FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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前話で今年は最後と言ったな。あれは嘘だ。

ウワァーーーッ………(無限峡谷を真っ逆さま)


29章 開演

マグノリアの収穫祭。街をあげたお祭りと、最大の目玉である大パレード"ファンタジア"を見に来る為に国中から人が集まり、商業の街として栄えるマグノリアが一番盛り上がる日である。 

 

「相変わらず賑やかだなぁ………」

「ホーッ。」

 

ファンタジアの主役である妖精の尻尾の一員として準備をしつつ、出店の食べ物を片手に街を歩き回っていたリューク。

 

「あっ、リュークじゃない!!ちょっと見ていかない?」

「アンナじゃないか。今年もこの時期は表で店出してるんだね。」

「最大の稼ぎ時だもの、逃す手は無いわ!!」

 

普段は大通りから外れた所で秘密の店を営んでいるアンナも、この時は大通りに出店を構えていた。

 

「さて、収穫祭特別セール開催よ!!とびっきりの掘り出し物を特別価格でご提供よ!!」

「特別価格って、俺には定価通りに見えるけど………?」

「普段売ってないものだから嘘はついてないわ。」

「またギリギリを攻めて………それはそれとして、どれどれ………」

 

出店に並ぶ掘り出し物を一通り見たリューク。するとリュークは1つの指輪に目が止まった。

 

「ん、この腕輪………"祈りの指輪"と同じものか?にしては何か余分に魔力がこもっているような………」

「流石お目が高いわね。それは"祈りの腕輪"、"祈りの指輪"と同じ効果を持つ腕輪だけど、その中でも特に強力なやつよ。なんせ高名な賢者の加護を受けた一級品よ。」

「なるほど………ただでさえいざという時に欲しい"祈りの指輪"の、特に強力なやつか。是非欲し………高っっっか!?何だこの値段ボッタクリじゃないのか!?」

「一品ものだから当然高くなるわよ。」

「ぐぐぐ………"シルバーカード"を無くしていなければ………!!」

「どうする?今逃せば次は無いと思うわよ?」

「んんん………!!」

 

まさかの高額に唸るリューク。悩み抜いた末、彼は………

 

「毎度あり〜!!」

「大丈夫だ、これは命を守るアイテムだからあるに越した事は無い。本物だって事も分かるから無駄な買い物じゃない………」

「ホー………」

「………収穫祭終わったら稼がないとな。」

 

"祈りの腕輪"を購入した。致命傷を受けた時に命を守るとされているアイテムの、特に強力なものは、たとえ高額であろうともリュークには買わないと言う選択肢は無かった。

 

「しかし50万はやっぱりボッタクリだって………必要経費にしてはちょっと………!!」

「ホホー、ホー?」

「おぞましい事言うな。次言ったら羽毟るぞ。」

「ホホーッ!?」

 

必要経費だと一生懸命自分に言い聞かせながら、リュークはギルドへと向かった。

 

==========

 

この日、ギルドは1つの会場として多くの客が集まっていた。その客の大半は男性で、その理由はこれから開催される催し物である。

 

《マグノリア町民、そして外の街からやって来た皆さん、お集まりいただきありがとうございます。………え?死者の国からも来てるって?終わったら成仏してね。》

 

妖精の尻尾の砂の魔導士マックスの軽快な司会で始まったイベント、それは。

 

《お待たせしました!!妖精の尻尾が誇る妖精達による美の祭典、ミス・フェアリーテイルコンテスト開催です!!》

 

妖精の尻尾の女性魔導士によるミスコン、ミス・フェアリーテイルの開催が宣言され、会場から野太い歓声が響き渡った。

 

《司会はこの俺、砂の魔導士マックスが務めます!!尚、開催の前に1つ注意事項ですが、今年は男性魔導士による女装枠は設けていません。ネタ枠を楽しみにしていた方は予めご了承ください。しかし去年の番狂わせを覚えている方も多いでしょう、まさか………》

 

その瞬間、マックスの真横を何かが通過し、垂れ幕に当たって落ちた。それは殺傷能力の高い"暗殺手裏剣"だった。

 

《………どうやら去年の優勝者は、話をぶり返して欲しくないらしいので始めましょうか!!》

 

"暗殺手裏剣"を投げた人物、リュークはムスッとしながら客席の後ろの方に座った。

 

「………嫌なら来なけりゃ良かったじゃねーか。」

「………見に来いとうるさくてね、仕方無くだよ。」

 

そんな中、ついにミス・フェアリーテイルが始まった。

 

《まずはエントリーNo.1、異次元の胃袋のエキゾチックビューティ、カナ・アルベローナ!!魔法のカードがカナの姿を隠して………水着に着替えたー!!》

「50万………いや、酒代は頂いたわ。」

《エントリーNo.2、新加入の水もしたたるいい女、ジュビア・ロクサー!!身体を水にしてから水着に着替えると言うコンボが決まったぁ!!》

「グレイ様、見てますか!!」

 

カナ、ジュビアとアピールに成功し歓声が上がったが、次に出て来た"優勝候補"に歓声はさらにおおきくなった

 

《エントリーNo.3、ギルドが誇る看板娘!!大陸中を虜にした美貌を持つミラジェーン!!》

「私、変身魔法が得意なんで変身しまーす。」

 

期待の眼差しを一斉に向けられたミラは、

 

「顔だけハッピー。」

「「「「「ええーーーッ!?」」」」」

「続けて、顔だけガジル君。」

「ぶーーーっ!?」

 

優勝候補がまさかのイロモノ枠となり何とも言えない空気が漂ったが、それは次の候補者が吹き飛ばした。

 

《つ、続けてエントリーNo.4、"最強"の名の下に剛と美を兼ね備えた"妖精女王(ティターニア)"、エルザ・スカーレット!!》

「ふっ、私のとっておきの換装を見せてやろう………とぉーっ!!」

「ゴスロリ!?」

「フフ………決まった!!」

 

そこからもどんどんと続いた。

 

《エントリーNo.5、小さな妖精、キューティ&インテリジェンス、レビィ・マクガーデン!!》

 

レビィは"立体文字(ソリッドスクリプト)"で様々な文字を浮かび上がらせ、

 

《エントリーNo.6、西部からのセクシースナイパー、ビスカ・ムーラン!!》

 

ビスカは様々な銃を換装して的を撃ち抜いた。

 

《そしてエントリーNo.7、ギルドのスーパールーキー、その輝きは星霊の導きか紋章の導きか………ルーシィ・ハー………》

「ストーーーップ!!ラストネームはダメ!!」

 

苗字を言いかけたマックスを止めに出て来たルーシィ。星霊界の衣装に身を包んだルーシィはバルゴと紋章士つばさを出すとアピールを開始した。

 

「星霊と紋章士と、一曲歌います!!」

 

そう言って伴奏を録音したラクリマを起動してから床に起き、前奏と共に踊り始めた。だが前奏が終わり、いよいよルーシィが歌い出しに入ろうとした、その時。グシャッ、と言う音と共にルーシィの用意したラクリマが破壊された。

 

「えっ!?」

「………エントリーNo.8。」

「ちょ、ちょっと!!何してんのよ!?」

 

文句を言うルーシィを無視して、エントリーNo.8を名乗った女性は前に出た。

 

「妖精とは私の事、美とは私の事。そう、全ては私の事………つまり、優勝はこの私、エバーグリーンで決定〜!!は~い、こんなくだらないコンテストは終了で〜す♡」

「えーーーっ!?」

 

名の通り、緑の衣装に身を包んだ眼鏡の女性、エバーグリーンはそう言うとコンテストの終了を一方的に宣言した。

 

「ちょっと!!邪魔しないでよ!!こっちは生活がかかってんだから………!!」

「ルーシィ!!そいつの目をみるな!!」

「へ?」

 

グレイの言葉を理解する、その前にルーシィは眼鏡を上げたエバーグリーンと目を合わせてしまった。

 

「何このガキ?」

 

その瞬間、ルーシィはエバーグリーンの発動した魔眼、"石化眼(ストーンアイズ)"によって石になって固まってしまい、それによりバルゴと紋章士つばさも消えたのだった。

 

《マズイ!!観客の皆さんは早く逃げて!!》

 

状況を理解したマックスは即座に観客へ避難を呼びかけ、それに応じて観客はギルドを出た。

 

「エバーグリーン、何をしておる!?祭を台無しにするつもりか!?」

「お祭りには余興がつきものでしょう?」

 

マカロフの怒号に応えるようにエバーグリーンが垂れ幕を燃やすと、ミス・フェアリーテイルに参加していた他の女性魔導士もまとめて石にされていた。

 

「なっ!?」

「姉ちゃん!!」

「エルザまで!!」

「バカタレが!!今すぐ元に戻さんか!!」

 

怒り心頭のマカロフがエバーグリーンに詰め寄ろうとすると、舞台に雷が落ちた。

 

「よう、妖精の尻尾のヤロウ共………」

「!!」

「祭はこれからだぜ。」

 

現れたのはラクサス。そしてその後ろに控えるのはエバーグリーンと共に、ラクサスの親衛隊を務める雷神衆のフリードとビックスロー。

 

「遊ぼうぜ、ジジイ。」

「馬鹿な事はよさんか、ラクサス。こっちは"ファンタジア"の準備もある、今すぐ元に戻せ。」

「"ファンタジア"は夜だよな。それまでの余興だ。」

「冗談で済む遊びとそうでないものがあるぞ、ラクサス。」

「もちろん俺は本気だ。なぁ、フリード?」

 

ラクサスから話を振られたフリードはラクサスの考えた"余興"の説明を始めた。

 

「ここらで妖精の尻尾最強は誰なのか、ハッキリとさせようじゃないか………」

「………つう遊びだヨ。」

「ルールは簡単、最後に残った奴が勝者。唯一のルールを破れば石になった女を1人ずつ砕く………これが俺の考えた"遊び"、名付けてバトル・オブ・フェアリーテイル。」

 

すると、突然机が爆炎と共に打ち上がった。打ち上げたのはもちろん、先程まで興味無く寝ていたこの男。

 

「いいんじゃねぇのか、分かりやすくて………燃えてきたぞ!!」

 

マカロフを含め全員がラクサス達を睨む中、ナツは不敵に笑いながら拳を固めた。

 

「お前のそう言うノリだけは嫌いじゃないぜ、ナツ。」

「よっしゃあ!!じゃあ俺がお前を殴り倒して最強になる!!」

 

ナツはそう言ってラクサスへ殴りかかるが、ラクサスはそんなナツの突撃を雷由来の瞬間移動でかわしナツはそのまま壁に突き刺さった。

 

「まぁ焦んな。制限時間は3時間、それまでに少なくともエバーグリーンは倒さないと石になった女共は砂になる。バトルフィールドはこの街全体、俺達を見つけて倒してみるんだな。説明は以上だ。」

 

説明を終えたラクサス。それに対してマカロフは頂点に達した怒りと共に巨大化した。

 

「ふざけおってェェェ!!」

「だから慌てんなって………楽しもうぜ。」

 

そう言い残し、ラクサスは雷光で目眩ましを行い、雷神衆もろとも姿を消した。

 

「あんのバカタレめぇっ!!」

「くそっ、姉ちゃん達を助けねぇと!!」

 

エルフマンを先頭に石にされた仲間を救うためラクサスを追いかけ始めた妖精の尻尾の魔導士たち。

 

「ラクサスを捕まえろ!!」

「つーかこの際ぶっ潰してやらぁ!!」

 

次々とラクサスを追いかけ、ギルドを出る魔導士達。

 

「ワシが………ワシ自ら止めてくれるわクソガキがっ!!」

 

続いてマカロフも飛び出した。しかし、

 

「!!!?」

 

ゴチーン、という音と共にマカロフはまるで見えない壁に激突したかのようにギルドの出入り口で止まった。

 

「何やってんだじーさん!?」

「見えない壁じゃ!!進めん!!」

 

近くにいたグレイは何とも無いが、いくら引っ張ってもマカロフだけギルドから出られなかった。何故だとその場にいたグレイが首を傾げていると、見えない壁から文字が浮かび上がった。

 

「これは………フリードの"術式"!!」

「"術式"?」

「踏み込んだ者を罠にはめる、ローグ文字による設置魔法じゃ。"術式"に踏み込んだ者はルールを与えられ、それを守らねば出ることはできん。」

 

すると、ギルドを一周して仕掛けられた術式のルールが浮かび上がった。

 

「"80歳を超える者と石像の出入りを禁止"だぁ………?何だその言ったモン勝ちの魔法は!!」

「"術式"を書くのには時間がかかる。故に速攻は苦手だが罠としては絶大な効果がある。」

「初めからじーさんは参加させる気は無かったか………用意周到だな。」

 

フリードの"術式"によりギルドからでられなくなったマカロフ。

 

「じゃあ俺達だけでやってやるよ。」

「グレイ!!」

「あんたの孫だろうが容赦はしねぇよ!!」

 

そう言ってグレイも走り出し、残されたのはマカロフ、そして。

 

「リーダスか。」

「ご、ごめ………俺、ラクサスが怖くて………」

「よい。それより東の森のポーリュシカの所へ行ってくれぬか?奴なら石化を治す薬を持っているかもしれん。」

「ウィ!!そーゆー仕事なら!!」

 

石化を解く薬を求め、隠れていたリーダスは東の森へ向かい。

 

「だぁーーーっ!!出遅れたーーーっ!!」

「ようやく抜けたー」

「(ラクサスは、あのバカタレは実力だけなら本物………だが、本気になったナツならば!!)」

 

ハッピーのおかげで、突き刺さった壁から抜け出したナツ。それを見てマカロフはナツに命じた。

 

「ナツ!!ラクサスはこの街のどこかにおる!!倒して来んかい!!」

「おっしゃあっ!!待ってろラクサスゥゥゥ!!」

 

ナツは全速力で出入り口に向かい。

 

ゴチーン!!

 

「何コレ?」

 

"術式"の見えない壁に阻まれた。

 

「えええっ!?」

「オイラ出られるよ?どうしたのナツ?」

「くそっ出れねぇ!!何だよこれ!?」

「ナツ、お前80歳か!?それとも石像か!?」

「知るかーーーッ!!」

 

ナツが出られないという予想外のアクシデントに見舞われ、悪戦苦闘するナツ達。すると、見えない壁から再び文字が浮かび上がった。

 

「"バトル・オブ・フェアリーテイル途中経過速報"?」

「"ジェットvsドロイvsアルザック"………何でこいつらが戦ってんだ?」

「"勝者アルザック、ジェットとドロイ戦闘不能、妖精の尻尾残り人数81"………まさか!!」

 

すると、同じような文字が次々と浮かび上がり、妖精の尻尾の魔導士同士の戦いが街中で勃発。そして次々と戦闘不能者が続出し、人数がどんどん減っていった。

 

「街中に"術式"の罠が仕掛けられたんだ。それにかかって皆が戦いを強制されて味方同士潰しあってるんだ………これがラクサスのバトル・オブ・フェアリーテイル………」

 

それを聞いたナツはと言うと、

 

「俺も混ざりてぇ………!!邪魔なんだよこの壁!!」

「混ざってどうする!?」

「いつものケンカだろ?」

「これのどこがいつも通りじゃ!!仲間の命がかかっておるこの状況で!!」

「いくらラクサスでもそんな事しねーよ。ハッタリに決まってるって。」

「………。」

 

だがそうしている間にもギルドの仲間同士の潰し合いは加速し、気がつけば半分以上が戦闘不能になっていた。

 

「"エバーグリーンvsエルフマン、勝者エバーグリーン。エルフマン戦闘不能、残り41"………雷神衆も動き出した!!」

「グレイはビックスローと戦ってやがる………!!」

「リーダスもフリードにやられた!!」

 

更には雷神衆も動き出し、人数は更に減る一方だった。すると、ラクサスの思念体が現れた。

 

《仲間、いやジジイはガキって呼び方をしてるな。ガキの潰し合いは見るに堪えんだろ?………で、ナツは何やってんだ?》

「うっせぇ!!出られねーんだ!!」

《ナツもエルザも参加できねぇんじゃダメだろう………降参するか?》

「……………。」

 

そこにハッピーが割り込んだ。

 

「グレイがいるよ!!ナツと同じくらい強いし、雷神衆にも負けるもんか!!」

「グレイが同じくらいだァ?」

《グレイ?あんな小僧に期待してるのか?》

「やつをみくびるなよ、ラクサス。」

 

しかし、間もなく"術式"によって魔法を封じられ、グレイはビックスローに敗北して戦闘不能になった事が表示された。

 

「……………。」

《だーから言ったじゃねぇか。あとは誰が勝てるんだ?》

「ならガジルだ!!」

《残念、奴は参加してねーみたいだぜ?》

「………お望みなら、参加してやるよ。」

 

すると、バーカウンターの裏で鉄の食器を食べてたガジルが現れた。

 

「行ってくれるか?」

「テメェには借りがある、まぁ任せな。」

 

そしてガジルは意気揚々とギルドの外へ向かい、

 

ゴチーン!!

 

「………は?」

「お前もかーーー!!」

 

ナツと同じく"術式"の壁に阻まれギルドから出られなかった。

 

《くっはははははっ!!こいつは傑作だ!!………で、どうするんだ?ん?》

 

ひとしきり笑ったラクサスの思念体はマカロフに詰め寄った。

 

「………分かった、もうよい。降参じゃ。もうやめてくれ、ラクサス。」

 

あっさりと降参を宣言したマカロフ。するとラクサスはニヤリとあくどい笑みを浮かべ更に詰め寄った。

 

《ダメだなぁ、天下の妖精の尻尾のマスターがこんなんで負けを認めちゃあ………どうしても、って言うんなら、マスターの座を俺に渡してからにしてもらおうか。》

「………!!」

「汚ねーぞラクサス!!俺と勝負せずに!!」

「………貴様、初めからそれが狙いか!!」

《リタイアするならギルドの拡声器使って街中に宣言しろ、妖精の尻尾のマスターの座をラクサスに譲るとな。》

 

かねてよりラクサスがマカロフに強要していた、マスターの譲渡。それをラクサスは実力行使で実現しようとしていた。

 

「………断る。この席は貴様のような、信念と心が浮いておるような奴に譲る程軽くは無い。」

《別に良いんだぜ、意地を張っても?あと1時間半で石になった女共が砂になってもいいんならな。》

「ぐぅ………!!」

《決断は早い方がいいぜ。なんてったって、人数も少ないしな。》

「!?」

 

マカロフがふと見上げた。

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル………残り3人!?」

「残り3人………こいつらだけじゃとーーー!?」

 

出られないナツとガジルに、ほぼ非戦闘員のハッピーしか残っていなかった。

 

《出られない役立たずと戦えない役立たずしか残っていていねぇなぁ!?んで、どうすんだジジイ………いや、マスターよぉ!?》

「(全滅………戦える魔導士はもういない。ここまで、か………)」

《どうする?マスターの座を俺に渡すか、石化したガキを見捨ててその座に縋り付くか。》

 

形勢が決まったと見て、ニヤニヤ笑いながら立ち尽くすマカロフに詰め寄るラクサス。

 

「残念だったな、ラクサス。だが、取引になっていないぞ。」

《!?》

 

声がしたのと同時に振り返ったラクサス。するとそこには、石化したはずのエルザが無傷で立っていた。

 

「エルザが復活したーーー!!」

《なに………!?》

 

だが、石化から復活したのはエルザだけではなかった。

 

「何これ?」

「あら?」

「!?」

「ジュビアどうしたのでしょう?」

「私たち………」

「んん?」

 

ルーシィ達、石化していた全員が復活し、バトル・オブ・フェアリーテイルの参加者も3人から10人に増えた。

 

《クソがっ!!誰だ、石化を解いた奴は!?どこのどいつだ、余興を台無しにしたクソ野郎は!?》

 

その答えは、ラクサスの思念体の後ろから出された。

 

「おいおいいくら何でも、存在ごと忘れられたのは流石に傷つくなぁ。」

《!!………いつから隠れてやがった!?》

「エバーグリーンがルーシィを石化した時からずっとだよ。しっかし、"術式"で同士討ちをさせて数を減らし、疲弊した勝ち残りを自分の手駒で叩く………捻くれ者にしては、随分と素直な正攻法じゃないか。」

《………今更出て来て何のつもりだ、臆病者のクソチビがッ!?》

 

呼びかけに応えたリュークは、モンクに"クラスチェンジ"して状態異常を治す"レスト"の杖を持っていた。そしてその横には、自らの気配を消すスキル"影の騎士"を持つ紋章士クリスを顕現していた。

 

「何って、決まっているだろう?お前みたいなクソガキが一番調子に乗るタイミングが来るまで待っていたんだよ………最高のタイミングで、その鼻っ柱をへし折る為にね!!」

《テメェ………いつものいい子ちゃん面はどうした?仲間傷付くのを黙って隠れて見ているだけだったとは、随分と性格悪いじゃねぇか!?》

「そりゃあそうさ、戦術(いやがらせ)で飯食ってる奴が性格良い訳無いだろう?それに、戦場で完全試合ができるなんて思ってないんだよ、お前のようなガキと違ってな。」

《んだと!?もういっぺん言ってみろ!!》

「お望みならばなんべんでも言ってやるが………いいのか?」

《ああ?》

 

リュークが入口を指差すと、そこに新たな情報が2つ。

 

「"エバーグリーンvsエルザ、戦闘開始"………いつの間に!?」

「それに、"ミストガン参戦、残り11人"………ミストガンまで!!」

 

右目が義眼だった事で石化の影響が少なく、周囲の声も聞けていたので事態を察知し、リュークとラクサスが話している間にギルドを飛び出しエバーグリーンに勝負を挑んでいた。更に、エルザやラクサスと同じS級魔導士のミストガンもマグノリアに戻り参戦したのだった。

 

「こうしている間にもお前の計画は崩れる一方だ。こちらとしては話を続けてくれた方がやりやすいけど、どうする?」

《………!!》

「お前の言葉を借りるなら………決断は早い方がいいぞ?」

《………テメェだけは、俺が直々にブッ殺してやる!!首洗って待っていやがれ!!》

「待つ必要は無いよ。こっちから出向いてやるから、そのままカルディア大聖堂で待っていな。」

《……………クソがッ!!》

 

そう吐き捨て、ラクサスの思念体は消えた。

 

「……………」

「ん?どうかした、ルーシィ?不思議そうに見てるけど。」

「あんた、そんな悪い顔できたのね。」

 

ラクサスと言い合っている間、リュークは終始悪どい笑みを浮かべていた。そんな普段とは全然違う表情にルーシィ、そして紋章士クリスは驚いていた。

 

『俺も驚いたよ。見ない間に、そう言った表情も取れるようになったんだね。』

「………まぁ、アーロンが里を出てから色々あったからね。いつまでもガキでいられなかったってだけの話さ。それよりも、だ。」

 

リュークは深いため息をついた。

 

「啖呵を切ったは良いものの………」

 

リュークはギルドの外目掛けて走り出した。そして、

 

ゴチーン!!

 

「「「………は?」」」

「………いてて、"やっぱり"ダメか。」

『……………。』

「「「「「え………ええーーーっ!?」」」」」

 

リュークもまた、"術式"の制限に引っ掛かり外に出られなかった。

 

 

続く




・"祈りの腕輪"
幸運%で"祈り"(残りHPが2以上で致死攻撃を受けた時、HPが1残る)が発動。"祈り"発動時、後HPを50%回復する(1戦闘につき1回)

一部の作品で出てくる"祈りの指輪"の上位互換。尚価値も物価もFE世界と全然違うので値段は法外なまでに高い(今回は50万J)

・シルバーカード
店の商品の値段を半額にできる、商人泣かせのアイテム。
リュークは2年前に入手したものの、1年前のクエストの途中で紛失してしまっている。

次回はルーシィの戦闘を書きたいと思います。紋章士つばさの出番もここの予定です。ではまた来年。
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