FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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赤、朱、紅、緋、赫。

「何が、あったの………?」
「     ?」

彩り豊かだったはずの里を一色に塗り潰す、一面の"赤"。

「にげ、て………!!」
「こ、の………ガハッ!?」

赤に染まった里、その中心には。

「……………」
「     ?」

全てを呑み込む"黒"が1つ、佇んでいた。


78章 手を繋ごう

天狼島からの帰還を間近に、突如現れたのは黙示録にある黒竜、アクノロギア。その黒竜は集まっていた妖精の尻尾の魔導士を見つけると地響きのような一吼えすると降下して来た。

 

「「逃げろーーー!!」」

 

アクノロギアを知る2人、リュークとギルダーツが同時に叫んだ。それにより何とかその場から離れた直後に降下したアクノロギアは前脚の爪でキャンプのあった場所を粉砕した。

 

「ウソだろ!?」

「なんて破壊力なの!?」

「なんなのよこれ………」

「なんなのよコイツ………」

「船まで急げ!!」

「とにかく走れ!!」

 

慌てふためく中でも一斉に逃げ出す皆。

 

「ウェンディ!!アンタ竜と話せるんじゃ無かった!?何とかならないの!?」

「私が話せるんじゃないよ!!竜は皆高い知性を持ってる、あの竜だって言葉を………」

「無駄な事考えてないで走れ!!」

「リュークさん………?」

「ホ………?」

 

殿に立ち、とにかく走って逃げろとしきりに叫ぶリューク。その表情は妖精の尻尾加入以前から彼を知るフェルトですら見たことのない、恐怖を抑えるので精一杯と言う余裕の全く無いものだった。

 

「あれは意味も無くただ殺すだけのもの!!人間だろうが、竜だろうが………ただ殺すだけの、竜の形をした別のナニカだ!!」

「だったら俺が、滅竜魔導士の俺が………!!」

「何とかできる程度の相手なら俺の故郷は滅びなかった!!俺の腹貫かれて再起不能寸前にならなかった!!それを治す為に母さんは力を失わなかった!!」

「……………!!」

「分かったら走れ!!そして、カムイ!!」

『はい!!これで少しでも………!!』

 

カムイを顕現したリュークは、"竜脈"で氷や炎、土柱を少しでもアクノロギアの進路を塞げるように展開した。

 

「(気休めにもならんか………!!心が折れそうだ、けど、ここで諦める訳には………!!)」

 

しきりに歯を食いしばり、震える足を足踏みで抑えようとしながら殿をしていた。そんな時、殿のリュークの前にマカロフが出た。

 

「マスター!?」

「………お主の家族や同胞を皆殺しにしたものを前に、"トラウマ"を前によくぞここまで踏ん張った。」

「マスター、何を………」

 

マカロフは腕を広げると、後ろにいる魔導士を振り向かず告げた。

 

「船まで走れ。」

 

するとマカロフは巨人となり、アクノロギアに組み付いた。

 

「ゴフッ………!!」

「マスター!!」

「無茶だ!!敵うわけねぇ!!」

「マスター!!やめてください!!」

「………!!」

 

いくらマカロフが巨人となってもアクノロギアはそれ以上に大きく、力も勝っていた。更に傷が開き口や脇腹から血が出て、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。

 

「こうなったら俺達も加勢に!!」

「当たって砕けてやるわ!!」

 

マカロフに加勢しようと次々と踵を返す妖精の尻尾の魔導士達。

 

「最後くらいマスターの言う事が聞けないのか、クソガキ共!!」

 

だがマカロフが一喝。すると1人、また1人と船へと走り出した。そして最後に殿をしていたリュークも走り出したのを確認すると、マカロフは心の中で呟いた。

 

「(それで良い。いずれ分かる時が来る………

涙など虚空。人が死ぬから悲しいのか、悲しみが人を殺すのか、答えは各々の胸の奥に………誇り高きクソガキ共よ、生きよ!!未来へ!!)」

 

するとマカロフは力を振り絞った。

 

「何のつもりか知らんがなァ………これ以上先には進ませんぞォ!!この後ろには、ワシのガキ共がいるんじゃあ!!」

 

満身創痍の身体でも、全力でアクノロギアの巨体を止めるマカロフ。

 

「グルル………ガアッ!!」

「ぶは………がっ!!」

 

だがアクノロギアの力はマカロフのそれを凌駕しており、吼えながらマカロフを倒し、のしかかった。

 

「うあああッッッ………!!」

 

骨が折れ、尋常では無い痛みがマカロフを襲った。だが当のマカロフは、笑っていた。

 

「(初めて親らしい事ができたわい。もう思い残す事など………)」

 

自分の"子供"が逃げ切ったであろう事に満足そうな表情を浮かべたマカロフ。後はこの痛みを一時でも受け止め、瞳を閉じるのみ………そう覚悟したマカロフの痛みが、ふと消えた。

 

『ッ………!!』

「………!?」

 

痛みが消えた理由。それはアクノロギアを"僅かに"ではあるが、一回りも二回りも小さい白い竜が捨て身の突進で突き飛ばしたからである。

 

「ガアッ………!!」

「ぐっ………!!」

 

鬱陶しそうに腕を振り回したアクノロギア。だがその白竜、リュークは竜化を解除して攻撃をかわすと紋章士マルスと"エンゲージ"。

 

『"スターラッシュ"!!』

「………!!」

 

"ファルシオン"による竜特効のラッシュを繰り出したリュークは手応えを確かめる前に巨大化が解除されたマカロフを拾い上げた。

 

「リューク、何故………!?」

 

抱えられる手や身体からまだ震えているのを感じたマカロフ。だがその顔を見上げると、リュークは歯を小さくガチガチと鳴らしていたものの、目だけは力強く焦点もしっかりと合っていた。

 

『………実の父親の記憶が無い俺にとっての"親父"はあなただけです。』

「!!」

『家族と同胞を奪った奴に………"親父"まで奪われて、なるものかあああ!!』

 

引き返していたのはリュークだけでは無かった。

 

「じっちゃんを、返せ………!!」

 

ナツがアクノロギアの腕に飛びかかり、

 

「かかれーーーっ!!」

 

エルザの号令で全員がアクノロギアに一斉攻撃を仕掛けた。

 

「き、貴様ら………」

「俺は反対したんだぜ?けどよ………老いぼれを残して逃げられるような奴等かよ、あんたのギルドは?」

「バカタレが………!!」

 

ラクサスの言葉にマカロフは涙を流した。だが、これで状況が好転した訳では無い。

 

「うあっ!!」

「きゃっ!!」

「皆無事か!?」

「大丈夫だが………!!」

「攻撃が全く効いてねぇ!!」

「(こいつ、俺と戦った時の力を出してねぇ………遊んでやがる。)」

『(竜特効の攻撃すら意に介して無い………!!何か、糸口は………!!)』

 

一斉攻撃を受けても、周りを飛ぶ虫を鬱陶しがる程度にしか感じていないかのようなアクノロギアはそれを振り払うと空へ飛び上がった。

 

「飛んだ!!」

「帰ってくれるのかなぁ。」

『そうであって欲しいけど………!!』

「ホホ………」

「油断しちゃダメよ。」

 

空に飛び上がったアクノロギアが取った行動。それは息を大きく吸い込む事だった。

 

「あれは………!!」

咆哮(ブレス)だ!!」

 

アクノロギアの行動にいち早く気付いたのはガジル。

 

「まさか、島ごと消すつもりじゃないでしょうね!!」

「マジ………」

「そんな………」

「防御魔法を使える者は全力展開!!」

「了解!!」

 

防御魔法の展開を指示したエルザ。そこから最初に動いたのは紋章士マルスとの"エンゲージ"を解除したリューク。

 

「"神霧の原野"………そして、"神竜王の竜鱗"………!!」

 

一箇所に集まった仲間を包むように霧を展開し、そこから皆を守るように無数の霧の盾を鱗状に重ね展開。

 

「ならあたしは………凍晶け(いてつけ)、氷華の紋章士(エムブレム)………フィヨルム!!」

「だったら、光嗣げ(ひきつげ)、継承の紋章士(エムブレム)………セリス!!」

「「"エムブレム・エンゲージ"………そして、"氷の聖鏡"!!」」

 

更にルーシィとリュークが紋章士フィヨルムと、彼女の力を"継承"した紋章士セリスの力で氷の盾を重ねた。

 

「氷なら俺も!!"氷造形(アイスメイク)(シールド)"!!」

「ジュビアの水も使ってください、グレイ様!!」

 

加えてグレイも氷の造形魔法で盾を展開、ジュビアの生成した水を凍らせて質量を増やした。

 

「皆さんに防御力強化、"アームズ"!!」

「"術式"を書く時間が………!!」

「大丈夫、"術式"以外にも文字の魔法に防御魔法はたくさんある!!」

 

ウェンディは天空魔法による防御力強化の付与(エンチャント)、フリードとレビィは文字による防御魔法を展開した。

 

「後は………皆、魔力を集めて!!」

「手を繋ごう!!」

 

リサーナとミラの提案で、皆の魔力を結集させるべく輪になって手を繋いだ。

 

「俺達はこんな所で終わらねぇ!!」

『うん!!絶対に諦めない!!』

「皆の力を1つにするんだ!!ギルドの絆を見せてやろうじゃねぇか!!」

『二度も仲間を奪わせない………絶対に守り切る!!そして必ず帰るんだ………妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ!!!!』

 

魔力と心を1つにし、アクノロギアの咆哮を防ごうと足掻く妖精の尻尾の魔導士達。彼らはその側でじっと、微笑みながら佇む少女に気づかぬまま両手に繋がれた仲間の手をしっかりと握った。

 

そしてほぼ時を同じくして、アクノロギアの口から、自身の身体より大きな直径の、特大の咆哮が放たれた。その咆哮は一瞬にして天狼島そのものを呑み込み爆発を起こした。

 

その爆発が晴れると、天狼島のあった場所にはポッカリと"穴"が開いた。だがその穴はすぐに海の水が覆い、蓋をした。

 

X784年12月16日。アクノロギアにより天狼島は跡形も無く消滅し、そのアクノロギアもすぐに姿を消した。

その後、マグノリアで仲間の帰りを待っていた妖精の尻尾のメンバーや、妖精の尻尾と親交のあったギルド、そして評議員が力を合わせ半年に渡り近海調査を行うが、生存者はついぞ確認できなかった。

 

S級魔導士昇格試験に臨んだ者達は行方不明になったまま、7年の月日が流れたのであった……………

 

 

続く




これにて天狼島編は終わりです。
個人的には、ここが原作の折り返し地点だと思っていますが、90話でここと言う事は、おまけ挟んだりしたら200話くらいで完結………になるのでしょうか。果たして何年先の話になるのでしょうね。
100年クエストの事はさておきますが、そこまでの間でFEは新作リメイク合わせて2作くらい出ると勝手に思ってますがその時も何らかの形で組み込みたいですね。

次回はX791年までジャンプ………する前に幕間/外伝をちょっとばかり挟みたいと思います。内容はまだ決めてませんが、日常回やらリュークの過去やらOVAネタやらをやりたいなーと思ってます。
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