FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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この回を投稿後、リュークの設定集やタグの見直しを行います。


43章 ルーツ

ドラゴノイドの破壊と共に騒動が収まった翌日。いつものように遅めの朝にギルドへ来たリュークだが、この日はマカロフの部屋へと呼び出された。

 

「このギルドに3人もの滅竜魔導士が集まり、運命の悪戯かと思っていたその矢先じゃ………よもや、本物の竜がギルドにいたとはな。」

「………申し訳ありませんでした。」

「謝るでない。ガキの過去を詮索しないのがワシの主義じゃ。そもそも打ち明けられんじゃろ、そんなもの。」

「まぁ、そうですね。母さんが亡くなった200年前から各地を放浪していましたが、その間は誰にも正体を明かしませんでした。竜化も、大体100年前に実家の墓荒らしをしに来たトレジャーハンターを撃退するのに使ったのが最後ですね。」

「200年もか………それは気の遠くなるような時間じゃな。なら、何故それを今明かそうとした?」

「………。」

「ウェンディやルーシィにバレたからか?あの科学者が竜族(どうほう)を侮辱するような言動を取ったからか?」

「それもあるのでしょうが、やはり妖精の尻尾の皆になら"明かしてもいい"………いや、"明かしておきたい"、と心の底で思った事でしょうね。」

「………ほう?」

「じゃなかったら竜化なんて選択肢すら出ません。それだけ妖精の尻尾を、妖精の尻尾の皆を気に入ったのでしょう………たとえその結果怖がられて、嫌われて、ここにいられなくなる事になっても。」

「……………。」

「………で、マスターと皆の判断は?俺が来るまでに話はついているのでしょう?」

「そうじゃの。では話すとしよう………お主の処遇を。竜と言う人の身に余る者をこのギルドに置くか否かを。」

「……………。」

 

しばらくの沈黙。その後、マカロフはニカッと笑った。

 

「安心せい。ワシらはお主を追い出しはせん。これからもガキ共の仲間として………そして、人生の先輩として共にいてやってくれ。」

 

その言葉に、リュークは頭を下げた。

 

「寛大なお心、感謝します。」

「感謝するなら、ガキ共にするといい。お主を怖がる者など、誰もおらんかったわ。むしろ感激する者と、「戦わせろ!!」とせがむ者がいたくらいじゃ。」

「俺はそいつらとは絶対に戦いたく無いのですが………」

「はははっ。では、ワシとの話はおしまいじゃ。お主の事を聞きたい奴等が待っておる。応えてやるといい。」

「はい!!では、失礼します。」

 

マカロフの部屋を出たリュークを待ち受けていたのはギルドの魔導士達。彼らによってギルドの中心まで連れてこられ椅子に座らされると、その周りにズラッと囲うように皆も座った。するとまず話を切り出したのはナツだった。

 

「なぁリューク、やっぱりイグニールの事知らないか?てか知ってるよな!?」

「だから知らないって!!一口に竜って言っても色々いるんだから………」

「どういう事だ?」

「ナツとガジルとウェンディは火竜、鉄竜、天竜で全然違うだろ?」

「それもそうか。」

「ケッ、こいつと一緒にすんな。」

「ンだとォ!?」

「やめんか!!」

「「ごはっ!?」」

 

ナツとガジルがケンカになりかけたのをエルザが仲裁したところでリュークは話を再開した。

 

「それは竜も同じなんだ。群れるのが好きな竜がいれば嫌いな竜もいる。人間に対しても、食べ物としてしか見ていない竜もいれば憎み切ってるような竜もいるし、逆に俺みたいに人肌恋しくて人里に下りてくるようなのもいたり、色々いるんだ。昔と比べたらそりゃ数は減ってるけど、それでも人に隠れてるだけで竜は大陸中にいるよ。」

「そうなのか………だが、そうなるとお前はずっと人間に変身してるって話になるが辛くないのか?」

 

それに対して、リュークは懐から水晶のような宝石、"竜石"を出した。

 

「俺の場合は逆でね。普段は魔力消費の少ない人の形を取り、いざという時にこの"竜石"で竜の姿に変身するんだ。古竜研究においては"竜人族"って分類される種族だね。………厳密に言うと起源辿ると異界まで飛んでいくから少し複雑なんだけどね。」

 

質問は次々と飛んで来た。

 

「じゃあお前は何竜なんだ?」

「神竜族だよ。」

「お前神様なのか!?神様食うのか!?」

「いや。ご先祖様は信仰対象だった時もあるけど、俺みたいな若造は違うよ。それにしても神様食べるって何だよ、絵面恐ろし過ぎるだろ。」

「竜って寿命が長いって聞いたけど何歳なの?」

「うーんと、900と………70か80くらい?もうすぐ1000歳になるね。」

「せ、1000………!?」

「でも、これでも人間に換算すると大体20歳くらいだし、寿命も短い方だよ。俺と同じくらいまで成長するのに3倍かかる竜もいるし。」

「3倍………!?」

「なるほど。だから俺の"術式"から出られなかった訳か。」

「その通り。本当は「紋章士の年齢の合算です」、って誤魔化すつもりだったけどルーシィが素通りしたからどうしようかと思ったよ。誰も追及しなかったから助かったけど。」

「しっかし、俺の"造形眼(フィギュアアイズ)"でも見抜けなかったのは驚いたぜ。」

「200年も人里に下りて放浪してたんだ、自分の存在を隠す練習は十分過ぎるくらいにできた。………命の恩人にこう言うのは間違ってるって分かってるけど、ウェンディに出会ったのが運の尽きだった。」

 

この言葉に、一同の視線がウェンディに向いた。

 

「は、はい………同じ治癒魔法でも、人にかける時と動物にかける時、そして竜にかける時は少しだけかけ方が違うんです。そしてリュークさんを治す時は竜を治癒するやり方が通用したので、そこで………」

「………なるほど。滅竜魔導士との違いは、"そこ"か。」

「滅竜魔法を覚えた"人間"と、人の姿をとった"竜"。それが滅竜魔導士と俺の根本の差だろうね。だから乗り物酔いもしないし。」

「乗り物酔いするのはコイツだけだろ?それよりもだ、俺と勝負しろ。」

「あっ!!オメーずりぃぞ!!リューク、今度こそ俺と勝負しろ!!」

「だから嫌だって………!!」

「「何でだ?」」

「死ぬ程痛いからだよ!!竜を殺す魔法を竜が受けたら痛いじゃ済まないに決まってるだろ!!」

「んなもんやってみねぇと分かんねぇだろ!?」

「ドラゴンを倒せてこその滅竜魔導士だ!!今ここでお前に勝つ!!」

「やめんかと言っている!!」

「「ごほぉっ!?」」

「ナツに関してはコブラの攻撃を受けたリュークがどうなったか見ていたと言うのに………さて、話の続きを聞かせてもらおうか。」

 

その後も仲間達からリュークへの質問は数時間続いた。

 

==========

 

「ごめんね、あれだけ話し続けた後にお願いして。」

「構わないよ。座りっぱなしで疲れて、身体を動かしたいところではあったからちょうどいい。」

 

その夜、リュークは街外れの河川敷で"訓練用の槍"を構えていた。その向かいには、同じように"訓練用の槍"を構えるルーシィがいた。

 

「本当は剣から始めるつもりだったけど、ルーシィのもとにいる剣士はどっちも一癖あるからね………紋章士の相性も考えて、槍から始めるよ。」

「うん………よろしくお願いします。」

 

星霊召喚と紋章士の"エンゲージ"の連携戦術を確立させつつあるルーシィ。しかし、武器の扱いに慣れていない事が課題の1つと気づき、ルーシィはリュークに武器戦闘の鍛錬を頼んでいたのだった。

 

「いつでもどうぞ。」

「よし………やあああっ!!」

 

最初は剣から教えようとしたリューク。しかしルーシィの紋章士の中で剣を使う紋章士が左利きの紋章士アルムと二刀流の紋章士シェズと言う変化球気味の剣士だったので、紋章士との相性などから総合的に考え槍から教える事になった。

 

「ふっ!!」

「やっ!!」

「腕だけじゃダメ!!突くも薙ぐも、身体全体で………こう!!」

「ぐうっ………やあっ!!」

「そう、その感じ。その調子で打ち込んで来い!!」

 

そのままルーシィの突きや薙ぎを捌き続けたリューク。この打ち合いはルーシィがバテるまで続けた。

 

「ぷはー………っ!!疲れたぁーーーっ!!」

「お疲れ様。最初のへっぴり腰から比べると格段に良くなったよ。次回は斧か弓で行こうか、タウロスやサジタリウスを召喚する時の参考にもなるだろうし。」

「はーい………そう言えばさ。」

「何?」

「あたしのご先祖様にこの紋章士の指輪を渡したのって………」

「うん、俺の母さん。先祖ではあるでしょ?」

「じゃあアルム達の事も………」

「うん。生まれた瞬間に立ち会ってたから知ってるよ。」

「って事は楽園の塔で会ったアーロンも………」

「そうだよ。俺の武器戦闘はアーロンに数百年間かけて叩き込まれたものだよ。」

「そうだったんだ………それともうひとつ聞いてもいい?」

「何でもどうぞ。」

「あんたが竜に変身する直前、1人の紋章士を顕現したわよね?」

「したね。100年ぶりくらいの竜化だったから不安でね。」

「その紋章士………神竜族の王女、チキの事を"お姉ちゃん"って呼んでなかった?」

「………よく聞いてたね。」

 

すると、その紋章士チキが現れた。

 

『始めまして!!リュークのお友達?』

「わっ!?うん、始めまして!!あたしルーシィ!!」

『ルーシィのお姉ちゃんね。私はチキ!!えーと、弟のリュークがお世話になってます。』

「あっ、これはどうもお世話になってます。」

 

ペコリと頭を下げた紋章士チキに頭を下げ返したルーシィ。

 

「でも何でリュークが弟なの?チキには失礼だけど、どう見てもリュークの方がお兄ちゃんに見えるから………」

『それは、リュークが赤ちゃんの時からチキがお世話をしてたからだよ。』

「俺が初めて自分の意志で顕現した紋章士もお姉ちゃんだし、竜の姿での戦い方を教えてくれた師匠でもあるし、さらに言うと、まだお姉ちゃんの方が年上なんだ。」

 

紋章士チキの姿はマルスやシーダと冒険した時の幼い少女の姿であるが、この時点で1000歳を越えていて、リュークよりも年上なのである。

 

『それでルーシィ、リュークはお姉ちゃんや他の仲間にワガママ言って迷惑かけてない?』

「迷惑だなんて、そんな!!どちらかと言えば皆の迷惑を聞いてくれるお兄さんよ。」

『………ふーん。あの泣き虫でワガママばっかりだったリュークがね………』

「いつの話してるんだよお姉ちゃん………」

『それに、すぐに強がるし無理もするけど………何よりもすっごく寂しがりだから、これからも仲良くしてあげてね。』

「お姉ちゃん!!」

『それじゃあまたね、ルーシィ。またお話ししよ!!』

 

そう言いシュンと消えた紋章士チキ。それを見ていたリュークは顔を真っ赤にしながらため息をついた。

 

「全く、いつまでも幼子扱いはよしてくれよ………もうちょっとで年齢も越すって言うのに。」

「………ふふっ。」

「何だよ。そんなに面白かったか?」

「うん、とっても。だって、朝が弱いくらいしか弱点らしい弱点の無かったリュークに、実は姉に頭が上がらないなんて弱みを知れて愉快にならない訳ないじゃない。」

「……………。」

「………でも、それ以上に安心したかな。あたしの見立てが間違って無かった事が分かったから。」

「何が?」

「あたしがリュークの牙見た時、自分の事を何て言ったか覚えてる?」

「"得体の知れない化け物"、とか言ったっけ。」

 

するとルーシィは吹き出し笑いをした。

 

「どこがよ。あんたが人間じゃないって分かった時から今までで、怖いって感情一瞬も出てこなかったわよ。」

「………ああそうですか。どーせ俺は竜になってもガキでチビで未熟者で威厳なんか微塵も無くて全く怖くないですよーだ。」

「何で急に拗ねてんのよ、そんなこと言ってないじゃない。竜になったあんたは大きくて、強そうで、綺麗だったわよ………でも、威厳は確かに無かったね。」

「………と言うと?」

「威厳出そうと尊大な話し方してたけど、セリフがどうしようもないくらいいつものリュークだったから、もはや滑稽で笑いそうになったわよ。「不遜にも我がたからに手をつけて………」なんて、"仲間"と書いて"たから"と読んだでしょ?そんなのが"得体の知れない化け物"は無理があるわよ。」

「……………。」

 

バツが悪そうに頬をかくリューク。そこにルーシィが続けた。

 

「だから、あたしはリュークを恐れない。竜だろうが何だろうが、あんたはあたしの仲間で、恩人で、あとは………同じ魔法で戦う、戦友よ。だから………これからも、よろしくね。」

 

そう言い、リュークに笑いかけたルーシィ。それにつられてリュークも笑った。

 

「………ありがとう。おかげで、すごく心が軽くなった。これからも、よろしく。」

 

すると、リュークは"訓練用の斧"を2つ出した。

 

「さて、そろそろ立ち上がろうか。」

「ええ!?あたしもうヘトヘトよ………!?」

「ルーシィが俺の事を"戦友"と見ていたのは初耳だった。まぁ確かに戦いで息が合うのは認めるけど………」

 

そしてリュークは"訓練用の斧"の1つをルーシィの足下に投げ、今度はニヤリと笑った。

 

「この程度でへばってるようじゃ、まだ"戦友"として肩を並べるには心許ないかな?と言う訳で、始めようか。」

「ひええ………」

「どうした?俺は恐れるに値しないんじゃなかった?」

「それとこれとは話が違うわよ!!鬼、悪魔、邪竜!!」

「残念、神竜だ。さぁ来い、ナツやエルザと張り合えるまで持っていってやる。」

「無茶言わないでよぉー………!!」

 

そんな光景が繰り広げられたところから少し離れた場所に、紋章士マルスと紋章士チキが現れた。

 

『全くリュークったら、照れ隠しが下手っぴ。』

『そうだね、本当に下手だ………でも良かったね、チキ。』

『うん。………リュークが一人ぼっちにならなくて、本当に良かった。』

『妖精の尻尾の皆は優しいから、リュークの事も受け入れてくれるとは思ったけど………やっぱり、いざこうなるとホッとするね。これからはチキの出番も増える。紋章士として、そしてリュークのお姉さんとして頑張ろうね。』

『うん!!チキ、頑張る!!』

 

そして紋章士マルスと紋章士チキは、リュークとルーシィの手合わせをしばらく見守った。

 

「………もう、こうなったらヤケクソよ!!あんたが飽きるまで食らいついてやる!!」

「ならばお望み通り、飽きるまで付き合って貰うよ!!」

 

 

続く




リュークのプロフィール更新です。

【本名】
リューク・ソラネル
【年齢】
970歳から980歳の間(人間換算すると19〜20歳)
【兵種】
旅人→神竜ノ裔(戦闘スタイル:竜族)
竜石、剣・体術B、その他武器種C
【来歴】
ワース樹海から山を越えたところの隠れ里に住んでいた"ソラネルの民"の神竜族。母親の死後から200年程、正体を隠しながら人里に下りて各地を放浪していた。
竜族なので滅竜魔法に弱い。また朝が弱かったり居眠りが多いのも竜族特有の燃費の悪さから。

【使用魔法】
=竜化=
持っている"竜石"の力で白い竜に変身する。能力が大幅に上昇し、肉弾戦と二種類のブレスを使い分けて戦う。
・"竜石"
リュークが竜化する為に使うアイテム。また魔力の籠め方を変える事でエンゲージカウントを進めたり、身体強化に使う事もできる。

・紋章士チキ
リュークが初めて自分の意志で顕現に成功した紋章士。またリュークが赤ん坊の時から知っていてお世話をした事があったり、竜化した時の戦い方を彼に教えた師匠でもある事から、リュークは彼女を"お姉ちゃん"と呼ぶ。そしてチキにとってもリュークは"初めての弟分"なので張り切ってお姉ちゃんとして振る舞ってる。
尚、紋章士チキは暗黒竜・紋章時代のいわゆる子供チキなので見た目はリュークの方が大人だが、実年齢はこの時点で1000歳オーバーなのでちゃんとリュークの方が歳下である。チキの正確な年齢は分からないですが、+100と仮定するとリュークが年齢を越す頃には原作キャラがおらんくなってるので、この物語の間はずっとお姉ちゃんのままです。

チキはリュークにとって"神竜としての先輩"ですし、私個人としてもヒーローズにてリセマラ無しで最初に召喚できた英雄なので少し特別扱いしたいと思っていたところ………

《どこ出演しても妹扱いのチキが、姉ムーブしながらフンス!!としてる光景可愛くない?》

と言う謎の電波を受信しまして、それに従った結果がこれですよ。今まで温存してたぶん、これからチキの出番は増える見込みなのでよろしくお願いします。
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