晴れ渡る空から陽射しが窓から入り込み部屋全体を照らす早朝、姿見の前で仁王立ちする少女は自身の身嗜みが乱れていないかを確かめていた。
「髪も乱れてないし制服もバッチリ!これなら何時でも出掛けられるじゃんね☆・・・ホントに変じゃないよね?」
くるりと身を翻して一通り確認を終えたミカは笑顔を浮かべて締め括る、がすぐに心配そうな声色を発したかと思うと再度身嗜みのチェックを開始する・・・因みにこれで合計三回の確認を終えたばかりである。
「うぅ〜ん・・・見れば見るほど分からなくなってくる、ホントに問題ないかなぁ――――」
姿見の前でウロウロしていたミカだが、背後から物音が聞こえたことでバッと勢いよく振り返る。
「んっ、んぅ・・・?ふぁっ・・・ぁれ、ここは?」
背後にはベッドが設置されており、掛けられた毛布が盛り上がるとズレ落ちて補佐の少女が一糸纏わぬ姿で顔を出す。
「おっはよー☆よく眠れた?ぐっすりだったねー?」
「? ミカ様?どうして私の部屋に・・・ってあれ?ここは」
「私の部屋だよっ、ナギちゃんとした後も起きる気配が無かったから運んだんだー♪」
自身に掛けられていた毛布を綺麗に畳みながらミカの言葉を聞いていた彼女は、今の状況を理解して頷きを見せてから口を開く。
「それで、なんで私はミカ様のお部屋にいるんですか?」
「あぁ、それはねー・・・ナギちゃんが抜け駆けしたんだから、私と(不本意だけどっ!)セイアちゃんもフェリと二人っきりで過ごす権利があるよね?だから今日は、デートしようと思ったんだ!」
ミカは腰に手を当てながら得意気な様子でそう宣言し、彼女はキョトンとして首を傾げつつ疑問を口にする。
「なるほど・・・ですけど、今日の補佐のお仕事は?」
「今日はセイアちゃんがフェリの代わりにナギちゃんの補佐を務めて、明日は私が代わりを務めることになってるから大丈夫だよ♪まぁ、いつもとそこまで変わらないから心配いらないよ」
説明を受けた彼女は心配そうな表情を浮かべていたが、最後には微妙な表情で納得したような頷きを見せる。
「それじゃあ、今日はミカ様とデートなんですね・・・えへへっ、とっても楽しみです」
「――――っ!!」
これからの出来事を思い浮かべて微笑みを浮かべながら嬉しそうな雰囲気を纏う彼女の姿に、ミカはキュンっと胸を高鳴るのを感じて衝動のまま彼女を抱き締める。
「ひゃっ・・・み、ミカ様?」
「んんーっ、可愛い!・・・ってこのままじゃデートする前に体力使っちゃうね、続きはデート終わりの今夜・・・この部屋でね☆」
「はぅっ・・・はい」
とっても良い笑顔でデートプランを口にするミカに、彼女は普段のベッド上でのやり取りを思い出して頬を朱に染めながら了承の返事をするのだった。
言質を取ったミカはウキウキと楽しそうに彼女から離れると、近くに畳んでおいた衣服を手に取って手渡す。
「それじゃあ、そろそろ準備しよっか。いつまでも裸だと風邪ひいちゃうし、我慢できなくて襲っちゃうじゃんね☆」
「ひゃぅ!?お、お尻ぺんぺんはやめてください・・・っ」
頬どころか耳まで赤くしながら自身の身体を抱いて身を引く彼女は、恐る恐る差し出された自身の制服を受け取るとそそくさと身に着けているのを見て、ミカは口角を上げてゆっくりと歩み寄る。
「そんなに怯えなくても、フェリだって嬉しそうに受け入れてくれてたよね?何なら催促だってっ――――」
「ひぅっ・・・!?そ、それは言わないでくださいっ!」
情事の内容を告げられて恥ずかしさで両手を前に出して止めようとする彼女の姿を、ミカは楽しそうに笑みを浮かべながら愛おしい者を見る視線を向ける。
「とっ、とにかくすぐに準備しますね!」
急いで制服に身を包んでいく彼女の着替える様子を一部始終観察し、満足気な息を吐くと自身の身支度も済ませて彼女に向き直る。
「じゃあ、デートに出掛けよっか!まずは喫茶店で朝食を済ませて、フェリに合うお洋服を見て回ったりしてー・・・あっははー☆超楽しみっ、早く行こーっ!」
「わわっ・・・!待ってくださいよ、ミカ様ーっ!」
彼女の手を取って自身の部屋を飛び出して駆け出したミカに、困惑した声を上げながらもついて行こうと必死に足を動かすのだった。
ミカに手を引かれる形で部屋を後にした彼女は、喫茶店のテラス席で飲み物と軽食を頼むとようやく落ち着いた時間が訪れて一息吐く。
「ご、ゴメンね?フェリ、気持ちが昂っちゃってつい・・・怒ってる?」
「いえっ、怒ってないですよ?ミカ様とのデートが楽しみなのは私もですから、自分を責めたりしないでくださいね?」
「うんっ・・・ありがとう、フェリ!」
彼女の言葉に笑みを浮かべて安堵の息を吐いたミカは、対面に座る彼女に微笑ましげな視線を向ける。
「そういえば、今日はフェリを一日中独り占めできるんだよねぇ・・・あれ?でも部屋に閉じ込めていたら、ずっと私だけのフェリになるんじゃっ「あら、フェリさん?」――――うん?」
妙案を思い付いたとばかりにハッとしたようで計画を練ろうと思考を巡らせていると、不意に彼女の名を呼ぶ声がしてそちらに顔を向ける。
「? あっ、ハスミさん。それにツルギさんも、おはようございます」
彼女もまた声のした方へと顔を向けると、正義実現委員会の副委員長である『羽川 ハスミ』とその陰から顔を半分出す委員長である『剣先 ツルギ』の姿があった。
「やはりフェリさんでしたか、おはようございます。ティーパーティーの方からフェリさんが今日は休むと連絡があり、心配していましたが元気そうで何よりです」
「キッ、キヒヒ」
安心したような柔和な笑みを浮かべるハスミと口角を上げて笑みを深めるツルギに、彼女も微笑みを浮かべて声を掛ける。
「お二人はお仕事中、ですか?」
「えぇ、っといっても今は比較的平和なので暇をしていますが・・・」
「キェヒヒッ、キヒヒャヒャヒャ!」
彼女とハスミが談笑を始めた矢先にツルギが雄叫びのような笑い声をあげ、その会話を静観していたミカは笑い声に驚いて身体を跳ねらせる。
「えーっと、正義実現委員会のお二人さん?」
「っ、はい?ってミカさん、いつからそこに?」
「最初っから居たんだけど・・・それよりフェリは今、私とデート中だからっ!私の言いたいこと、わかるよね?」
「貴女の言いたいことは理解できますし共感できます、しかし彼女と少し話をするぐらい問題ないのでは?」
「あっははー☆何言ってるの?フェリは今私とデート中、つまりフェリの時間は全部私のものってこと。わかる?」
「その理論は厳しい気が・・・」
ミカの言い分に苦笑を浮かべながら言葉を返すハスミを尻目に、ツルギは陰から姿を見せると彼女の側へと歩み寄る。
「・・・フェリ」
「はい、ツルギさん・・・ひゃわわっ」
彼女の目の前に来たツルギは徐に両手を伸ばすとその頭に優しく触れ、まるで大型犬を愛でるようにわしゃわしゃと強すぎず弱すぎない力で撫でまわす。
「つっ、ツルギさん・・・くすぐったいですよぉ、ひゃわーっ」
「キヒヒャハハハハハッ!!」
髪が乱されていることも気にせずに嬉しそうな声を上げる彼女の様子に、ツルギもテンションと共に笑い声も上げて撫でまわし続ける。
「いやいやいやっ、私のフェリに何してるの!?」
「ツルギはフェリさんと会うといつもあぁですから、今更どうこう言うことではないのですが・・・」
「それはそれで問題かなーっ!?」
テーブルに手をついて立ち上がったミカはすぐさま彼女とツルギの間に滑り込み、二人を引き剥がすとツルギをハスミに押し付けて見回りの仕事へと戻し、疲れたように息を吐くと椅子を移動させて彼女の隣に腰掛ける。
「はあぁぁぁっ・・・なんだかどっと疲れちゃった、これはフェリに癒してもらわないとねっ☆」
「え、えぇっとよくわかりませんけど・・・どうぞ?ひゃっ」
乱れた髪を手櫛で梳くのをやめてミカの方へと身体を向けた彼女が両腕を広げてそう口にすると、躊躇うことなく飛び付くように抱き着いて豊満な双丘に顔を
「すぅーっ、ふぅー・・・っ!はぁぁっ、落ち着くぅ・・・」
「んぅっ・・・ちょ、ちょっとくすぐったいですっ――――ひゃぁっ!?」
少し身動ぎしてくすぐったさから逃れようとする彼女の腰に回された腕に力が入り、さらに身体を密着させたミカは埋めたお山から顔を上げるとジッと彼女を見つめる。
「どうして離れようとするの?ねぇ、どうして?」
光の消えた暗い瞳で一切逸らすことなく自身に向けるミカに、彼女は内心で驚愕しながらもしっかりと見つめ返しながら口を開く。
「くすぐったかったから動いてしまっただけで、ミカ様から離れようとしたわけではありませんよ?これからもずっと、側で支えていきたいと思っていますからっ」
「フェリ・・・うん、ありがとう」
彼女の言葉に瞳の光を取り戻したミカは柔らかい笑みを浮かべてお礼を口にし、抱き締めた腕の力を強めて彼女を持ち上げると自身の足の上に乗せる。
「まぁ、それはそれとしてーっ・・・正義実現委員会でのやり取り、きっちりしっかりと全部教えてもらうからね?」
「ぴぇ・・・っ」
ニッコリとした微笑みを浮かべながら問い掛けるミカの様子に逆らえぬ圧を感じた彼女は、包まれる腕の中で縮こまりながら了承の頷きを返すのだった。
喫茶店での話し合いに一段落を迎えた二人は朝食を済ませて後にすると、自身の手を固く握って次の目的地へとルンルンと楽しそうに歩くミカを見つめながら彼女も頬を緩ませる。
「次はフェリの服を買いに行こっか☆何が似合うかなー、水着も買いたいしちょっとエッチな服とかも試着してもらったりー、下着も選んであげないとね♪」
「えっ、別に下着まで選んでもらわなくても・・・」
ミカの言葉を耳にした彼女は困惑した様子で止めようと声を掛けるが、自身に顔を向けて笑みを深めるばかりのミカは返答することなく歩みを進める。
「よーしっ、着いたよ!それじゃあ色々見て回ってー・・・」
「み、ミカ様!私のお話を聞いてくださいよぉ・・・」
目的地の服屋へと辿り着いたミカは入り口を開いて足を踏み入れ、自身の意見を流して進むミカに彼女は聞く耳を持ってもらおうと声を掛けるが、店内から聞こえてきた会話に掻き消される。
「ちょっとハナコ!?なんで試着室からふっ、服を着ずに出てくるのよ!?」
「試着するんですから裸になるのは当然ですよね、コハルちゃん♡それにちょっと下着のサイズが合わなかったので、別のものを取ってこようとしただけですよ?」
「じゃあ外にいる私たちに頼めばいいでしょ!?ヒフミたちも何とか言ってよ!!」
「あ、あはは・・・そこはまぁ、ハナコさんだから・・・としか」
「? 何か問題があるのか?」
「そうですよぉ♡コハルちゃんもそんなに怒らず、広い心を持って・・・」
「エッチなのはダメ!!死刑!!」
踏み入れた足を下げてパタンと店内に続く扉を閉じたミカは、一度深呼吸をしてから自身に顔を向ける彼女へと視線を向ける。
「えっと、ミカ様・・・?」
「フェリ」
「は、はい?」
真剣な眼差しを向けるミカに、彼女も顔を引き締めると返事をする。
「お店変えよっか?ここは満員みたいだしさっ☆」
「えぇ、っと・・・ミカ様が、そう言うなら」
踵を返して服屋を後にしようとした二人だがすぐに開かれた扉から伸びてきた腕に彼女が絡め捕られ、驚いたミカが振り返ると何も身に着けていないハナコがにこやかな笑みを浮かべていた。
「まぁまぁ♡ミカさんも落ち着いてください、お二人が入ってもまだまだ余裕はありますから♡」
「げっ・・・」
「ひゃっ・・・ハナコさん?」
「ちょっ・・・!?ハナコ、そのままの恰好で外に出ちゃっ――――ってミカ様!そっ、それにフェリ!?」
ハナコの存在に気付いたミカは露骨に嫌そうな顔を浮かべて彼女は不思議そうな声を漏らし、衣服を身に着けていないハナコが店内から出ようとしていると思ったコハルも、入口へと駆け寄ってきたことで彼女たちの存在に気付いて驚愕の声を上げる。
「えっ、フェリさん?」
「むっ・・・フェリが来ているのか?」
それを耳にしたヒフミとアズサも入口付近へと集まってきたことで、離脱することが難しくなったことを察してミカはタメ息を漏らすのだった。
あのあと補習授業部の面々と一緒に彼女に似合う服を選び合ったりをして別れたのだが、その後も行く先々で知り合いに出会ってしまいミカが思うようなデートを行うことが出来なかった。
「こ、こんなはずじゃなかったのにぃ・・・」
「え、えっとミカ様?元気を出してくださいっ」
日が沈み始める夕方になった頃・・・公園のベンチに座るミカは落ち込んだ様子でタメ息を漏らし、その様子に困惑しながら声を掛けて元気づけようと試みる。
「どうして行く先々で別組織の人達がいるの?正義実現委員会から始まって、補習授業部に救護騎士団、シスターフッドや放課後スイーツ部まで・・・もしかして、厄日?」
「こ、こういう日もありますよ!そんなに落ち込まないでください、ミカ様!」
沈む夕日と同じように気持ちも沈んでいくミカをどうにかしようと声を掛ける彼女に、顔を上げたミカは潤む瞳で見つめ返すと感情のまま抱き寄せる。
因みに何故ここまで他の面々と遭遇してしまったのかというと、ティーパーティーからの連絡が回って彼女に会えないと考えての行動なのだが・・・そのことを彼女とティーパーティーの三人は知る由もないことである。
「今日はミカ様とデートが出来て嬉しかったです、他の方たちもいらっしゃいましたけど・・・ミカ様と楽しく過ごせてよかったです、ミカ様はどうですか?」
「・・・うん、私も嬉しかった。フェリともそうだけど、他の皆とも楽しく話せて嬉しかった・・・フェリのおかげで今の私がいるんだよ、いつも側に居てくれてありがとね?」
「ミカ様・・・こちらこそ、ありがっ「でもっ」――――っ?ミカ、様?」
彼女の問い掛けに微笑みを浮かべて自身の気持ちを吐露するミカに内心でホッと安堵の息を吐いたが、不意に抱き上げられていることに気付いて疑問の声が漏れる。
「やっぱりフェリと二人っきりで過ごすのが一番好き、だから・・・このまま私のお部屋に戻って、朝まで愛し合うじゃんね☆」
「ふぇっ、えぇっと・・・み、ミカ様?」
彼女が疑問の声を出しているのもお構いなしにその場から駆け出したミカは一直線で自室へと向かい、部屋に着くと彼女と共に入室して次の日の朝まで出てくることはなく・・・部屋の中からはくぐもった声が一晩中聞こえていたとかいないとか。
フェリ:次の日はセイアと過ごす予定だったが、思いの外昨晩の行為が響いてしまい後日改めてということになった。
ミカ:一晩中ハッスルしたにも関わらず肌艶も良く元気に顔を見せたが、フェリと過ごすはずだったセイアから説教という名のチクチク言葉を受け、自身の責任でもあるので反論できずに常時不満げな表情を浮かべていた。
正義実現委員会:フェリを見かけるととりあえず撫で回すことを決めている委員長と、それを眺めながら紅茶を嗜む副委員長の姿がよく見受けられるらしい。
補習授業部:偶然、たまたま、運良く服屋に居合わせたらしい。