誰にとっての"最初"であるのかね。
魔力を巡る戦争を止める為に"アニマ"を逆展開させたジェラール王子ことミストガン。その後、自らを悪としてエドリュークとパンサーリリーに裁かせる事で混乱を収めようとした。そこに、その話を聞いたナツ達が一芝居打ち、悪の魔王一味として暴れ始めた。
「そこで待っていろ、ナツ………眠れ!!」
ミストガンは杖を使いナツ達を眠らせようとした。しかし、杖から放たれるはずの魔法は不発に終わった。
「(魔力が、"アニマ"に………!!)」
「魔力が無ぇと怖えか!?」
「くっ………」
「そうだよな!!魔力は、力だ!!」
すると大魔王ドラグニルを名乗るナツは拳に炎を纏わせ周囲の建物を破壊した。
「やめろォォォ!!」
「ナツさん、いくらなんでもやり過ぎですよ!!」
「………いや、いいんだよ。」
破壊の限りを尽くすナツを止めようとしたウェンディ。だがガジルはこれでいいと答えた。
「これで、魔力を持つ"悪"に、魔力を持たない"英雄"が立ち向かう展開に持ち込んだ。あとは
『(………ガジルの言う通りだ。後は、個人的な問題だけど………)』
3人の滅竜魔導士と共に、竜化して暴れていたリューク。そんな彼は次の行動を決めかねていた。
『(これ以上暴れるのはマズいけど………ボサッと突っ立ってるのも変だ。どう立ち回ればいいものか………)』
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「……………。」
『………行かないのか?』
「………。」
『………我々には時間が無い。』
「分かっている………!!」
その頃、王城に留まっていたエドリューク。だが、彼は王城のバルコニーから動く素振りが無かった。紋章士ゼルギウスが行かないのか?と説得するも彼は動かなかった。正確には、動けなかった。
「分かっているが、動かんのだ………!!」
『……………』
「我が全
『……………そうか。』
"アニマ"によってエドラスの魔力は吸われ続け、紋章士ゼルギウスも必死に抵抗しているもののゆっくりと姿が薄くなり始めていた。
『リューク殿。貴殿が、異界の貴殿に負けた理由は何だと思う?』
「魔力だ。アースランドの我が竜だった事を差し引いても、魔力の差で負けた。」
『………私は、そうは思わない。』
「何?」
『次の質問だ。貴殿の武器は何だ。』
「剣と槍、それに雷魔法だ。」
『その内、剣と槍を振るうのに魔力は必要だったか?』
「!!」
紋章士ゼルギウスは続けた。
『剣や槍を振るうのに必要な要素。その内、鍛え上げた"体"と、磨き上げた"技"は魔力が無くても間違い無く、エドラスで一番だ。そのように我々も"師"として鍛え、貴殿はそれに応えた。………貴殿に足りなかったものは残り1つの要素………"心"だ。』
「"心"………」
紋章士ゼルギウスは胸に拳を当てた。
『貴殿はこれまで"敗北"を知らなかった………故に、敗北から立ち上がる為の心の強さ………"勇気"や"逆境に諦めない心"と言ったものを持ち合わせていなかった。持ち合わせる機会が無かった、と言うべきか。』
「………」
『"体"と"技"は貴殿の方が優っていただろうな。だが、"心"は………見知らぬ世界で、味方も少ない中、逆境を跳ね返す"心"は明らかに向こうが上だった。そして、その差が貴殿の敗因だ。』
「………だったら何だ。魔力が無くても、諦めない心とやらがあればこの絶望的な状況をひっくり返せるとでも言うのか!?そんな理想論で勝てるなら誰も苦労なんかするものか!!」
『確かに、諦めずに挑んだとて勝てるとは限らない。』
「ならば今更………!!」
『だが、立ち上がらなければ必ず負ける。一生敗者として留まる事になり、"王になる"という野望など、夢のまた夢だ。』
「……………。」
『さて、どうする?何も成せず死ぬのを覚悟して挑むか、あるいは諦め、敗者として生き永らえるか。』
しばらくの沈黙の後、エドリュークは震える足を前に出した。
「やってやる………そこまで言うなら、やってやる!!」
『よく言った。ならば………』
すると、エドリュークの目の前に一振りの剣が落ち、床に刺さった。
『この剣を使われよ。』
「"エタルド"………だが。」
『案ずるな。それに魔力は籠もっていない。』
続けて、槍、剣、斧、刀が"エタルド"の側に突き刺さった。それと共に、エドリュークの持つ紋章士が次々と現れた。
『私からも、"グラディウス"の槍を贈ろう。これなら、我々が消えた後もこの武器は残るだろう。』
『私からは"ダイムサンダ"を贈りたかったですが無用の長物は贈りたくないので、この"マスターソード"を。』
『剣ばかりも面白くないからな、俺達からはライナスの"バシリコス"だ。』
『お前、斧の扱いはまだまだだったからこれからも鍛えろよ?』
『俺からは"雷神刀"を渡そう。魔力で雷は出せないが、それでもお前の役に立つだろう。』
「カミュ、ラインハルト、ロイド、ライナス、リョウマ………っ、だが。」
『………まだ不安か。なら、奥の手か………』
「奥の、手………?」
==========
『(………そろそろ眺めているだけなのも限界か。)』
しばらく静観を続けたリュークだが、これ以上の静観は民衆に怪しまれ、ナツの芝居にも影響が出ると考えたリューク。
『(仕方無い。気乗りしない、とは言えないからね………!!)』
再び翼を広げ、飛び上がったリューク。
「まずい!!竜が動き出したぞ!!」
「王子が大魔王で手一杯なのに、誰が止めるんだよ!?」
「もうダメだ………逃げろぉ!!」
「うわぁぁぁぁっ!!」
混乱が広がる民衆を尻目に、口に魔力を溜め"神竜のブレス"の構えを取ったリューク。その時だった。
『!!』
突然、斬撃が飛んで来てリュークの"神竜のブレス"は阻止された。斬撃の飛んで来た方向をリュークが見ると、そこには大剣を持ち、剣と刀を腰に提げ、槍と斧を背負った、黒い鎧に身を包んだ赤と緑の髪の大男。
「破壊の竜よ!!こっちを見ろ!!」
『………!!』
「我が名はリューク・グラドロン!!エドラス王弟グラドロン侯爵が嫡子にして、エドラス最強の戦士なり!!」
その大男、エドリュークは名乗りをあげながら言葉を続けた。
「破壊の竜よ!!この我との一騎打ちを所望する!!」
『……………。』
「貴様が言の葉を解する知性があるのなら、この一騎打ちを受けてもらう!!」
戦闘を続けているナツとミストガン以外は沈黙してしばらく行く末を見守った。すると、リュークはニヤリと笑ってからエドリュークに向かって飛んだ。そして、エドリュークに飛び掛かると前脚で掴み、王都から飛び出た。
「うおっ………!?」
『………その一騎打ち、引き受けた。』
「!!」
『場所を移動しよう………誰にも邪魔されぬようにな。』
そのまま王都の外の森の中に降り立ったリュークはエドリュークを離すと竜化を解いた。
「ちょうど良かった。あれ以上竜の姿で暴れるのは不本意だったからね。」
「………癇に障るな、その言い分………!!」
「すまない。………さて、改めて君の………いや、他でもない
「感謝する。………我が我たらしめた
そう宣言すると、エドリュークは指輪を掲げた。
「見るがいい………これが我が最初で、最後の、"エンゲージ"なり!!」
『!?』
「"漆黒の騎士"、紋章士ゼルギウス!!我と"エンゲージ"せよ!!」
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「奥の手、とは………?」
『我ら紋章士の力を1つに集める。さすれば一度だけ、異界の貴殿のように"エンゲージ"が可能になるだろう。』
「アースランドの我のように、だと………?」
『1つに集める事は、選んだ紋章士以外は消えるという意味になる。そして選んだ1人も、"エンゲージ"の終わりと共に消える………別れが少し早くなるが、何もせず別れるよりはそちらの方が良いだろう。』
「……………」
『これを以て、異界の貴殿に一騎打ちを挑むのだ。それこそが貴殿がこの先より強く生きる為の決別の儀となる。』
「……………分かった。」
『では、最初で最後の"エンゲージ"を実行する紋章士を、選ぶといい。』
エドリュークの答えはほぼ即答だった。
「他の者には悪いが、1人選べと問われれば我が選ぶ紋章士と問われれば1人しかおらん………我が最初の紋章士、そして我が師………紋章士ゼルギウス。」
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紋章士の残る魔力を紋章士ゼルギウスに集合させたエドリューク。これにより、他の紋章士と一足早く別れを済ませた代わりに一度だけ、エドリュークは紋章士ゼルギウスと"エンゲージ"を実行する権利を得た。
「ゼルギウスと、"エンゲージ"………!!」
『これを以て魔力と、そして紋章士との決別の儀とする!!魔法無き新たな世界で、紋章士に恥じぬよう………人として、戦士として、王族として強く生きる為に!!さぁ、異界の我よ!!剣を取れ、そして貴様の"エンゲージ"を、紋章士の絆を見せよ!!』
"漆黒の騎士"と呼ばれた紋章士ゼルギウスと同じような黒一色の鎧に身を包み、"エタルド"をリュークに向けたエドリューク。対して鋒を突きつけられたリュークは笑みを見せた。
「それを見せられたら、こっちは選択肢が無いじゃないか………!!」
そしてリュークも指輪を掲げた。
「"クラスチェンジ"、
エドリュークの"エンゲージ"が紋章士ゼルギウスだった時点で、リュークが"エンゲージ"する紋章士は1人に決まっていた。
「"蒼炎の勇者"、紋章士アイク!!俺と、"エンゲージ"だ!!」
そしてリュークは紋章士アイクと"エンゲージ"を行うとエンゲージ武器の"ラグネル"を手に取り、エドリュークと同じように剣先を向けた。
『舞台は整ったか。』
『この戦い、誰にも邪魔はさせぬ。』
『ああ。もう気にするものは無いから、今回ばかりは存分に付き合ってやる。』
『引き分けも、逃げ道も無い。勝つか、負けるか、存分に剣を交えよう………我か、貴様か。』
『勝者は、1人だ。』
違う世界の自分同士。
"エンゲージ"せしは同じ
対となる剣を携え、
2人は剣を交えた。
『まずは一撃………!!』
『ぬうんっ!!』
大剣を片手で振るう両者。その剣技は一撃が必殺の剣戟、それを断続的に、一切退かず互角に撃ち込んでいた。
『ぜやあっ!!』
『死力を尽くせ!!』
『叩き伏せる!!』
『勝たせて貰う!!』
何度か剣を交えた後、一度距離を取ったリュークとエドリューク。するとリュークは"ラグネル"を上に放り投げ、追従するように自分も飛び上がった。そして上空で"ラグネル"をキャッチしたリュークはエドリューク目掛けて斬り下ろしたが、エドリュークは"エタルド"で斬り上げて受け止めた。
『"天空"!!』
『"月光"!!』
"エンゲージ"には制限時間がある。故に出し惜しみもせず、互いに奥義を繰り出すも依然として互角であり一歩も譲らない展開が続いた。そんな中だった。
『(………フッ。)』
『(何か面白い事でもあったか?)』
リュークとエドリュークが戦っている中、エドリュークが"エンゲージ"する紋章士ゼルギウスが笑みをこぼし、リュークと"エンゲージ"する紋章士アイクがそれを聞き取り、問うた。
『(私とアイク殿の"物語"に、このような"続き"があったとはな。)』
『(物語の続き?)』
『(我らの物語は、神騎将ガウェイン………貴殿にとっては傭兵団長グレイル、同じ剣を学んだ事で始まった。)』
『(………そして、互いの剣を通じて親父の背中を追いかけた。)』
『(幾度と剣を交えた末、私と貴殿の戦いはテリウスの地で、貴殿の勝利で幕を閉じた。)』
『(……………。)』
『(だが、気の遠くなるような旅を経て、私と貴殿は再び相見えた………同じ剣を追い求めた"弟子"としてではなく、今度は剣を授け導く"師匠"として。)』
『(………なるほどな。)』
『(代理ではあるが、私と貴殿が再び剣を交える事ができた事………そして、追い求めていた
『(親父がどう思っていたのかは分からないが………確かに、奇妙ではあるものの、悪い気はしないな。………これが、"紋章の導き"とでも言う奴か?)』
『("紋章の導き"………そうか。この光景を見届ける為に、私は紋章士になったのか。)』
『『ハァ、ハァ………!!』』
『(戦況はここまで互角………残り時間は僅か………)』
『(それは当人も気づいているはず………つまり。)』
紋章士アイクと紋章士ゼルギウスは声を揃えた。
『『((決着は、次の一撃でつく。))』』
『『………!!』』
リュークの持つ"ラグネル"には蒼い炎が纏わり始め、エドリュークの"エタルド"は昏く妖しい光を放ち始めた。
『君に勝ってみせる………!!』
『身の程をわきまえろ、勝つのは我だ………!!』
腰を低く落とし、"ラグネル"を構えたリュークに、"エタルド"を持って突撃したエドリューク。
『はぁぁぁ………っ!!』
『これが、我が最初で最後の奥義!!』
『"覇克・………!!』
『この"漆黒の騎士"の一撃、受けるがいい!!』
"月光"の光を纏わせた"エタルド"を振り下ろしたエドリューク、そして蒼炎を纏わせた"ラグネル"を振り上げたリューク。2人の渾身の刃がぶつかり、衝撃波で辺りの木を吹き飛ばした。
『『ぐぐぐ………!!』』
ここまで拮抗した戦いを繰り広げたリュークとエドリューク。それは決め技を繰り出して尚拮抗したのだった。
『『………っおおおっ!!』』
同時に吼えた2人のリューク。そのまま鍔迫り合いを続けること数秒。
『あああッッッ!!』
『………!?』
天秤は、エドリュークの方に傾いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『"体"と"技"は、貴殿の方が優っていただろうな。』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小柄なリュークの斬り上げ、大柄なエドリュークの斬り下ろし。どちらが有利かは答えるまでも無い。
『ぐう………っ!!』
『勝った!!食らえ、我が最後の"漆黒の月光"を!!』
『がッ……………!!』
そして、エドリュークはリュークの"ラグネル"を吹き飛ばし、鋭い一撃を入れた。
『……………』
『これで、我の………!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『逆境を跳ね返す"心"は明らかに向こうが上だった。』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『………倒れる、訳には!!』
『何ィっ!?』
紋章士アイクのエンゲージスキル、"不動"で危なっかしくも、確かに踏み止まったリューク。その手には"ラグネル"に代わって"ウルヴァン"の斧が握られていた。
『ハァっ………隙を見せたな?』
『ぐっ………この、くたばり損ないが!!』
『ぬうアアアッッッ!!』
今度は"ウルヴァン"に蒼炎を纏わせ、吼えながら力任せに振り上げたリューク。エドリュークはそれを受け止めようと"エタルド"を再び振り下ろした。だが、勝ちを確信していたエドリュークは一瞬だけ武器を構えるのが遅れた。
『ぐあっ………!!』
故に、リュークの火事場の馬鹿力に負け、"エタルド"も吹き飛ばされたのだった。
『ッ、"ゼーンズフト"!!』
『"蒼炎………!!』
『ぐ、間に合わ………!!』
エンゲージ武器となった"ゼーンズフト"の槍を出し、反撃しようとしたエドリューク。だが、それも一瞬遅かった。
『大!!』
『ぐほ………っ!?』
"ゼーンズフト"もろとも、蒼炎を纏った"ウルヴァン"を振り上げ、上空にかち上げたリューク。空に飛ばされたエドリュークを追いかけて飛び上がったリュークは、そのまま蒼炎を纏った"ウルヴァン"で連続攻撃を繰り出した。
『天ッッッ、空ッッッ"!!』
『ぐあああっっっ!!』
そして最後に"ウルヴァン"を振り下ろし、蒼炎の爆発と共にエドリュークを地面に叩き落としたのだった。
『ハァ、ハァ………ッ。』
『……………』
地面に倒れるエドリュークを見下ろすリューク。彼から受けた攻撃の痛みを堪えながら、"ウルヴァン"を支えに息を荒くして見下ろしていた彼。それに対して。
『っ………我を、見下ろすな………!!』
『!!』
エドリュークも、"ゼーンズフト"の槍を杖代わりに立ち上がった。
『まだ、終わらぬ………!!』
『上等、次こそ………!!』
と、再び構え直そうとしたその時。
「「!!」」
戦いの終わりを告げるように、2人の"エンゲージ"が解除された。それに伴い、エンゲージ武器という名の支えを失った2人のリュークは同時に地面に倒れた。
「ぐはっ………!!」
「………ゲホッ!!」
仰向けに、横並びで大の字に倒れた2人のリューク。2人に、戦う力は残っていなかった。
「勝負、つかずか………!!だが、我は負けを、認めていない………!!」
「………いいよもう、君の勝ちで。元々そう言う、"芝居"のつもりだし。」
「何ィ………!?貴様、あれだけ食らいついておいて、何をぬかすか………!!」
「君のような戦狂いと、一緒にしないでくれって、言わなかったっけ………?勝負がつかなかったからって、地の果てまで追いかけられるのは勘弁願いたい………!!」
「貴様、つくづく癇に障るな………我の顔をしてそのような腑抜けた事を………!!」
「俺も、自分の顔をした奴が狂犬みたいに噛みついて来るのについては色々と物申したいね………だけど。」
「だけど?」
「二度としたくは無いけど………この戦いは、楽しかった。」
「………そこだけは、意見が一致したな。尤も、我は次も楽しみにしているが。」
「………本当に同じ俺か?」
「こちらの台詞だ………と言いたいが、ここまで会話が弾むのは、どこかが同じなのだろうな………だが、さて、貴様との話はここで終わりだ。」
エドリュークは反対側に顔を向けた。そこには、光に包まれ消え始めている紋章士ゼルギウスがいた。
『………時間が来たみたいだな。』
「………そのようだ。」
『まずは、感謝を。貴殿のおかげで、私は己の剣の終着点の"その先"………追いかけた我が師と同じ地平に立つ事ができた。』
「………何故貴様が感謝するのだ?貴様ら………いや、貴方方紋章士に教えられ続け、我はここまで来た。貴方方がいたから、我は強くなれた気でいられた。」
『だが、この戦いで貴殿はその強さを確固たるものとした。貴殿は、その足でこの先を強く生き、更に強くなる為の力を得た………貴殿は強き者に、強き王になれる。』
「玉座が2つある国などどこにある?そして、その玉座は既に埋まっているというのに………最後におかしな事を言うな。」
『私の言葉が戯言か否かは、貴殿の今後次第だ。………ここでは無いどこかで、このエドラスで出会った同胞と共に、貴殿の未来を見守ると、ここに誓おう。』
「………ありがとう。そして、さよならだ。」
『ああ。これ以上の言葉は不要だろう………さらば。』
そう言い残し、紋章士ゼルギウスは強い光に包まれ、最後には光の粒子として消えた。そして、エドリュークの紋章士の指輪から魔力が完全に消え、ただの指輪に変質した。
「……………。」
紋章士ゼルギウスが消えてから少し経った。すると、今度はリュークが光に包まれた。
「貴様も、行くのか。」
「ああ。俺は仲間と、自分の世界に帰るよ。」
「そうか。」
「………これ以上、かわす言葉は無いかな。"さよなら"、だ。」
さよならを告げたリューク。だが、エドリュークはニヤリと笑った。
「言葉、間違えているぞ。」
「はい?」
「必ず決着はつける。"また会おう"。」
それを聞いてリュークは大きなため息をついた。
「本ン当に、しつこいなぁ君は………!!」
「我とて"邪竜将軍"と呼ばれた男………いわば貴様と同じ竜だ。なら、最後まで食らいつくのが我だ。」
「………そうかよ、俺の負けだよ。」
再びため息をついたリュークの身体が浮き始めた。浮き始めた彼の身体は上空にできていた渦に吸い寄せられ始めた。
「時間だね。」
「ああ。必ず会おう、そして必ず決着をつけるぞ。」
「考えておくよ………それじゃあ、またね。」
そうして、リュークは逆展開された"アニマ"に吸い込まれた。
「……………。」
リュークが消えるのを見届けたエドリュークは、重い身体を持ち上げ、立ち上がった。
「さて、王都に戻らなければ。………あのジェラールめだけに、良い顔をさせるものか!!」
魔力が消え、ただの大剣となった"エタルド"を背中に納め、エドリュークは王都へと向かった。
==========
「大魔王ドラグニルはこの私が倒した!!魔力など無くても、我々人間は生きていける!!」
王都の瓦礫の山に立ち、杖を掲げ高らかに告げたミストガンことジェラール王子。ナツとの戦い………そして、妖精の尻尾式壮行会を終えたジェラール王子は民衆から見たら、魔力を以て破壊の限りを尽くす大魔王とその手下を倒した英雄であった。そんな彼に民衆は割れんばかりの歓声を浴びせた。だがふと、1人の民衆が不安そうに叫んだ。
「あの破壊の竜はどうなったんだ!?」
「そ、そうだ!?あの竜はどうなったんだ!?」
「リューク将軍が一騎打ちを挑んだが………どうなったんだ!?」
竜がまだ倒されていない事に気付いた民衆に、動揺が広がり始めた………が、その動揺は街外れからの一喝で鎮まった。
「破壊の竜、このリューク・グラドロンが討ち取った!!この"邪竜将軍"たる我が、エドラスを破壊せんとする悪しき竜を倒した!!」
"エタルド"を掲げ、声を張り上げたリューク。
「この黒き鎧と、銀の剣ある限り………このエドラスを脅かすあらゆる障害は、この"漆黒の将軍"が全て払ってみせよう………この我が、エドラスの未来を守ってみせる!!」
エドリュークの宣言に、民衆は再び歓喜と安堵の歓声を上げた。
続く
・託された武器
"エタルド"、"グラディウス"、"マスターソード"、"バシリコス"、"雷神刀"の5つの武器。エドラスから魔力が消える事でお別れとなったエドラスの紋章士がエドリュークに向けて餞別として託した武器。魔力の籠っていない、いわゆる精巧なレプリカの状態なので魔力が無くても("雷神刀"の雷攻撃以外は)問題無く使えるし、普通の武器よりも性能がいい。
・紋章士ゼルギウスとの"エンゲージ"
他の紋章士の力を集めた事で一度だけ実現した"エンゲージ"。黒一色の鎧姿の衣装になり、髪色は紺色になる。
◯エンゲージ技
漆黒の騎士
相手の守備、魔防を無視した攻撃。その後、相手の守備、魔防の50%を自分の守備、魔防に追加する("エンゲージ"解除まで)
エドラス編に入った時点で実は、"エンゲージ"を通じてリュークvsエドリュークに、アイクvs漆黒の騎士の再現を入れたい、という構想が真っ先にありました。そして今回の戦いから逆算して他のエドラスの紋章士を決めたり、ここに至るまでの展開を作って来ました。
違う世界の同一人物が、同じ
・"蒼炎大天空"
読んで字のごとく、蒼炎纏った武器で繰り出すスマブラおなじみの"大天空"です。やっぱり"大天空"のカッコよさが自分のFEの入口だったので使いたい、というのもありますが………紋章士アイクや紋章士ベレトみたいな一捻りあるエンゲージ技が中々活かせないからスマブラ技に逃げてる節があるので、精進します。
エドラス編は次で終わりの予定です。そこまでお付き合いいただければ。