FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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次は星空の鍵編に行こう………とは思うのですが、それをするにはアニメを見返す時間が欲しい………マンガみたいに速読や読み返しが簡単にできる訳では無いのでゆっくり進行になる見込みです(星空の鍵編よりも大魔闘演武編の方がプロット早く決まったのもそこら辺の事情です。)

それまでは今回含めた数話で今後の伏線を交えて合間のお話をお出ししたいと思います。


80章 空白に遺す

リューク達がマグノリアに戻って来てから、再会の喜びを分かち合った妖精の尻尾の魔導士達。青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)など、7年前から親交もあり捜索に協力したギルドの魔導士も訪れたりして続いた喧騒は丸3日。

 

「ふぁ〜あっ。」

 

休み無く騒ぎ続けた後の明け方、ヘトヘトになりながらそれぞれが帰路につきリュークとフェルトも大あくびをしながら自分の家についた。

 

「………さてと。7年ぶりの我が家か。」

「ホホーッ。」

「どうなっている事やら………開けるぞ。」

「ホッ。」

 

鍵を差し込み、扉を開ける。

 

「………あらら。」

 

扉を開けた先の光景を見て、リュークは思わず声をあげた。何故なら家の中はまるで倉庫のように様々な物品が所狭しと置かれていたからである。しかしリュークは意外そうな顔はしていなかった。

 

「"手筈通り"、ではあるけども。書籍も傷まないように保管してくれてるし、定期的に掃除もされてるけども。好きにして良いって言ってあった割には残してくれてるね。」

「ホホッ、ホー。」

 

苦笑いしながら物品をかき分け、寝床の確保を始めたリューク。

 

「さて………今日はもう1日寝て、明日"交渉"に行きましょうか。」

「ホー………」

 

確保したスペースに寝袋を広げて眠ろうとしたリューク。だがそのタイミングで、扉がノックされた。

 

「はい………?」

 

お休みモードに入り、落ちかけていた瞼を擦りながら玄関に向かったリューク。

 

「リューク………」

「どうしたの………?」

 

扉を開けると、そこには今にも泣き出しそうなルーシィがいた。

 

「大家さんから追い出された………どうしよう………」

「………とりあえず入れ。何もない………と言うか、物しか無いが、腰を落ち着けてから詳しく聞こう。」

「うん………」

 

==========

 

事の顛末は単純。ルーシィは戻るや否や大家から7年分の家賃の支払いを求められたのだ。月7万J(ジュエル)を7年、つまり84ヶ月分で588万J。家計が常にギリギリだった彼女が払えるはずも無く追い出されたのである。

 

「女子寮の皆は足りない分はオマケしてくれたって話なのに………!!」

「で、俺の所に転がり込んだ、と。」

「うん、リュークは持ち家だって知ってたから………でも………」

 

ルーシィは物で溢れかえっている部屋を見回した。

 

「これは、何?何でこんな物で溢れかえってるの?普通逆じゃない?」

「そう言う"約束"を結んでたからね。」

「………どう言うこと?」

「本当は明日行く予定だったけど、このままじゃあ2人分のスペースも無いから………これから行くとしますか。」

「どこに?」

「"約束"をした相手に。」

 

==========

 

ルーシィが来た頃には夢の中だったフェルトを置いてリュークとルーシィはマグノリアの街の中へと入って行った。

 

「この角を曲がった先のはずだけ、ど………?」

 

そして表通りから少し入った所の角を曲がり目的地についた2人。だが、目的地の外観が記憶と随分異なっていたのでリュークは不思議そうな声をあげた。

 

「………知らない内に、随分店構えが大きくなったもんで。」

「ここって………」

「各地に点在する、同じ顔の姉妹が経営する知る人ぞ知るお店、人呼んでアンナの秘密のお店………の、はずなんだけど。」

 

リュークが7年前にお世話になっていたアンナの店は、一見すると民家にしか見えずどう儲けているのかと疑問に思う位には目立たず見つけにくい佇まいだった。しかし今来てみると、通りの一角を占める程の大きな店構えとなっていたのだ。

 

「とりあえず入るか。」

 

立ち止まっても仕方ない、と店に入ったリューク。

 

「いらっしゃいませー、ってリュークじゃない!!無事で良かったわ!!」

「久しぶり。"約束"、守ってくれて感謝する。」

「感謝される筋合いは無いわよ。これは正当な"取引"なんだもの。それに、色々と勝手に使わせて貰ってたし。」

「その割には随分とそのままにしてくれてるじゃないか。もっと売られてるものだと思ってたけど………」

「………あのー。話が見えないんだけど。」

 

店主のアンナと話し込んでいたリュークに、蚊帳の外だったルーシィが割って入ると事の真相が語られた。

 

「俺が死んだり行方不明になったら、家とその中の物は売るなり使うなり好きに使ってくれ、って約束をつけてたんだ。」

「そんな生前贈与みたいな事してたの?何でまた?」

「俺は戦いに身を置く稼業を選んだ以上、いつ死んでもおかしくない。だけど死んだ時に遺した物を無為に捨てられたり盗まれたりするのも嫌だったからさ、信頼できる人にお願いしたんだ。」

「ふーん。らしいって言えば、らしいけど………」

「さっきの質問に戻るけど、何でほとんどがそのままに?」

 

好きにしてくれ、と頼んだ割にはそのままに保管されていた事に疑問が残るリュークに、アンナが答えた。

 

「理由は2つあるわ。でもどちらも、いつ明かされたか忘れたけど、あなたが神竜だからよ。」

「俺が神竜だから?」

「まず1つ。千年生きたあなたはそんなに気に留めて無かったかもしれないけど、本来なら重要文化財に登録されるレベルの貴重な品がゴロゴロ転がっていれば、売るに売れないわ。」

「確かに、歴史的大作の初版とか、大昔に絶版した本とかしれっと置いてあったわね。」

「他にも世間では失われたはずのものもや、世に出れば歴史がひっくり返るようなものまで見つかるから、途中から怖くて諦めたわよ。それでもう1つの理由だけど………」

 

一息置いてアンナは話を続けた。

 

「お祖母様に言われたの。「その人はきっと戻って来る。」って、確信めいた口振りでね。」

「お祖母様?」

「前に話を聞いたっけ………この大陸のアンナ達を一種の商業ギルドに纏め上げて勢力を拡大した"中興の祖"かな?」

「そう、今もマグノリアのお店で店番をしてるわ。それで、あなたの家の扱いに困った時に会って相談したんだけど、その時に言われたの。」

「リューク、あんたはその人に会った事あるの?」

「いや、無いよ。無いけど………」

 

するとリュークはアンナに問いかけた。

 

「そのお祖母様って、異界出身だよね?」

 

アンナは頷いた。

 

「どの異界で、どんな人と会ったかは分からない。でも、後に"英雄"と呼ばれるような人達と、大きな冒険をしたって話は聞いた事があるわ。」

「その"英雄"と俺がどこかで重なったか………」

「そしてお祖母様の言う通り、あなたは帰って来た。あの言葉を信じて良かったわ。」

「………誰かは分からないけど、礼を言う人が増えたな。」

「………さて。家主が帰って来た以上、片付けはすぐに向かうわ。では、帰る前に何か買っていかない?」

「それはいいけど………」

 

リュークは再び店内を見回した。

 

「随分店を広げたね?どう言う心境の変化?」

「3年前に街の商工会の会長に任命されちゃってね………以前の店構えのままでいられなくなっちゃったのよ。」

「なるほど。その広がった店の半分は魔導二輪で埋め尽くされてるけど、それは?」

「ウチの主力商品よ。あなたに作った魔導二輪を元に、改良に改良を重ねて、今やアンナ印の魔導二輪はこのフィオーレ王国一と呼び声高いのよ?」

「へぇ………それはそれは。」

「そうだ!!無事帰還したお祝いに、新しい魔導二輪を開発してあげるわよ?」

「………いいのか?今の俺は碌な金無いよ?」

「お代はあなたの家から前払いで貰ったようなものだから心配しないで。ただ、このお店が立派になった"恩人"に半端なものは渡せないから数ヶ月は欲しいけど。」

「願ってもない提案だ。ならよろしく頼もうかな。」

「かしこまりました!!他にも何か見ていかない?」

「それなら………」

 

そこからしばらく、他愛もない話をしながらリュークとルーシィはアンナの店で消耗品を買い、その後アンナ、そして他の店員と共に丸一日かけて家の片付けを行った。そして片付けが終わるとリュークとルーシィは疲れ果て、次の日は一日泥のように眠りについた。

 

==========

 

一日かけて爆睡し、体力を回復したリュークとルーシィ。

 

「ねぇ、アカリファに行かない?」

「アカリファ?あそこは………」

「………うん。アンナのお店を見た時に、お父さんの顔を思い出したんだ。今頃商業ギルドで元気にしてるかな、もしかしたらあたしの事心配してるかもな、って。」

「………そっか。」

「………べ、別にお金を借りに行くんじゃ無いのよ?」

「何も言ってないけど?」

 

父ジュードの事を思い出し、彼に会いに行く事になった。

 

「もう馬車には乗らねぇ………二度と、二度と、だ。」

「もう着いたよナツ。」

「何であんた達までついてくるの?」

「金がねーんだよ!!」

「ルーシィパパはおいしい魚の話いっぱい知ってるんでしょ!?」

「それを言うならおいしい儲け話だけどね。知ってるかどうかは会ってみないと分からないけど………てかあんた達も借家じゃないでしょ?」

「金庫が無くなってたんだよぉ………」

「あらら。」

「ところでリュークが一緒に来たのって、ルーシィパパに挨拶する為?」

「いや違うが?挨拶できるならそれはそれだけど。」

 

ナツとハッピーを加え、ジュードが加入した商業ギルドのあるアカリファの街まで到着した一行は真っ直ぐに商業ギルド、ラブ&ラッキーへ向かった。

 

「あの、すみません。」

「はい?」

「ジュード・ハートフィリアと言う人を探しているんですが、ここに在籍ですよね?」

「あ………もしかして、ジュードさんの娘さん?」

「はい!!」

 

しかしルーシィの正体に気づいた受付は気不味そうな顔をし、目を逸らした。

 

「……………。」

「もしかして、もうここにはいないんですか?」

「え、と………大変、お伝えし辛いのですが………」

 

言葉に詰まりながら、受付は現実を突き付けた。

 

「ジュードさんは一月前に亡くなられました。本当に気の毒です。」

「………!!」

 

==========

 

「……………。」

「ルーシィ。」

「ハッピー。」

 

ルーシィの母レイラの墓の隣に埋葬されたジュードの墓を参った後、一行は無言で帰路へとついた。途中で重い雰囲気に耐えられずハッピーがルーシィに声をかけたが、ナツが首を横に振りながら止めた。

 

「気、つかわせちゃってごめんね。」

「大丈夫?ルーシィ。」

「………ちょっと驚いちゃってるだけ。」

「……………。」

「2ヶ月前………いや、もう7年前か。あの時アカリファでお父さんに会ったのが最後。」

 

気を遣われているのに申し訳なさを感じたのか、ルーシィがついに口を開いた。

 

「あたし、小さい頃からずっとお父さんの事好きじゃなかったんだ。ファントムの件もあったしね。でも………あの時アカリファの事件で会って、話をしたところからあたしとお父さんとの関係が変わりそうな気がしたの。それが、過労で体を壊しちゃうなんてあの人らしいな………」

 

ルーシィは空を見上げた。

 

「何でだろ?悲しいのに、寂しいのに、涙が出ないんだ。やっぱりあたし、本当はお父さんの事………」

「それは違うぞ。」

「ナツ?」

「うまく言えねーけど、涙が出るとか出ねーとか、そんな事じゃないと思うぞ。」

「本当に好きじゃないなら、会いに行きたい、なんて思わない。………早く帰って休もう。」

「リュークも………ありがと。」

 

その後、会話も少ないまま一行はマグノリアに戻った。

 

==========

 

マグノリアに到着した一行。ナツとハッピーはそのまま帰宅したが、ルーシィは何となく戻る気にならず公園のベンチに座り込み、リュークもその近くに腰かけた。

 

「……………。」

「……………。」

「………ここにいても、面白くも無いよ?」

「面白いからここにいる訳じゃないよ。」

「………そう。」

「「……………。」」

 

しばらく何をするでもなく座っていた2人。すると、そんな2人に向かってズンズンと迫って来る人影が1つ。

 

「大家、さん?」

 

無言でルーシィの目前まで迫った大家はルーシィ、そしてついでにリュークの足を掴んで持ち上げるとそのままズルズルと引き摺って来た道を戻り始めた。

 

「きゃっ!?何すんのよ!?」

「………何で俺まで?」

「誰かー!!助けてー!!」

 

そのまま引き摺られた2人はとある部屋に放り込まれた。

 

「きゃっ!!」

「うわっ!?」

「って、ここ………あたしの部屋。でもあれ?」

「随分と、綺麗だな………ホコリ1つ無い。」

 

7年も使われていない部屋にも関わらず、天狼島へ出発した時と変わらない様子だった。すると、扉の向こうから大家が話しかけた。

 

「掃除は毎週してんだよ。さすがに服は何着かダメになっちまったけどね。と言う訳で一着貰ったわよ。」

「そう言えば、見覚えのある服だったな。」

「………テーブルの上を見てご覧。」

「!!」

 

大家の言われた通りにテーブルを見ると、そこにはプレゼント箱が6つ。

 

「毎年、同じ日に送られてくるんだよ。」

 

プレゼント箱には全て同じ筆跡で、同じメッセージカードが付いていた。

 

「"親愛なる娘へ

お誕生日おめでとう

パパより"」

「覚えてて、くれた………」

「………行方不明だと言うのに、毎年………」

「そして今朝………7年分の家賃と共にもう1つ届いてね。」

 

ソファに置かれた、7つ目のプレゼント箱。そこには手紙が一緒に付けられた。

 

「"親愛なる娘へ、お誕生日おめでとう!!………と言っても、君はこの手紙をいつ読むのだろうね?………」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「君が友達と一緒に姿を消したと聞いてだいぶ経つ。とても心配だが私は信じているよ。

 

君はレイラによく似ている、たくさんの"運"に恵まれた子だ。きっと無事だと思う、また会えると信じている。

 

私の方は近々西方との大きな商談がまとまりそうでね、忙しいけど充実した日々を送っているよ。

 

毎日君やレイラの事を思い出す。君は私とレイラの誇りだ。自分の信じる道を強く生きて欲しい。

 

早く君に会いたいよ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お父さん………」

 

手紙はこう締められた。

 

「ルーシィ………私は君を、ずっと愛している。"」

 

読み終わった手紙に、雫がポタポタと落ち始めた。

 

「あたしも………大、好き、だよ………!!」

 

やがてその雫はポロポロ、ボロボロと手紙に落ちた。そしてルーシィは涙を止め処なく流しながらソファに突っ伏し、声をあげて嗚咽した。

 

「……………。」

 

今はそっとした方がいいか。そう思い、リュークは部屋を去ろうとした。しかし扉は開かなかった。

 

「待ちな。もう一通、届いていたんだ。恐らくだけど、あんた宛だ。」

「もう一通………?」

 

テーブルを見ると、そこにはルーシィ宛では無い手紙が1つ。

 

「………"青と緑の髪と目をした、ルーシィの先輩へ"………俺の事か?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「"このような宛名書きである事を、許して欲しい。ひとえに君に名前を聞けなかった私の落ち度だ。

 

君がいつこの読むか分からないけど、きっと君も無事だと信じてこの手紙を送る。

 

私のお願いは2つ。1つ目は、改めてルーシィの事を頼む。あの一瞬会っただけでも、君の目は優しくて誠実そうな眼差しだったのはよく覚えているから、君になら大丈夫だろう。君とルーシィの関係が先輩後輩なのか、それ以外なのかは分からないけど、ルーシィが君に心を許していたのも感じ取れたから、何卒頼むよ。

 

2つ目は、ギルドでのルーシィの様子を聞かせて欲しい。恥ずかしながら私は仕事ばかりで、ルーシィの事をちゃんと見てあげられなかった。だからルーシィが普段どのように過ごして、どのような仕事や冒険を経験して、そして何よりもどう笑っていたのかを教えて欲しい。私の知らないルーシィの事を、次会う時に教えてはくれないだろうか。

 

お願いばかりで申し訳ない。しかし、繰り返しになってしまうがルーシィを、私達の自慢の娘を、どうかよろしく頼む。

 

ジュード・ハートフィリア」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……………。」

 

手紙を読み終えたリュークはそれを封筒にしまい直し、懐に入れた。

 

「(………分かりました。)」

 

そして、窓の外を見ながら心の中で誓った。

 

「(あなたの愛娘は、俺が守ります………だから、ルーシィの事を見守っててください。)」

 

リュークは、いつの間にか泣き疲れて寝てしまったルーシィに毛布をかけ、起きるまで側に留まった。

 

 

続く

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