六魔将軍の1人、コブラによる毒の滅竜魔法で重症を負ったリューク。彼を治癒できるというウェンディ奪還の為にも六魔将軍を追いかけたナツ達正規ギルド連合軍。そんな中、ルーシィと青い天馬のヒビキ、そして偵察から降りてきたフェルトは残って看病をしていた。
「皆急いで………お願い。」
「ホー………。」
「全員樹海に突入完了………君は行かないのかい?」
「………この状態のリュークを置いては行けないわ。それに、あたしが一番戦力にならないし。」
「そんな謙遜を………噂は聞いてるよ、3mのゴリラを倒したとか、ファントムのマスターを再起不能にしたとか、アカリファじゃ1人で千人と戦ったとか………」
「尾ビレ付きすぎよ………それに、そーゆーあんたは行かないの?」
「女性と怪我人を置いてはいけないよ。それに、僕の魔法は皆にここの位置を知らせる事ができる。ウェンディとハッピーを救出できても、ここに戻れなかったら意味無いからね。」
そう言いながら、魔法で浮かび上がった端末を操作するヒビキ。すると、それを見たリュークが声を発した。
「その、魔法………"
「リューク、まだ動いちゃ………!!」
「ホーッ!!」
「………そうだよ。最近できた魔法なのによく知ってるね。」
「マグノリアの、図書館に、旧式の奴が、置いてあるから………使った事あるんだ。それ、よりも………君の、"古文書"は情報を、送れるかい………?」
「送れるとも。伝えたい事があるのかい?」
「ああ………ブレイン、以外の、魔法が、分かったんだ………!!」
「確かに、あのコブラって奴が言ってたわね。魔法を見抜かれたって。」
「あいつは、俺の心の声を、聴いた、上で…ああ、言った………って事は、図星だったって………ゲホゴホッ!!」
「まだ話せる状態じゃないんだからまだ安静に………」
「ホホー!!」
「いいや!!ここで言わないと!!」
「………!!」
「持ってる情報を………皆が生き残る確率が上がる、ものを………抱えて、ぶっ倒れる訳には、いかない………!!」
「………リューク。」
「分かった。でも無理しないで、ゆっくりと。」
リュークは途切れ途切れにも、ヒビキに自分の持っている六魔将軍の情報を伝えた。
「最後に確認だ。
コブラは"心の声を聴く魔法"と"毒の滅竜魔法"、
レーサーは"周囲一定範囲内の相手の体感速度を遅くする魔法"、
ホットアイは"地面を柔らかくする魔法"、
エンジェルは"星霊魔法"で一夜さんのコピーをしていたのは双子宮のジェミニの能力、
ミッドナイトは"ものを逸らすか歪める魔法"、
………これでいいかい?」
「はい………レーサーだけ、自分を速くしているのか、周りを遅くしているのか、分からなかったですが………ここは、フェルトのおかげで、分かりました。」
「分かった。ではこれを、繋がる限り全員に、送信!!」
"古文書"で仲間に六魔将軍の情報を送ったヒビキ。それを見届けたリュークはバタリと倒れた。
「リューク!!」
「ホーッ!!」
「………気絶しただけみたいだ。予断は許さない状況ではあるけれど………多分、意識があれば動こうとするから、こっちの方がいいかもしれない。」
苦しそうな表情のまま気を失ったリュークはそのままルーシィとヒビキによって寝かされた。だが容態が良くなる気配は一切無く、むしろ悪夢にうなされているかのようなうめき声まで出していた。
「う、ぐっ………ぁ………!!」
「………もう少し。もう少しだけ持ち堪えて、リューク。」
「ホーッ………!!」
半ば反射的にリュークの手を取ったルーシィとフェルト。
「ぅ………かあ、さん………?」
「うえっ!?」
「かあ、さん………いたぃ、ょ………」
「ビックリするじゃない、そんな事言い始めて………もう、こうなったらお母さんでも何でも勘違いしてなさい!!その代わり、死ぬんじゃ無いわよ!!」
「ホホー………ホッ!!」
そうしていると、ヒビキの方に動きがあった。
「………繋がった!!聞こえるかい!?」
《んあ?誰だ?》
「その声………ナツ?」
《どこからの声だ!?》
「これは僕の魔法で直接君の頭に語りかけているんだ。ウェンディちゃんの救出はできたかい?」
《ああ、ここにいる。ハッピーも救出できた。》
「良かった、流石だよ!!」
ナツとの通信が繋がり、彼がウェンディとハッピーを救出してこちらに向かって来ているのを知り、場にいた者はひとまず安堵した。
「これからこの場所までの地図を君の頭にアップロードする。急いで戻って来てくれ。」
《何言って………おおっ!!リュークの場所が分かる!!うおおおっ!!》
「………通信が切れたね。」
「でも良かった………もう少しよ、リューク。」
「………ぅっ………」
だがもう少しでナツが到着しようという時だった。
「へへ………」
「こんな所にもいやがった。」
「かわいい女もいるじゃねぇか。」
「敵………!?」
「六魔将軍傘下の闇ギルドか!!」
闇ギルドの魔導士が複数人、ルーシィ達の目の前に現れたのだった。
「させないわ………!!」
「ホーッ!!」
「開け、処女宮の扉、バルゴ!!そして
「我々はいつでも準備オッケーです、姫。」
『指示をちょうだい、ルーシィ!!』
「シェズはあたしと"エンゲージ"して切り込む!!バルゴは討ち漏らしをお願い!!」
『了解したわ!!』
「承知しました。」
バルゴと紋章士シェズを出したルーシィは紋章士シェズと"エンゲージ"。エンゲージ武器の"キルソード"を持ったルーシィは二刀流で敵のど真ん中に切り込んだ。
『やあっ!!』
「「「ぐわあっ!!」」」
「くそっ、ちょこまかと!!」
『当たらないわよ!!それに………足元がお留守よ!!』
「「「うおっ!?」」」
「お仕置きですね、姫?」
二刀流で飛び回りながら敵を倒すルーシィ。それに気を取られた隙にバルゴが地面を掘り進んで足元を崩して行動不能に陥れた。
『その身に刻んで!!"アスラの連閃"!!』
「「「「「ぎゃあああっ!!」」」」」
「………これの、どこが戦力にならないんだい………?」
そして高速の剣閃で敵の魔導士を一掃したルーシィ。
「っっ!!後ろだ、危ない!!」
『ん?』
「隙ありだ、くたばれ!!」
『しま………っ!!』
だが1人伏兵がルーシィの背後から迫りナイフを突き刺そうとしていた。反応が遅れたルーシィは致命的なスキをさらしてしまい、
「させるものか!!」
「ごはっ!!」
『エルザ!!助かったわ、ありがとう………』
「すまない、私が取り逃がしたばかりに。だが、無事で良かった。」
エルザが伏兵の奇襲を阻止し、ルーシィは助かった。そして合流したのはエルザだけでは無かった。
「着いたーーー!!」
『ナツ!!』
ウェンディ、ハッピー、シャルルを抱えて走って来たのはナツ。普段はあらぬ方向へ猪突猛進する事が多いナツだが今回はヒビキの送った地図を頼りに真っすぐたどり着いたのだった。そのナツは到着早々にヒビキへと詰め寄った。
「どうなってんだ!?頭の中に突然地図が………」
「それより早くウェンディちゃんを。」
「そうだ!!」
するとナツは気絶したままのウェンディを乱雑に揺すった。
「起きろウェンディ!!頼む、早くリュークを助けてくれー!!」
『ちょっとナツ、落ち着きなさい!!』
やがて揺さぶられた事で意識を取り戻したウェンディ。しかし意識を取り戻した目の前にナツがいるのを視認すると怯えながら後退りした。
「ひっ………」
「!!」
「ごめんなさい、私………!!」
だがナツはその場で頭を下げた。
「今はそんな事どうでもいいんだ!!リュークが滅竜魔法を食らって重症なんだ!!助けてくれ、頼む!!」
「滅竜魔法で、重症………?」
『お願い………リュークを助けて!!』
「私からも頼む。リュークの力は必要不可欠だ。」
ナツに続いてルーシィ、エルザもウェンディに頼み込んだ。それを見たウェンディはぐっと拳を握りしめた。
「も、もちろんです!!はい、やります!!」
「ありがとう!!頼むぞ!!」
ウェンディは苦しい表情のまま眠るリュークの前に座り、天空魔法による治癒をかけた。それにより、リュークの傷は少しずつ癒え始めたのだが、ウェンディは首をかしげた。
「………あれ?」
「どうした!?」
「治りが遅い………何で!?」
「遅い………のか?」
「はい………本来はもっと早くに傷が癒えるはずなのに………何で?何を間違えたの?」
「ウェンディ、弱気にならない!!」
『滅竜魔法の傷は治りにくいとかってあるの?』
「俺に聞かれても分かんねぇよ。リュークは滅竜魔法は苦手って、いつも言ってたけどよ。」
「滅竜魔法が、苦手………」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あれ、なんでなおりがおそいの?」
「そうね………人と動物、そして他の存在だと治り方が違うのよ。だから、相手に応じて少しだけ魔法のかけ方を変えるの。私みたいな存在にかける時は………」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……………。」
一呼吸置いてから再び天空魔法の治癒を試みたウェンディ。すると今度は傷も、全身を真っ赤にするような炎症もみるみるうちに消え、程なくして傷は完全に癒えたのだった。
「………終わり、ました。」
「それで!?」
「………ん、んん………」
今まで苦しみの表情を見せていたリュークの顔色も元通りになり、呼吸も安定した。それを知ると周囲は喜びに包まれた。
「よっしゃー!!ルーシィ、エルザ、ハイタッチだ!!」
『よかった〜!!』
「一時はどうなるかと思ったが………良かった。」
「シャルル〜!!」
「………一回だけよ!!」
「ウェンディ!!」
「……………」
「ウェンディ?」
「………あ、すみません。」
「ありがとな。おかげでリュークは助かった。」
「………はい。まだ目を覚まさないかもしれないですけど、もう大丈夫だと思います………」
「よし!!それじゃ、リュークが起き次第反撃に出るぞ!!」
『「「おーっ!!」」』
「……………」
皆がリュークの完治を喜ぶ中、ウェンディは1人だけ思い詰めたような顔をしていた。
「………今ので、治ったの………?うそ………」
すると、ウェンディの目の前でリュークが目を覚ました。
「………君が、治してくれたのかい?ありがとう。」
「えっ………あ、はい………」
寝たまま感謝の言葉を述べたリューク。だがそんな彼を見たウェンディの表情は「信じられない」の一言で埋め尽くされ、怯えすら感じるものだった。それに対してリュークは優しく、だが"ウェンディにしか聞こえないように"話しかけた。
「………"懐かしい"魔法だった。」
「懐かしい………?」
「うん。昔、大怪我した時に母さんがかけてくれた魔法に似ていた………ママ友に教えてもらった魔法、とか言ってたけど………」
「………その、"ママ友"………の、名前、は。」
「分からない。母さんももう亡くなってるから確認する術も無いけど………」
と、頭をかきながら答えたリューク。すると一呼吸おいて、穏やかな笑みを浮かべてから一層小さな声でウェンディに言葉を発した。
「………へへ、ついにバレちゃったか。」
「へ………?そ、それって………」
「今の治癒魔法は"正解"だった………それが、俺の正体だ。」
「………!!」
「色々と聞きたい事はあるかもしれないけど………戦いが終わって落ち着いてからにしよう。」
「………分かり、ました。」
「改めて、ありがとう。おかげさまで、身体が軽い。」
そう言うとリュークは飛び起きた。
「よっし!!完全復活だ!!」
「「リューク!!」」
「ホーッ!!」
「ぎゃあーーーっ!?」
しかし飛び起きて早々にナツ、ルーシィ、フェルトが飛び込み再び地面に倒れるのだった。
「良かったよ!!」
「一時はどうなるかと………!!」
「ホホー………!!」
「心配かけてごめん。でも、ウェンディのおかげで傷だけじゃなく身体の調子も治った!!ここから暴れてやる!!」
リュークが完全復活し、いよいよ反撃という空気になったその時。樹海の中から黒い光が柱のように打ち上がった。
「何!?」
「黒い光の柱………まさかあれが、"ニルヴァーナ"………!!」
「………"ニルヴァーナ"。まさか、"あの"魔法の事か………!!」
すると、ウェンディが震えながら泣き始めた。
「わ、私のせいだ………私が、ジェラールを、治したせいだ………!!」
「ジェラール、だと………!?」
「ジェラール!?なんでそいつの名前が………」
すると、エルザが飛び出して行った。
「エルザ!!」
「くそっ!!急ぐぞハッピー!!」
「ナツ!!事情を説明しろ!!」
「んな時間はねぇ!!エルザに会わせてなるものか………!!」
続けてナツもハッピーを連れ飛び出してしまった。
「くそっ、六魔将軍に"ニルヴァーナ"だけでも手一杯なのに、ジェラールまでいるって何があった!?」
「………どうしよう。」
「ん?」
「私がジェラールを治したせいで………」
「………!!」
「私のせいで、"ニルヴァーナ"が見つかっちゃって………ナツさんや、エルザさんや………」
頭を抱えながら、ぶつぶつと言い始めたウェンディ。するとリュークがウェンディに接近、"訓練用の剣"の一振りでウェンディの意識を刈り取った。
「ちょっ………!?」
「あんた!!命の恩人に対して何すんのよ!!」
「………申し訳ないが、恩人だからこそこうさせて貰った。」
「何意味分かんない事を………!?」
いきなりウェンディを殴り倒した事に激昂するシャルル。だがリュークに飛びかかろうとするシャルルを、ヒビキが止めた。
「ちょっとどきなさいよ!!」
「………君も"知ってる"んだね?」
「知ってる?」
「………ええ。"ニルヴァーナ"という名前は知りませんでしたが、この魔法なら………"光と闇を操る魔法"の事なら。」
続く
1話かけてリューク、完全復活。しかしウェンディは彼の秘密を知ってしまったようで………
次回はルーシィvsエンジェル書くと思います。今更ですが"もう1人の主人公"ポジのルーシィをヒロインにするつもりで書いてれば描写も多くなりますね。タグ付けたほうが良いかしら?