FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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エドラス編もいよいよ佳境ですね、それに向けて色々調整していたら少し間が空いてしまいましたが、こっからスパートかけていきます!!


53章 崩壊

「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」

 

エドラス王の搭乗する竜の形をした最終兵器、ドロマ・アニム黒天を前に紋章士チキと"エンゲージ"したリューク。

 

『……………』

 

紋章士チキと"エンゲージ"を行うと、竜化した時のチキと同じ姿になる。しかしリュークの場合は少し違っていた。一見した姿は青白いオーラを纏う以外は竜化したリュークと変わらなかった。だが、彼の額にはチキと同じような冠を身に着けていた。

 

『ふぅ………』

「ん?何か少し違うか?」

「頭に冠みたいなのが付いてるな。」

「どこか、竜の王様みたいですね。」

『竜の王様、ねぇ………』

「………?」

『………いや、何でもない。それよりも、ウェンディに使った方がいいかな?』

「?」

 

ウェンディの方を向いたリュークはその場で飛び上がった。

 

『皆と一緒に………"神竜の加護"、せやぁっ!!』

 

そして翼を広げると光が放たれ、ウェンディを包んだ。するとウェンディの傷がいくらか癒え、さらにいつの間にかウェンディの懐に小さな石があった。

 

「傷が………それに、この石は………?」

『"復活の石"。瀕死の時に砕けて、傷や魔力を癒やすんだ。』

「そんな事が………」

『ただ、数は作れない。なら、回復魔法の使えるウェンディが最適だと思った。後は………』

 

再びドロマ・アニム黒天に視線を戻しつつ、リュークは自分やナツ達の足元に霧を吹きかけた。

 

「おわっ!?」

「危な………く、ねぇ?」

「これ、は………?」

『"神霧の原野"………安心して、ただの"仕込み"だよ。さぁ、後は"偽物の竜"退治だ。』

《退治?このエドラス王を、ドロマ・アニム黒天を、この世界で最強のものを退治とは、不遜極まる!!》

『上位種気取りするつもりは無いけど………竜ひっ捕まえて不敬不遜と騒ぐ人間は、お前が初めてだ!!』

 

翼を今一度広げ、飛び上がったリューク。対してドロマ・アニム黒天は無数の魔法弾を発射。

 

《その魔力を捧げよ!!》

『"神竜の鋒矢"!!』

 

空に上がったリュークは神竜の力を纏いながら翼を畳み急降下、魔法弾を弾きながら突進した。

 

『はあっ!!』

《ぐぬぅ!!》

『"神霧の崩拳"、そして"神霧の螺旋"!!』

 

捨て身の突進でドロマ・アニム黒天の姿勢を崩したリュークは間髪入れずに追撃に移った。"霧のブレス"を伝授した張本人である紋章士チキと"エンゲージ"した事でより濃い霧を前脚(こぶし)に纏った彼は防御を貫く竜特攻の正拳突きをぶつけ、続けてその場でターンしながら同じように霧を纏った尻尾を振り払いドロマ・アニム黒天を吹き飛ばした。

 

『まだまだ!!』

《小癪な!!》

『"神霧の竜鱗"!!』

 

すぐに起き上がったドロマ・アニム黒天は魔法弾を照射したが、リュークは霧でできた竜の鱗で防御。

 

『この程度、何発撃とうが通らないよ!!』

《ほう?ならば、"竜騎拡散砲"!!》

『!!』

《通らないと言うのなら、防いでみろ!!》

 

広範囲の爆撃を繰り出したドロマ・アニム黒天。大多数の魔法弾はリュークを通り過ぎ、その後ろにいるナツ達に飛んで行き爆発を起こした。

 

《フハハハ!!背後の仲間を守らなくて良かったのか!?》

『………同じ轍は踏まないよ。』

《ん?》

『このくらい、対応済みだと言ったんだよ。』

 

爆煙が晴れると、爆撃を受けたはずのナツ達を守るように霧の竜鱗が展開されていた。盾のように現れたその竜鱗によって、ナツ達はほぼ無傷でしのぎきったのだった。

 

《何………!?》

『俺の背後の皆を先に倒して戦意を挫きに来るのは分かっていた。』

 

"神霧の原野"で霧を展開していたのは、ドロマ・アニム黒天が手負いのナツ達を狙う事を想定し、攻撃が飛んで来た際にナツ達にも"神霧の竜鱗"による防御ができるようにする為の"仕込み"であった。

 

《バカな、"竜騎拡散砲"を単独で防いだだと………!?》

『………恐ろしいか?』

《何………?》

『これが、竜の力だ。欲かいて手出していい力じゃなかったって事を、思い知れ!!』

《!!》

『俺とお姉ちゃんのブレスを合わせる………"神竜王の咆哮"!!』

 

リュークと紋章士チキの力を合わせた、霧のレーザーはドロマ・アニム黒天の片腕を消し飛ばした。だがドロマ・アニムの、エドラス王の執念はそれでは止まらない。

 

《ドロマ・アニムは常に世界中の魔力を吸収し続ける究極の魔導兵器!!故に禁式、そして起動したからには勝つ義務がある!!世界の為に!!》

 

そう言い放ち、ドロマ・アニム黒天は背中から砲弾を撃ち出した。

 

『砲弾ごとき………!!』

「!!リューク、ちょっと待て!!」

「その弾、何かがおかしいぞ!!」

『何………?』

 

撃ち出された砲弾に何らかの違和感を感じたナツとガジル。だが、それに応じた行動をリュークが取る前に砲弾はリュークの目の前で炸裂し、紫色の煙を彼の周囲に充満させた。

 

『!!』

「この臭い………マズい、毒だ!!」

『ぐ………っ、ゲホッ!!』

《大型の魔獣すら一撃で仕留める毒だ。》

『………!!』

 

放たれたのは毒ガス弾。それを吸い込んでしまったリュークはその場に膝をついた。

 

《いくら竜でもこれは辛かろう?我が手に屈するなら解毒剤をくれてやってもよいが?》

『ぐっ………へっ、流石にここまでなりふり構わないなんてね。』

《何がおかしい?》

『生憎と、解毒剤は"間に合って"いる!!』

 

すると、パキンという何かを砕いた音の後にリュークの背後から突風が吹き荒び、毒ガスは霧散した。

 

「ありがとうございます、リュークさん。砕いたら、本当に体力も魔力も回復しました。」

 

突風を生み出した者、ウェンディは更に魔法を唱えた。

 

「状態異常回復"レーゼ"、そして状態異常耐性"リレーゼ"。これで毒ガスが来ても大丈夫です。」

『ありがとう、ウェンディ。さて………それが奥の手かい?』

《おのれ………!!》

『"神竜王の………咆哮"!!』

《何度も同じ手に………何っ!?》

 

リュークのブレスを跳んで避けようとしたドロマ・アニム黒天。だが急に片足が動かなくなりバランスを崩し、その結果もう片方の腕を消し飛ばした。

 

「(力を合わせる必要はねぇ………力は、願いは………繋げればいい!!)」

《足を………!!》

「ロックした!!これで空中には逃げられねぇ!!」

《おのれ………!!》

 

自らの腕を杭としてドロマ・アニム黒天の足を貫いて地面に打ち付け、打ち付けた先を錨のように変形させて固定したガジル。

 

火竜(サラマンダー)!!それにリューク!!お前らで決めろ!!」

「よし来た!!リューク、俺を上に投げろ!!」

『………なるほど、了解した!!』

 

リュークはナツを投げ上げてから、そのナツを越えるように飛び上がった。

 

「ウェンディ!!」

「はい!!」

「俺に向かって咆哮だ!!」

「え?………はい、分かりました!!」

 

リュークとナツが決め技の準備にかかっている間。ガジルが踏ん張ってドロマ・アニム黒天を固定。

 

《小癪な………離れんか!!》

「離すかよクズ野郎!!」

 

その隙に、ウェンディは自由落下するナツに向かって咆哮を放った。

 

「"天竜の………咆哮"!!」

 

ウェンディの口から放たれた竜巻のような突風のブレス。ナツはそれをまともに受けると、炎を纏いながら"天竜の咆哮"に備わる回転に乗っかり、炎の勢いを強めてドロマ・アニム黒天へと突撃。

 

『これが、神竜の力だ………!!奥義!!』

 

そしてリュークも同時にドロマ・アニム黒天目掛けて、神竜の力と神霧の力、そして紋章士チキの力を纏い急降下した。

 

「うわあああっ!!」

「うおおおおっ!!」

「"火竜の劍角"!!」

『"神王・竜星剣"!!』

 

ナツとリュークの攻撃が炸裂する、その瞬間。

 

「(4頭の、竜………これは、幻想(ファンタジー)か………?)」

 

ドロマ・アニム黒天に乗るエドラス王は4頭の竜を幻視していた。

 

鉄竜が竜騎士の動きを止め、

天竜が火竜を援護し、

火竜が竜騎士の心臓を貫き、

神竜が竜騎士の首を刈り取る。

 

そして次の瞬間、エドラス王はドロマ・アニム黒天を貫いたナツによって引きずり降ろされ、地面に投げ出されたのだった。

 

「ふぎぃっ!!」

 

地面を転がったエドラス王はすぐに身体を起こしたが、目の前を見て震え始めた。

 

「ひぃ………っ!!」

 

エドラス王の目の前に立ったのはナツ、ガジル、ウェンディ、そして"エンゲージ"状態が解除され人型に戻ったリュークと紋章士チキ。だがエドラス王には異なる見え方をしていた。

 

「(ワシは、こんな力を、欲していたのか………)」

 

獲物を前に舌なめずりしながら吼える火竜、鉄竜、天竜。

その背後から見下ろすように睥睨する2頭の神竜。

 

「た、助けてくれ………」

 

5頭の竜の威圧感に負け、エドラス王は震え泣きながら意識を手放した。

 

「………ふぅ。」

「かーーーっはっはっは!!王様やっつけたぞーーー!!こーゆーの何てゆーんだっけ?チェックメイトか?」

「一手遅いよ、言うのが。」

「それは王様をやっつける前の宣言ですよ。」

「ギヒッ、バカが。」

『すっごい久しぶりの"エンゲージ"だったけど、上手くいって良かったね!!』

「ありがとう、お姉ちゃん。これで戦いも………」

 

と一息ついたのも束の間。地面が大きく揺れた。

 

「ん?地震か?」

「ま、まさか敵の増援!?流石に魔力が空っぽだぜ………?」

「ち、違います………アレ、見てください。」

 

空を見上げると、エドラス上空に浮かぶ浮遊島が次々と落下し始めていた。

 

「浮いてる島が、落ちて来た………」

「一体、何が………」

『………魔力が無くなってるんだ。』

「お姉ちゃん?」

『浮いてる島だけじゃない。この大地から………ううん。多分、この世界から、魔力が消えているんだ。』

「この世界………エドラスから、魔力が。一体何が………」

 

その時だった。

 

「ホーッ!!」

「フェルト!?いつの間にかいなくなっていたが、一体どこに………」

「ホホッ、ホーッ!!」

「………何だって?」

「おいリューク、フェルトは何て………」

「それはぼきゅから説明するよ。」

 

フェルトと共に飛んで来たのは、腕を振り上げている細長いエクシードだった。

 

==========

 

「………ぐ。」

 

リュークに敗北し、気絶していたエドリューク。意識を取り戻した彼は飛び起きたが、そこは先程リュークと戦った場所では無かった。

 

「ここ、は………王城か。だが一体誰が。」

「起きたか。」

「貴様………貴様は!!」

 

エドリュークは声をかけた人物の正体を見ると飛び起きて、その人物に駆け寄った。

 

「ジェラール!!」

「お待ちを!!」

「ッ………離せ!!コイツは………この男は!!」

 

ジェラール、即ちミストガンに飛びかかろうとしたエドリュークだが、その側にいたパンサーリリーによって抑えつけられた。

 

「王位を捨て、国を捨て、世界を捨てた男が………何をしに、どの面下げて帰って来た!?」

「………リューク。君に、エドラス王族の血を引く君に頼みがあってここに連れて来た。」

「貴様に頼まれる事など!!………ん?この部屋は………叔父上が"アニマ"を使った………」

「そうだ。エドラス王………父上はこの部屋で"アニマ"を使いアースランドの都市を巨大魔水晶(ラクリマ)に変えて持って来た。」

「………待て。貴様、その機械を使って、一体何をした!?」

 

エドリュークの問いに、ミストガンはあっさり答えた。

 

「魔力があるから人は争う。だから、この世界から魔力を消滅させる。"アニマ"を逆展開させた事でエドラスの魔力はアースランドへと流れる。魔力の豊かなアースランドではこの魔力も問題無く、すぐに自然に溶ける。」

「な………!!」

「新たな世界の為、エドラスは一度滅ぶのだ。」

「………!!」

 

ミストガンの行為………"アニマ"を逆展開させエドラスの魔力を消すという行為を聞いたエドリュークはパンサーリリーによる拘束を振り解くとミストガンに飛び掛かった。

 

「貴様ァァァ!!」

「!!」

 

そのまま殴りかかったエドリューク。ミストガンは抵抗せず殴られ倒れるとエドリュークはその上に馬乗りになり何度も殴った。

 

「貴様!!何をしたのか、分かっているのか!?いや………分からないだろうな!!」

「………。」

「魔力はこの国の要!!魔力が無ければ生きていけぬ!!魔力の消失はエドラスの消失だ!!」

「……………。」

「その消失を阻止する為に、我らは戦い続けた!!守るべき民を苦しめてまでも、その未来を手に入れる為に戦い続けた!!だと言うのに貴様は………!!己の父を、臣下を、民を、世界を裏切るには飽き足らずその全てを壊したのだぞ!?」

「やめんか!!」

「離せ!!貴様も貴様だパンサーリリー、なぜこの悪魔の肩を持つ!!」

「……………!!」

「ハァ、ハァ………何か言ったらどうだ!?さっきから黙りで何のつもりだ!?どう責任取るつもりか、答えろ!!」

 

息を荒くしながら興奮気味にまくし立てるエドリューク。対してミストガンはしばらく黙っていたがやがて立ち上がると口を開いた。

 

「責任は取る。」

「何………!?」

「戦争は無くなるだろう。だが、国民は混乱し別の争いが起きるだろう。だからこそ新しい支配者を………新しい世界の、新しい王が必要となる。」

「………何を言っている、意味が分からぬ。」

「その為には"悪役"と"英雄"が必要だ。」

「"悪役"と"英雄"………」

「この世界を混乱に陥れた悪を晒し、処刑する者こそ英雄となり、その英雄は民を纏め王となる。」

「………そ、その悪役と英雄とは誰です?」

 

意図を測りかねているエドリュークとパンサーリリーに、ミストガンは結論を告げた。

 

「エドラス王に反旗を翻し、世界の魔力を奪った私こそ"悪"。一方、私のいない間未来の王として生きたリューク、そして種族間の誤解と偏見を調和できるリリー、君達2人こそ"英雄"に相応しい。」

「「……………!!」」

「世界を滅ぼした私を、君達が処刑するんだ。そして、この世界の王として導いてくれ。」

 

ミストガンの告げた言葉に、呆然としたパンサーリリーはエドリュークへの拘束を解いた。するとエドリュークは再びミストガンに殴りかかった。

 

「ふざけるなァァァ!!」

「!!」

 

先程よりも強く殴り飛ばしたエドリューク。ミストガンはそのまま壁に激突したが、体勢を立て直す前にエドリュークは掴みかかった。

 

「そのようなふざけた譲位で、この我が喜ぶとでも思ったか、この腐れ外道が!!全てを裏切り、全てを壊して己も死ぬ!?厄介事全て我らに押し付けておいて、己はやりきったなどと宣い、散らかしたまま去るというのか!?そんなもの………誰が呑み込める、誰が認めるものか!!貴様の事は嫌いだ、邪魔だと、消えろと思っている………だが、それとこれは、話が違う!!」

 

興奮したまま怒鳴り散らすエドリューク。しかし今回、パンサーリリーは彼を止めなかった。

 

「………これまでは中々意見が合いませんでしたが、今はリューク様と同じ意見です、王子………滅亡させたのがあなたなら、あなたが責任を取りなさい!!それは死では無く、この混乱した世界を導く事だ!!」

「死にたいと言うのなら、全てが終わってから我がその首刎ね落としてくれる!!それまでは………この世界を平らかにするまで、貴様が死ぬ事は、この我が許さん!!」

 

だが、ミストガンの意志も固かった。

 

「………それではこの混乱は鎮まらん。」

「それでも何とかしろ!!それが次の王の、この王城に戻った貴様の使命だ!!」

 

ミストガン、エドリューク、パンサーリリーが言い合っている間にも、ミストガンの逆展開した"アニマ"によって魔力はエドラスから消え続けており王城内からでも市民や兵士の混乱による悲鳴が聞こえるようになっていた。

 

「「「………」」」

 

一瞬の沈黙が場を支配した。だが次の瞬間、1人の兵士が駆け込んで来た。

 

「リューク様!!パンサーリリー様!!大変です!!」

「………分かっている。"アニマ"の件なら見ての通り我々が………」

「止めようとなさっているのですね。」

「いや、そうではなくてだな………」

「それよりも………り、竜が!!」

「竜?」

「先刻王城内に現れた竜が街を次々と破壊しているのです!!」

「「「!!」」」

 

急いで王城のバルコニーへと走った3人と兵士。そこで見えた光景は次々と崩れる建物に、その瓦礫から逃げ惑う市民の姿、そしてその元凶を生む、1頭の白き竜。

 

『グオオオッッッ!!』

「うわあああっ!!」

「誰か、助けてくれーっ!!」

「………あれは。」

「アースランドの、我………!!」

「リューク………!!」

 

その竜は一軒の屋根の上に降り立った。するとそこには竜以外にも数人いた。

 

「ガハハハッ!!」

「!!」

「我が名は大魔王ドラグニル!!この世界の魔力は俺様が頂いたァァァ!!」

 

その1人は、マントとコスプレ用の悪魔の角を付けたナツだった。そのナツは大魔王ドラグニルを名乗り、あるものを見せた。それは折れた木に縛り付けたエドラス王だった。

 

「貴様らの王は俺様が仕留めた!!まぁ命だけは助けてやったがな。」

「陛下ー!!」

「なんてことを………!!」

「さぁ………レッドフォックス、マーベル、我が下僕よ、街を破壊せよ!!」

 

するとナツの横にいた者………ナツと同じようにマントを付けたガジルとウェンディが飛び降りた。

 

「ギヒヒッ。」

「何だあいつは!?」

「腕が剣になっている!!」

 

ガジルは飛び降りてすぐに腕を剣にして街を破壊。

 

「がおーっ!!」

「………?」

「(ギロッ)」

「ピャーーー!!」

「(ごめんなさい………)」

 

近くにいた男の子を脅かそうとしたウェンディ。しかし効果はイマイチだったものの後ろからガジルが睨みつけて結果的に驚かすのは成功し、彼女は心の中で男の子に謝罪したのだった。

 

「まだまだだ………破壊の竜ソラネルよ!!誰を敵に回したのか、見せつけるといい!!」

『(色々と雑だなぁ………だが。)』

 

ナツの言葉に応じてブレスを繰り出して街を破壊しながら耳を澄ませたリューク。

 

「あいつらが………!!」

「あいつらがエドラスの魔力を奪ったんだ!!」

「大魔王ドラグニル………許せねぇ!!」

『(よし、フェルトとあの面長エクシード………ナディの言葉通りだ。後は………)』

「魔力を返せー!!」

 

市民の怒りの的が自分達に向いた事を確認したナツ。すると悪どい笑みを浮かべた。

 

「やだね。」

 

そして口に炎をためた。

 

「俺様に逆らう奴は………!!」

「ひいっ!?」

「口から火が………!!」

「バ、化物………!!」

 

そしてナツが炎を吐こうとした瞬間だった。

 

「よせーーー!!ナツーーー!!」

 

どこからともなく聞こえた声にざわつく民衆。だがナツやその上で羽ばたくリュークはニヤリと笑った。

 

『(来た………!!)』

「ナツ?誰の事を呼んでいる?俺様は大魔王ドラグニルだ。さて………お前に俺様が止められるかな………"エドラスの王子"さんよぉ………?」

 

"エドラスの王子"、それを聞いた民衆はさらにざわついた。

 

「エドラスの王子………?」

「王子って、リューク様では無いのか!?」

「まさか、7年前に行方不明になった………」

「ジェラール王子………!?」

「まさか、本物………?」

「ど、どうだろう………?」

 

混乱は王城の方にも広がっていた。

 

「あいつら、なぜあんな事を………」

 

パンサーリリーの質問に答えたのは、面長のエクシード、ナディだった。

 

「ぼ、ぼきゅが知らせたんだ。」

「ナディ様。」

「君達の会話を聞いたから、彼らに伝えたんだ。」

「………まさか、悪役と英雄………!!」

 

パンサーリリーはナツの方を向いた。そのナツはミストガンを見て挑発するように声をかけた。

 

「来いよ、"王子様"。来ねぇと、この街は跡形も無く消すぞ?」

「………チ!!ナツ、そこを動くな………!!」

「ナツでは無い。大魔王ドラグニルだ。」

 

悪役と英雄。ミストガンの魂胆をナディを通して知ったナツ達は自ら悪役となる芝居に出た。顔をまともに合わせた事が無かったとしても、同じ妖精の尻尾の仲間を助ける為に。

 

こうして、魔力を巡る最後の戦いが始まった。

 

 

続く




・紋章士チキと"エンゲージ"したリューク
原作だと主人公やヴェイル、イルにラファールと言った竜族でも紋章士チキと"エンゲージ"したら問答無用でチキの色違いになりますが、本作のリュークの場合はリューク(外見として一番近いのはルミエル)ベースにチキの王冠を付けた感じのイメージです。

・復活の石
エンゲージのボスが悉く持っている残機のヤーツ。本作では瀕死で砕けるだけでなく、任意で砕いても体力を全快させる。ただしどんだけ頑張っても1日1個ペースが限界。

・神竜王の
リュークの二種類のブレスの力に、紋章士チキの力をさらに合わせた形態。威力は大幅に上がるが、紋章士チキが魔力の一部を肩代わりするので消費魔力は意外と双神の時と然程変わらない。
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