ティーパーティーのホストとして本日もトリニティ・テラスで普段通りの執務を行っていたナギサは、一息入れようと紅茶のおかわりをカップに注いでいる際にテラスに続く扉がノックされる。
「ナギサ様、正義実現委員会からの報告書を受け取ってまいりました。それと道中に他の方からの報告書も受け取っておきました」
「あら、フェリさん。ありがとうございます・・・さぁ、こちらへどうぞ」
姿を見せた彼女の言葉を耳にしたナギサは椅子を引いて身体の向きを変えると太腿を叩いて手招きをし、それを目にした彼女は困惑した様子で頬を掻きつつ口を開く。
「えっと、ナギサ様?」
「さぁ、こちらへどうぞ」
「あの、ナギサ様?私の話をっ――――」
「さぁ、こちらへどうぞ」
「うぅ・・・はいぃ」
自身の言葉に反応することなく太腿を叩き続けるナギサの言い知れぬ圧に押し負けた彼女は、恐る恐るナギサの側まで歩み寄るとゆっくりとした動きで腰を下ろす。
「ふふっ、それではフェリさんの受け取ってきてくれた報告書を確認しましょうか」
腰を下ろした彼女を包むように腕を回して抱き締めたナギサは手元にある報告書に目を落とし、書かれた内容を確認して眉間に皺を寄せるナギサの横顔を彼女は複雑な顔で眺める。
「? フェリさん?どうかしましたか?」
自身の様子の変化に気付いて疑問の声を掛けたナギサに対して、彼女は前々から考えていた質問をもじもじと身動ぎしながら口にする。
「えっ、えぇっと・・・いつも私を乗せて、重くないですか?」
「いいえ、全く。寧ろ軽すぎるくらいです、もう少し食事量を増やした方がいいのでは?」
彼女の質問にきっぱりと自身の気持ちを告げたナギサは、報告書をテーブルに置くと彼女に回した腕を動かして腹部などを撫でて触っていく。
「ひゃんっ!?かっ、身体を
「弄るだなんて人聞きの悪い・・・私はただ貴女の身体の心配をしているだけで、やましいことなどしていませんよ?」
「そ、そんなの屁理屈ですっ!・・・ひゃうっ!?」
「ふむっ、こっちはまた大きくなったのでは?っというより、食べた栄養が全てこっちにいっている?少し羨ましいですね・・・」
腹部などを撫でるのをやめて身動ぎする度に揺れる双丘へと手を這わせて下から持ち上げると、その重量を感じて羨望と少しばかりの嫉妬を含んだ眼差しを向けるナギサは手を止めずに感触を楽しむ。
「んひゃっ、ひぅ・・・っ。や、やめてくださいっ・・・ナギサ様ぁ」
自身の一部を揉みしだかれて身を震わせながら潤んだ瞳で見上げて制止の言葉を口にする彼女の姿に、ナギサは一際胸を高鳴らせてさらに身体を密着させるために彼女を強く抱き寄せる。
「ひゃっ・・・な、ナギサ様?」
「その顔はいけません、いけませんよ・・・フェリさん、私にも我慢の限界というものがあるのです。わかりますよね?」
「え、えぇ・・・?」
抱き寄せた腕とは反対の手で自身の頬を優しく撫でながら微笑むナギサを目にした彼女は、柔和な笑みにも拘らず言い知れぬ感情を読み取って困惑した声を漏らす。
「まだ報告書はありますが、今の状態では集中できません・・・だから、少しだけ発散させてもらいますね?」
「発散?・・・っ!そっ、それって・・・」
「ふふっ、理解してくれましたか?では・・・いつものお部屋に移動しましょうか?」
「えぅっ・・・」
椅子から立ち上がって彼女をお姫様抱っこしたナギサはテラスを後にするために歩き出し、向かっている場所に気付いた彼女は頬を朱に染めながらも抵抗することなくナギサに身を任せるのだった。
別室での約一時間に及ぶ発散運動を終えて肌艶の良くなったナギサは、自力で立つことのできない彼女を抱き抱えながらテラスへと続く扉を開いて足を踏み入れる。
「ふぅ、これで落ち着いて続きを行えますね・・・フェリさん、足腰は大丈夫ですか?」
「は、はい・・・っというか、そもそもの原因はナギサ様でっ――――」
彼女が言い終える前に元々座っていた椅子へと腰を下ろしたナギサは、テラスを後にする前と同じように彼女を足の上に乗せると強く抱き寄せながらテーブルに置かれた報告書を手に取る。
「あっ、あの・・・ナギサ様、前から気になっていたのですが」
「? はい、なんでしょうか?」
「前からお仕事をする際に、いつも私をこうして抱き締めていますよね?」
「えぇ、それがなにか?」
質問の意図がわからないとばかりに疑問符を浮かべるナギサに対し、口元を隠すように合わせた両手を顔の前に持ってきた彼女は照れくさそうに口を開く。
「書類や報告書を見る際に私の肩越しに確認しているので、私がいないほうが見やすいんじゃないかと思っ――――ひゃっ」
彼女が言い終える前に三つ編みを前に流していることで露わになっている首筋へと口付けを落として遮り、ナギサの突然の行動に驚いた表情を浮かべた彼女が振り返ると・・・不服そうに眉間にシワを作るナギサの顔を間近で捉える。
「フェリさん。貴女がどれほど私の、いえ・・・私達ティーパーティーの支えになっているかを、今一度よく考えてみてください。貴女によってどれほど救われ、どれほど助けられたか・・・ですから調印式の時、どれほど焦り悲しみ悔いたことか・・・あの時から誓ったのです。フェリさんを一人にはしないと、いつまでも側で守り抜くと。ですから自分はいないほうがいいなんて、言わないでくださいっ」
抱き締める腕の力を強めて光の消えた瞳で自身を見つめるナギサの様子に困惑しつつ、何やら勘違いをしていると察した彼女は慌てて弁明を口にする。
「えっ、えぇっと・・・?あっ!別にそういう意味で言ったわけではないですよ!?ただお仕事中はその、側に立っているだけでもいいのではと・・・」
「いっそ側を離れられないようにお部屋に閉じ込めて、動けないように縛り付けてしまえばっ――――っ、え?あぁ、そういうことですか・・・しかしどちらにしろ、その意見は聞き入れられませんね」
物騒なことを口走り始めていたナギサだが彼女の言葉を耳にしてハッと我に返り、自身が勘違いをしていたことに気付くが彼女の意見を採用することなく切り捨てる。
「えぇ・・・ど、どうしてですか?」
「エデン条約が締結する前よりは少なくはなりましたが、問題自体が無くなったわけではありません。トリニティ総合学園を治めるトップとして、数々の責任などでストレスが溜まるのも仕方ないことです・・・しかしその影響で判断能力が鈍り、取り返しのつかない自体になっては元も子もありません。そこでっ、フェリさんの存在です」
「? 私、ですか?」
不思議そうな声を漏らす彼女に頷きを返してからナギサは続きを口にする。
「聞くところによると、ハグをすると幸福感を得てストレスを緩和するそうです・・・ので、フェリさんを座らせておくことに大きな意味があるのです。理解してくれましたか?」
「それなら私以外の方でも良い、ということですか?」
不安げな瞳を揺らしながら自身を見上げて問い掛ける彼女を、ナギサは強く抱き寄せて身体をさらに密着させると首筋に再び口付けを落とす。
「んひゃっ・・・な、ナギサ様?」
「誰でもいいはずがありません、いいですか?私は相手がフェリさんだからこそこうして触れ合っているんです、好意を寄せる者と深く通じて感じ合いたいと思うのは当然ですから・・・んっ」
そう告げてすぐに首筋に唇を当てて軽く吸い付いて跡を付けるナギサに、彼女はくすぐったそうに身を捩りながらも先程まで抱いていた不安がなくなっていることに気付いて頬を緩ませる。
「んぅ・・・ナギサ様も私とおんなじ気持ちを持っていてくれたんですね、嬉しいですっ」
自身に回された腕を手で触れながら嬉しさが隠しきれずに想いを口にして微笑む彼女を目にしたナギサは、理性という枷で押さえていた欲望が膨れ上がって何かが切れる音がした。
「ふふっ・・・」
「? ナギサ様?――――わわっ」
ナギサの変化に気付いた彼女が声を掛けると同時に自身を抱えて立ち上がったことに、どこか既視感を感じて顔を上げると最近見慣れた表情を浮かべるナギサの姿があった。
「えっと・・・ナギサ様?その、さっきしたばかりですよ・・・?」
「先程は息抜き程度でしたが、今回は手を抜くことが出来そうにありませんから・・・覚悟、してくださいね?フェリさん」
そう口にして向けるナギサの笑みから普段浮かべているものと違って切羽詰まったような雰囲気を感じた彼女は、すぐに終わらないことを確信して胸元で両手を握り締めながら上目遣いでナギサを見上げて口を開く。
「おっ、お手柔らかにお願いします・・・ね?」
「――――っ!!」
「ひゃぁっ!?な、ナギサ様っ!?んゃっ、せっ・・・せめてお部屋に着いてからっ、ひゃぅ・・・っ!」
愛らしく懇願する彼女の姿を目にして我慢の限界を迎えたナギサは行動を起こし、流石に廊下で行うのはマズいと考えた彼女がどうにか宥めて部屋まで誘導したのだが・・・着いて早々激しい運動(意味深)をすることになったのは言うまでもないことであった。
「・・・それで、報告書確認や書類作業などが遅れてしまったということかい?」
「えぇ・・・ナギちゃん、それは流石にどうかと思うよ?」
「うっ・・・返す言葉もありません」
他の用事で席を外していたティーパーティーメンバーであるミカとセイアは、本来ならばある程度片付いているはずの積み上がった他組織からの報告書と重要書類の束を横目で確認する。
「しかし言い訳というわけではありませんが、私にも言い分はあります」
シュンと落ち込んでいた気持ちと共に顔を上げたナギサは、呆れた視線を向ける二人をまっすぐ見据えてそう告げる。
「ふむっ・・・一応聞いておこうか」
「うーん、なんとなく予想できるんだけど・・・」
渋々といった様子でナギサの言い分とやらに耳を傾けることにしたセイアとすでに何を言うか薄々気付いているミカを尻目に、我が意を得たりとばかりにナギサは強い意志を乗せた瞳を二人に向けて口を開く。
「フェリさんがあまりにも愛らしかったので、歯止めが効きませんでした」
「それも踏まえてこなすのが、ホストである君の役目だろ?」
「ナギちゃん・・・補佐をダウンさせたら自分が苦労するんだよ?せめてある程度終わってからにしたほうが良いんじゃない?」
二人からの容赦ない正論という口撃に反論できずに甘んじて受けるナギサから視線を外したミカは、テラス全体を見渡してから件の補佐の少女が居ないことについて問い掛ける。
「そういえば、フェリは?確か報告書とかは、もう回収し終えてるよね?」
「彼女ならいつものお部屋のベッドで眠っていますよ、とても可愛い寝顔をしていました・・・ふふっ」
「笑い事じゃないんだが・・・まさかミカだけじゃなく、君にも節度を守るように言わなければいけないなんてね」
呆れた様子でタメ息を漏らすセイアの口にした言葉に、唇を尖らせて不満げな雰囲気を醸し出すミカが声を漏らす。
「別に私はちゃんと節度を守っていたし、セイアちゃんにどうこう言われる筋合いはないんだけど・・・」
「自分の部屋に連れ込んで一日中フェリと愛し合っていたくせに、どの口が言っているんだ」
「フェリの同意は得てたもんね☆セイアちゃんこそ、未来のことを相談するとか言って密室で二人っきりになってるくせにさっ!」
「別に相談以外のことをしていたという証拠は、ないだろう?」
言い合い睨み合う二人のいつもの様子に、矛先が逸れて追及が止んだことにナギサは安堵の息を吐く。
「あ、ナギちゃんが抜け駆けしたことは忘れてないからね☆」
「フェリが戻ってくるまで、じっくりと話し合おうじゃないか」
「・・・はい」
ぐりんっと睨み合っていた両者が同時に首を回して自身に顔を向けたことに内心で驚きながらも、告げられた言葉に従う他ないナギサは了承の返事をするのだった。
話し合いがいつの間にか彼女談議にすり替わっていた頃、不意に何かを思い出したような声を上げたミカが二人に問い掛ける。
「そういえばさっきコハルちゃんと会ったんだけど、私を見るなり顔を真っ赤にして口をパクパクさせたと思ったら・・・何も言わずに走ってどこか行っちゃったんだけど、二人とも何か知らない?」
「君が何かしてしまったとかではなくかい?・・・あぁ、それとは関係ないがっ「じゃあ黙っててくれるかな☆」――――ハナコがいつにも増してニコニコとした笑みをこちらに向けてくるんだが、しかも近くに来るわけでもなく遠くから・・・理由に心当たりがない、二人は何か知らないかい?」
「コハルさんとハナコさんが?私は基本テラスでフェリさんと過ごしているのでわかりませんが、ってそういえば・・・私はヒフミさんから『もう少し節度を持った方がいいと思いますっ!』っというモモトークが送られてきたのですが、全く心当たりがなく・・・お二人は何か知りませんか?」
それぞれがそれぞれの抱えている謎を口にしたが誰も心当たりがない様子で疑問符を浮かべていたが、実は彼女の身体に残した愛の証が見られてしまったからなのだが・・・それを知る由もないティーパーティーの面々は、不思議に思いながら頭を悩ませるのだった。
フェリ:寝て起きたらミカの部屋に居てビックリして、関係各所から大量のモモトークが送られてきていてさらにビックリしたらしい。
ナギサ:フェリと二人っきりの際は彼女を膝に乗せるのが定位置となっている、たまに前後逆に座らせて彼女のお山に顔を埋めて癒されているらしい。
補習授業部:コハルとハナコから情報を共有されたヒフミは