魔力源として奪われたマグノリアの街と妖精の尻尾の皆を取り戻す為に異界エドラスへの"異界の門"をくぐり抜けたリュークとルーシィ。
『ルーシィ、ちゃんといるね!?』
「大丈夫………!!」
『出口らしいのが見えた………あと一息、行くよ!!』
亜空間を飛び抜け、出口らしき穴に突っ込んだリューク。するとそこには全くの異世界が広がっていた。
「わぁ………」
『ここが、エドラス………空が、違う。』
「それだけじゃない、見えるものが全然違う………本当に別世界に来たんだ。」
いくつもの浮遊島が浮かび、大地に生える植物や飛んでいる生き物まで、全てが違う世界に辿り着いたリュークとルーシィ。
『………何よりも、魔力が薄い。』
「そうなの?」
『うん。ミストガンの言っていた、"魔力が有限"というのは正しいらしい………』
元の世界と比べ、明らかに魔力が薄い事に気づいたリューク。するとその瞬間、リュークの竜化が解けた。
「へ?」
「あ?」
翼を失った2人はそのまま自由落下を開始。
「きゃあああっ!?」
「うわあああっ!!」
「どうして急に竜化解いたのよ!?」
「ミストガンの言う通り、魔法が使えなくなったんだ!!」
「どうすんのよこれ!?このままじゃあたし達ペチャンコよ!!」
「そうだ、"エクスボール"!!」
「エクス………?ああ!!さっき貰った!!」
2人は突入前、ミストガンから貰っていた丸薬を取り出し、迷い無く飲み込んだ。
「どう!?」
「待ってて………はあっ!!」
"エクスボール"を飲み込んでから再び竜化を試みたリューク。竜化は無事成功し、ルーシィを前脚で掴むと翼を広げて飛び始めた。
『ふぅ、間に合った………』
「こ、これでおしまいかと思った………」
『さて、ここからどうするかだけど………』
その場で高度を維持し、周囲を見渡したリューク。
『とりあえずはあの街に行きたいけど生憎と魔導二輪は修理中で手元に無い………なら、こうか。一度降りる、着地したらもう1回背中に乗って。』
一度着地し、ルーシィを乗せ直したリュークは再び飛び上がった。
『さて、前が見えなくなると思うけど我慢してね。"神霧の楼閣"。』
口から薄い霧を放ったリューク。するとその霧はリュークを覆うように集まった。
「何これ?」
『姿を隠す為の霧だよ。魔導二輪が使えない以上、長距離移動は竜化するしか無いんだけどこの姿が見られたら一大事でしょ?』
「だから霧で姿を隠すって事?」
『そう、光を屈折させるような霧を出したんだ。降りて来た所を見られていたらどうしようもないけど、少なくともこれで街の近くまでは行ける。それまでに、1つ頼み事をしていいかい?』
「なぁに?」
『星霊か紋章士に頼んで、2人分の服を見繕って貰えないか?それも、変装に適した奴を。』
==========
「………様。………様!!」
「………ぁあーうるせぇなぁもう!!ようやくまともに眠れそうだったってのに何なんだ!?王都についたのか!?」
「それが、"竜"が現れたと兵士達がざわめき出し………」
「"竜"だ?くだらん、レギオンと見間違えたんだろ?放っておけ、そんなんでギャーギャー騒ぐなみっともない。」
「そ、それが明らかにレギオンよりも大きく、さらに色も白かったと………」
「………だから放っておけと言った、二度も言わせるな!!そんな幻よりも、今は王都に戻るのが………"永遠の魔力"を得る事の方が重要だ。」
==========
リュークが先程見えた街、ルーエンの街に到着したリュークとルーシィ。街の手前の岩陰で竜化を解いた後、紋章士が用意した変装用の衣装に着替えてから街に入った。
「見て、あの2人………」
「ええ。お揃いの服………恋人同士かしら?」
「いや、髪色もおんなじだし、服装からして姉弟で傭兵ってところじゃないか?」
「仲良さそうでいいわねー。」
「「……………」」
街に入ってからの周囲の声に対して、ルーシィは小声でリュークに話しかけた。
「(何でまたペアルックなのよ!?)」
「(知らないよ!?用意したのそっちだよね!?)」
「(シーダがやけにニコニコしてたのはこういう事ね………)」
「(それよりも、俺は弟扱いされている方が癪なんだけど?)」
「(じゃあ、あたしの事お姉ちゃんって呼んでもいいわよ?)」
「(ええ〜〜〜………)」
「(そんなにイヤかしら!?)」
リュークは紋章士クリスと同じ服装に身を纏い、ルーシィは紋章士クリスの服装を色違いにして女性用にアレンジされた服装になっていた。そして2人とも、髪を青一色に変えていたので周りから傭兵の姉弟として見られていた。そんな2人は酒場に入り話を続けた。
「それよりも何でこんな事を?」
「ミストガンの姿を見ただろう?どう思った?」
「ジェラールそっくりだったわね。確か自分を"異界のジェラール"だって………そっか。」
「そう言う事。このエドラスにも自分達や妖精の尻尾の皆もいる可能性が高い。でも敵か味方か、そもそも生きているのか死んでいるのか、そこが分からない以上事態をややこしくしてしまう可能性が高い。だから、状況が分かるまではこの姿で行って素性を隠そう。」
「うーん、じゃあ偽名でも考える?」
「偽名か………となると………」
と、偽名を考えようとしていたその時。
「いたぞ!!妖精の尻尾だ!!」
「「!!」」
外を確認すると、武装した兵士がとある方向へと走っていた。
「あれは………王国の兵士か?」
「あたし達を追っている訳じゃない………つまり。」
「エドラスにも妖精の尻尾はある。そして恐らく………
「なら、加勢しないと!!」
「………もう少し慎重に、エドラスの情報を集めてからにしたかったが仕方無い。そっちに合わせるよ。」
「分かった、お願いね!!」
「任された!!」
すると、街の反対側に不自然な竜巻が巻き起こった。
「あっちね!!」
「行こう!!」
==========
竜巻の起きた場所に到着した2人。だがそこに妖精の尻尾のメンバーらしき人物はいなかった。
「いないね………隠れたか?」
「ナツみたいに鼻で何とか見つけ出せない?」
「生憎、嗅覚はそこまでだ。視覚と多少の聴覚には自信があるけど。」
すると辺りを哨戒していた兵士が寄って来た。
「ん………?おい貴様ルーシィだな!?」
「えっ!?」
「髪色を変えても無駄だ!!こっち来い!!」
「ヤバ………!!」
「応戦するよ、ルーシィ!!」
「うん!!」
「"クラスチェンジ"、婆娑羅!!」
「開け、天蠍宮の扉、スコーピオン!!」
「ウィーアーッ!!」
リュークは婆娑羅に"クラスチェンジ"して"銀の薙刀"と"馬神・午"の呪を手にし、ルーシィはスコーピオンを召喚。
「動揺してる………?」
「エドラスには無いタイプの魔法で驚いているんじゃないかな?今のうちに行くよ!!」
「お願い、スコーピオン!!」
「オーケー、"サンドバスター"!!」
「食らえ、"馬神・午"、そして"破天"!!」
スコーピオンの背中の機械から放たれた砂嵐と、リュークが放った魔法でできた馬で兵士を吹き飛ばし、さらに討ち漏らしはリュークが"銀の薙刀"に相手の力を上乗せする"破天"による横薙ぎで薙ぎ払ったのだった。
「よし!!」
「あとは囲まれる前に………!!」
と撤退しようとした時だった。
「リューク、ルーシィ!!」
「!!」
「みんな!!」
「ナツ、ウェンディ!!ハッピーとシャルルも!!」
ナツ、ウェンディ、ハッピー、シャルルが物陰から現れたのだった。
「会いたかったー!!」
「無事合流できて良かった。」
「何で髪色変えてんだ?」
「念には念を入れて………ね?」
合流した2人と2匹の他にもう1人いる事に気づいたリュークだが、その人物を見て思わず固まった。
「なっ………」
「お前、まさか………」
「あたしがいるーーー!?」
「っっっ………まさか、こいつがアースランドの………」
「これが、エドラスのルーシィか………!!」
その人物はルーシィと完全に瓜二つだった。だがそれを追及する時間は無かった。
「逃がすなー!!」
「捕らえろー!!」
「………話は後回しね。」
敵兵士の増援が現れ、話を中断したエドラスのルーシィらしき人物。するとルーシィはナツを指差した。
「ナツ、あんたの出番よ!!まとめて薙ぎ払いなさい!!」
「俺達魔法が使えねーんだ。」
「ええっ!?」
「ルーシィに、リュークも………何で魔法が使えるんだよ!?」
「えーと………」
「それよりもルーシィ、お願い!!」
「あいつらをやっつけて!!」
「ルーシィさんとリュークさんしか今魔法使えないんです!!」
それを聞いたルーシィはと言うと。
「………もしかして、今のあたしって最強?」
「調子に乗るのは後だルーシィ!!」
「いいから早くやれ!!」
「………何か酷い言い様じゃない?それよりも、それなら………!!」
リュークのストレートな物言いに凹むルーシィだが、すぐに別の鍵を出した。
「開け、白羊宮の扉、アリエス!!」
「あ、あの………頑張ります………」
今度はアリエスを召喚したルーシィ。
「アリエス!!あいつら倒せる!?」
「は、はい、やってみます………!!"ウールボム"!!」
爆発的に増えた大量の綿を敵集団にぶつけたアリエス。
「あ〜ん♡」
「やさしい〜」
「気持ちいい〜」
「………あれ?」
倒す、と言うよりはモコモコ気持ち良い綿で戦意を喪失させると言う形で、予想外の倒し方にアリエスは首を傾げるが、結果敵兵士は動けなくなっており逃げる絶好のチャンスとなったのは変わらなかった。
「今の内に逃げるわよ!!」
「ナイスだルーシィ!!」
「ああ〜あたしも気持ち良いかも〜っ!!」
「エドラスのルーシィ、でいいか!?先導頼む!!殿は俺がやる!!」
「………あ、ああ!!」
「お、追え〜………!!」
「逃がすな〜………!!」
「そのままモコモコに包まれて大人しくしてな!!"霧のブレス"!!」
殿に立ったリュークは"霧のブレス"で攻撃と同時に濃霧を発生させ敵兵士の視界を奪い、その内にエドラスのルーシィの先導でルーエンの街を脱出した。
===========
「………と、こちらはこう言う訳だ。」
髪色を元に戻し、合流したナツ達と情報共有を行ったリュークとルーシィ。
「なるほど………でも、何でリュークとルーシィはこっちの世界でも魔法が使えるの?」
「うーん………もしかして、あたしが伝説の勇者的な………」
「無いな。」
「いじけるわよ。」
「ミストガンから貰った丸薬だろうね………予備を貰えてたら解決したんだけどそうもいかなかったみたいだから………となるとこれはどうだろう?」
リュークは"ファイアー"と"ウィンド"の魔道書をナツとウェンディに渡した。
「属性が一致してるから、もしかしたら使えるかもしれない。ちょっと試してみてくれ。」
「ん、分かった。」
「やってみます!!」
「さて、次は………」
リュークが次に見たのは2人のルーシィだった。
「てめーら、本気で王国とやり合うつもりなのか?」
「とーぜん。」
「仲間の為だからね。」
「本当にコレあたし?」
姿や体型まで何もかもが瓜二つだが、性格は男勝りの姉御肌でルーシィとは対照的なエドラスのルーシィ。そんなルーシィはリュークに対して怪訝な、あるいは信じられないものを見たような顔をしていた。
「ところであんた………本当に、"あの"リュークか?」
「"あの"………その反応、エドラスの俺もいるみたいだね。エドラス王国で"妖精狩り"なんて呼ばれてるエルザみたいに味方では無いみたいだけど………」
「………味方じゃないどころか、敵の首魁に一番近い奴だよ。」
「敵の首魁に………?」
「それって………」
その瞬間。ルーシィの目の前に突如として何者かが現れた。
「へ?」
「!!まずい!!」
「避けろルーシィ!!」
「うそ………」
その人物はルーシィ目掛けて迷い無く剣を振り下ろし、ルーシィを叩き斬ろうとして………
「『させるものか!!』」
"鉄の大剣"を持ったリュークが紋章士マルスと同時に割り込み、その凶刃を防いだ。
『皆、下がって!!』
紋章士マルスの檄で全員が下がり、戦闘態勢に入った。
「むぅ、っ………!!」
「……………」
「せぇ、やぁっ!!」
鍔迫り合いの末、襲撃者を弾き飛ばしたリュークは"レイピア"に持ち替え襲撃者………黒一色の鎧に身を包んだ男に鋒を向けた。
「………怪しい集団を見かけて来れば、面白い。」
「……………」
「ほう。腑抜けた顔をしているかと思ったが………かなり、やる。」
黒い鎧の男は2m以上と小柄なリュークが見上げるような大男で、半開きの目に黒いクマが印象的な男だった。だがその雰囲気や、赤と緑の2色に分かれた髪からリュークは目の前の男が何者かを見抜いていた。
「………なるほど。これは面倒な事になったね。」
「控えろ、我を誰と心得る。」
「さあね。こちらにさっき到着したばかりだ、いきなり似た顔の何某が現れたところで知る由も無い。」
「そうか。ならば死ぬ前に覚えるといい。」
そう言うと黒い鎧の男は名乗った。
「我こそはエドラス国王ファウスト陛下の甥にして、エドラス王国の現正統後継者。貴様らが"邪竜将軍"と呼ぶリューク・グラドロンとは我の事だ。」
続く
・"神霧の楼閣"
薄い霧を周囲に纏わせる事で光を屈折させて自分の姿を隠したり、相手に蜃気楼を見せたりする。隠密行動や、敵の攻撃を回避する時に使う魔法。
感覚としてはポケモンのラティアスのノリ(あっちはガラスのような羽根で光を屈折して透明化する)。同じ霧を使うドラゴン(専用技が"ミストボール"のドラゴン・エスパータイプ)として参考にしました。
・ペアルック変装
再び紋章士の悪ノリ。リュークは男クリスの、ルーシィは女クリスの服装をあてがわれた。またエドラスの自分達と接触した時の事や、そもそもリュークの髪色が目立つのと言う事情から魔法で青色に髪を染めた。
その結果、流れの傭兵姉弟として街の人から見られたのだがリュークの身長がルーシィとあまり変わらず、また童顔の為ルーシィの方が姉だと思われ若干不服。
結局暴れてしまった上に嗅覚でナツとウェンディには速攻で看破されているし、すぐにエドラスの自分達と接触してしまっているのであまり意味は無かった。
次回はエドラスのリューク、リューク・グラドロンとの邂逅です。