幸せを運ぶ青い鳥ニティ生徒   作:にゃんたるとうふ

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スウィーツ店が立ち並ぶ街道で肩を落として歩く四人組の内の一人が、バッと顔を上げて天を仰ぐと口を開いて声高々に叫びを上げる。

「どうしてっ、一組一個だけなのよぉーーっ!!」

「あ、あはは・・・」

鬱憤の詰まった叫びを上げる放課後スイーツ部の部員である『伊原木 ヨシミ』に、同じ部員である『栗原 アイリ』は困惑した笑みを零しながらも内心で同意の頷きを示す。

「まぁ、人気店だから個数限定なのは仕方ないけど・・・まさか一組一個だとは思わなかったわね」

「全くの予想外だった」

アイリの手元にある限定スウィーツに目を向けながら呆れたタメ息を漏らす部員の一人である『杏山 カズサ』に、同意するように声を漏らした同じく部員の『柚鳥 ナツ』はやれやれといった感じのジェスチャーを見せる。

「ぐぬぬっ・・・!次はもっとしっかりと調べて行かないといけないわねっ、とりあえずこの一個・・・どうする?」

悔しさで唸りながらもリベンジを心に決めるヨシミの問い掛けに、放課後スイーツ部の面々は思い思いの表情を浮かべながら顔を見合わせる。

「普通なら四等分にするんだけど、さすがに小さすぎるわよね・・・」

「なら他のお店で違うスイーツも買ってくる?」

「ロマンを追い求めるなら、これもアリだと思う」

カズサとアイリの提案を尻目に拳を掲げたナツの行動に、ヨシミは呆れた表情を浮かべながらも考える素振りを見せる。

「たしかに、ジャンケンも一つの手段よね・・・」

「あはは・・・私はいいから、ここは三人でっ」

「アイリも参加は必須だから、さぁっ・・・いざ!」

「はぁ・・・よしっ!ジャーンケーっ――――っ!」

渋々手を前に出すアイリを確認した全員は拳を握って声を合わせて手を出そうとした瞬間、カズサが明後日の方向へと顔を向けたことで一時中断される。

「? カズサちゃん、どうかしたの?」

アイリの問い掛ける言葉に、耳をピンと立てたカズサは徐ろに口を開く。

「・・・フェリの足音が聞こえる」

「え?」

「は?」

「お?」

カズサの呟いた言葉にアイリ・ヨシミ・ナツの順に疑問符の籠った声を漏らしてから、視線を向ける曲がり角から話に出てきた人物が姿を見せる。

「あっ、フェリさん!こんにちはっ!」

「? アイリちゃん、こんにちは。他の皆もこんにちは、今日もスイーツ探索してるの?」

「はい!実はあそこの有名店でスイーツを買ったんですけど・・・」

書類を片手に抱えてもう片方の手で大きめな紙袋を携えたティーパーティー補佐に駆け寄ったアイリを眺めながら、自身に二つの視線が突き刺さっていることに気付いたカズサは怪訝な表情を浮かべて口を開く。

「え、なに?二人してこっちを見て・・・顔になんかついてる?」

「いや・・・」

「人の足音の違いなんて、よく分かるなぁ~・・・って、思っただけだよ」

言い淀むヨシミを尻目にはっきりと感じた疑問を声に出して問い掛けるナツに、カズサは首を傾げながら不思議そうな表情を浮かべつつ返答する。

「そう?案外フェリの足音ってわかりやすいよ、小柄だけど大きな翼を持ってるから独特な音してるから。まぁ翼が四枚の時はもっとわかりやすかったけど、それとは別に匂いも分かりやすいのよね・・・こう、なんて言うの?落ち着く匂いっていうか、他の人とは違ういい匂いがっ――――って!別に変な意味じゃないから、勘違いしないでよっ!?」

カズサの言葉に顔を見合わせたヨシミとナツは、それぞれの思ったことをそのまま口に出す。

「なんか・・・ストーカーみたいね」

「それに、ヤンデレの素質があるかもね」

「ストーカーっ!?ヤンデレっ!!?」

不名誉な称号を投げ掛けられたカズサはショックを受けた表情を浮かべて声を上げ、その声を耳にした彼女とアイリは視線を向けて何事かと首を傾げるのだった。

 

街道から公園へと移動した放課後スイーツ部の面々は、共に移動してベンチに腰を下ろした彼女に先程までの事情を説明した。

「そんなことがあったんだ・・・あのお店は人手が少なくてあまり多くお菓子を作れないけど、その分一つ一つのお菓子のクオリティが高くて美味しいんだよねっ」

彼女の言葉に肯定の頷きを見せた放課後スイーツ部の面々は、思い思いの感想を述べながら彼女との会話に花を咲かせる。

「そういえば、フェリさんは何をしていたんですか?」

不意にアイリから投げ掛けられた疑問に、彼女は抱えていた書類を脚の上に乗せるとその上に紙袋を置いて口を開く。

「ハスミさん・・・あっ、正義実現委員会の副委員長さんのことね?にお菓子の差し入れをしに行ってたの、ただ少し作りすぎちゃって余っちゃったんだ」

紙袋の口を開いて中を見えやすいように広げる彼女に促される形で視線を向けると、綺麗にラッピングされたクッキーやマフィンなどが紙袋の半分より少なめに詰まっているのが確認できる。

「だけどナギサ様たちにはもう渡した後でさらに持っていくと、量が多くなっちゃって食べきれないかなぁって思ってたんだけど・・・でもここで会ったのも何かの縁だし、お菓子を減らすのを手伝ってくれないかな?」

「つまり、フェリさんの手料理が食べられるってことですか?」

軽く首を傾げながら問い掛ける彼女の言葉に、アイリが聞き返した言葉に他の面々の目の色が変わる。

「それ本当っ!?」

「怪我の功名とはこのこと、ありがたく頂こうっ」

「数日ぶりのフェリのお菓子か、楽しみだねっ」

最後に口にしたカズサの言葉に違和感を感じたアイリは、疑問符を浮かべながら部活仲間に視線を向けて口を開く。

「数日ぶりってカズサちゃん、最近でフェリさんのお菓子を食べたことあるの?」

「え?たまたま街で会って、作ったお菓子を貰ったけど・・・って、あ」

アイリの問いに素直に返事をしたカズサは慌てて口元を手で押さえ、首を傾げる彼女を尻目にヨシミとナツが怪訝そうな表情を浮かべながら声を掛ける。

「なにそれ、私たち聞いてないんだけどっ!?」

「つまり隠れて独り占めした、ってこと?・・・許せぬっ」

「ちょっ、何を・・・!?くふっ、あっははははっ!ちょっと、やめっ・・・!」

詰め寄ってきたヨシミとナツによってくすぐりというお仕置きを受けるカズサは、笑い声を上げながら抵抗の意思を見せるが二対一ということもあり抜け出せずにいた。

「? カズサちゃんたち、どうしたんだろ?」

「あ、あはは・・・」

彼女の言葉にアイリは曖昧な笑みを返すだけで動こうとはせず、カズサがくすぐりが受ける様子を少し暗い瞳で見つめるのだった。

 

数分もの間お仕置きを受けたカズサは荒くなった息を整えながら肩を落とす姿に、彼女は紙袋からクッキーの袋を一つ取り出して頬を緩ませながらカズサに差し出す。

「災難?だったね。これでも食べて、元気出してっ」

「っ・・・フェリ!」

差し出された袋を受け取ったカズサは嬉しそうに口元を緩ませ、他の部員の三人から向けられる視線に気付くと咳払いを挟んでから口を開く。

「んんっ・・・!ほ、ほらフェリ!アイリたちにもお菓子を渡したら?」

「あっ、そうだね。じゃあ三人とも、好きなお菓子を選んでね」

カズサの言葉に同意を示した彼女は他の部活仲間に紙袋を広げて見せながら問い掛け、アイリたちも顔を綻ばせて彼女に歩み寄ると思い思いのお菓子を手に取って口に運ぶ。

「ん~っ!美味しい!相変わらず腕がいいわね、お店を出せるんじゃない?」

「優しい甘さがちょうどいい、いくらでも食べられるっ」

「本当に美味しいですっ、また今度作り方を教えてください!」

ヨシミ・ナツ・アイリの順で感想を口にする後輩の姿に彼女は微笑みを浮かべ、その様子に気付いたアイリは部活仲間に目配せすると、手にしていた限定スウィーツを彼女に差し出して声を上げる。

「フェリさんっ!代わりといってはなんですが、この限定スイーツはフェリさんが食べてください!」

「えっ、いいの?皆が苦労して手に入れたものなんだから、アイリたちで分けて食べたらいいんじゃない?」

差し出されたスウィーツを無理矢理手の平に乗せられた彼女は困惑した声を漏らし、返却しようとした手を掴まれて押し返される。

「気にしなくていいわよ、これのお返しの意味も含んでるんだから。それでも気になるなら・・・今度スイーツを奢ってくれるか、今日みたいにお菓子を作ってくれたらいいわっ」

薄っすらと頬を朱に染めながら告げるヨシミに同意するように他の三人も頷きを見せているのに気付いて、彼女は申し訳なく思いながらも突き出していた手を引っ込めて口元を緩ませる。

「皆、ありがとうっ・・・それじゃあ、ありがたく頂くね?はむはむっ・・・ふふっ、おいふぃ♪」

限定スイーツを頬張って顔を綻ばせた彼女の表情を目にした放課後スイーツ部の面々は、見てはいけないモノを見てしまったような気持ちになって顔を赤らめながら視線を逸らす。

 

「あっ!杏山カズサっ!」

 

幸せそうにスウィーツを口に運ぶ彼女を眺めていたカズサの耳に自身を呼ぶ声が聞こえたことで、そちらに視線を向けるとトリニティ自警団所属の『宇沢 レイサ』が大きく手を振りながら駆け寄ってくる姿が目に入る。

「げっ、宇沢じゃん・・・なんでここに?」

「たまたま通りかかったところです!いやぁ、こんな所で奇遇っ――――ふっ、フェリさん!!?」

カズサの側まで駆け寄ってきたレイサは投げ掛けられた質問に答える最中に彼女の存在に気付くと、ボッと顔を真っ赤に染め上げると最初の元気溌剌な様子とは打って変わって、借りてきた猫のようにおとなしくなるとチラチラッと彼女に視線を向けながらモジモジと手を弄り始める。

「んむっ・・・?あっ、レイサちゃん。こんにちは、今日も自警団の見回り?おつかれさま」

「はっ、はい・・・ありがとうございますっ、えへへ」

彼女に話しかけられたレイサは緊張した面持ちで相槌とお礼を述べると照れ臭そうに頬を掻き、普段とのギャップに困惑と驚愕の感情に支配された放課後スイーツ部の面々は顔を見合わせる。

「あれ、本当に宇沢?まるで別人なんだけど・・・」

「ふむっ、見たところフェリにホの字みたい」

「えっ、うそ!?あの人もフェリのことを好きってこと!?」

「・・・あははっ」

彼女の手作りお菓子を食べるのも忘れて困惑する四人を尻目に、レイサは気恥ずかしそうに身を捩りながらも彼女との会話を楽しんでいた。

 

レイサとの会話に花を咲かせていた彼女は、不意に公園に設置された時計の示す時刻に気付いて「あっ」と声を上げる。

「私そろそろ戻らないとっ、さすがにナギサ様たちが心配してると思うから。あっ、レイサちゃんもよかったらこれ食べて」

「えっ、あ・・・ありがとうございますっ、大事に食べさせてもらいます!」

ベンチから腰を上げた彼女はそう口にすると足に乗せていた紙袋をレイサに手渡し、書類を胸元に抱えると放課後スイーツ部に向き直って声を掛ける。

「それじゃあ、皆またね」

「ぁっ・・・待ってください、フェリさん!」

公園を後にしようと踵を返す彼女に声を掛けて服を抓んで止めたアイリに、不思議そうに振り返った彼女にアイリは引き留めた側にも拘らず困惑した表情を浮かべている。

「えぇっとその、うぅっんと・・・今度のお休みっ、一緒にお出掛けしませんか!?」

「それ、いいわね!フェリも大丈夫よね?」

アイリの提案に同意するように声を上げるヨシミに、彼女は頷いて返事をする。

「? うん、問題ない・・・あ、今週末はイチカさんと出掛けるから来週末でもいい?」

「大丈夫だ、問題ないっ」

「いや、それフラグ・・・それよりもイチカ、って・・・たしか正義実現委員会の人よね?」

サムズアップしながら返事をするナツを他所に、カズサは彼女の口にした言葉に引っ掛かった様子で問い掛ける。

「え?うん、そうだよ?友達だから、たまに遊びに行ったりしてるんだ」

「友達、ねぇ・・・」

少し前にたまたま二人が並んで歩く姿を目撃していたカズサは、イチカが彼女に重めの感情を乗せた視線を向けていたことを思い出す。

「まぁ・・・フェリだし、しょうがないか」

「あはは・・・」

呆れたタメ息を漏らすカズサと意味深な笑みを零すアイリに、彼女は首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる。

「? とにかく私も戻るね、お菓子の消費を手伝ってくれてありがとう。またねっ」

軽く手を振りながら小走りで公園を後にする彼女を見送ったカズサは、ふぅっと短く息を吐くとレイサの持つ紙袋へと視線を向ける。

「さてっと・・・宇沢、アンタだけじゃそれ食べきれないでしょ?だから私たちもっ――――」

「え、あっ・・・さすがに杏山カズサのお願いでも、それは聞けませんっ!これはフェリさんから頂いた大切な物なんですからーーっ!!」

「あ、ちょっ・・・!くっ、逃げられた!」

風を切ってその場から凄まじい速さで駆け出したレイサに対応できずに見逃してしまい、悔しげに顔を歪ませたカズサは気持ちを落ち着かせるために彼女のクッキーを一つ口に運ぶ。

「うん、美味しい。気持ちも落ち着いたし、これからどうする?」

「とりあえず来週末に何処に行くかとか決めない?当日にドタバタするのは、フェリにも悪いしさ」

「ふむっ、そうだね。スイーツ巡りでもする?ついでに奢ってもらおうっ」

「あはは・・・ナツちゃん、程々にね?」

先の出来事を思い浮かべて楽しげに会話を弾ませる放課後スイーツ部の皆は、彼女の手作りお菓子を味わいながら公園を後にするのだった。

 

 

 

ちなみに・・・トリニティ・テラスに戻ってきた彼女を待ち受けていたのは良い笑顔を浮かべるナギサと紅茶を嗜むセイア、そして拘束具や規制の掛かる道具を弄るミカの姿だった。




フェリ:放課後スイーツ部とはよくスウィーツ巡りをする仲、レイサとは自警団経由で知り合って『守月 スズミ』共々仲良くしている。

放課後スイーツ部:最近アイリとカズサの彼女を見る目が変わっているらしい、ヨシミとナツはスウィーツ巡り仲間で友達だと思っている。
アイリは彼女が他の生徒と共に居ると瞳の光が消えて暗い色を纏い、視線を一切逸らすことなく眺め続けることがあるらしい。
カズサは彼女の気配や匂いで居場所を突き止めることができ、よく身を寄せてマーキング紛いのことをしているらしい。

トリニティ自警団:レイサの持ち帰った彼女のお菓子は、スズミを含めた自警団メンバーで美味しく頂きました!
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