FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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4章 エバルー屋敷

「さて、全員揃ったな。」

「あい。」

 

エバルー公爵の屋敷から一冊の本を持ち出す依頼に来たナツ、ハッピー、ルーシィにリュークとフェルト。ルーシィのメイド服作戦が失敗に終わった事で作戦変更を余儀なくされた一行はエバルーの屋敷の屋上に来ていた。

 

「なんでこんなコソコソ行かなきゃならねぇんだ?」

「これが一番安全で早いからだ。」

「正面から入って邪魔な奴をぶっ飛ばす方が早いだろ?」

「相手が盗賊や闇ギルドならね。だが今回は街の有力者、それも貴族だ。正面から騒ぎを起こして軍やら評議員やらが出て来られては色々と厄介になる。」

 

だから、とリュークは続けた。

 

「だから戦闘も騒ぎも屋敷内で抑えろ、外に持ち出さないこと。」

「じゃあ、暴れてもいいのか!?」

「見つからないのが一番ではあるけど………伏兵とかがいそうで戦闘は避けられなさそうなのと、そもそもナツに隠密は期待してない。」

「よっしゃあ!!任せろ!!」

「ただし、戦闘に入るまでは俺の指示と誘導に従って貰うぞ。」

 

==========

 

屋上から物置を通じてエバルーの屋敷に侵入したフェルト以外の一行は、リュークを先頭に屋敷内を忍び歩きで進んだ。

 

「書庫はこっちだよ。皆ちゃんとついてきてるかい?」

「うん………でも、何で書庫の場所なんて分かるのよ?」

「フェルトに上空から透視して見てる光景を"視覚共有"してるからね。間取りから中の人間まで見えるけど………マズい、バレたかもしれない!!」

「えっ?」

 

すると、リューク達の目の前の床が迫り上がり、中からエバルーのメイド達が飛び出して来た。

 

「侵入者発見!!」

「うおおーーっ!?」

「見つかったぁーー!!」

「っっ!!」

「ハイジョ、シマス。」

 

メイド長らしき、筋骨隆々のメイドの一声でメイド達は武器を手に突撃をしかけた。

 

「マズい………!!って、あれ………?」

「………よし。」

 

しかし、メイド達はリュークやルーシィには目も暮れず、一斉にナツへと向かったのであった。

 

「うおおおっ、忍者ァーーッ!!」

 

それに対してナツはマフラーで顔を包むと忍者のように指で印を結び、炎の回し蹴りでメイド達を一掃したのだった。

 

「まだ見つかる訳にはいかんでござるよ、にんにん。」

「普通に騒がしいわよ………」

「よし、今の内に書庫へ向かおう。」

 

==========

 

「とりあえず書庫に入れたね。」

「スゲェ、たくさんの本があるでござる!!」

「あい、でござる!!」

「いつまでやってんのよそれ………それにしても結構な数の本ね。」

 

エバルー屋敷の書庫に入った一行は早速目的の本を探し始めた。しかし部屋の壁一面に広がる本棚にはいくつもの本が納められており、そこから一冊を探すのは至難の業。

 

「おおっ、金色の本はっけーん!!」

「真面目に探しなさい!!………って、その本!!」

 

かと思われたが野生の勘が働いたのか、ナツが目的の本をあっさりと見つけた。

 

「"日の出(デイ・ブレイク)"!!」

「見つかったー!!」

「よし、ならば長居は無用、出よう!!」

「その前にさっさと燃やしておこうぜ。」

 

と、ナツが"日の出"を燃やそうとした時。

 

「ち、ちょっと待って!!」

 

ルーシィが"日の出"を奪うと目を輝かせたのだった。

 

「これ………作者ケム・ザレオンじゃない!!」

「ケム?」

「魔導士でありながら小説家でもあった人よ!!」

「いい冒険小説書いてた人なんだよね。俺は好きで読んでたな。」

「あたしも好きで全作品読んでたはずなのに"日の出"なんて知らなかった………って事は未発表作品!?」

「いいから早く燃やそうぜ。」

「ダメ!!そんなもったいない事!!」

 

ケム・ザレオンの著書と知り、破棄をためらうルーシィ。すると、床から声がした。

 

「なるほど、ボヨヨ………貴様らの狙いは"日の出"だったか!!」

「!!」

「エバルー………!!」

 

地面から出てきたのはエバルー公爵本人だった。

 

「しかし、魔導士どもが躍起になって何が目的かと思えば………そんな"くだらん本"だとはねぇ。」

「くだらん本?」

「(依頼主が200万J(ジュエル)払ってでも破棄したい本………エバルー本人までくだらないと断ずる本………)」

「まぁ燃やせばこっちのもんだ。」

「ダメ!!絶対にダメ!!」

「ルーシィ!!仕事だぞ!!」

 

頑なに"日の出"の焼却を拒むルーシィに業を煮やし声を荒げたナツ。するとルーシィはその場に座り込み"日の出"を読み始めたのだった。

 

「じゃあせめてここで読ませて!!」

「ここでか!?」

「………やれやれ、いつの間にかじゃじゃ馬姫の護衛になるとは。」

「ぐぬぬ………吾輩の前でふざけおって、けしからん!!来い、バニッシュブラザーズ!!」

 

すると本棚が仕掛け扉となって開き、中から二人組の男が現れた。

 

「やっと仕事の時間か。」

「金だけ貰ってちゃあママに叱られちゃうぜ。」

「あの紋章!!傭兵ギルド、南の狼だよ!!」

「………報酬が跳ね上がったのはこいつらが原因か。」

 

ナツ、ハッピー、リュークとエバルー、バニッシュブラザーズが睨み合い緊迫した空気が漂い始めた室内。しかし、そんな空気など意に介さずルーシィは"日の出"を読み続けていた。

 

「「「おい!!」」」

「………ふざけた奴らだ。」

「これが妖精の尻尾の魔導士か………」

「バニッシュブラザーズ!!あの本を取り戻し、まずはあの女を殺せ!!」

 

エバルーの命令に応じたバニッシュブラザーズは読書に夢中なルーシィに襲い掛かった。

 

「ハァ………破謀れ(はかれ)、賢風の紋章士(エムブレム)!!」

 

紋章士を顕現したリュークは"ギガウィンド"の魔道書を出し、ルーシィとバニッシュブラザーズの間に竜巻を発生させた。

 

「「むっ………!!」」

「わわっ!!」

 

バニッシュブラザーズの動きを牽制すると同時にルーシィの読書を中断させたリュークはルーシィに向かって鋭く怒鳴った。

 

「ルーシィ!!敵地のど真ん中で読書って、死にたいのか!?」

「ちょっと待って、リューク!!………もう少しなの。」

「もう少し………?」

 

何かに気がついたルーシィは不意に立ち上がった。

 

「ナツ、リューク、少し時間をちょうだい!!」

「はぁ!?」

「この本、何か"秘密"があるみたいなの!!」

 

そう言い残し、ルーシィは部屋を走り去ってしまったのだった。

 

「"秘密"、だと………?ならばこうしちゃおれん!!あの娘は吾輩自ら捕まえる、バニッシュブラザーズよ、そいつらを消しておけ!!」

 

続けて、ルーシィの言い残した"秘密"に反応したエバルーも地面に潜り、彼女を追いかけたのだった。

 

『………もう無茶苦茶ですね。これと比べたら亡命中の姫を護衛する方が楽です。』

「全くですよ、セネリオ。」

 

独断行動が立て続けに発生し、収拾がつかない事態にリュークは顕現した魔道士姿の紋章士、セネリオと共にため息をついた。

 

「ハッピー、ルーシィを追いかけて。必要ならフェルトも呼んでいいから。」

「あいさー!!気をつけてね!!」

「おう、ルーシィを頼むぞ!!」

 

ハッピーもルーシィを追いかけ、残ったのはリューク、ナツとバニッシュブラザーズとなった。

 

「来い、火の魔導士と風の魔導士!!」

「ん?何で火って知ってるんだ?」

「風の魔導士?」

「全て監視水晶にて見ていたのだよ。」

「娘は鍵、つまり所有(ホルダー)系、星霊魔導士。ネコは疑うまでも無く能力(アビリティ)系の"(エーラ)"。」

「マフラーの貴様は炎を足に纏った、つまりは能力系の火の魔導士。そしてフードの貴様は隠していたようだが所有系、換装魔法と召喚魔法を用いた風魔導士で間違いないだろう。」

「……………。」

「じゃあ、覚悟はできてるな?黒焦げになる。」

「できていない、と言わせて貰おう。何故なら、火の魔導士は私の最も得意とする相手だからな。」

 

と、バニッシュブラザーズの兄が背中に背負っていた巨大な平鍋を取り出した。しかし、その瞬間リュークの放った暗器の"スティレット"が平鍋に激突し、兄の手から離れた。

 

「何ッ!?魔法でもない飛び道具だと!?」

「………その程度でよくも傭兵続けられたね。」

「あ?」

『その程度の洞察力でよく生き残ってこれましたね、三流傭兵………と言ったのです。』

「テメェ………!!なめやがって!!」

 

リュークとセネリオの挑発に乗ったバニッシュブラザーズの弟は、兄が平鍋を拾っている間にリュークへ飛び掛かった。

 

「魔導士風情が、戦闘のプロである傭兵に敵うと思うな!!」

 

そしてリュークに殴りかかろうとした弟。しかし、その攻撃はまるで吸い寄せられたかのように標的をナツに変更したのだった。

 

「当たらねぇ、よっ!!」

「!!」

「傭兵をナメた目で見る貴様には、痛い目を見て貰おうか!!」

「……………。」

 

続けて兄も平鍋を振り上げ、リュークに襲いかかろうとしたが途中で狙いが逸れ、ナツに攻撃が向いた。

 

「何っ!?」

『どうしたのですか?魔導士風情が、と吠えた割にはこちらへの攻撃が無いようですが。』

「貴様………!!」

「おっ、よく分からねぇが俺を狙うならいいぜ、まとめて来い!!」

 

いくらリュークと紋章士セネリオが煽り、挑発してもバニッシュブラザーズの攻撃は全てナツへと向かってしまう。紋章士セネリオのシンクロスキル、"囮指名"による誘導が働いているからである。

 

「くそっ、どこまでも馬鹿にしやがって………!!」

「落ち着け!!ならば一人ずつ倒せばよい。我らの身体能力があれば魔導士など相手にならん!!」

「………とか言ってる割には当たってねぇけどな。」

 

仕方無くナツへの集中攻撃に切り替えたバニッシュブラザーズ。しかしナツはそれに負けない身体能力を発揮し、迫り来る波状攻撃をかわしていた。

 

「………なるほど。少しは鍛えているな。」

「兄ちゃん、アレなら避けれねぇ!!合体技だ!!」

 

そう言い飛び上がった弟は兄の平鍋に乗り、兄が弟を打ち上げたのだ。

 

「俺達がバニッシュブラザーズと呼ばれる理由を教えてやる!!」

「"消える"、そして"消す"からだ。ゆくぞ、"天地消滅殺法"!!」

 

打ち上げられた弟に視線が向いたナツ。するとナツの視覚外から兄が接近し、平鍋でナツを薙ぎ払った。

 

(うえ)を向いたら、(した)にいる!!」

「ごあっ!!………ちっ!!」

 

今度は兄に視線を向けたナツ。するとナツの真上から弟が落下して来た。

 

(した)を向いたら、(うえ)にいゴハッ!?」

「何だと!?」

 

しかし、弟が落下攻撃をナツに当てる直前に無数の風の刃が襲い掛かり、弟を撃ち落としたのだった。

 

「バカな!?我らの"天地消滅殺法"を破るだと!?」

『バカな、と言いたいのはこちらだよ。ただの子供騙しをボーっと見ているとでも思った?』

 

バニッシュブラザーズがナツに掛かりっきりになっている間にリュークは紋章士セネリオと"エンゲージ"し、エンゲージ武器である風の最上級魔法"レクスカリバー"で弟を撃破したのだった。

 

『さて、もういいですか。これ以上は時間の無駄です。』

 

そう言うとリュークは炎、雷、風の魔力を一度に纏い、残るバニッシュブラザーズの兄に炎魔法から放った。

 

「炎も使えるか!!だが、貰った!!」

 

兄が平鍋を前に出すとリュークの放った炎が平鍋の中に吸い込まれていった。

 

「対炎魔導士兼必殺技、"火の玉料理(フレイムクッキング)"!!」

『やはりか。はあっ!!"ディザスター"!!』

「私の平鍋は炎を吸収し、威力を倍加させ、吹き出す!!今更止めようと遅い!!」

 

炎、雷、風の魔法を立て続けに放つエンゲージ技"ディザスター"をそのまま繰り出したリューク。しかし、兄に吸収、倍加された炎によって雷魔法による雷と風魔法による竜巻と氷は止められてしまった。

 

「そこまでの魔法を一度に出せるとは相当の魔力を持ち得ているようだが、その魔力が仇となって自分の身を滅ぼすのだ。」

『……………!!』

「自らの炎に焼かれるがいい、グッバイ。」

 

そして倍加された炎が雷と風を呑み込み、リューク目掛けて放たれようとしたその時。ピシ、という音が部屋に響いた。

 

「ん?」

『………ようやくか。』

 

最初は1回だったその音は次第に複数回鳴り始め、やがてミシミシ、バキバキと音を変えていき、間もなく平鍋は砕け散ったのだった。

 

「何っ!?私の平鍋が砕かれただと………熱っっっ!!」

『平鍋持って炎が得意などと言えば想像はつくよ。バカ正直に炎だけ出す訳無いだろう。』

 

鎧を貫く"スティレット"でヒビを作り、炎で加熱した所に雷で衝撃を与えトドメに竜巻と氷で急冷して平鍋に多大な負荷をかける。そして負荷に耐えられなくなった平鍋は砕け散り、制御できなくなった炎は兄に降り注いだ。

 

「ぐわあっ!?貴様、ここまで見越して………!!」

『当然だよ。目先しか見えない傭兵は長続きしないよ。じゃあ、後はよろしく。』

「よし来た!!任せな!!」

 

兄の制御を離れ、辺りに撒き散らされた炎。だがその炎は待ってましたと言わんばかりに飛び出したナツが全て吸い込んで食べたのだった。

 

「炎を、食べただと!?」

「うわっ、何か色々混ざっててマズっ!?まぁいいや、これで終わりだ!!"火竜の鉄拳"!!」

 

そして多量に不純物を含んだとは言え、炎を食べて強化されたナツの正拳突きで兄もノックアウトされたのだった。

 

「何だったんだこいつら?」

『さぁ?戦闘のプロって言うにはだいぶお粗末だったけど。』

 

バニッシュブラザーズを倒したリュークとナツ。だがリュークは戦闘態勢を解除せず、別のエンゲージ武器である"サンダーストーム"に持ち替えた。

 

『はっ!!』

 

そして魔力を籠め、何も無い方向に放ったリューク。だがリュークは満足げだった。

 

『"サンダーストーム"は命中させるのが難しいけど、フェルトのおかげで標的が見えるからその弱点が無くなるのが助かる。』

 

"サンダーストーム"は他の武器には無い長射程を誇る魔道書であるが遠い敵や壁の向こうの敵に攻撃するには上手く見えず当てにくい弱点がある。だがリュークはフェルトの"視覚共有"によってその弱点を潰し、遠く離れた相手でもしっかり見て当てられるようにしていた。

 

「………さて、あとはルーシィと合流しようか、ナツ………って、あれ?」

 

邪魔者を倒した事でルーシィと合流しようとナツに提案したリューク。しかし、"エンゲージ"状態を解除したリュークが振り向くとナツの姿は消えていた。

 

「何いっ!?今度はどこに行った!?」

『見失いましたね………だからやり辛いんですよ、誰も彼も自由過ぎて。』

「フェルトも見失ったみたいだな………どこに消えたんだ?」

 

=========

 

「ぎゃあああっ!!」

 

リュークの放った"サンダーストーム"の標的、それはルーシィを追い戦闘していたエバルーだった。

 

「今のは………」

「リュークだね。見えない所からの遠距離攻撃はいくつか持ってたよ。」

「本当に色々できるわね。逆に何ができないのかしら。」

「早起き。」

「ミラさんも言ってたけど、どれだけ弱いのよ………」

 

ルーシィとハッピーが会話していたその間に、"サンダーストーム"を食らったエバルーは再び起き上がった。

 

「ボヨヨ………邪魔が入ったがこの程度では吾輩は倒れん。さぁ小娘、"日の出"に隠された秘密とやらを話して貰おうか!!」

 

エバルーに迫られたルーシィだが、彼女は怯まずに話し始めた。

 

「"日の出"はエバルーが主人公のひっどい冒険小説。でも駄作だったのは書きたくもない小説を、家族の市民権を盾に脅して書かせたから。家族を守る為に執筆を決意したケム・ザレオンは、3年間、独房に閉じ込められた状態で執筆した……この3年間、彼がどんな想いでいたか、分かるかしら!?」

「………貴様、何故そこまで知っている?」

「全部この本に書いてあるわ。」

「はぁ?吾輩も読んだが、そんなこと一言も書かれていなかったぞ。」

「普通に読めばただの駄作よ。でもあんたも知らない訳じゃ無いでしょ………ケム・ザレオンは元々魔導士よ。」

 

その言葉でエバルーはハッとした顔をした。

 

「まさか………!!」

「そのまさかよ。彼は最後の力で、この本に魔法をかけた。」

「その魔法を解けば、吾輩への恨みを綴った文章が現れるという仕組みか!?け、けしからん!!」

「発想が貧相ね………確かにこの本が完成される経緯は書かれていたけど、ケム・ザレオンが本当に残したかった言葉はそんなくだらない事じゃない!!」

「な、何だと………!?」

「だからあんたにはこの本は渡さない、というかあんたごときが持っていい本じゃない!!開け、巨蟹宮の扉!!」

 

そしてルーシィは星霊の鍵を取り出し、星霊界の門を開いた。

 

「キャンサー!!」

「蟹キター!!」

 

所々に蟹の意匠を凝らしたヘアスタイリストの風体の星霊、キャンサーを召喚したルーシィ。すると蟹に反応してハッピーがはしゃぎ始めた。

 

「これ絶対語尾に"カニ"つけるよ!!オイラ知ってるよ、"お約束"って言うんだ!!」

「集中したいから静かにしてくれないかしら………」

 

すると、キャンサーが口を開いた。

 

「ルーシィ………今日はどんな髪型にする"エビ"?」

「エビーーー!?」

「空気読んでくれるかしら!?………それよりも、戦闘よ!!あのヒゲオヤジをやっつけて!!」

「OKエビ。」

「まさにストレートかと思ったらフックを食らった感じだね、うん。もう帰らせていいよ。」

「あんたが帰れば………」

 

ハッピーが驚き騒ぐのを余所に両手にハサミを構えたキャンサー。一方、エバルーは追い詰められていた。

 

「(秘密じゃと………まさか、吾輩の事業の裏でも書きおったか………!?マズい、それが評議員に渡れば、吾輩は終わり………ならん、それはならん!!)」

 

追い詰められたエバルーは懐から何かを出した。それはルーシィと同じ、金色の星霊の鍵であった。

 

「開け、処女宮の扉、バルゴ!!」

「え?」

「ルーシィと同じ魔法!?」

「しかもキャンサーと同じ黄道十二門!?」

 

エバルーが星霊界の扉を開門すると、先程ナツが倒したはずの筋骨隆々のメイドが現れた。

 

「お呼びでしょうか、御主人様?」

「バルゴ、その本を奪え!!」

「こいつ、星霊だったの!?」

 

だが、エバルーが召喚したバルゴには一つ、大きな誤算が付いていた。

 

「あっ!?」

「あ!!」

「なっ!?」

「ナツ!?」

「な、何故貴様がバルゴと!?」

 

何とバルゴと一緒にナツがバルゴの服を掴んだ状態で現れたのだった。

 

「あんた、どうやって!?」

「どう、ってこいつが動き出したから後つけてたらいきなり………」

「つけた、ってより掴んでたんでしょ………って、まさか、人間が星霊界を通過して来たって事!?」

 

双方にとって予想外の乱入者によって騒然とした場だったが、ナツの一言が全員を正気に引き戻した。

 

「ルーシィ、どうすればいい!?」

「はっ!!………そいつをどかして!!」

「おう!!」

「バルゴ、邪魔者を一掃しろ!!」

 

ルーシィとエバルーの指示はほぼ同時だった。しかし、ナツの方がバルゴより先に動いた。

 

「どりゃああっ!!」

「ぼふぉっ!?」

 

先に動いたナツが炎を纏い、全体重を乗せてバルゴを地面に叩きつけて戦闘不能にした。さらに、バルゴの撃破でエバルーが狼狽えているその隙にルーシィが鞭を取り出してエバルーを拘束した。

 

「もう地面には、逃げられない、わよっ!!」

 

そして思いっきり鞭を引っ張りエバルーを空中に投げ出したルーシィ。それに合わせてキャンサーが両手のハサミを構えながら飛び上がった。

 

「あんたなんか、脇役で十分なのよ!!」

「ホギョーーッ!!」

 

ルーシィとキャンサーの連携攻撃によってエバルーも戦闘不能。ヒゲと髪を全て切られた上でどさりと地面に倒れた。

 

「お客様………こんな感じでいかがでしょうか、エビ。」

「ええ、バッチリよ。」

 

こうしてエバルー屋敷での戦闘、即ちルーシィの初仕事の戦闘が幕を閉じた。

 

 

続く




まさかまさか、アイクを差し置いてセネリオを先に出すとはマジで思いませんでした………
紋章士の順番にこだわらずその場で最適な紋章士を、となった結果、隠密が性格上できないナツにタゲを集めたりリューク自身ややルーシィの身を守ったりするのに"囮指名"が便利だったのでセネリオを選んだのですが、いやはや………
ところで"サンダーストーム"や弓戦技の"曲射"みたいな奴の壁越え攻撃ってどう当ててるんでしょうね?同じ遠距離魔法でも"メティオ"とかだったら爆風で何とかできるかもしれませんが………因みにリュークの場合はフェルトのおかげで俯瞰視点で敵を見る事で解決してますが。
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