FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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35章 天敵

味方はほぼ全員が倒れ、無傷の六魔将軍の6名全員と相対しているリューク。

 

「さて、ブレイン以外の魔法が分かったところでどうしたものか………特に、コブラにはこっちの考えが筒抜けってのが問題だ………」

 

リュークの予想ではコブラの魔法は"相手の思考が聴こえる"というものであり、それは当たっている。

 

「……………。」

「随分うるさいな。20人はいるな?」

「紋章士全員で頭の中で一斉に喋らせても効果はいまひとつ………さてと。」

 

コブラという"天敵"の前では口に出そうが出さまいが関係無いと悟ったリュークは自分の思考をそのまま口に出していた。

 

「昔、ノリで作った失敗作の魔法で博打を打つのは嫌だけど………このままじゃ戦いにすらならないから、やるしか無いか。」

 

深いため息をついたリュークは、対応力に長けていると判断した紋章士を顕現。

 

教導えよ(おしえよ)、風花の紋章士(エムブレム)。」

『まさか、あの魔法を使う時が来るなんてね。』

「表か裏か………後は天上の女神様にでも祈るしかないか。」

『………大丈夫だ。その天上の女神なら、必ず君も導いてくれる。さぁ、"エンゲージ"を。』

「ええ。"エムブレム・エンゲージ"!!」

 

紋章士ベレトと"エンゲージ"したリュークは、かつて編み出すも御蔵入りとなった魔法を繰り出した。

 

『後は天に委ねよう………"おまかせ操作(オートプレイ)"。』

 

その魔法を発動した瞬間。コブラはリュークの中で"カチッ"という音を聞いた。そしてそれ以降、リュークや紋章士の声が聴こえなくなった。

 

「なっ、こいつ自分の声をシャットアウトしやがった………!!」

「そう驚く必要ねぇだろ、コブラ。考えられない人間が強い訳ねぇ。第一、俺の速さの前では同じだ。」

 

いきなり声が消え、動揺したコブラ。だがその横をレーサーが通り抜け、目にも止まらない速さでリュークに迫り、

 

『0の乗算は、何と合わせても0だ。』

「ぐはっ!?」

 

それをリュークは"天刻の拍動"で時を止め、軌道を分析した上で"ブルトガング"の剣で迎え撃ち、弾き返した。

 

「金さえあれば!!デスネ!!」

『甘い。』

 

続けてホットアイが地面を柔らかくしたが、飛行モードにした魔導二輪を出して空へと脱出。

 

「追いかけろ、キュベリオス!!」

 

するとコブラの従える毒蛇、キュベリオスに翼が生えリュークを追いかけた。だが突如としてリュークはキュベリオスのいる背後へ振り向き、"テュルソスの杖"を構えた。

 

「っっ、避けろ!!」

 

そのまま雷魔法"トロン"の連射された引き撃ち(パルティアンショット)でキュベリオスを急襲したリューク。キュベリオスはその矢を全て避けたが、リュークへの追撃を諦めざるを得なくなり、その隙にリュークは急降下。

 

「ZZZ………」

 

次に狙いを定めたのは寝ているミッドナイト。"天刻の拍動"をフル活用したリュークはミッドナイトの眼前まで迫った。

 

『この距離なら攻撃を逸らす事はできない………"ヴァジュラ"。』

「……………」

 

"ヴァジュラ"の篭手でミッドナイトを殴り飛ばしたリュークは攻撃の手を緩めずエンジェルへ。

 

「ジェミニ!!」

「「ピッキーリ!!」」

『遅い。』

 

エンジェルの指示でグレイに変身し、氷の造形魔法を繰り出したジェミニ。だがリュークは素早い身のこなしでジェミニの攻撃をすり抜けると"ルーン"の槍で薙ぎ払い、エンジェルにさらに接近。

 

「なっ………!?」

『星霊魔導士を封じるには、これが最短。』

「があっ………!!」

 

エンジェルの目の前に迫ったリュークは"ルーン"を手放すとエンジェルの右手を掴み、関節技で腕を折った。

 

『次………。』

 

"おまかせ機能"。それは本能に従い、最適な行動を自動で取る操作系魔法の応用形。元々、自分の寝起きの悪さを克服しようと試行錯誤していた時に

 

「いっそ、寝ながら動ける魔法ができたらいいのでは?」

 

という考えのもと編み出された魔法である。しかし結果としては寝ながら発動するという都合の良い事が起きるはずも無く、むしろ発動中は一切の制御ができず、途中解除も原則できないという融通の効かなさがリュークの戦闘スタイルと合わず、御蔵入りとなっていた。だがこの状況においてはコブラの"心の声を聴く魔法"の対策となっていたのだった。

 

『お前を、叩く。』

 

そんなリュークが次の標的として選んだのはブレイン。"天帝の剣"に持ち替えたリュークは射程圏内まで迫り、構えた。

 

『その身で学べ。"真祖………』

「………読み通りだ。」

『!!』

 

だがその時、リュークの右側にコブラが待ち構えていた。

 

「お前のその動きは"最適"であり、"模範解答"………故に、読みやすい。」

『……………』

「そして聴こえてたぜ、お前は"これ"が苦手だってなぁ!!」

 

リュークの動きを読み切ったコブラが取った行動。それは口から吐くブレスの構えだった。

 

「"毒竜の咆哮"!!」

『ッッッ………!!』

 

毒の滅竜魔導士による猛毒のブレスをもろに食らってしまったリューク。

 

『っっっ………があ"あ"あ"ッ"ッ"ッ"!!」

 

直撃したリュークは"エンゲージ"状態が解け、絶叫しながらのたうち回っていた。

 

「ぐ………ごふっ、ぐっ、あああ………ッッッ!!」

「耐えようとしても無駄だ。毒竜のブレスから放たれたウイルスはお前の身体を蝕み、やがて身体の自由と命を奪う。………色々と"面白い声"が聴けたが、これでおしまいだ。」

 

異常なまでに苦しむリューク。それを見てブレインがコブラに労いの言葉をかけた。

 

「良くやった、コブラ。これで厄介な虫が墜ちた。ホットアイ。」

「はい。捕まえました、デスネ!!」

「きゃあっ………!!」

「彼女を、離せ………!!」

 

さらに、リュークが戦っていたその間にホットアイがウェンディと、ウェンディがシャルルと間違えて掴んだハッピーを捕獲していた。

 

「では、うぬらにこれ以上の用は無い。」

 

目的を果たしたブレインは、杖に濃密な闇の魔力を溜めた。

 

「消えよ。"常闇回旋曲(ダークロンド)"。」

 

杖から放たれた無数の闇のエネルギー波はリュークだけでなくナツ達全員に向けて放たれた。そして闇のエネルギー波が皆を呑み込もうとした時だった。

 

「"岩鉄壁"!!」

 

無数の石柱が闇のエネルギー波から守るように八方から飛び出し、皆を守った。

 

「ジュラ様!!」

「おおおっ!!」

 

石柱を出したのは、傷だらけの一夜を抱えて合流したジュラだった。しかし、ジュラが反撃の構えを取った時には六魔将軍の姿はどこにもいなかった。

 

「くそっ、逃げられた!!」

「ウェンディ………」

「完全にやられた。」

「ジュラさん、あなたは無事で良かった。」

「いや、危うい所だった。リューク殿が気づいていなければ、ワシもやられていたかもしれん。そのリューク殿だが………」

 

ジュラはリュークの方を見た。

 

「ぐうっ………がっ、は………っ!!」

「う………うあ………」

 

未だにのたうち回るリュークと、その隣で苦しむエルザはコブラの毒にやられていた。これには他の皆に効いていた、一夜の痛み止めの香り魔法も効果をなしていなかった。

 

「私の痛み止めの香り(パルファム)が効かないなんて!!」

「っっ………ルーシィ、ベルトを、借りるぞ………」

「きゃあああっ!!な、いきなり何してるのよ………」

 

いきなりルーシィのベルトを取ったエルザは、ルーシィのスカートがずり落ちたのを構わずそのベルトを噛まれた右腕にきつく巻くと剣を差し出した。

 

「このままでは戦えん………切り落とせ。」

「ば、バカ言ってんじゃねぇ!!」

「分かった。なら俺がやろう。」

「リオンてめぇ!!」

「今この女に死んでもらう訳にはいかん。」

「待てって言ってんだ!!」

 

エルザの言葉に一同が動揺する中リオンが剣を取り、エルザが差し出している右腕を切断しようとしたところをグレイが止め、口論になった。すると、皆の背後からガシャンという音がした。見ると、リュークが藻掻きながらもモンクに"クラスチェンジ"し、状態異常を治す"レスト"の杖を持っていた。

 

「リューク、何やってんだ!?」

「こいつ、なら、エルザの、毒、を、治せ………ゲハッ!!」

「無茶するな!!お前の方が重症だろうが!!」

「じゃあ冷静になれ!!………ゴホッ!!」

 

そう言うと、リュークは弱々しくルーシィを指差した。

 

「あたし?」

「………つばさ、の、エンゲージ武器………」

「そうか!!ごめん、すっかり忘れてた!!お願い、つばさ!!」

 

紋章士つばさを顕現、"エンゲージ"までしたルーシィ。

 

「かわいい………」

「アイドルみたいだ………」

「かっ、かわいいじゃないかよ。」

『余計な茶々入れないでくれる!?それよりも、これね!!"アムリタ"!!』

 

紋章士つばさのエンゲージ武器の1つである"アムリタ"。周囲の味方の状態異常を治す効果のある回復魔法を使った結果、エルザから苦悶の表情は消えた。

 

『大丈夫、エルザ!?』

「………ああ、大丈夫だ。少なくとも、これで戦える。」

 

エルザが回復した様子で、安堵した一同。

 

「言っただろ、冷静に、なれ………って………ぐふっ!!」

『リューク!?』

「………俺は、大丈夫、だ………!!」

『どこをどう見たら大丈夫なのよ!!』

 

しかしリュークは依然として苦悶の表情を浮かべたまま荒い息で苦しんでおり、顔には脂汗が滲み出ていた。するとふとルーシィが、リュークが傷を隠そうとしている仕草に気づいた。

 

『………ちょっと、傷見せなさい!!』

「ま、て………っ!!」

 

リュークの制止を待たずに上半身を脱がしたルーシィ。

 

「な………っ!!」

『何よ、コレ………!?』

「……………。」

 

あらわになったリュークの上半身は火傷の跡のような炎症が全体に広がっており、見るに堪えない程痛々しいものだった。

 

『何で、こんな身体中真っ赤に………これが、毒の滅竜魔導士の力って事なの………!?』

「………いや、違うな。」

『ナツ?』

 

ナツが何かに気づき、リュークに問い質した。

 

「………こことここの傷、今できた傷じゃねぇよな?」

「……………」

「それに、これ毒で溶けてるけど、包帯も巻いていたよな?」

『どう言う、事よ?』

「………これ、ラクサスの時の傷か?」

 

火傷のような傷跡が2種類あるのに気づいたナツはある結論にたどり着いた。その結論を聞いたリュークは苦しそうに笑みを浮かべた。

 

「なんで、分かんだよ………!!こういう、時だけ、鋭いのは反則だぞ………!!」

『ちょっと、どう言う事よ!?』

「リュークはいつも俺との勝負を避けていたけど、その理由が「滅竜魔法が苦手だから」って言ってた………もしかして、そういう事か?」

「………何から何まで、正解だよ、コノヤロウ………だから何としても、直撃は避けてたけど………ゲホッゲホッ!!」

『もう喋らないで!!大人しくしてて!!』

 

日頃から滅竜魔法は苦手だと零してナツとの手合わせを避けていたリューク。その理由が、ラクサスとコブラ、雷と毒の滅竜魔法を食らった傷で判明したものの、解決には至っていない。

 

「理由が分かっても、どうするんだ………?」

『よりによって回復魔法を持ってる人がこうなっちゃったから………というより、これね。最近リュークがずっと調子が悪いって言ってたのは。こんなのを抱えて………』

 

そこに、今まで沈黙を貫いていたシャルルが口を挟んだ。

 

「ウェンディなら助けられるわ。」

「本当か!?」

「この傷でも行けるのか!?」

「致命傷じゃなければキズの治癒も解毒も痛み止めも何でもできるわ。」

「致命傷じゃなければ………って、そこまで行くと失われた魔法(ロストマジック)の域ではなくて?」

『もしかして、ブレインって奴が言ってた"天空の巫女"ってのに関係あるの?』

 

その答えはシャルルからすぐに帰って来た。

 

「あの子は天空の滅竜魔導士。言うならば、"天竜"ウェンディよ。」

「ど、ドラゴンスレイヤー!?」

「………っぱり、か。ガボッ、ゲホッ。」

「詳しい事は後よ。とにかく、今必要なのはウェンディよ。そして目的は分からないけど、あいつらもウェンディの力を必要としている。」

 

ここで、戦意の折れかけた全員の目に闘志が戻った。

 

「と、なれば。」

「やることは1つ。」

「ウェンディちゃんを助けるんだ。」

「そしてリュークに戦線復帰して貰う。」

『そしてハッピーも助け出す!!』

「おっし!!行くぞォ!!」

「「「「「オオーーーッ!!」」」」」

 

ナツの音頭で全員が拳を合わせ、反撃の狼煙となる掛け声をあげた。

 

 

続く




・"おまかせ操作(オートプレイ)"

操作系魔法の亜種で、一定時間の間自分の意思に関係無く自動で行動する為の魔法。やってる事は文字通り、FEに限らず大概のRPGゲームにあるおまかせ操作、もしくはNPCの挙動そのものです。
欠点としてはこの魔法が発動している時は時間経過、大ダメージを負う、魔封じの攻撃を受ける、以外の解除手段が無いのでアドリブに極端に弱いのと、行動パターンがどうしても最適≒模範解答的な動きになってしまうので動きが読みやすい所にある。

朝に弱いリュークが朝から十全に動ける様に、と昔に開発した魔法だが融通が効かない事に加え、そもそもどちらかと言えばアドリブ上等だったり、"相手の出鼻を挫いたり、定石を崩す"事に重きを置くリュークの戦闘スタイルとはあまり噛み合っていないので御蔵入りとなっていたがコブラという心の中を聴く"天敵"を前に使用。しかしコブラはリュークにとって別の意味でも"天敵"だったので思わぬダメージを受ける事に………

心を読めるタイプのとかデータキャラの敵の対処法でメジャーなのは「考えずに本能で攻撃」ですが(実際ナツvsコブラでもそうでした)、リュークはそう言うキャラ造形してないよなーと思いながらヒーローズでおまかせ周回してたところ閃きました。
誇張抜きで昨日今日で思いついたものなので今後出す予定は恐らく無いです。一度御蔵入りになったと言う設定もありますし。

・苦手なもの:滅竜魔法

今までナツの滅竜魔法はあまり受ける事はせずにいたので、たまの手合わせでは治りにくい火傷で済んでいた。しかしラクサス、コブラと短い間でまともに滅竜魔法を受けていた事で全身傷だらけの上に炎症で真っ赤になっていた。

何故こうなってしまったのか、それはこの先の大きな展開に繋がるので(今までヒント出しまくっていますが)段階を踏んで明かして行くのでそれまでは明言しません。
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