FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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55章 帰郷

アースランド、マグノリア郊外。雨が降る中、ふと空に開いた時空の門からエドラスでの冒険と戦いを終えたナツ達が降ってきた。

 

「んが!!」

「キャッ!!」

「ぐえっ!!」

「ぐお!!」

「ひー!!」

 

"アニマ"によって吸い出され、アースランドに戻って来た彼らは起き上がると戻って来れた事にまずは喜びの声をあげた。

 

「帰って来たぞーーー!!」

「妖精の尻尾は!?」

 

マグノリアの方角を見ると、そこには何事も無かったかのようにマグノリアの街も、妖精の尻尾のギルドも見えた。

 

「元通りだ!!ギルドも街も!!」

「やったぁ!!」

「まだ喜ぶのは早い。人々の安全を確認してからだ。」

「だね、フェルト、早速偵察を………」

 

リュークはフェルトに頼みマグノリアの街を確認してもらおうとした。

 

「大丈夫だよ。」

「一足先にアースランドに着いたからね。」

「色々飛び回って来たんだ。」

「ギルドって奴も、街の人も無事だよ。」

「な………!!」

「ホホ………!?」

「皆、魔水晶(ラクリマ)にされた事すら知らないみたいだよ。」

「アースランドってスゲェな、魔力に満ちてる!!」

 

一同はポカンとした顔をした。

 

「なんで………なんでエクシードがアースランドに!?」

 

それは目の前を飛び回る、翼の生えたネコ。エドラスで唯一魔力を有する種族、エクシードだった。魔力を有するが故にナツ達同様"アニマ"に吸い出されたエクシードはアースランドで生きるしか無いが、シャルルは納得がいかなかった。それに対して、エクシードの女王シャゴットやその側近から、ハッピーやシャルルがアースランドに送られた経緯が語られた。

 

「………ホー。」

「なるほどね。崩壊の未来を見たシャゴットが、100人の子供をエドラスから逃がす計画を立てた。滅竜魔導士という異界の化物を倒す為という表向きの理由で。想定外だったのは、シャルルがシャゴットと同じ予言の力を持ってしまった事。それでエドラスの断片的な未来を見てしまい、"使命"と勘違いしていた………ね。」

 

同胞、そして子供達を守る為についたシャゴットの嘘。その嘘をついた事、そしてその嘘に翻弄されたシャルルに謝罪したシャゴットとその側近。それを聞いてシャルルはようやくエクシードを認めた。

 

「しかし、ねぇ………」

「ホ?」

「でもなんで私にアンタと同じ力がある訳?」

「ゴホッ、ゴホッ!!」

「ど………どうして、かしらね………」

「えーと、その………」

「怪しいわね。」

「……………」

「ねぇおじさん。」

「ア?」

「女王様とシャルルって何か似てない?」

「そうかい?」

「あい!動きとか………あの辺とか!!」

「かーっ!!どの辺だよ!!」

「………親子って、似るものなのかなぁ。」

「ホホーッ。」

「………俺は、どうなんだろうな。」

「ホー?」

「いや、何でもない。」

 

その後エクシード達は近くの森に住む事を決め、新たな生活を始める為に一斉に飛び立った。それを見送った一同は帰る支度を始めた。

 

「俺達もギルドに戻ろうぜ。」

「賛成………帰って寝たい………」

「ホー………」

「皆にどうやって報告する?」

「気づいてないみたいだしいいんじゃねぇのか?」

「だがミストガンの事だけは黙っておけんぞ。」

 

そんな中、1人辺りを探し回るガジルの姿があった。

 

「ちょ、ちょっと待て!!」

「どうした?」

「リリーはどこだ!?パンサーリリーの姿がどこにもいねぇ!!」

「パンサーリリーって、あのマッチョな黒いエクシードの事?」

「そうだ!!あいつを俺の相棒にするって約束してたんだ!!おい、リリー!!どこにいる!?」

 

すると、草木の影から返答が帰って来た。

 

「俺ならここにいる。」

 

声は間違いなくパンサーリリーの声だった。しかし現れたのはハッピー達と変わらないサイズの二足歩行の黒豹だった。

 

「ちっちゃ!!」

「随分可愛くなったね。」

「どうやらアースランドと俺の体格は合わなかったらしい。」

「体、何とも無いの?」

「今のところはな………それよりガジル。」

 

と、リリーはガジルを指差した。

 

「俺は王子が世話になったギルドに入りてぇ………約束は守ってくれるんだよな?」

 

するとガジルは号泣しながらリリーに抱きついた。

 

「もちろんだぜ!!相棒(俺のネコ)!!」

 

ナツやウェンディのような相棒を欲しがっていたガジル。その念願が叶い、ガジルは歓喜していたのだった。それが落ち着くと、リリーはそう言えば、と話を始めた。

 

「ところで、怪しい奴を捕まえたんだ。」

「ん?」

「来い。」

 

リリーの手にはロープが握られていた。それを引っ張ると、少女の小さな悲鳴が聞こえた。

 

「ちょ、私、別に………妖しくなんか、きゃっ!!」

 

リリーに引っ張られ、一同の目の前に引きずり出された少女。それを見てルーシィ、ガジル、ウェンディ、シャルル以外の者は目を見開き、驚愕の表情を見せた。

 

「私も、妖精の尻尾の一員なんだけど………!!」

「リサーナ………?」

 

リサーナ。妖精の尻尾の魔導士で、ミラとエルフマンの妹。

 

「そんな、まさか………」

「なんで………」

「もしかして、エドラスのリサーナが………」

「こっちに来ちゃった訳!?」

「ど、どうしよう………」

 

一同が驚きを見せる中、周囲を見渡していたリサーナ。すると、リサーナの視線がナツで止まった。

 

「!!」

「……………。」

「ナツ!!」

 

するとリサーナな涙をこぼしながらもナツに飛びつき、そのままナツを巻き込み倒れた。

 

「どわあっ!?」

「また会えた………"本物"の、ナツに。」

 

続けてリサーナはハッピーを抱き寄せた。

 

「ハッピー!!私よ、リサーナよ!!」

「エルザとグレイ、リュークにフェルトも久しぶり!!その子達は新しいメンバー?もしかしてルーシィと………小さいけど、ウェンディ?」

「……………!!」

「ち、ちょっと待て………」

 

リサーナの言動にリュークは青ざめ、グレイは指を震わせながら問い質した。

 

「お前、まさか………アースランド(こっち)のリサーナか!?」

 

グレイの質問に、リサーナは頷いた。

 

「………うん。」

 

その返答に一同が驚きの反応を見せる。それよりも早く、顔が青ざめたままのリュークがリサーナの目の前に躍り出て、剣を向けた。

 

「!!」

「ちょっとリューク!?」

「どうしたんだ急に!?」

「落ち着け!!」

「リュークさん、いきなり何を………」

「どういう事だ………!!」

「……………」

「2年前、君は死んだはずだ。」

 

剣を向けられてもリサーナは怯える素振りを見せなかった。むしろ、剣を突きつけているリュークの目の方が怯えを映しているようだったからだ。

 

「一度死んだ者は二度と生き返らない………何があった、返答次第では君を斬る。」

 

するとリサーナは目を伏せ、答えた。

 

「………そう言えば、リュークってゾンビや屍人が苦手なんだっけ。そりゃあ驚くのも仕方ないわね。」

「……………。」

「………結論から言うと、私、死んで無かったの。」

 

2年前。ミラとエルフマンと3人で行った仕事で重傷を負い、気を失ったリサーナ。その時、彼女の身体は消えたのだがリサーナは自然発生していた"アニマ"に吸われたのだと推測した。

 

「エドラスで目が覚めた私は妖精の尻尾を見つけて驚いた。皆少し雰囲気が違ったけど自分のよく知っている人達がいたから私は………恐らく、既に死んじゃったエドラス(むこう)のリサーナとして、エドラスで生きていたの。」

「………そうか。それは、すまなかった。」

「いいよ。会えるはずの無い人と会ったら、驚くのも当然だもの。………私だって、エドラスのギルドにこっちのナツとハッピーが来た時はビックリして言葉も出なかったもん。」

 

リサーナの話を聞いて、リュークは剣を納め、謝罪をしながら下がった。だが今度はナツが食ってかかった。

 

「なんで、あの時本当の事を言わなかったんだよ!!」

「………言えなかったんだ。二度とミラ姉達を悲しませたくないって決めたのに、エドラスで生きていくって決めたのに、それが揺らぎそうで、怖かった。だから、私はナツとハッピーから隠れたの。」

「……………」

「………でも、"アニマ"の逆流でアースランドの人間だった私も吸い込まれたの。その時、エドラスのミラ姉とエルフ兄ちゃんに言われたの………「本当のお姉ちゃんとお兄ちゃんを悲しませちゃダメ」って………」

 

リサーナの話はここで終わった。

 

「なら、次にする事は1つだな。」

「そうね。」

「よし、行くぞリサーナ。今なら、恐らくあそこだ。」

「えっ、ちょっとナツ!?」

 

するとナツはリサーナの手を取りマグノリアの街へ入った。

 

==========

 

マグノリア中心部に建つカルディア大聖堂の裏手にある墓地。雨が降りしきる中、ミラとエルフマンは一基の墓に花を供えていた。墓にはリサーナの名前が刻まれていた。

 

「姉ちゃん、そろそろ行こう。」

「もう少し………」

 

そんな時だった。

 

「ミラ姉!!エルフ兄ちゃん!!」

 

懐かしい声、懐かしい呼び方。されどもう聞こえるはずの無い、呼ばれるはずの無い声に、目を見開きながら振り向いたミラとエルフマン。そこには、亡くなったはずの妹、リサーナが駆け寄って来たのだった。

 

「ウソ………リサーナ!!」

 

ミラに飛び込み抱きついたリサーナ。その2人を大きな腕で包み込むように抱擁をかわしたエルフマン。3人は雨に負けない大きさの涙を流しながら再会を喜んだ。

 

「ただいま。」

「………おかえりなさい!!」

 

==========

 

その後、妖精の尻尾のギルドはいつもの倍は騒がしい大宴会が始まった。

 

「リサーナが戻って来たぞーーー!!」

「お帰りリサーナ!!」

「今日は仕事しねぇ!!飲むぞ食うぞーーー!!」

「テメェら、キタネェ格好でリサーナに近づくんじゃねぇ!!」

 

仲間の帰還に喜び、エドラスの冒険話を肴に飲んで騒ぐギルドの中、リュークは夢の中にいるフェルトを頭に乗せマカロフとギルダーツと共にバーカウンターにいた。

 

「やれやれ………ミストガンの事は残念じゃが、そのエドラスとやらで元気にしてる事を願おう。」

「元気さ。このギルドで育ったんだ、元気に決まってる。んでリューク、向こうはどうだった?」

「どう、って言われましても………。せっかくなら観光したかったのに、思い返せば戦闘狂の自分と戦ってて終わりだったので………」

「あんな感じで血の気が多かったお前って感じか?何か面白いな。」

「あんな感じです。」

 

ギルダーツが指差した先は、いつの間にかいつも通りの大乱闘に発展していた。

 

「そう言えば、エドラスってとこにも俺やマスターもいたのか?」

「さぁ………見てないですね。ナツは「じっちゃんはいたぞ?」って言ってましたが、ギルダーツは………」

「そうか………まぁいいか。」

 

そうしてしばらく話していた3人。話が一段落して、ふとギルドを見回すと全員が全員、テーブルや椅子の残骸にもたれながらぐっすりと寝ていた。

 

「結局こうなるのか………」

「まぁいつもの事ですね………それじゃ、俺は帰って寝ます………」

「ここで寝てっていっても良いのじゃぞ?」

「流石に今回の疲れは雑魚寝じゃ取れそうに無いので………」

 

あくびをしながらギルドを出ようとしたリューク。

 

「そう言えばマスター。」

「何じゃ?」

「リサーナを見て思ったんですけど………しばらくギルドを空けます。」

「………"実家"か?」

「ええ。ここしばらくドタバタして帰れなかったので。」

「構わぬが、2週間後には帰って来るのじゃぞ。今年はお主は強制参加じゃからな。」

「………本当に参加しないといけないですか?」

「2週間後って事は"あれ"だろ?珍しいな、ウチにいて"あれ"を喜ばないなんて。」

「………経緯が経緯なので。だけど、ゴネてもどうしようも無さそうなので諦めますよ。分かりました、差し迫った用事があって帰る訳では無いので、ある程度片付いたら帰って来ます。」

「うむ、よろしく頼むぞ。」

「了解です。では失礼します、おやすみなさい。」

 

リュークは挨拶をして、ギルドを出た。するとギルダーツが首をかしげながらマカロフに聞いた。

 

「2週間後………S級魔導士昇格試験。あいつまだ受けてなかったのか。」

「さして興味無いようで、先輩に譲るなどと言って受験を固辞していた。じゃが、あやつは今年の試験を受験せざるを………いや、合格せざるを得ない状況になった。」

「というと?」

「50年誰も達成できなかったモンスターの退治を"手違いで"やってしまったのじゃ。」

「ほぉー、まぁ竜族である事を踏まえればおかしい事では無いとは思うが、"手違い"って何だ?」

「寝ぼけて違う山に入ってしまったとの事じゃ。」

「あー………恥ずかしくて素直に喜べない、ってやつか。」

「………それだけでは無いと思うがな。まぁワシより何倍も生きてはいるが、あやつも"まだまだガキ"じゃ。これを期に、大人の自覚を持ってくれれば、との期待もある。」

 

==========

 

翌朝。リュークは珍しく朝早くに起きるとテキパキと支度をし、寝ているままのフェルトをカバンの上に乗せ家を出ると魔導二輪に乗った。

 

「………さて、行くか。」

 

魔導二輪を起動し、マグノリアの街を出たリューク。

 

「久しぶりに帰るか………俺の実家、ソラネルの里に。」

 

 

続く




これにてエドラス編は終わりです。

エドラス編での設定をまとめ次第、オリジナル展開に突入します。
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