だと思いますので。』
「???」
首をかしげるリュークだが、紋章士エリンシアは微笑むだけで答えないのでリュークは聞くのを諦め、マグノリアへと戻った。
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「はぁ、はぁ………」
『お疲れ様。はいお水。』
「ありがとう………はぁ〜、生き返った〜!!」
その頃、ミス・フェアリーテイルに向けて紋章士つばさと猛特訓していたルーシィ。疲労困憊で大の字に倒れるルーシィに水を渡した紋章士つばさは、ルーシィが水を一気飲みして復活するのを待って話し始めた。
『うん、踊りは最初と比べてだいぶ良くなってる。元から上手だった歌も、踊りでブレなくなってるし、突貫のレッスンにしては良いところまで持っていけたと思う。』
「音源もリラに頼んで準備できた。一緒に踊るバルゴとの連携も確認できた。あとは………」
『うん。あとはやるだけだよ!!』
「ありがとう、つばさ………あとは、当たって砕けるわ!!そして、絶対に優勝してみせる!!」
こうしていよいよ、収穫祭の時を迎えるのであった。
続く
・新規紋章士
と言う訳で、今回の新規紋章士は蒼炎・暁からエリンシアと、幻影異聞録♯FEから織部つばさのペガサスナイト(?)2組です!!
生まれるきっかけとなったルーシィの願いが、戦いとは離れたタイプの願いだった為にゴリゴリの戦闘員じゃない紋章士が出て来ました。
詳しい性能は、次回以降のBOF編で出番がありますのでその時に。
・紋章士つばさとミラージュシーダの扱い
まずつばさの方ですが、他の紋章士同様に冒険を終えた後の独立した存在です。異世界転生って訳ではないのでご安心ください。ただ感性は普通に現代人なので他の紋章士とはどうしても異色ではありますが、その代わりルーシィとは気軽に話せる………と言う塩梅です。
そしてシーダですが、こちらはメガテンめいた人離れした姿では無く、暗黒竜や紋章で見られる人の姿で出しています。紋章士クロムにおけるルフレの位置に収めました。
え?なんで人の姿にしたかって?そんなもの決まってる。
もっとマルスとシーダの絡みを頑張って書きたいからです!!
なんで記憶はアカネイア大陸でのマルスとの戦い、そして東京でのつばさとの戦いの両方の記憶を持った都合の良い状態です。
尚、つばさの顕現の影響でクロムも東京の記憶を取り戻していますが、樹まで出す予定はありません。樹が連鎖召喚されて、ルフレが「誰よその男!!」となって闇堕ちしてギムレーになる………とかは無いのでご安心ください。
さて、次回からBOF編に突入します。果たして収穫祭は無事に終わるのか!?ルーシィはミス・フェアリーテイルに優勝できるのか!?