FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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40章 一人のために

六魔将軍との戦いが終わった後。連合軍は化猫の宿(ケットシェルター)で合流したのだった。

 

「へぇー、これがニルビット族ってとこの………」

「いい服じゃねぇか。」

「グレイ、脱いだら意味無いよ。リオンも。」

 

エルザと青い天馬の魔導士以外はニルビット族の衣装を仕立てて貰い着ていた。各々が感想を述べる中、リュークは意外な感想を述べた。

 

「………懐かしいな。」

「ホ?」

「小さい頃、母さんにこんな感じの服を買って貰った事があったんだ。」

「へぇー。」

「………。」

 

一同は化猫の宿のギルドがある村の中心にて、マスターのローバウルを筆頭としたギルドの面々に出迎えられた。

 

「妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗、そしてウェンディとシャルル。よくぞ六魔将軍を倒し、"ニルヴァーナ"を止めた。ありがとう、なぶらありがとう。」

 

それに対して、勇んで話を切り出したのは一夜だった。

 

「どういたしまして、マスターローバウル!!激闘に次ぐ激闘、楽な戦いはありませんでしたが!!仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!」

「「「さすが先生!!」」」

 

さらに、盛り上がる一夜とトライメンズにナツが乗っかった。

 

「この流れは宴だろ!!」

「あい!!」

「それ。」

「「「「ワッショイワッショイ!!」」」」

「化猫の宿の皆さんも一緒に!!」

「「「「ワッショイワッショイ!!」」」」

 

だが、化猫の宿のメンバーでこの流れに乗る者は無く、気まずい雰囲気が流れ一夜達やそれに乗ったナツ達は居た堪れない気持ちに襲われた。そして場が静まり返ったところでローバウルが切り出した。

 

「皆さん、ニルビット族の事を隠していて本当に申し訳無い。………皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ。」

 

そしてローバウルは衝撃的な事実を告げた。

 

「はじめに………ワシらはニルビット族の末裔では無く、ニルビット族そのもの。"ニルヴァーナ"を400年前に作ったのは、他でもないこのワシじゃ。」

「何っ!?」

「うそ………」

「400年前!?」

 

呆然とする一同だが、ローバウルは続けた。

 

「400年前、世界中に広がった戦争を止めようと善悪反転の魔法、"ニルヴァーナ"を作った。その時はお主の先祖にも手伝って貰ったよ、リューク殿。」

「「「!?」」」

 

突然話を振られたリュークは困った顔をしながら頭をかいた。

 

「………まさか、こちらに話が飛ぶとは。」

「元々そこまで遠くない場所にあり、交流があったからな………"紋章士の守り人"、"ソラネルの民"の生き残りよ。」

「"ソラネルの民"?」

「そう。うちの"初代様"が幼少期を過ごした地から名付けられた、俺の故郷の部族の名前だ。400年前に戦争の余波で壊滅状態になり、部族の者は散り散りになったと聞いていますが、あなたに協力したのはその中の誰かでしょう。」

「なぶらそうじゃ。」

 

なぶら、という謎の相槌を入れながらもローバウルは続けた。

 

「話が逸れてしまったな。"ニルヴァーナ"によって悪を善に変え、各地の戦争を治めていた我々は"歩く都市"の上で栄華を極めた………しかし、それも長くは続かなかった。光と闇は表裏一体、光が強くなる程に闇も濃くなり、そのバランスは変えられない。故に各地から取り除いた悪は次第に都市を覆うようになり………やがて、都市を呑み込んだ。」

 

そこから語られたのは地獄そのものだった。

 

「闇に呑まれたワシらは互いに殺し合い全滅、生き残ったのはワシのみ………いや、そのワシも肉体は疾うの昔に滅び、今は思念体に近い存在として400年………罪を償い、そして"ニルヴァーナ"を破壊できる者が現れるまでこの地で見守ってきた。」

 

語り終えたローバウルはホッとした表情で微笑んだ。

 

「そして今………ようやくその役目が終わった。」

 

残りは消えゆくだけ。ローバウルの言葉の裏に読み取れたものに、ウェンディは声を震わせた。

 

「そ………そんな話。」

 

すると、驚く事に化猫の宿のメンバーが1人ずつ消え始めた。

 

「えっ!?何これ!?皆………!?」

「アンタ達!?」

 

微笑みながら次々と消えていくギルドのメンバー。

 

「イヤよ、皆………!!消えちゃイヤ!!」

「騙してすまなかったな、ウェンディ、シャルル………ギルドのメンバーは皆、ワシの作り出した幻じゃ。」

「!?」

「何だとォ!?」

「人格を持つ幻だと!?」

「人格だけじゃない………肉体も、気配も、魔力も、こうして消えるまでは人間そのものだった!!だけど、どうして………?」

 

ローバウルは続けて真相を語った。

 

「ワシはこの"廃村"に"1人で"見守っていた………だが7年前、1人の少年がワシの所に来て、「この子を預かってください。」と………」

「まさか、ジェラール………」

「………あまりにも真っ直ぐな目に、ワシはつい承諾してしまった。1人でいようと決めていたのにな……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「おじいちゃん、ここはどこ………?」

「ここはじゃな………」

「ジェラール、私をギルドに連れてってくれるって………」

「………!!」

 

「ギルドじゃよ!!ここは魔導士のギルドじゃ!!」

「本当!?」

「なぶら、外に出てみなさい。仲間たちが待っているよ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「そして、ワシは仲間の幻を作り出した。」

「たった1人の、ウェンディのために作られたギルド………!!」

 

だが当然、ウェンディはそれを受け入れられるはずもなく。

 

「そんな話聞きたくないよ!!皆消えないで………!!」

「ウェンディ。シャルル。もうお前達にワシら偽りの仲間はいらない。」

 

ローバウルはウェンディの背後を指差した。

 

「何故なら、本当の仲間がいるではないか。」

 

指差した先には、この戦いで共に戦った連合軍の皆がいた。

 

「お前達の未来は始まったばかりだ。」

「マスター!!」

「皆さん、本当にありがとうございます。ウェンディとシャルルを、頼みます………」

 

そう言い残すと最後の1人となったローバウルも笑顔と共に消えた。そして、そのローバウルに手を伸ばしたウェンディと彼女の隣で俯くシャルルから、化猫の宿の紋章が消えた。

 

「マスターーーーッッッ!!」

 

7年間、家族として共に過ごした仲間を失ったウェンディは天を見上げ、人目も憚らずに号泣した。そんなところに、ウェンディの肩を優しく叩く者がいた。

 

「愛する者との別れの辛さは………仲間が、埋めてくれる。」

「……………」

「こい、妖精の尻尾へ。」

 

エルザはウェンディを妖精の尻尾へと勧誘したのだった。

 

==========

 

戦いが終わり、各ギルドから集結した魔導士はそれぞれのギルドへと戻った。ルーシィはエンジェルの所有していたジェミニ、スコーピオン、アリエスを新たに契約。そして妖精の尻尾には、ウェンディとシャルルが加入する事になった。

 

「これからよろしくお願いします!!」

 

直ぐ様お祭り騒ぎの歓迎会となったギルド。

 

「そう言えばウェンディはどんな魔法を使うの?」

「私………天空魔法を使います、天空の滅竜魔導士です。」

「ドラゴンスレイヤーだーっ!!」

「ナツと同じか!!」

「ガジルも合わせて3人もだ!!珍しい魔法なのに!!」

 

あっという間にギルドに馴染んだウェンディ。その様子を二階からじっと見つめる影が1つ。

 

「……………」

 

何も言わずその影は立ち去った。その様子を、少し離れた所からリュークとフェルトは見ていた。

 

「………ミストガン?」

「ホー?」

「しかし、ウェンディが速攻で馴染めて良かったよ。シャルルは………まぁあのくらいの警戒心は目くじらを立てる程じゃない、そのうち大丈夫だ。」

「ホー、ホホー。」

「……………さて。」

 

リュークはフェルト以外誰も見ていない中でため息をついた。

 

「………そろそろ、潮時かな。」

「ホー?」

「自分の正体を隠しきれなくなった。そろそろ覚悟しないとな………俺の正体を皆に明かす事を。そして………再び一人ぼっちになる事を。」

 

 

続く




今回は短めですが、キリが良いのでここまでです。

次の投稿でいよいよ50話ですか………案外早いものでした。
そして図らずもキリのいい感じに話が回ってきたので、ここで大きく動かせたら、と思います。
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