特にアルフォンスは卑怯ですわ、父グスタフに衣装と武器合わせて頼もしさ爆増させるのは涙腺に来る。
初年度のアイク、ロイから始まってヘクトル、エフラム、エイリーク、セリスと尊敬する父兄の衣装を身に纏って頼もしい姿を見せてくるのはやっぱり一番好きなパターンですね。
「ただいまーっ!!」
「ただー。」
新入り希望の魔導士ルーシィを連れ、ギルドに返って来たナツやリューク達。ギルドに入るや否や、ナツは怒りの形相でギルドの中へと走り出したのだった。
「ナツ、ハッピーにリューク、フェルト、おかえりなさい。」
「またハデにやらかしたなナツ!!ハルジオンの件、新聞に載っ、て………!?」
走り出したナツはそのまま彼を茶化した魔導士に向かって飛び蹴りを放った。
「テメェ!!火竜の情報ウソじゃねぇか!!」
「うごっ!?」
ナツの飛び蹴りが発端となり、賑やかだったギルドの中の盛り上がりが喧騒に変わった。人や物が飛び交い、椅子やテーブルが壊れ始める中ルーシィはその光景に感心した目を向けていた。
「すごい………これが、
しかしこの感心の目は次第に変わるのであった。
「ナツが帰って来たって!?この間の決着つけるぞ!!」
「グレイ………何て格好してるのよ。」
「はっ!!しまった!!」
「……………」
グレイと呼ばれた青年はパンツ一丁で現れ、
「全く………これだから品の無い男はイヤだわ。」
「……………!!」
そんなグレイを注意した女性、カナは酒樽を持ち上げ一気飲み。
「昼間っからピーギャーピーギャーとガキじゃあるまいし………漢なら拳で語れ!!」
「結局混ざるのね………しかも玉砕。」
学ラン姿の大男、エルフマンはケンカを止めるのかと思いきやその真ん中へ突撃し、ナツとグレイに殴り飛ばされ撃沈。
「全く騒々しいな………」
「(あれって、"彼氏にしたい魔導士"万年上位のロキ!!)」
「まざってくるねー♡」
「がんばってー♡」
「(ハイ消えたーーっ!!)」
イケメン魔導士と評判の名高いロキは複数の女の子をはべらせながら騒ぎの輪の中に。
「(な、なんなのこれ………)」
あまりにもクセの強い魔導士の集まりに圧倒されていたルーシィ。
「ねぇ、リューク………あれ、止めなくて………」
とリュークの方を見たルーシィ。
「すぴーー。」
「安らかに寝てる!?ウソでしょこの騒ぎで!?」
リュークはフェルト共々周囲の喧騒がウソのように無事なテーブルに突っ伏してすやすやと寝ていたのだった。
「あら、新入りさん?」
置いてけぼり状態でオロオロしていたルーシィ、そんな彼女に声をかけたのはギルドの看板娘ミラジェーンだった。
「み、ミラジェーン!?本物ー!!じ、じゃなくて………いいんですか、これ?」
ルーシィの愛読書の一つである週刊ソーサラーで何度もグラビアとして載るミラジェーン本人との出会いに喜ぶのも一瞬、正気に戻ったルーシィは惨状と化した目の前の光景について聞いた。
「いつもの事だから放っておけばいいのよ。」
「ええ………いつもの事ですか。だからリュークは気にせず寝てるんですね。」
「そうね。リュークは寝起きがとても悪くて、仕事で徹夜した翌日なんて昼まで起きないわ。」
「そうなんだ………って、危ない!!」
ぐっすりと寝ているリュークの方へ椅子の破片が飛んできた。
「大丈夫よ。」
「え?」
しかし椅子の破片が当たりそうになったその瞬間、パチリと目を覚ましたリュークは左手で掴むと流れるような動作で右手に持ち替え、投げ返すとまた眠りについた。
「緊急時には起きるのよ。」
「緊急時真っ只中にしか見えないんですが………?」
だが、リュークの投げ返した椅子の破片が事態を悪化させた。
「いだっ!!」
椅子の破片は酒樽で酒を飲んでいたカナの酒樽をはたき落としたのだった。
「っっ、いい加減に………しなさいよ………」
これにキレたカナはカードを取り出し、そこに魔力を籠めた。そしてそれを皮切りに、他の魔導士達もそれぞれの魔法を使い始めたのだった。
「ええっ、魔法!?」
「………これはちょっとマズいわね。」
「すぴー。」
そして魔導士達の大乱闘のボルテージが最高に達したその時、
「そこまでじゃ、やめんかバカタレ!!」
「で、デカーーーッ!?」
突如現れた巨人の一喝がギルドに響いた。それと共に今までの大乱闘がピタリと止まり、魔導士達は矛を収めたのであった。
「え………今度は何………?」
「あら………いらしたんですか、
「マスター!?ミラさん、本当ですか!?」
驚きっ放しのルーシィに気づいた巨人もといマスターは彼女の方を向いた。
「む、新入りかね?」
「え、あ、は、はい………」
巨人に見下され、蛇に睨まれた蛙のようにビクビクと怯えるルーシィ。しかし、マスターのマカロフは瞬く間に縮み、ルーシィの半分以下の小さな老人へと姿を戻したのだった。
「よろしくネ。」
「ええーーっ!?」
まさかの大変化に驚くルーシィを余所に、マカロフは二階の手すりへと大ジャンプした。
「さてと………まーたやってくれたのぅ貴様ら。見よ、この紙の束を。今回も評議会からこんなに送られてきたぞ。」
評議会から送られた紙の束。これは妖精の尻尾の魔導士の起こしたトラブルや苦情の数々だった。
「まずはグレイ。密輸組織を検挙するも、その後街を裸でうろつき果てには下着を盗んで逃走。」
「いや、裸はマズいだろ………」
「まず脱ぐなよ。」
「そういうエルフマンは要人護衛の際にその要人に暴行。」
「"男は学歴"なんて言うからつい……」
紙の束はまだまだ続いた。
「カナは経費と偽って酒場で大樽15個飲み、しかも請求書を評議会。」
「バレたか………」
「ロキ、評議員レイジ老師の孫娘に手を出す、そしてそれによりタレント事務所からも損害賠償の請求があり。」
「………。」
「そしてナツ………。」
がっくりと肩を落としたマカロフは紙の束の半分を出した。
「デボン盗賊一家と共に民家7軒壊滅、
チューリィ村の歴史ある時計台倒壊、
フリージアの教会全焼、
ルピナス城損壊、
ナズナ峡谷観測所倒壊により機能停止、
そして先日のハルジオン港半壊、
その他多数……………」
「(本の記事はほとんどナツだったのね………)」
ナツの悪行の列挙が終わっても次々と名前が列挙されていった。
「アルザック、レビィ、クロフ、リーダス、ウォーレン、ビスカ………それにリューク。」
「すやぁ………」
「(えっ、リュークまで!?)」
「お主は居眠りグセさえ無ければ言う事ないんじゃが………他ギルドの魔導士も集まる評議員の会議中に堂々と寝るのは………」
「むにゃむにゃ………」
しばらくして紙の束に書かれたトラブルの数々を読み終えたマカロフはわなわなと震えた。
「ワシは評議員に怒られてばかりだぞ………」
と、しばしの静寂が訪れたその直後。
「だが、評議員などクソ食らえじゃ。」
そう言って紙の束を燃やし、ポイと捨てるとナツがそれを咥え食べてしまった。
「魔法なぞ奇跡の力ではない。己が魂全てを注ぎ込む事ではじめて形になるものじゃ。故に、
マカロフの演説によりギルド中から歓声があがり、再び魔導士達のどんちゃん騒ぎが始まった。
「んん………ふわぁ。」
「あ、起きた。」
「珍しいわね、普段はこれくらいじゃ起きないのに。」
「普段より騒がしいからね。おおかた、マスターが調子の良い事言ったんでしょ?怒られるのが嫌でたまに俺が"おつかい"行かされてるのに。」
「そ、そうなのね………」
「さてと。」
起きたリュークは座り直してルーシィの方を向いた。
「まぁ、ウチは見ての通りのギルドだ。それでも良ければ………って聞く必要も無さそうだね。マスターの所へ行っておいで、それで今日からルーシィもウチの一員だ。」
「うん!!」
そう返事したルーシィの瞳はとてつもなく輝いていた。
==========
そして夜になったが、依然としてギルド内の馬鹿騒ぎは止まなかった。そんな中で、マスターとの話が終わり正式にギルドへ加入したルーシィはミラからギルドの紋章をつけて貰っていた。
「はい!!これであなたも一員よ。」
「わぁ………!!」
憧れのギルドに加入できた喜びに溢れていたルーシィは、彼女を誘ったリュークとナツに右手の甲に押された紋章を見せた。
「見てみてー!!」
「おっ、それじゃあ改めて、これからよろしく!!」
「ありがとう!!ナツも見てー!!」
「良かったじゃねぇか、ルイージ。」
「ルーシィよ!!」
ナツのすっとぼけた間違いに対して即座にツッコんだルーシィ。すると、リュークの横に紋章士マルスが顕現した。
『そう言えばルイージで思い出したんだけど、彼女は新居とか大丈夫なのかな?あと家具とか掃除道具とか………』
「そう言えばそうですね。ならアンナに声を……って、ところでルイージって誰です?昔の仲間とかですか?」
『………いや?それがいざ聞かれるとよく思い出せないんだ………ここみたいに凄く賑やかな場所で会った記憶があるんだけど………』
紋章士マルスが朧気な記憶を遡ろうとしていたその時。
「探しに行ってくれよ!!もう1週間も帰ってなくて心配なんだ!!」
「くどいと言っている!!自分のケツも拭けん魔導士はウチにおらん!!分かったら帰ってミルクでも飲んで待っておれ!!」
「っ………!!バカーー!!」
小さくなったマカロフと同じくらいの男の子が泣きながらマカロフの顔にパンチを繰り出し、ギルドを走って後にする様子が見られた。
「ロメオ………あの様子、マカオはまだ帰って来て無かったのか。」
ロメオの父親であるマカオはハコベ山の仕事に行ったきり帰って来ておらず、心配になってマカロフに捜索を頼みに来たが当のマカロフにあしらわれてしまったのだった。
「オイナツ!!リクエストボードを壊すなよ!!」
「……………。」
すると、その様子を聞いていたナツが受けようとしたクエストをリクエストボードに叩きつけ、真剣な面持ちでギルドを出たのだった。
「どうしたの、アイツ急に………」
「………ナツもロメオくんと同じだからね。」
急に態度が変わったナツに驚くルーシィ。そこにミラが答えた。
「ナツのお父さんも出て行ったきりまだ帰って来ないのよ。お父さんって言っても育ての親だし、ドラゴンなんだけどね。」
親がドラゴン。それを聞いたルーシィは椅子から転げ落ちたのだった。
「ドラゴン!?ドラゴンに育てられたって、そんな事………」
「小さい時にそのドラゴンに拾われて、言葉や文化、それに魔法なんかを教えて貰ったんだって………でもある日、そのドラゴンは姿を消した。」
「そっか………それが、ナツの探してるドラゴン、イグニール。」
そして、ミラは言葉を続けた。
「………私たちは………妖精の尻尾の魔導士は、みんな何かを抱えてる………」
「!」
「キズや、痛みや、苦しみや………私も……………」
「え?」
「ううん、なんでもない。」
「……………」
==========
翌日、ナツとハッピーはマカオの捜索にハコベ山へと向かう馬車に乗っていた。だが、その馬車にはルーシィとリュークも同乗していた。
「………でね、あたし今度ミラさんの家に遊びに行く事になったの〜!!」
「下着盗んじゃダメだよ。」
「盗むかー!!」
「………てか、何でリュークとルーシィがいるんだ………?」
「でもフェルトはいないね。」
先に答えたのはルーシィだった。
「だって、せっかくなら何か妖精の尻尾の役に立つ事したいなー、なんて。」
「(株を上げたいんだ、絶対にそうだ!!)」
「俺はルーシィが無茶しないかを見に来た。張り切るあまりに危険な方へ突っ走って痛い目を見る新人魔導士は多いからね。」
「う"……………」
「因みにフェルトは今日は休みだよ、行く場所が場所だからね。」
「行く場所が場所………?」
すると、馬車が急に止まった。それによりナツは乗り物酔いが治まり元気になったがルーシィは心配をし始めた。
「え、何?何があったの?」
すると、馬車の御者が話しかけてきた。
「すみません、お客さん………これ以上は、馬車じゃ行けません………」
一行が外を見ると、そこは一面の猛吹雪であった。視界は悪く、馬車の車輪は雪に埋もれかけ、馬車を引く馬と御者は寒さで震えていた。
「ウソ!?雪山とはいえ夏季でこんな吹雪なんて!!」
「だからフェルトは連れてこなかったんだ。飛行するには最悪なこの環境で偵察を任せる訳にはいかないからね。」
「さ、さ、寒い………!!」
「………こうなると思った。はい、上着使う?」
「あ、あ、りが、とう………ナツも、毛布、かして……………」
シャツにミニスカートと雪山には絶望的に適していない服装のルーシィはあまりの寒さに震えてうずくまっていた。これを予期していたリュークは上着を貸すがそれでも寒かった様子で、ナツのリュックに巻き付けられた毛布も奪って包まったがそれでも寒さはしのげなかった。
「ひ、ひひ、ひらけ………時計座の扉、ホロロギウム………!!」
たまらずルーシィは時計座の星霊ホロロギウムを召喚。手足のついた柱時計のような外見のホロロギウムが登場するとルーシィはホロロギウムの腹部にあたる、振り子の入ったスペースに避難したのであった。
『「あたしここにいる」と申しております。』
「何しに来たんだよ。」
「流石に死ぬよ?」
『「何しに、と言えばマカオさんはこんな場所に何の仕事に来たのよ?」と申しております。』
ホロロギウム越しのルーシィの質問に、ナツはため息混じりに答えた。
「知らねぇでついてきたのか?凶悪モンスター、"バルカン"の討伐だ。」
凶悪モンスター。その言葉を聞いたルーシィはすっかり青ざめた。
『「あたし帰りたい」と申しております。』
「はいどうぞ、と申しております。」
「あい。」
「マカオー!!いるかー!?」
怖気づいたルーシィを無視してマカオの名を呼ぶナツ。すると、周囲から何かが動く気配がした。
「!!」
その気配は猛スピードでナツに接近、
「バルカンだ!!」
「ウホッ。」
「ぬおっ!?」
気配の正体である、白い猿型のモンスター、バルカンはナツの横を通過すると、
「人間の女だ、うほほーー!!」
ホロロギウムに入ったルーシィに目をつけ、あっという間にホロロギウムごとルーシィを連れ去ってしまったのだった。
「くそっ、まんまと出し抜かれた!!追いかけるぞナツ!!」
「あいつしゃべれたのか。ちょうどいい、あいつにマカオの場所聞くぞ。」
リュークとナツは急いでルーシィを連れ去るバルカンを追いかけた。
==========
一方ルーシィはそのままバルカンの棲家らしき洞窟へと連れて来られた。そしてホロロギウムを通じてバルカンに嫌らしい目でじっと見られていたその時。
『時間です、ごきげんよう。』
「ちょ、ちょっとホロロギウム!!こんな時に消えないでよ!!」
制限時間が来てしまい、ホロロギウムはルーシィを残して普段いる星霊界へと帰還してしまったのだった。
「んふ……んふ……女……!!」
「……………」
遮るものが無くなり、バルカンは鼻息を荒くしながらルーシィとの距離を詰めた。だがそのタイミングで、ナツが洞窟内に入って来た。
「うおおおっ、やっと追いつい……あがっ、ぐおお、ふあっ、ぶへっ!!」
だが雪に足を滑らせたナツは壁にぶつかるまで盛大に転がったのだった。
「普通に入って来れないのかしら………ってあれ?リュークは?」
「あ?さっきまでいたぞ?まぁいいや、おいサル!!マカオはどこだ!?」
==========
その頃のリュークは洞窟の入口付近にいた。
「………さっきから不甲斐ないな。いかに普段フェルトに頼りっぱなしなのかがよく分かったよ。」
ナツについて行かず、入口に留まった理由。それは別の気配を察知したからだった。
「10………いや15、それ以上か?」
吹雪に紛れて、何体もののバルカンがリュークの前に現れたのだった。吹雪は依然止まず、足は雪にとらわれ動きにくいこの状況だが救いはどのバルカンも手負いである点だ。
「女……女……」
「女のにおい………」
「男、いらん………」
「マカオが倒した奴が復活したってところか………狙いはルーシィか。ヘクトル!!」
リュークは紋章士ヘクトルを呼び出した。
『おっ、今回は戦闘ありだな?』
「ええ、この猿を一匹たりとも逃さず倒します。」
『了解だ。これは腕がなるな!!』
「行きますよ、ヘクトル!!」
『おう!!』
「『"エムブレム・エンゲージ"!!』」
その場で"エンゲージ"したリュークはその場でエンゲージ武器の斧、"ヴォルフバイル"を頭上で片手で回した。
『手加減はしねぇ!!』
そして回転と共に雷を纏い始めた"ヴォルフバイル"を地面に叩きつけると、不敵に笑いながら指をくいと動かし挑発した。
『"止水雷轟の構え"………女にありつきたけりゃ、俺を先に倒しな。』
挑発に乗ったか乗っていないか、3体のバルカンが同時に襲い掛かって来た。
「「「ウホーっ!!」」」
バルカン達は同時に拳をリュークに振り下ろしたが、リュークはそれを真っ向から受け止め、ビクとも動かなかった。
「「「!?」」」
『手負いだか何だか知らないが、随分と軽い一撃だ、なぁッッ!!』
返す一撃でバルカンの腕を弾き飛ばしたリュークは"切り返し"の一撃で3体まとめて薙ぎ払った。
「ウホっ!!」
『遠くからチマチマと、鬱陶しい!!』
続けて、遠距離から氷塊や氷柱を投げつけて来るバルカンに向かって"ヴォルフバイル"を投擲し、氷塊もろともバルカンを砕いた。するとその近くにいたバルカンが"ヴォルフバイル"を拾い上げ、猛スピードでリュークに接近して"ヴォルフバイル"を振り下ろした。
『ふん!!』
「ウホッ!?」
『斧の振り方ってもんが、なってねぇな!!』
だがリュークはバルカンの振り下ろした"ヴォルフバイル"に対して"アルマーズ"の斧を出し、雷を纏った振り上げで"ヴォルフバイル"をかち上げた。
『斧ってのは、こう振り下ろすんだよ!!』
無防備となったバルカンを前にリュークは頭上で"アルマーズ"を振り回してから地面に叩きつけて持ち直すとその場で飛び上がり、重力を乗せて力一杯に"アルマーズ"を落雷の如く振り下ろしてバルカンを雪の地面に叩き付けた。
『さてと…次は、さっきから後ろでコソコソと動いているお前だ!!』
そして地面に突き刺さった"アルマーズ"を拾い上げるその前に"ルーンソード"を取り出すと背後に回り込んでいたバルカンに魔法を飛ばして撃破し、与えたダメージ分の体力を回復した。
『………ようやく体があったまって来た。』
マルスやリンと違い、防御力と一撃に重きを置いたカウンター戦術を得意とするヘクトルの力でバルカンを6体撃破したリューク。
『(前回出番がすぐ終わった分、ここでは暴れるぜ!!)』
『ええ………存分に行きましょう!!』
リュークは再び"アルマーズ"に雷を纏わせ、構え直した。
『さぁ、まとめてかかってきな!!』
==========
しばらくして、洞窟の中。ナツは無事にバルカンを撃破したのだが、気絶したバルカンを叩き起こしてマカオの居場所を吐かせようとしたところバルカンの姿が変わりマカオに変化したのだった。
「え!?あの猿が、何で!?」
「"
バルカンは人を"接収"する事で生きつなぐ魔物であり、マカオはこのバルカンに敗北した事で"接収"されていたのだ。その証として、"接収"が解けたマカオは傷だらけで特に脇腹のキズは深く今も血が流れている状態だった。
「このキズじゃあ、応急セットじゃどうにもならないわ。」
「……………。」
「(てゆーか、これはもう………)」
「ハッピー、リュークを探してくれ!!多分近くにいるはずだ!!」
「あい!!」
ハッピーにリュークを探しに行かせたナツは自らの手に炎を纏うと、それをマカオの脇腹に付きつけたのだった。
「ぐあああっ!!」
「ちょっと、何をしてるのよ!?」
「今はこれで我慢しろよ、マカオ!!ルーシィ、マカオを抑えろ!!」
ナツの真意は、火傷で傷口を塞ぐというものだった。だがこれは止血にはなるもののさらなるダメージを与えるものでもあり、マカオの生命力次第では逆効果になる荒療治だった。
「ロメオが待ってんだ、死ぬんじゃねぇぞ!!」
「ふがっ、あっ、ぐ………っ!!」
火傷の痛みで意識が戻ったマカオ。目を開け、ナツの姿を確認すると息も絶え絶えに話し始めた。
「く、くそ……情けねぇ………19匹は、倒したんだ………」
「え?」
「だが、20匹目に、負けて"接収"されて………」
「分かったから喋んな!!傷口が開くだろ!!」
リュークがハッピーに連れられ合流したのはこのタイミングだった。
「すまない、手間取った!!」
「どこ行ってたんだリューク!!マカオを頼む!!」
「分かった!!"クラスチェンジ"、モンク。」
モンクに"クラスチェンジ"したリュークは"リライブ"の杖を取り出し、マカオの前にかざした。そして魔力を"リライブ"に籠めると杖の先が淡く発光し、それと共にマカオの傷が徐々に消えた。
「リューク、あんた回復魔法まで使えたの?」
「傷を治すだけだ、そんな万能なものじゃない。後は、マカオ次第だが………大丈夫そうか?」
"リライブ"の杖をしまい、マカオに問いかけたリューク。
「………ああ、だいぶ良くなった。ありがとうよ。」
万全には程遠いが、しっかりと返事をしたマカオにその場の全員が安堵したのだった。
==========
その後しばらくして、マカオの様態も吹雪も落ち着いたのを見計らって一行はハコベ山を下山した。
「そう言えばリュークは何をしてたんだ?」
「そうだ、忘れるところだった。」
リュークは換装魔法で、大きな袋を取り出した。ルーシィがその袋の中身を覗くと、中には白くて長い尻尾がたくさん詰め込まれていた。
「この尻尾、まさか!!」
「ルーシィ目当てに集まって来たバルカン19匹分だ。手負いだったから苦戦はしなかったが純粋に時間がかかった。」
「その19匹って………」
「マカオが倒したバルカンのはずだ。その証に使えるかと思って持ってきたが、いるかい?」
「ああ、ありがてぇ。依頼主にも、ロメオにも、いい証になる。」
マカオがこの仕事を受けた理由、それはロメオが街の子供達にマカオや妖精の尻尾の魔導士をバカにされ、見返して欲しいというロメオの想いに応える為だった。
「それにしてもルーシィ大人気なんだね。」
「あんなエロ猿に好かれても全く嬉しく無いわよ!!」
「………今回の新入りはやけに賑やかだな。」
==========
そして無事下山し、マグノリアまで帰って来た一行は、帰りを待つロメオのもとへ向かった。
「父ちゃん!!」
駆け寄ったロメオに、マカオはぎゅっと抱きしめた。
「父ちゃん、ゴメン………オレ………」
「心配かけたな。」
「………大丈夫、オレは魔導士の息子だから………」
「次、クソガキ共に絡まれたら言ってやれ。"テメェの親父は怪物19匹倒せるのか?"ってな。」
親子の再会を見届け、他の皆が帰ろうとすると、ロメオが呼んだ。
「ナツ兄、リューク兄、ハッピー!!それに、ルーシィ姉も、ありがとう!!」
マカオとロメオと別れた帰り道。
「………やっぱり、ここに来て良かったかも。」
「ん、何か言った?」
「ううん、何でも!!」
こうして妖精の尻尾に加入したルーシィの最初の数日が終わった。
続く
・ルイージに言及するマルス
本作では、大乱闘を始めとした外部作品出演経験のある紋章士はその時の記憶を"いつか見た明晰夢"程度のフワッとした記憶があります。以前紋章士ベレトでスマブラめいた戦い方をしたのもこのフワッとした記憶を辿って出したものです。
なのでルイージと聞いてから緑のヒゲの配管工を思い出し、さらに本拠地のルイージマンション、最後の切り札のオバキュームを思い出して、新居だの掃除道具だのと連想ゲームができますが、いざ「いつの記憶?」なんて聞かれると答えられないという中途半端な記憶です。
さて、次回はエバルー屋敷の予定です。もちろん紋章士も出ますが、我ながら「え、次その紋章士出すの?」となってます。