FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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 前回までのあらすじ:
 妖精の尻尾、伝統行事"S級昇格試験"。
 今年のソウは珍しく試験官として携わる事になった。ウェンディがメストという人物と組んだ事にシャルルから文句を聞きつつも当日を迎える。
 とは言え、出番はまだまだ先。担当の場所で待つソウは挑戦者が来るまで暇そうに時間を潰すのであった。



4-2『天狼島』

 ◇◇◇

 

 天狼島。洞窟内部。

 

「ソウ~熱い~」

「急になんだよ。だったらレモン、そこの地底湖で水浴びでもしたらどうだ?ちょっとぐらいはマシになるぞ」

 

 試験、当日。

 月日はあっという間。待ちに待ったこの日に俺はレモンを引き連れて、天狼島へと赴いていた。

 気候の影響で天狼島は年中真夏日。なので、俺もほぼ水着姿でもあった。

 一次試練は実にシンプル。島のとある地点へ向かうのみ。目標の目安としては煙が空へ立っている筈だ。

 本題はそこから。必ず俺のいる洞窟を抜ける必要がある。とは言え、洞窟の内部は複雑に構成されている。その内、幾つか通れるルートが存在し、挑戦者は洞窟に入る段階で選択を余儀無くされる。

 俺はそのルートの一つを担当。正確にはちょい異なるがまぁ良い。

 ルートは合計八個。ルートごとに必ず何かしらの仕掛けが施されている。

 例えば―――

 

 "静"。幸運の証。何もせず通過可能。

 "闘"。二組の内、進めるのは一組。バトルで決着を付ける必要あり。

 "激闘"。俺やエルザ等のS級魔導士の誰か一人と対決。

 

 マカロフは言っていた。

 一次試験のテーマは"運"と"武力"である、と。運が良ければ何もせずとも二次試験へと駒を進められる。また、力さえあれば、多少の障害などは気にせず次の段階へと行ける。

 "激闘"コースを選んでしまえば、苦戦は免れない。だが、突破不可能という訳でもない。

 試合に負けようが、試練を越えれば良いだけ。事実、俺も全力で相手を陥れようとは考えていない。

 ………エルザは手加減するのだろうか。

 しないな。

 

「ソウ~、気になる事が一つある~」

「ん?何?」

「なんでソウが危険度で一番下なの~?」

「危険度?あぁ、説明で言われるあれね」

 

 八人の出場者には"激闘"の中でも順位が存在すると説明されている筈。

 ギルダーツが首位、そこからエルザ、ミラと続き、最後に俺の名前がある。

 一見、俺に当たれば不幸中の幸い的な安堵は少なからずあるだろう。現実は無惨だ。半分当たりで半分外れである。

 

「理由は幾つかあるぞ。まず、俺の魔法はこの場所では全力を出せない。大技は勿論、普通の攻撃すらもマスターから制限がかけられてる」

「全部粉々だもんね~」

「………次に、俺の考える合格条件も理由の一つにある。単純に俺を倒せば、次に進めるって簡単な話じゃないって事だ」

 

 詳しくは誰かが来たら説明する。

 現段階の予定では挑戦者と簡単なゲームでもしようかなと模索中。挑んでくるからには、隠された意図ぐらいはどうにか探ってほしいものだ。

 

「そして………」

「そして?」

「来た。ようやくだ」

 

 たったの一言。

 レモンはそれだけで全てを察したのか、静かに行方を見守る姿勢へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 洞窟内部。通路。

 

「広場に抜けたぞ!」

 

 一次試験開始から数十分経過。

 ウェンディとパートナーを組んだメストは露知らず、試験に潜んだ思惑通りに洞窟を進んでいた。

 湿度が高く、蒸し暑い。Bルートを選択し、意気揚々と奥へ足を踏み入れたのは良かったがここまでは通路がずっと続くばかり。

 早く通り抜けたいと思った矢先。

 メストは声をあらげた。その声に気付いたウェンディはとある光景を目にする。

 

「湖………でしょうか?」

 

 洞窟の中からは想像しづらい光景だった。

 ひんやりとした空気。澄んだ水面からは水底までしっかり見える。

 

「それにしても一体何が待ち構えているんだ?知りたい!」

「はい!!もしかしたら"静"のルートかもしれません!!」

「それが一番だな」

 

 湖の周りは岩場で見通しが悪い。

 故にウェンディとメストは気付くべき存在に気付くのが遅すぎた。

 

「なっ!?ウェンディか!?」

「グレイさん!?」

 

 ―――鉢合わせ。

 

 両者、驚きつつも戦闘体勢に移行。

 グレイの相方ロキも拳を構えており、メストも既に視線は揺らがない。

 

「何も無いからてっきり"静"のルートかと」

「だな、ロキ。でも、"闘"のルートだと確定したんだ。行くぞ!」

「ウェンディ、油断大敵だ」

「はい!頑張ります!」

 

 緊張が張り詰める。

 その中心に場違いな者、いや猫がテクテク歩いて来た。

 

「待った~。待つのだ~」

「えっ!?レモン!?」

「そうです~私がレモンです~」

 

 黄色い猫。レモン。

 グレイがその存在を認識、ある事実へ線が繋がってしまう。

 

「レモン?………ってことは嘘だろ!?」

「そ、そんな!?」

 

 刹那―――

 

「くっ!?」

「す、凄い魔力です………!!」

「意識が飛びそうだ………!!」

 

 途轍もない魔力のオーラ。

 あまりの巨大さにグレイ達はたまらず一歩後退り。その原因へ視線を向ける。

 

「"闘"のルート?残念だが、違うな。ここは"激闘"のルートだっての。運が悪かったとしか言えんぞ、お前ら」

 

 岩の一つに座り、足を組む者。

 まさしく王者の余裕とばかりに不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ソウさん………!!」

 

 ―――いざ、尋常に勝負の時なり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4-3へ続く。




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