FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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33章 巣立ち

ラクサスの撃破により終結したバトル・オブ・フェアリーテイル。しかし街中で行われた激闘の末、ギルドメンバーの大半が負傷。本来行われていた収穫祭最大の目玉にして、妖精の尻尾の魔導士達が主役を務めるパレード、ファンタジアの開催は翌日に延期された。

 

「しかし、マスターが無事だったとは言え、本当に明日でいいのか?」

「他でもないマスターの意向だし、こんな状況だからこそって考えもあると思うの。」

 

一時危篤になったマカロフだが東の森の薬師ポーリュシカのおかげで一命をとりとめ、今は医務室で療養していた。

 

「それにしても、あたしやジュビアみたいな新入りもファンタジアに参加するんだ………」

「けが人が多いからね、まともに動ける人は全員参加だよ。」

「まぁ気持ちは分からんでもないが………あんなのが参加できないだろ?」

 

グレイが指差した先には包帯でぐるぐる巻きにされたナツとガジルだった。

 

「ふぁがふんごが、あげがあんがぐぐ!!」

「そうね。ナツに至っては何喋っているか分からないし。」

 

ナツとガジルから少し離れた場所に、リュークは昼寝しているフェルトを膝に乗せ、目をシパシパさせながら怠そうに座っていた。

 

「………ふわぁ。んん………」

「どうしたのよ、リューク?」

「ルーシィか、おはよう。いや、昨日あまり眠れなくてね………」

「眠れなかった?あんたが!?」

「随分失礼な言い………いたた。」

「大丈夫?」

「………ラクサスの雷を真正面から受けた痛みがまだ残っててね。おかげで夜中に何度も起きて寝付けなかったんだよ。」

「あんたにもそう言う事があるのね………って!!そ、れ、よ、り!!」

 

と、ルーシィはリュークに詰め寄った。

 

「あの時のあれはどう言うつもり!?」

「あの時の………?」

「"術式"に引っかかった時の事よ!!わざとアクエリアスの攻撃を受けて溺れるなって正気の沙汰じゃないわ!!どう言うつもりであんな事をしたのかって聞いてるの!!」

「あれね………敗北による"術式"の解除に加え、アクエリアスの水圧ならカルディア大聖堂まで、他の"術式"を踏まずに流されて到達できると判断したんだよ。」

「その為に死にかけるって馬鹿じゃないの!?いつもあたしをお転婆だ何だって言うけど、リュークも大概じゃないかしら!?」

「………。」

 

リュークは頬をかいてから、頭を下げた。

 

「そこまで言われると返す言葉が無いや。いらない心配をかけて、申し訳なかった。」

「………いいわ。許してあげるけど、何もなしなのも面白くないから何して貰おうかしら。」

「面白くないって………まぁ、それで許して貰えるのならやるよ。」

「ミス・フェアリーテイルも中止になっちゃったから何か買ってもらおうかしら………」

「ああ、その事だけどファンタジア終了後に投票の集計は行うってさ。つまりファンタジアが実質のミス・フェアリーテイル第二ステージらしいから頑張ってね。」

「よし。今度こそつばさとの特訓の成果を………あ。」

 

何かを思いついたルーシィは、イタズラを思いついた子供のような笑みを浮かべた。

 

「うん、これならアクエリアスの言ってた「あいつをギャフンと言わせて来い」も達成できるわ。………ねぇ、リューク。」

「………ものすごい嫌な予感がするんだけど?」

「嫌な予感だなんて、そんな大層な事じゃないわよ………ただ、あたしのアピールに協力して欲しいの。"昨年優勝者"として。」

「!!」

「あたしは去年見てないから、優勝の秘訣を聞くついでに見てみたいな〜、なんて。」

「………もし、断る、と言ったら?」

「………ふーん、断るんだ。ふーーーん?」

 

腕を組み、口を尖らせたルーシィ。それを見てリュークは深いため息を突きながら頭を抱えた。そうしていると、ギルドにラクサスが現れた。

 

「………。」

「ラクサス!!」

「お前………!!」

 

一連の騒動を起こした張本人の登場。当然、出迎えたメンバーからの視線は歓迎とは対極のものだったが、それを承知のラクサスはその視線を無視した。

 

「ジジイは?」

「テメェ………どの面下げてマスターに会いに来やがった!?」

「そーだそーだ!!帰れ!!」

 

だがその非難の声をエルザが制した。

 

「よさないか。」

「エルザ………」

「………奥の医務室だ。」

 

エルザの答えに、ラクサスは一瞥もせず奥の医務室へと向かった。だがその目の前に、包帯まみれのナツが滑り込んだ。

 

「んぐぁっ!!ふぁぐあぐ!!」

「?」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

大声でラクサスに向かってまくし立てるナツ。だが口にも包帯が巻かれ何を言っているか全く分からず、一拍置いて唯一聞き取れていたガジルが通訳するまで一同はポカンとしていた。

 

「3人がかりでこんなんじゃ話にならねぇ。次こそは絶対負けねー。いつかもう一度勝負しろ………だとよ。」

「………。」

 

ラクサスは何も言わずにナツの横を通り過ぎた。だが呼び止めようとしたナツに、振り向かないまま右手だけを上げ、彼はマカロフの療養している医務室へと歩いて行った。

 

そしてそのすぐ後、ラクサスの破門が言い渡された。

 

==========

 

その夜。マグノリア収穫祭最大の目玉であるパレード、ファンタジアが執り行われた。大勢の観客が見守る中、様々な衣装に着飾った魔導士達が山車の上やその周りからそれぞれの魔法でパレードを彩り、ウェイトレスやスタッフがバックダンサーや楽団として色を添えた。

 

「何あれ、氷の城!?」

「そこから水が吹き出してる!!」

 

王子に扮したグレイと姫に扮したジュビアは氷の城を水と氷で華やかに飾った。

 

「エルフマンよ、凄い迫力!!」

「待ってました、ミラちゃんだ!!」

 

エルフマンとミラはそれぞれ怪物と巨大なトカゲに変身し、迫力のあるパフォーマンスを見せた。

 

「ミスFTの女の子達だ!!」

「かわいー、まさに妖精だ!!」

 

ルーシィはレビィ、ビスカと共にアイドル衣装で現れた。そしてその3人の後ろにはもう1人。

 

「あの子、確か去年のミスFT優勝者!!」

「え!?って事はあいつ、リュークか!?」

「ウソだろ!?確かに背は小さいが、よくも違和感無く混ざってるな!!」

「(本当に揃いも揃って覚えていろよ………!!)」

 

長袖にロングスカートと、露出の控えめなアイドル衣装を着て、カツラと仮面をつけたリューク。ルーシィの"お願い"からレビィ、ビスカの悪ノリが加わりルーシィ達と踊る羽目になったのだった。

 

「いくわよ………せーのっ!!」

「(だがここまで来たら………やってやろうじゃねぇかこの野郎!!)」

 

ルーシィの掛け声で旗を手に踊りだしたルーシィ、レビィ、ビスカ。その後ろでリュークも男である事を感じさせない息の合った踊りを見せた。

 

「そして………ここっ!!」

「やあっ!!」

「Bang!!」

「「"エムブレム・エンゲージ"!!」」

 

一通り踊ると全員が一斉に魔法を使った。リュークは紋章士セリカと、ルーシィは紋章士つばさと"エンゲージ"するとリュークは炎を、ルーシィは風を纏ってさらに踊り出し、そこをレビィの文字とビスカの銃弾で更に華やかにした。

 

『………今更だけど、何で違和感無く付いてきてるのよ。』

『ヤケクソと意地だ。』

『それで女の子そのままになるなんて、何か腑に落ちないわ。』

『理不尽ここに極まる事言わないでくれ………』

 

更にパレードは続き、

 

妖精女王(ティターニア)が来たぞ!!」

「剣が舞っている!!」

 

エルザは無数の剣で剣の舞を行い、

 

「ナツ、どうしたんだそのケガ!!」

「よせって、ぐだぐだじゃねーか!!」

 

ナツは炎でのパフォーマンスを行おうとするもケガを引きずって上手く炎が出ず失敗。そして大トリでマスターであるマカロフがファンシーな衣装で山車に乗って登場。

 

「妙にファンシーで似合ってねぇ!!」

「何だよそのコミカルな動き!?」

 

ファンシーな衣装にコミカルな動きで笑いを誘ったマカロフ。そしてパレードも大詰めとなったその時、マカロフは動きを止めると右手を天に突き上げ、親指と人差し指を立てた。それに続いて妖精の尻尾の魔導士含めたパレードの参加者全員がマカロフと同じように2本の指を立てながら右手を天に突き上げた。

 

「(たとえ姿が見えなくとも、たとえ遠く離れていようと、ワシはいつでもお前を見ている………お前をずっと、見守っている。)」

 

それは大通りのどこかでパレードを見ていて、しかし間もなくギルドを、マグノリアを去る1人の男が初めてファンタジアに参加した時に作られたポーズ。

 

「………ああ。ありがとな。」

 

パレードは、1人の男にのみ送られた"餞別"で幕を閉じた。

 

==========

 

マグノリア収穫祭が終わって1週間が経ち、街はいつも通りの落ち着きに戻った。ラクサスの破門についてはいくら何でも処分が重いと思う者が少なくなく、ナツは何度も駄々をこねていた。またマカロフも責任を取ってマスターを降りると言い出しもう一波乱が起きかけたが無罪放免となった雷神衆のフリードが頭を剃った上での説得でこの騒動はひとまず落ち着いた。そんな中、ある"結果"が発表された。

 

「ミス・フェアリーテイル、今回の優勝はエルザだ!!」

「ルーシィは2位かぁ………だいぶ僅差だっただけに惜しかったな。」

「3位はジュビアだ………って何で4位にリュークが入ってんだよ!?」

 

ミス・フェアリーテイルの結果で盛り上がる中、リュークとルーシィは頭を抱えていた。

 

「知らないよ………俺が聞きたいんだけど、本当にナンデ?」

「ホホー?」

「家賃がぁぁぁ!!僅差の2位なら何かちょうだいよぉ………!!」

 

手応えアリの中での僅差の2位にショックを受けていたルーシィ。

 

「どうしよう………このままじゃ家賃払えない………」

「仕事するしか無いな………俺も予想外の出費があったし。ちょうどいいから"卒業試験"も行うか。」

「"卒業試験"?」

「いつまでもお目付け役をやる訳にはいかないからね。まだ危なっかしいところはあるけど実績は十分積んだし、実力としてもビックスローを倒したなら十分過ぎる。」

「危なっかしいって、人の事言えないじゃない。」

「………それなら尚更、俺が教える事は無いって訳だ。明日、2人で行くのかナツ達と一緒かは分からないけど難易度が高めのクエストに行こう、そこで十分な働きを見せる事ができたら、晴れて一人立ちだよ。」

「………分かった。頑張るわ!!」

 

今まで教育係兼お目付け役をしていたリュークから卒業試験を言い渡されたルーシィは拳をグッと握って気合いを入れた。

 

「そうと決まれば、しっかりと準備しておかないと!!じゃあ、また明日!!」

 

そう言って、ルーシィは走ってギルドを後にした。

 

「………せっかちなところはまだまだ、っと………さて、明日行くクエストを見ておこうかな。」

 

リュークは少し気怠そうにクエストボードを見て翌日の卒業試験に適したクエストを探した。

 

==========

 

そして翌日。リュークはフェルトを頭に乗せギルドへと歩いていた。だがいつも以上に眠たそうで、何度もあくびを噛み殺していた。

 

「………むう、最近寝つきが悪いままだなぁ………」

「ホホー………ZZZ」

 

ここ1週間、特に寝つきが悪いリュークは今まで以上に朝が弱くなっていた。だが今日はナツ達最強チームでのクエスト、さらにルーシィの卒業試験も兼ねたものが予定としてあったので重い身体を何とか叩き起こして歩いていた。

 

「まだ、緊急時には身体が動くからいいけど………」

 

そうボヤいていたリューク。だがそうボヤいた数秒後、曲がり角で誰かとぶつかった。

 

「きゃっ!!」

「いっっ………!!マジか、緊急時でも動かなくなったか。と、それより大丈夫でしたか………ってルーシィ?」

「いてて………って、リューク?」

 

ぶつかったのはルーシィだった。そのルーシィは、ぶつかった相手がリュークだと知ると彼の腕を掴んだ。

 

「ちょうど良かった!!一緒に来て!!」

「いでででっ!!どこへ行くんだい!?今日は皆でクエスト行くって話伝わって無かったかい!?」

「急用ができたの!!リューク、アカリファの街までお願い!!」

「アカリファ?」

 

首を一瞬かしげたリューク。だがルーシィの言葉にただならぬ意志を感じた彼は頬を両手で引っ叩いてから魔導二輪を出して乗った。

 

「事情は道中で聞く!!乗って!!」

「お願い!!」

「シグルド!!」

『ああ、私の力存分に使いたまえ!!』

 

ルーシィを魔導二輪に乗せると紋章士シグルドを顕現して機動力を底上げしてマグノリアの街を出発。アカリファの街へ向かったのだった。

 

==========

 

アカリファの街。マグノリアほど大きく無い街の中心にある商業ギルド、ラブ&ラッキーでは立て籠もり事件が発生、周囲は騒然としていた。

 

「フェルト、早速だが頼む。」

「ホーッ!!」

「………父さん。」

 

ルーシィがクエストをドタキャンしてこの街に来た理由。

 

「ここに、ルーシィの父さんが。」

「………うん。お金の事しか考えてない、最低な父親だけど………それでも、父親だもの。」

「………。」

 

昨晩、ルーシィは父親のジュードと出会っていた。経営していた鉄道会社が買収され、一夜にして全てを失ったジュードはルーシィに会いに来たのだがそこで金の無心を行ったのがルーシィの逆鱗に触れ喧嘩別れとなった。そんなジュードはアカリファの商業ギルドで再起を図る、と伝えていたのだがそのギルドが襲撃を受けた事をギルドで聞いたルーシィは居ても立っても居られなくなり飛び出したところリュークと激突し、今に至った。

 

「どう、フェルトからの"視覚共有"は?」

「………うん、今来た。ルーシィも見る?」

「………うん。」

「分かった。フェルト、頼む。」

 

最近習得した"念話"でフェルトに伝達したリューク。するとルーシィにもフェルトの"視覚共有"が送られた。

 

「つっ………!!」

「どう?君なら、どう行く?」

「………敵の魔導士も人質も多い………けど、お金を集めるのに必死で人質に武器を向けている魔導士は今のところいない。奇襲を仕掛けられたら、人質を守りながら戦えると思う。」

「………うん。俺もそう考えていた。じゃあ、どう奇襲を仕掛ける?」

「そこは大丈夫。こんな事もあろうかと………」

「姫。」

「ヒッ!!」

 

ルーシィの足下の地面からバルゴが現れた。

 

「建物の中まで開通できそうです。」

「ありがとうバルゴ。」

「おしおきですか?」

「感謝してんの!!」

 

バルゴにギルドの下までトンネルを掘らせていたルーシィ。

 

「なるほど、地下から奇襲を仕掛けるって事か。それで行こう。」

「それと………ついてきて貰ってなんだけど、なるべくあたし1人に任せて。」

「………了解した。本当にマズイって所までは任せるよ。」

「うん!!………行くよ!!」

 

そう決意を持った声で、ルーシィはバルゴの作ったトンネルに飛び込んだ。

 

==========

 

「何でぇ商業ギルドってくれーだから、たんまり金あると思ったのに。」

「だから最初から銀行狙えば良かったじゃねーか。」

 

商業ギルドを襲った闇ギルドの集団。襲撃は金目当てのものだったが思う程集まらず魔導士の一部が不平を述べたが、散弾銃を持ったリーダー格の男が震えた声で怒鳴った。

 

「黙れ!!時間がねぇ、とっとと金を袋に詰めろや!!」

「「「うーっ、うーっ………!!」」」

「うるせぇ!!殺すぞコノヤロウ!!」

 

1人残らずテープで口を塞がれ呻く商業ギルドの人質。それを黙らせようとリーダー格の男は天井に向けて散弾銃で威嚇射撃を行った。すると、人質の1人である男の子が泣き出した。

 

「ううー………!!」

「ア?死にてぇのか?」

「うう、う、ううーっ………!!」

 

黙らせようとリーダー格の男は男の子を睨み付けるも逆効果で、さらに呻きながら泣く男の子。それを見て業を煮やしたのか、リーダー格の男は散弾銃を男の子に向けて構えた。

 

「死にてぇんだなコノヤロウ!!」

「よせってアニキ!!」

「黙れってんだ!!こっちにはヨユーがねーんだよ!!」

 

そう叫び、大パニックを起こした人質達目掛けて散弾銃が放たれた。放たれた散弾は人質目掛けて真っすぐ飛び、撃ち抜こうとしていた、その時。

 

凍晶け(いてつけ)、氷華の紋章士(エムブレム)!!」

 

男の子の目の前にルーシィが現れると同時に紋章士フィヨルムを顕現。すぐさま床に手をつけると"氷壁"のスキルを発動して氷柱を生成、散弾から人質を守ったのだった。

 

「何だァ!?」

「どこから入って………!!」

「そこまでよ!!」

「くそっ、正規ギルドの魔導士か!!」

「おとなしくしないと、痛い目見るわよ!!」

「くそっ………相手は女1人だ、やっちまえ!!」

 

ルーシィ目掛けて一斉に迫って来た闇ギルドの魔導士達。だがルーシィは今更その程度では怯まなかった。

 

「あたしがいつ1人だなんて言ったかしら!?タウロス、かっとばして!!」

「MOーーーッ!!お任せください!!」

 

ルーシィはタウロスを召喚するとタウロスは氷柱を斧で破壊するとその斧を野球のバットのように振るい、できた氷塊をライナー性の打球で打ち込んで向かって来た敵を撃破。

 

「ありがとう、タウロス!!続けて行くわよ、サジタリウス!!」

 

タウロスからサジタリウスに交代させたルーシィ。するとサジタリウスは次々と矢を番え、距離の離れた敵を次々を倒した。

 

「くそっ、強いぞこの女………!!」

「こうなったら、人質を………!!」

「!!」

 

タウロスとサジタリウスの攻撃から逃れた敵の魔導士は、パニックの収まらない人質を盾にルーシィの動きを止めようと動き出した。だがそれに気づいたルーシィは"護り手"のスキルで人質と敵の間に割り込み、鞭を振るって牽制した。

 

「させないわよ!!」

「「ちっ………!!」」

「あたし達も行くよ、フィヨルム!!"エムブレム・エンゲージ"!!」

 

紋章士フィヨルムと"エンゲージ"したルーシィは武器を鞭からエンゲージ武器、"絶氷ニフル"の斧を力任せにフルスイング。

 

『やあああっ!!』

 

そこから放たれた氷の奔流によって人質を連れて行こうとした敵を凍結。

 

『これで決めるわ!!凍てつきなさい、"ニフルの氷槍"!!』

 

ルーシィの八面六臂の躍動に狼狽え始める敵を見て、彼女はこれを好機と見てエンゲージ技を発動。氷の槍が降り注ぎリーダー格の男以外の魔導士を一掃したのだった。

 

「なァ………っ!?」

『これでトドメ………!!』

 

リーダー格の男の放つ散弾銃を"氷の聖鏡"で防ぎながら"絶氷ニフル"を携え接近したルーシィ。そしてトドメに、

 

『"ルーシィキィーック"!!』

「グボァ!?」

「「「ええーーーっ!?」」」

 

"絶氷ニフル"を使わずにまさかの飛び蹴り。まさかの攻撃に、大技を期待していた人質達は驚くも、この一撃でリーダー格の男も倒れ、闇ギルドの集団はルーシィ1人で片付き人質達は歓声をあげた。

 

『よっし!!』

 

ガッツポーズと共に"エンゲージ"を解除したルーシィ。元に戻った彼女はここにいるはずの父親を探した。

 

「お父さん!!」

 

周囲を見渡すルーシィ。だが父ジュードの姿は見えないまま、救出された人質や外の野次馬を守っていた軍隊の人間がルーシィに殺到した。

 

「ありがとう、君ーーー!!」

「助かったよーーー!!」

「い、いえ………」

「凄いね、君の魔法!!」

「私達からも礼を言わせて貰います。ありがとうございました!!」

 

そんなルーシィに、迫る影が1つ。

 

「……………」

「させないよ。」

「な………っ!?」

「首が飛ぶ前にその物騒なものを手放しな。」

 

無防備になったルーシィを狙い、暗器を手に忍び寄っていた闇ギルドの魔導士だが、リュークがその魔導士の背後から"鉄の剣"を突き付け無力化した。

 

「………しかし、本当に1人で片付けたね。」

「ホーッ。」

「ただ、問題はルーシィの父親らしき人物が見当たらない事だけど………」

「ホー………」

 

ルーシィがギルド内を見渡してもジュードの姿は見えず、ルーシィの戦いを一歩引いて見ていたリュークや戦闘後に合流したフェルトが見回してもそれらしき人物は見当たらなかった。

 

「(お父さん、どこ………?何でいないのよ………!!ねぇ、無事なの!?)」

 

ギルド内にいないことを確認して外に出たルーシィ。

 

「お父さん!!」

 

そしてギルドの外で声を張り上げたルーシィ。

 

「ルーシィ?」

「え?」

「………」

「えーーーっ!?」

 

すると街の入口から、ボロ布を纏い無精髭を伸ばし放題となったジュードが歩いて来た。

 

「もしかして、今街に到着したの………?」

「金が無くてね、歩いて来たモンだから。」

「(取り越し苦労ーーー!!しかも歩いて来たって事はどこかで追い抜かしてたって事じゃん!!しかも移動費にあたしから10万も借りようとしてたって何よ!?)」

「何でルーシィがここに?」

「何でって、お父さんの向かったギルドが襲われたって聞いて………」

 

ジュードはギルドを見た。まだ人だかりはできていたが、事件は概ね収束していたのを彼は察した。

 

「もしかして、パパが心配で襲撃を………」

「知らない!!さようなら!!」

 

ジュードからそっぽを向いたルーシィは歩き出した。

 

「そうか。ありがとうな………」

「勘違いしないで。あたし………お父さんの事、許した訳じゃないから。」

 

そう言ってルーシィはジュードに背を向け歩き始めた。

 

「………ああ。いいんだ、当然だよ。」

「………。」

「随分長い道を歩いて、色々考える時間があったよ。昨日はすまなかった、どうかしていた………恥ずかしいし、後悔している。」

「……………。」

「私はこれから変わる。お金が無くてもここに辿り着けたんだ、きっと………何でもできる。」

 

ジュードの言葉に、ルーシィは背中を向けたまま歩き続けるとリュークとフェルトが人だかりから出てくるのが見え、そっちに声をかけた。

 

「行こう、リューク、フェルト。」

「終わったのかい?」

「うん。用事は済んだから、帰ろう。」

「……………」

「ホー。」

 

そしてそのまま帰ろうとした時。

 

「………このギルドはね、パパとママが出会った場所なんだ。」

「!!」

 

その言葉にルーシィは歩みを止めた。

 

「私が独立を考えている時に丁度、ママのお腹の中に君がいてね、2人でギルドを辞めることにしたんだけど………その時、ギルドの看板が壊れていて、LUCKYのKが取れてLUCYになってたんだ。」

 

すると、ルーシィはようやく苦笑いをしながら振り向いた。

 

「………まさか、それがあたしの名前の由来?ノリで娘の名前を決めないでよ。」

「そうだな………本当にすまない。」

「あたし………」

 

と、ルーシィが何かを告げようとした時、

 

「ルーシィ!!無事かーーー!?」

「どうした一体!?」

「ルーシィ!!」

 

共に仕事に行くはずだったナツ、グレイ、ハッピー、エルザが走って来たのだった。

 

「えーーーっ!?」

「まさか、これをルーシィとリュークが………?」

「いーや、俺は手を出してないよ。全部ルーシィが片付けたよ。」

「1人で………!?やるじゃないかルーシィ!!」

「エルザ!?えーっと、いや、その………」

 

困り顔でジュードの方を見たルーシィ。だがジュードは何も言わず、ただ微笑んで頷いた。それを見たルーシィも微笑み、

 

「じゃあね、お父さん。」

 

それだけ告げ、ルーシィは再び振り返った。

 

「どうしたんだよ急に!?」

「何でも無いの。」

「何でも無い訳ないだろ!!」

「仕事キャンセルしたんだよ?」

「ごめんって!!」

 

そう笑いながら帰る姿を見届けるジュード。するとその一歩後ろを歩くリュークに声をかけた。

 

「青と緑の髪………君が先日ルーシィが家に帰って来た時の護衛かな?」

「………ええ。本当は護衛じゃなくてギルドの先輩魔導士でしたが。」

「そうだったか………ギルドでのルーシィはどうだ?」

 

ジュードの言葉にリュークはにこりと笑って答えた。

 

「見ての通りです。何なら残念でしたね、先にギルドに着いていたらルーシィが"一流の魔導士"として躍動して輝いている姿が見れましたのに。」

「そうか………それが聞けて、安心したよ。」

「おーーーい、リューク!!帰るぞーーー!!」

「………では、俺もこれにて。」

「ルーシィの事、頼んだよ。」

「言われずとも。」

 

そう言ってリュークも走り出して合流した。

 

「リュークは見てたのか、ルーシィの戦いぶりを?」

「そりゃあもう、迫り来る闇ギルドの魔導士を千切っては投げ、千切っては投げのまさに無双状態はあっぱれの一言。今ならナツやグレイですら捻り潰されるんじゃないかってくらいだったよ。」

「ちょっとリューク、悪ふざけで話をアホみたいに盛らないでよ!!」

「へぇ………俺達が捻り潰されるって?」

「そいつは燃えて来た………!!」

「もーーーっ、こうなるの分かって言ったでしょーーー!!」

 

笑いながらマグノリアに帰るルーシィとその仲間を見て、ジュードは微笑みながら呟いた。

 

「レイラ………私は本当に愚かだったよ。」

 

 

続く




これにてBOF編は終わりです。
次から六魔将軍(オラシオンセイス)編に行きます。

そして、そろそろリュークが皆に隠している"秘密"に切り込もうと思っています。
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