幸せを運ぶ青い鳥ニティ生徒   作:にゃんたるとうふ

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―――トリニティ総合学園 トリニティ・テラスにて

 

手に持っていた資料から視線を外したティーパーティーのメンバーの一人である少女『桐藤 ナギサ』は、軽く背を伸ばすとすっかり冷めてしまった紅茶に口を付ける。

「ふぅ・・・冷めてもまだ美味しい、流石はフェリさんといったところでしょうか?」

カップをソーサーに戻したナギサは空を見上げるように顔を向け、先程名を口にした少女の姿を思い浮かべて頬を緩ませる。

「ミカさんとセイアさんはそれぞれの派閥の者達と話し合い、フェリさんは正義実現委員会に資料を届けに行っている・・・エデン条約が無事に締結し、こうしてゆっくりできるのもフェリさんとセイアさんのおかげですね」

過去の出来事を思い返してしみじみとした雰囲気を纏うナギサを尻目に、テラスの扉が開かれてティーパーティーのメンバーの一人である『百合園 セイア』が姿を見せる。

「おや、ナギサ一人だけかい?ミカ・・・はともかくとして、フェリはまだ戻ってきていないのかい?」

「お二人とももう少ししたら戻ってくると思いますよ、っと噂をすれば・・・」

セイアの後方へと視線を向けたナギサにつられる形で振り返ると、慌ただしく駆ける足音が近付いてくると同時に扉が勢いよく開かれ、最後のティーパーティーのメンバーである『聖園 ミカ』が顔を見せたと同時にテラスを見渡す。

「たっだいまー☆相変わらずパテル分派の人達っておんなじことを一点張りで疲れるよー、これはフェリに癒してもらうしかないよねっ・・・それでナギちゃん、フェリは?」

「彼女はまだ正義実現委員会に行っているよ、すぐに戻ってくるとは思うけどね」

「セイアちゃんには聞いてないんだけど・・・まぁ、いいや☆それじゃあ、フェリが戻ってくるまでゆっくりしてよっか」

「では紅茶を淹れましょうか、セイアさんも座って待っていてください」

席を立って紅茶の準備を始めるナギサの後ろ姿を眺めながら、椅子に腰を下ろしたセイアを横目で確認するとポツリと呟くように声を漏らす。

「・・・こうしていつも通り、二人と過ごせてよかっ――――」

「・・・」

不意にセイアから視線を感じたミカは口を噤み、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべるセイアの様子にムッとした表情をして口を開く。

「・・・なに?」

「いいや、大したことじゃないとも。君がそんな素直な気持ちを口にするとはね」

「むぅ・・・」

セイアの言葉に唸り声を漏らしながらもそれ以上反論などを口にすることなく、もごもごと口籠りつつナギサが紅茶を淹れる姿に視線を向ける。

「それにしてもあの時、君が私の言葉を信じるとは思わなかったよ・・・いや、フェリの言葉だったからかな?」

「そりゃセイアちゃんよりも、フェリの言葉を信じるよねー☆だって私の大事な人だし?セイアちゃんは・・・うんっ!ついでじゃんね☆」

「清々しい物言いだね、君らしくて安心したよ」

安堵の息を吐くセイアが言い返してこないことに手持無沙汰な様子で唇を尖らせるミカの前に、用意を終えたナギサが淹れた紅茶を置いたことで一旦意識がセイアから逸れる。

「お二人とも言い争うのもそこまでです、そろそろ彼女も帰ってくる頃ですから」

「ふむっ、たしかに」

「ふんふん、なるほどねぇ」

席に戻ったナギサの言葉にセイアは納得したような声を漏らしながら紅茶に口を付け、同じくナギサの言葉を耳にしたミカは頷きを示しつつ身嗜みを整えるように髪を弄り始める。

「今更身嗜みを整えても遅いと思うがね」

「整える身嗜みもないセイアちゃんには、分からないのも関係無い事だから仕方ないよねー☆」

「そんな言い争いをしている間にも、彼女が戻ってきますよ?――――って、あら?」

普段通りの二人の姿を呆れた様子で眺めていたナギサだが、テラスの扉がノックされたことで意識をそちらに向ける。

「ナギサ様、資料を届けてまいりましっ「フェリーっ!」――――ひゃわわっ!?み、ミカ様!?」

扉を開けて姿を見せた小柄な体躯に似つかわしくない大きな羽を持った"ティーパーティー補佐"である『(びたき) フェリ』を視認したミカは、素早く席を立つと一目散に駆け寄るとその勢いのまま抱き着くという不意打ちにより彼女はそのまま背後に倒れ込む。

「んっ、しょっ!」

彼女の背が床に接触する前にミカは片足を前に出して強く踏み締めると、彼女を抱き締めながらその場で舞うように身を翻す。

「ひゃあっ!?」

突如感じた浮遊感に驚きの声を上げたのも束の間、テラスの扉が閉まる音と同時に自身がミカによって猫のように脇の下から腕を通され、抱き(かか)えられていることに気付く。

その際に普段から主張している彼女の豊かな双丘が押し上げられてさらに強調され、それを目にしたセイアは目を細めて視線を強め、ナギサは表面上は優雅に紅茶に口を付けていたが内心では幼馴染に称賛を送っていた。

「ミカさん・・・」

「あっははー☆そんなに怖い顔しないでよ、ナギちゃん♪私がフェリに怪我させるなんてありえないじゃんねっ」

「私の身体は他の方より頑丈ですから、押し倒された位では怪我なんてしませんよ?」

「そういう問題じゃないんだ、君が痛い思いをすること自体が駄目なんだよ・・・また調印式の時のような、君が"身体の一部を失う"ようなことが起きないとも限らないんだ」

冷静に諭すような口調で告げるセイアに対して、「うっ・・・」と気まずそうな呻き声を上げた彼女は視線を彷徨わせる。

「そのことはフェリさんも理解していると思っていましたが、まだ完全ではなかったようですね」

やり取りを静観していたナギサは(おもむろ)にそう口にすると椅子から腰を上げ、笑みを浮かべながらゆっくりとミカに抱き上げられる彼女の側へと歩み寄る。

「なっ、ナギサ様・・・?どうして、こちらに来られるんですか?」

「フェリさんがまだ理解しきれていないようですから、またじっくりと"分からせる必要がある"・・・と判断したまでですよ」

ナギサの口にした単語を耳にした彼女は一際大きくその小柄な身体を震わせ、背後から抱き締めるために回されたミカの腕を振り解こうと藻掻いて脱出を試みる。

「うぅ・・・み、ミカ様!一度離してもらっても、よろしいですか?」

しかし自身の力ではミカの拘束はびくともせず、(むし)ろ抱き締める腕の力が増したように感じて焦りの表情を浮かべる。

「ねぇ、ナギちゃん。それって私も参加していいんだよね?」

「えぇ、構いません・・・っというよりも、ここにいる三人ですることは決定事項でしょう?」

「じゃあ、このままフェリを運んじゃえば問題ないよね♪」

そんな自身の心情を知ってか知らずかいつもの調子で会話を行う二人から視線を向ける先を変えた彼女は、成り行きを見守っているセイアへと助けを求める。

「せっ、セイア様!」

「悪いね、フェリ。生憎(あいにく)と私も二人側なんだ」

唯一の頼みの綱も絶たれた彼女は衝撃を受けた表情で固まり、そうこうしている間に目の前で足を止めたナギサは、そっと彼女の頬に触れると割れ物を扱うような優しい手つきで撫でる。

「そんなに怯えないでください、流石に傷ついてしまいます」

「え、えっとその・・・こっ、これからは気をつけますから今回は・・・っ!」

以前の出来事を思い出したのか、頬を朱に染めて懇願する彼女の姿にぞくりと背筋に走る感覚に口元を緩ませながら返答する。

「駄目です」

「だね☆」

「時には諦めも肝心だ、フェリ」

無慈悲な返しにあたふたと慌てながらどうにかこの場を収めようとする彼女だが、抱き上げられている状態で抵抗できるはずもなく・・・

「おっ・・・お手柔らかにお願いしますぅ」

頬だけでなく耳まで赤く染めながら観念したように了承の返事をした彼女に、ティーパーティーの面々は微笑みを浮かべてテラスを後にするのだった。

 

 

 

テラスから出てすぐ近くの空き教室(中には何故かベッドなどが設置されている)で認識の齟齬を正す話し合い(意味深)を行った後、一通り満足したティーパーティーの面々から解放された彼女は別の組織に資料を届けに廊下を歩いていた。

「あぅ・・・腰がぁ、うぅ・・・」

資料を抱えながら腰を押さえてフラフラと歩く彼女の様子をすれ違うトリニティ生徒が不思議そうに見つめる中、壁を背にして周りを見渡していた一人の小柄な生徒が彼女に気付いて小走りで駆け寄ってくる。

「フェリ!アンタ何処に行ってたのよっ、探したんだから!」

「フェリさん、こんにちは~♡」

駆け寄ってきたのは正義実現委員会兼補習授業部所属の『下江 コハル』であり、その後ろからはゆっくりとした足取りで同じく補習授業部所属の『浦和 ハナコ』が軽く手を振りながら歩み寄ってくる。

「二人とも、こんにちは。それで、コハルちゃんは私に何か用事なの?」

「えっ!?べ、別に大したことじゃないんだけど・・・ただアンタが正義実現委員会に来たって聞いたから、顔を見ようと思っただけで・・・っ」

「コハルちゃんはフェリさんが大好きですから、会えなくて寂しかったんですよね?♡」

「ちょっ、ハナコ!?」

ニコニコと笑みを浮かべながら自身の心情を言い当てたハナコに動揺して大きな声を上げたコハルは、彼女からの不思議そうな視線を向けられていることに気付いて慌てて口を開く。

「私はただいつも勉強を見てくれてるフェリの様子が気になっただけでっ、次の勉強会は何時にするのか気になっただけでっ!べっ、別にアンタのことを愛してるから会えない時間が寂しいとかじゃなくてっ!」

「? 私もコハルちゃんのこと、大好きだよ?」

さらっと自身への好意を口にする彼女に対して、一瞬動きを止めたコハルは言葉の意味を理解していくうちに顔を真っ赤に染めていく。

「はぁあぁぁぁっ!?アンタそういうことを軽々しく言うもんじゃないからね!?いや私は別にいいけど他の人にも同じことを言うのはっ――――ってアンタ首筋、虫刺されみたいなのできてるわよ?」

「っ!あらあらあら♡」

コハルの疑問の声に何かを察したハナコは口角を上げて満面の笑みを浮かべ、自身の首筋をさする彼女は虫刺されの原因に気付いて頬を朱に染める。

「えっと、私今から救護騎士団に行かなきゃいけないから・・・っ」

「まぁまぁまぁっ♡そんなに長い時間拘束するわけではありませんから、それにコハルちゃんも気になりますよね?フェリさんの首筋にある"無数の"む・し・さ・さ・れ♡」

「えっ、無数の・・・っ!?」

逃げようと踵を返す彼女の腕に自身の腕を絡めて逃亡を阻止しながら口にするハナコの言葉に、コハルはすぐさま彼女の襟を緩めて首周りを確認するとみるみる顔全体を赤く染めて声を上げる。

 

「エッチなのはダメ!禁止!!フェリにそんなことしちゃダメなんだからーっ!!」




ティーパーティー補佐:鶲 フェリ・・・ティーパーティー所属の三人の生徒を支えようと奮闘するトリニティ総合学園の二年生、『百合園 セイア』の予知夢とは少し異なり未来の"記憶"を持っている。

容姿・・・膝下まで伸びた毛先に向かうにつれて白くなっている青髪を三つ編みにして桃色の瞳を持ち、髪色と同じ色で自身の体躯よりもはるかに大きい羽を背中と腰付近から計四枚携えていた。
現在はとある事情で背中の羽を失い、腰付近の二枚だけとなっている。
ヘイローは淡い青色で舞う羽が円を描くような見た目をしている。
身長は低めだが胸部は大きく豊かに育っており、その柔らかさで包み込まれると安心して気持ちが落ち着くらしい。


ティーパーティー:原作とは違って全員が現役で所属している。ミカは裏切り行為をしていないので魔女と呼ばれていないし、ナギサも疑心暗鬼にならずにヒフミから脳破壊を受けていない。
セイアは予知夢能力を失ったが、フェリという理解者を得て不安を感じることなく日々を穏やかに過ごしている。


補習授業部:スパイを探るために作られたのではなく先生に力を借りるためであり、あとは純粋に成績の落ちた生徒の助けとなるためである。
所属する前からフェリに勉強を教えてもらっていたコハルだが、結局エッチな本の誘惑に負けて成績が落ちてしまったらしい。
ハナコは変わらず露出狂である。
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