FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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戦いが、好きだ。魔力(ちから)を、何よりも感じられるから。

戦いが、好きだ。魔力(ちから)不足で失った後悔を忘れられるから。

戦いが、好きだ。その先に、永遠の魔力(ちから)が手に入ると信じているから。

故に、負ける訳にはいかない。

「我が家に代々伝わる"これ"だが………封印は決して解いていけない。力で全てを呑み込む"呪い"の具現だ。」

それは都合がいい。

永遠の魔力(ちから)を………魔力(ちから)こそ、全て。


52章 妄執

マグノリアの皆が変えられた魔水晶の置かれた浮遊島と、エクシードの住む浮遊島エクスタリアの衝突を阻止したリューク達。そしてエドラスのジェラールことミストガンの働きで魔水晶はアースランドへと還されリューク達アースランドの魔導士の目的は達成された。しかし、戦いは終わっていなかった。

 

「ホーッ!!」

『………気をつけろ!!』

 

フェルトが異変を知らせ、リュークが叫んだ。だがそれを聞いて誰かが動ける前に、一発の魔法弾がパンサーリリーを貫いた。

 

「………!!」

「リリー!!」

「まだだ………まだ終わらんぞー!!」

 

魔法弾を撃った者、それは飛竜(レギオン)に乗ったエドラス兵を率いる、エドラスのエルザだった。

 

「スカーレットォォォ!!」

「ナイトウォーカー。」

 

一度エルザに出し抜かれ、そのために髪を切ったエドラスのエルザは、エルザを見つけると飛竜の首をそちらに向けた。だが、エルザを庇うようにミストガンが頭巾を取りながら前に出た。

 

「エドラス王国第一王子であるこの私に刃を向けるか、エルザ・ナイトウォーカー。」

「くっ………!!」

 

アースランドの皆には信じ難い事実ではあったが、エドラスのエルザを始めとしたエドラス兵が口惜しそうに進軍を止めた事が、ミストガンの正体を物語っていた。だが、そんな中で飛竜が一騎、ミストガンに向かって突撃して来た。

 

「第一王子だ………?国王を裏切り、国を出た奴が何を今更!!」

「!!」

「次の国王はこの我だ!!貴様は消えるがいい!!」

 

それはエドリュークだった。禍々しい槍を構えたエドリュークはミストガンに向かって一直線に飛んで来たが、そこにリュークが横から突進して防いだ。

 

『させるか!!』

「!!」

『こいつは俺が止める!!フェルト、いつも通り頼む!!』

「ホホーッ!!」

「貴様………!!」

『ここまで来たら最後まで付き合って貰おうか………お前は、こっちだ!!』

 

そう言い切り、リュークはエドリュークの飛竜を掴むとそのまま急降下。そしてある程度の高度まで降りるとリュークは手を離し、エドリュークもろとも尻尾で地面に向けて叩き下ろした。

 

『これ以上邪魔はさせない………!!"神竜のブレス"!!』

 

そして"神竜のブレス"を真下に向けて放ったリューク。だがエドリュークが禍々しい槍を掲げるとリュークのブレスが槍の穂先に吸い寄せられ、吸収された。

 

『!!』

「魔槍"クリームヒルト"よ………グラドロン家の"禁忌"よ………全てを喰らい尽くせ!!」

 

リュークのブレスを吸収した槍は闇の魔力を纏い、エドリュークは槍を薙ぎその闇の波動をリュークに飛ばした。

 

『"神霧の竜鱗"!!』

 

闇の波動を防ぐ為にリュークは霧を自分の周りに纏わせ、攻撃を防ぐ竜の鱗を形成した。だが闇の波動が霧の鱗に当たると闇の波動は霧の鱗を吸い込みながら発散、発散した闇の波動はエドリュークの魔槍に戻り更に力が増した。

 

『っ………!!』

「ハハハ………力を………魔力(ちから)を、ヨコセ!!」

 

再び闇の波動を放ったエドリューク。

 

「危ないっ!!」

 

受けるのはマズいと感じたリュークは竜化を解除してかわした。

 

「初めて小柄で感謝したよクソッ!!しかしあの槍は………!!」

『"クリームヒルト"って言ったね。クリームヒルト………読み方を変えれば、クリムヒルド………待てよ。"クリムヒルド"、そしてあの形状………そうか。』

「アルフォンス?何か分かりましたか!?」

『あれによく似た槍を使う者を思い出した。』

「その英雄は!?」

『………アルムとセリカの世界の英雄。リゲル皇帝の甥、ベルクト。』

「ベルクト!?間が悪いな………ベルクトと戦った事のあるアルムは向こう(ルーシィ)だ………!!」

 

歯噛みしながら着地したリューク。だが彼も、出て来た紋章士アルフォンスもそれで終わりにはしなかった。

 

『でも、この推測は合っていると思う。僕の考えている"クリムヒルド"も、魔法や遠距離攻撃には滅法強い槍だった記憶がある。』

「なら………うわっ!?」

 

だが呑気に分析する時間もまた無かった。

 

「ハハハ………ヨコセ、キサマの魔力(ちから)をヨコセ!!」

「………あの槍に呑まれていない?」

『そのようだね………こっちのリュークについて聞いた話に、ベルクトと共通点が多い………となると、このままだとその末路も………』

「………。」

 

リュークはため息をついた。

 

「別世界の自分が自ら破滅の道を歩むのを見届けるのはあまりにも後味が悪い。"クラスチェンジ"、剣聖(ソードエスカトス)。」

 

そして剣聖に"クラスチェンジ"したリュークは、"鉄の刀"を二刀流で構えた。

 

「そうだこれだ、魔力(ちから)だ………魔力(ちから)こそ全てェ!!」

「………そんな状態で俺の仲間に手出しされたらたまったもんじゃない。お前の妄執、ここで打ち砕いてやる。」

 

そう宣言したリュークはエドリュークに向かって斬り掛かった。

 

「はあっ!!」

 

だが2振りの"鉄の刀"を"クリームヒルト"で受け止めたエドリュークは鼻で笑った。

 

「何ダそれハ?攻撃ノつもりカ?」

「………はっ、せいっ!!」

「肩たたきニスラならんワ!!」

「………!!」

 

闇を纏った"クリームヒルト"による攻撃を紙一重でくぐり抜けながら連撃を加えるリューク。だがどの攻撃もエドリュークには通用していなかった。

 

「ゼルギウスノ"女神の加護"スラ必要無い!!魔法攻撃ガ無けれバス所詮この程度カ!!」

「………そこ、"流星・双刃"!!」

 

2振りの"鉄の刀"で瞬く間に合計10連撃を繰り出したリューク。だがその全ての攻撃は"クリームヒルト"の槍で防がれ、かすり傷すら与えていなかった。

 

「この期ニ及んで、我を侮っているノカ!?そのような量産品ごときデ我ニ勝とうト言うノカ!?」

「……………。」

「ソレトモ、蹂躙されるノガ趣味だっノカ!?」

 

エドリュークが繰り出した渾身の一薙ぎ。リュークはそれを2振りの"鉄の刀"で受け止めたが、リュークは"鉄の刀"もろとも吹き飛ばされた。

 

「ぐっ………!!」

「ならば我ニ踏み潰されるガいい!!ソシテ、その強大ナ魔力(ちから)ヲコノ我ニ、コノ魔槍ニ、コノ王国ニ捧げヨ!!」

「!!」

 

追撃の一刺しを繰り出したエドリューク。一方"鉄の刀"を遠くへ飛ばされ武器を失ったリュークは直ぐ様新たな武器を取り出した。

 

「"クラスチェンジ"、将帥(マーシャル)、そして"銀の大斧"!!」

 

一転して重厚な鎧と盾で守りを固め、"銀の大斧"で受け止めたリューク。だがエドリュークの槍、"クリームヒルト"から闇のオーラが伸び、リュークを包んだ。

 

「今更やる気ニなったところデ遅い!!」

「ぐぅ、ッッッ………!!」

「この距離ナラ、キサマノ魔力(ちから)ヲ吸収できる!!」

 

闇を通じてリュークの魔力を吸収し始めた"クリームヒルト"。

 

「ぬぐっ、ふんっ………!!」

「ハハハ!!これで我ハ、竜の力ヲモ得る!!この世デ最も魔力(ちから)ヲ持つ者トなれるノダ!!これで我ハ………!!」

 

ピシッ。

 

「ン?」

「………ようやくか。」

「何ダ、この音ハ?」

「"クラスチェンジ"、斧雄士(アクスブレイブ)!!」

 

同じ最上位の斧使いでも、守りに重きを置いた将帥から攻めに特化した斧雄士に"クラスチェンジ"したリュークは力任せにエドリュークの"クリームヒルト"を"銀の大斧"で押し返した。それと同時にピシッ、ミシッ、と何かが軋み、ヒビの入る音がした。その音の発生源は、闇を放つクリームヒルト"だった。

 

「"クリームヒルト"ガ………!?キサマ、何ヲした!?」

「量産品って言うのは粗悪な物を指す言葉じゃないよ。軽くて、長持ちで、何よりも扱いやすい………その分、"特殊な剣術"も容易だ。」

「特殊ナ剣術………?まさか貴様、武器折りノ剣術ヲ!!」

「御名答。そんなお前に次の質問だ。"武器破壊"の剣術を何十と馬鹿正直に受けた後に、こうやって重たい斧と打ち合ったら………どうなるかな?」

「まさか、この"クリームヒルト"ヲ壊そうト………!!」

 

リュークの意図に気づいたエドリューク。これ以上鍔迫り合いをするとマズい、と判断したリュークは後ろに退こうとした彼だが、3歩下がったところでその後退は阻まれた。

 

「何ッ!?氷ノ柱………いつノ間二!?」

「いつだろうね?"そんなもの"に委ねていなかったら気づけていたんじゃないかな?」

 

リュークの背後には、いつの間にか紋章士カムイがいた。2振りの"鉄の刀"で"武器破壊"の連撃を加えていた間に、紋章士カムイの"竜脈"で氷柱による壁を作りエドリュークの退路を断っていたのだった。

 

「キサマ………キサマァァァ!!」

「俺の手札は以上だ………後は、俺とその槍、どちらが先に砕けるかの根比べだ!!」

「させるモノかァ!!ソノ魔力(ちから)だけ置いテ、くたばレェェェ!!」

「守るべきもののために、砕いてみせる!!」

 

逃げ場を無くし、氷の壁に追い詰められリュークとの鍔迫り合いに応じるしか無くなったエドリュークはそれに応じ、"クリームヒルト"が砕ける前にリュークの魔力を吸い尽くそうとその力を最大解放した。

 

「「オオオオオオァァァッッッ!!」」

 

吼えながら渾身の力をぶつけ合う2人のリューク。だがヒビの広がる"クリームヒルト"の"悲鳴"はその咆哮すらもかき消す程に大きくなり、

 

バキッ

 

という音と共に耐久値の限界を迎えた魔槍"クリームヒルト"は砕けた。

 

「ァ………」

「………ッ!!」

 

そして槍が砕け散った事で行き場を失くした魔力が闇色の光を放ちながら爆発を起こし、2人のリュークを巻き込んだ。

 

「ぐは………っ!!」

 

爆風により吹き飛ばされたエドリューク。爆発に加えて"クリームヒルト"の破片が刺さり結構なダメージを受けた彼だが、起き上がらないのはそれ以外にも理由があった。

 

「ウソ、ダロ………"クリームヒルト"ガ………グラドロン家ノ、奥の手ガ………!!」

『リューク殿!!』

「!?」

 

紋章士ゼルギウスの声で我に帰ったエドリューク。だが、我に帰った頃にはエドリュークと同じくらい傷ついたリュークが、桃色の魔力を拳に籠めながら迫っていた。

 

「あの槍さえ無ければ、これが通る………!!」

「ゼルギウス!!」

「遅い!!"神竜の………」

「………間に、合わ………!!」

「双刃"!!」

 

エドリュークの防御が間に合う前に、リュークは両手に神竜の魔力を籠めた手刀を炸裂。

 

「"神霧の砕牙"、"神竜の鉤爪"、"神霧の崩拳"………そして、"神竜の撃鉄"!!」

 

神竜と神霧、2種類の魔力を纏った手足からラッシュを叩き込んでから、掌打と衝撃波を繰り出しエドリュークを突き飛ばしたリューク。するとリュークは右手に神竜と神霧、2つの魔力を集めた。それにより神竜の桃色の魔力に神霧の霧が合わさり、まるで桃色の炎のように揺らめいた。

 

「奥義………"双炎・神竜破"!!」

 

右の拳を突き出し、荒れ狂う炎のような魔力を放ったリューク。その魔力の奔流はエドリュークを呑み込み大爆発を起こした。

 

「いってぇ………クソッ、とんだ置き土産だ………!!」

 

"竜脈"で今度は回復効果のあるアロマを生成し、ボヤきつつも息を整えたリューク。

 

「………戦況も良くない空気が漂って来た。援軍に向かいたいところだけど………」

 

視線を正面に戻したリューク。そこにはボロボロになりながらも立ち上がるエドリュークがいた。

 

「あの爆発で、ピンピンしてるとは………化物か………!!」

「言っただろう、俺は竜族(ばけもの)だって。むしろ俺よりダメージを受けてて立ち上がる君の方が大したものだと思うけどね。」

「当たり前だ………我が支配すべきこの国(エドラス)、それを壊せるものを前にして、寝ていられるものか!!」

「!!」

「このままでは我が王となった時に魔力が失われ、国が滅びる………そうならぬ為に、邪魔なものは全てを使って、全てを排除して来た………どんな非道を、どんな"禁忌"を使ってもだ!!」

「……………」

 

リュークは一息ついてから言葉を返した。

 

「君の事を、ただの戦狂いだと勘違いをした事をここに謝ろう。王である事を"放棄した"俺とは違って、エドラスの俺は間違い無く王の器だよ………だが。」

 

とリュークは続けた。

 

「その王道の為に、覇道の為に、俺の仲間を譲れと言うのなら、断固として拒否する!!力ずくで奪うと言うのなら、俺は全霊を以て抗い、戦う!!」

 

そしてリュークは指輪を掲げた。

 

「カムイ!!」

『はい!!いつでも行けます!!』

「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」

 

紋章士カムイと"エンゲージ"したリューク。

 

『逃げも隠れも、譲りも、折れたりもしない!!ここで、決着をつける!!』

「っ………ゼルギウス!!」

 

紋章士カムイのエンゲージ武器"夜刀神"で斬り掛かったリュークに対して、エドリュークは紋章士ゼルギウスの"エタルド"を両手で持ち応戦。

 

「っ、ぐぐ………!!」

『どうした!?俺の見込み違いだったか!?』

『………!!』

 

エドラスに来たばかりの頃はエドリュークに対して後手に回っていたリューク。だがマグノリアの皆が助かった事、そしてやるべき事が明確になり迷いが晴れたリュークと、目の前の化物(リューク)の底知れ無さに無意識に気圧されていたエドリュークとでは形勢が逆転していた。

 

『はぁーーーっ!!』

「ぬぐ、ぅっ………!!」

 

さらに紋章士カムイのスキル"竜呪"でエドリュークの能力を削り、更に押し込むリューク。だがエドリュークもここでそのまま押し切られる訳にはいかない。

 

「(逃げも隠れも、譲れもしないのは、我とて同じ………潰される訳には、いかない!!)」

 

そしてエドリュークは吼えた。

 

「うおおおオオオッッッ!!」

『!!』

 

"エタルド"を右手のみで持ち変えたエドリュークだが、ここで力を振り絞り互角まで押し返した。するとエドリュークは空いた左手に紋章士リョウマの"雷神刀"を持ち、斬り掛かった。

 

『(紋章士の2体同時顕現………!!)』

「勝つのは、エドラス(われら)だァァァ!!」

『………ッッッおおおっ!!』

 

"雷神刀"で斬られそうになる直前。リュークは"夜刀神"を片手に持ち、もう片方をフリーにした。

 

『"竜穿"!!』

 

そしてフリーになった手を"竜穿"で異形の口のように変形させ"雷神刀"を受け止めたのだった。

 

『「っっっ………!!」』

 

"夜刀神"と"エタルド"、"竜穿"と"雷神刀"でがっぷり四つで組み合ったリュークとエドリューク。

 

「勝った、終わりだァッ!!」

 

互いの両手が塞がった。その内、エドリュークは持っている武器の元の所持者である紋章士ゼルギウスと紋章士リョウマが背後から斬り込むと共に彼は勝ちを確信した表情をした。だが、リュークの方も同じような表情をしていた。

 

『両手が塞がっても手段が残っているのは………』

「!?」

『俺もだよ!!』

 

そして大きく口を開けたリューク。

 

『"水神竜のブレス"!!』

 

真祖竜の血を濃く受け継ぐが故に、竜に変身する力のある紋章士カムイ。その力を"神竜のブレス"に乗せ、リュークは渾身のブレスを放った。"神竜のブレス"に紋章士カムイ由来の水の力が合わさり、激流の渦がエドリューク達に襲い掛かった。

 

『『……………!!』』

『(ゼルギウスとリョウマはじきに突破して来るよな………だけど、今は関係無い!!)』

「ぐっ………ぐぐぐ………!!」

『(あと………一押し!!)』

「ぐ………ぐうっ。」

 

ダメージが蓄積している所に激流の渦による文字通りの波状攻撃。踏ん張りがきかなくなって来たエドリュークは間もなく後退し始め、組み合っていた形が崩れた。

 

「ぐあ………っ!!」

『よし!!これで、終わらせる!!』

 

組み合いが崩れ押し流され始めたエドリューク。対してリュークは"水神竜のブレス"を出し続けながら、フリーになった"竜穿"の腕を前に掲げた。

 

『カムイの力に………俺の力を、合わせる!!』

「………!!」

 

"竜穿"の異形の口に水を集めたリューク。そこに彼は、更に"神竜のブレス"の力を合わせた。

 

『道を開けろ!!"双竜・神穿破"!!』

「ぐああああああッッッ………!!」

 

紋章士カムイのエンゲージ技"竜穿砲"に自身の"神竜破"を合わせて放った大技。それを正面から受けたエドリュークは木々を薙ぎ倒しながら大きく吹き飛ばされ、やがて止まった。

 

「……………」

 

吹き飛ばされたエドリュークは気を失った状態で倒れ、それに伴い紋章士ゼルギウスと紋章士リョウマの顕現も解除された。それを見届けたリュークは、深くため息をつきながら紋章士カムイとの"エンゲージ"を解除した。

 

「はぁー…っ。ようやく終わった。」

『お疲れ様です。だいぶ魔力を消費しましたが、大丈夫ですか?』

「まぁ何とか大丈夫です。ですが、お姉ちゃんの"霧のブレス"のように使いこなすのはまぁだ時間がかかりそうですね。………さて、本当は休みたいところだけど………っ!!」

 

リュークが一方を見ると、少し先に大爆発が起きた。

 

「戦況が一番マズいのはそっちか………それじゃあ、あともう一仕事と行こうか!!」

 

そう言い、彼はその方向へ走り出した。

 

==========

 

「"火竜の………」

「"鉄竜の………」

「"天竜の………」

「「「咆哮"!!」」」

 

大爆発の正体はナツ、ガジル、ウェンディ、3人の滅竜魔導士のブレス。相手はエドラス王の最終兵器、搭乗型の甲冑、その名もドロマ・アニム(竜騎士)。外部からの魔法を無効化させる強化装甲を持つ圧倒的な兵器だが、竜の形をしているからか滅竜魔法は通り、3人の力で追い込んでいた。だが滅竜魔法を目の当たりにした搭乗者のエドラス王はその力を我が物にせんと決意。ドロマ・アニムの最終形態"黒天"を起動し更に強化した力で戦況をひっくり返し3人を追い詰めた。その状況を打開する為の3人同時のブレスだったが、ドロマ・アニム黒天は跳躍しかわしていた。

 

「あんなに跳躍力があったのか!!」

「そんな、3人同時の咆哮が当たらない………」

「もう一度だ!!」

《させんよ。"竜騎拡散砲"!!》

 

空から降り注ぐ無数の魔力弾。視界を覆い尽くす程の猛攻をまともに受けた3人は、爆発が晴れると地面に倒れていた。

 

「うっ、ぐぅ………」

「がはっ………!!」

「マズい、もう魔力が………」

《尽きたようだな。いくら無限の魔導士いえども、一度尽きればしばらく回復はせんだろう。》

 

地上に降り立ったドロマ・アニム黒天は倒れる3人に歩を進めた。

 

《大人しく我が世界の魔力となれ………態度次第ではそれなりの待遇を考えてやっても良いぞ?》

 

3人の滅竜魔導士を手に入れようとさらに近づくドロマ・アニム黒天。対して魔力の尽きた3人は動けないでいた。

 

「(もう、ダメだ………立ち上がれない………)」

「(ここまで、か………)」

 

だがその時、ナツが立ち上がった。

 

「諦めんな。まだ終わってねぇ………かかってこいやコノヤロウ………!!」

 

フラフラしながらも立ち上がったナツは吼えた。

 

「俺は、ここに立っているぞ!!」

《ええい!!どこまで強情な小僧じゃ!!》

 

立ち上がったナツを踏み潰そうとドロマ・アニム黒天を動かしたエドラス王。ナツはふらつきながらそれを受け止めようとしたが、そこに割り込む影があり、ナツの代わりにドロマ・アニム黒天の足を受け止めた。

 

「ん………?」

《むぅ!?》

「………火竜がボロボロになりながら吼えて立ち上がったんだ。なら神竜の俺が、疲れたなんて言ってる訳には、いかないな!!」

《ぬおおっ!?》

 

力づくで打ち上げ、ドロマ・アニム黒天をひっくり返したリュークは、深く息を吐いた。

 

「さてと………竜退治、この神竜()も参加させて貰うよ。」

「リュークさん………」

「………ケッ、てめぇも援軍にしてはボロボロじゃねぇか。」

「一戦、デカいの終わらせたばかりだからね。立てるかい?」

「それが………」

「魔力が残ってねぇんだよ。」

「……………。」

 

リュークが考える素振りを見せた横で、ナツが気炎を上げた。

 

「そんなもん、捻り出す!!明日の分まで捻り出すんだ!!」

「「……………!!」」

 

ナツの言葉に、ガジルとウェンディもよろよろと立ち上がった。

 

《ふん、身分をわきまえよゴミ共が。3体の滅竜魔導士に、1頭の竜よ………我が世界にその魔力を捧げよ!!》

「わきまえるのはどちらの方かな。偽物の竜ごときが本物の竜をゴミ呼ばわりとは、不敬もここまで来れば清々しい。」

《不敬!?笑わせる、このワシを誰と思っている!?ワシはエドラス王………この世界を統べる者ぞ!!》

「………これ以上話したところで無駄だな。あとは、その身で学べ、って奴だ。」

 

ため息を軽くつき、リュークは指輪を掲げた。

 

夢観よ(ゆめみよ)、竜姫の紋章士(エムブレム)!!」

 

呪文の詠唱に応じて現れたのは紋章士チキ。

 

『チキの出番だね。』

「うん。よろしく、お姉ちゃん。」

『あれは………竜、なの?』

「どうだか。俺からすれば、いつぞやのイカれた科学者の造った奴と変わらないね。」

 

"竜石"を取り出しながら周囲をぐるりと見回したリューク。するとナツだけでなくガジルとウェンディもよろよろではあるが立ち上がった。

 

「隙は俺とお姉ちゃんで作る。そこを3人で突いて。」

「わかり、ました。」

「………ケッ、やってやるよ。」

「まかせろ。」

「決まりだね。………お姉ちゃん。」

『いつでも大丈夫だよ。頑張ろうね、リューク。』

「ありがとう。」

 

リュークは指輪と"竜石"を同時に掲げた。

 

「竜の底力、思い知るといい………」

「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」

 

 

続く




・クリームヒルト(槍、射程1-3)
周囲5マスのユニット全員の魔力を半減し、さらに魔法攻撃の威力も半減。さらに、減少させた魔力の合計値を自分の威力に加算する。
エドリュークの実家に伝わる魔槍。周囲の魔力を吸収し強化される槍で、敵が多かったり魔力が多い程強くなる。しかし問答無用で敵味方の魔力を吸収し、更に使用者の精神までも蝕む凶悪さから代々封印されていた。だがエドリュークがリュークに敗北した際に、"更なる力"を求めた事で封印が解除される。

紋章士アルフォンスも言及してますが、元ネタは闇堕ちベルクトの槍、"クリムヒルド"の表記揺れです。魔法に滅法強くなるのも、周り巻き込むのも、元ネタからそのまま持ってきました。更に言えば、エドリュークのキャラ造形そのものもベルクトからアイデアを頂いた部分が多いです。ベルクトの「どこかボタンかけ違えたら主人公だった」感じを入れてくとしっくり来たのでこうなりました。

・「量産品って言うのは粗悪な物を指す言葉じゃないよ」
"FEの武器は武器レベルの高い方程、威力が高い程良い"………とは限らないんですよね。作品にもよりますが、
・重さと体格の関係で、鋼は追撃出ないけど鉄なら追撃出て、結果合計ダメージは鉄の方が上
・強力な武器はデメリット(能力低下など)がある
・錬成や修理の費用を考えたら鉄武器が最強

みたいな事も出るんですよね。更には、

・経験値配分による削りや、支援レベル上げの観点から訓練用の武器や壊れた武器が最適

などとありまして………奥が深い。私ですか?クルミサイズしかない脳みそをクリティカルの爽快感でこんがり焼いてしまってるので何も考えずにキラー系武器統一してる時が多いですね………

ポケモンでも"オーバーヒート"にするのか"だいもんじ"にするのか"かえんほうしゃ"にするのか、という似た問題がありますが………基本的にはルール無用の戦争で、「1人で10体………とは言わなくても5体ぐらい倒せばいけるか?」と所謂マルス理論が必要な世界観なのでデメリットの重みが大きいのでより深刻な問題になるのですよね。敵も味方も誉れなんて浜に捨てて来てるので1対1に持ち込む方が難しいですし、モンスターボールで撤退して一部のデバフ解除もできないですし。

・"水神竜のブレス"
紋章士カムイは竜族ロードなのでリュークは"竜穿"由来の水のブレスを"頑張れば"出せますし、"エンゲージ"すれば自分のブレスと混ぜたブレスを放てます。
しかし紋章士チキと比べると身体の構造がだいぶ異なるので"霧のブレス"程の親和性は無く、消費魔力も多め。


さて、エドラス編はあと3話か4話くらいの見込みです。その後はエドラスで出た情報まとめてから、オリジナルの章に入りたいなと思っております。
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