FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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主人公が帰還するのは、六魔将軍(オラシオンセイス)を倒して、ウェンディとシャルルがフェアリーテイルに入り、数日後ぐらいからです。
───では、どうぞ!!

*〈2015年4月3日〉会話間の行間を訂正。


X784年 帰ってきた波動竜編
第1話 妖精の尻尾


 『フィオーレ王国』………世は魔法一色。あらゆる生活の中で、日常の中で当たり前のように使われている。もはや知らない人はいないほどの人々の一部と化している。そんな永世中立国が存在していた。

 だが、魔法を使えるのは体内に“魔力”と呼ばれる器を持った一握りの人物。彼らはお互いに身を寄せあい、依頼を受けて報酬をもらって生活できる組織を組み立てた。

 “ギルド”と呼ばれるそれは、魔法の使える“魔導士”にとってかけがえのない物であり、切っても切れない大切な物となっている。 そう、家族のような存在。

 そんなギルドの中、飛び抜けて問題ばかりを起こしては人々の悩みの種となっているギルドが存在していた。

 その名は“FAIRYTAIL”。

 炎があちこち舞ったり、氷が突如現れたり、剣が幾度となく突き刺さったり。何でもありである問題児が一挙に集まったとされるギルド。だが、同時に優秀な魔導士も所属しているという、ややこしいギルド。

 

 ────そこに彼がいた。

 

 そんなギルドに最近、ある少女が入り、そして彼と出会った。それは久し振りの再会だった。

 

 ───物語はゆっくりと動き出していた。

 

 

 

 

 ◇

 

「おっ!やんのか?グレイぃ!」

「そっちこそ、やろうってのか、ナツ!」

 

 ここは妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 フィオーレ東方に位置する商業都市マグノリア唯一の魔導士ギルドだ。

 “週刊ソーサラー”と呼ばれる人気雑誌で取り上げられる事もあり、人気があるかどうかは解らないが、とにかく有名なのである。

 そのギルド内、大声で言い争っているのは───

 ───『ナツ』と『グレイ』名を持つ少年達。

 『ナツ』は桜色の髪にいつも銀色のマフラーをしており、後先考えずに動く性格をもつ。そんな性格ゆえに問題を起こしてばかりの問題児。

 『グレイ』は黒髪で一見、顔立ちは整っておるが残念なことに彼の昔からの癖に一つ問題がある。それは───

 

「グレイ…なんで服を脱いでいるのよ……」

「はっ!しまった!」

 

 グレイは無意識の内に服を脱いでしまう癖があり、今はパンツのみしか着ていない。

 一般人からしてみれば、変態極まりない行為だ。因みにこれはグレイの昔の師匠による影響である。

 

「ちょっとあんた達止めなさいよ!」

 

 二人の喧嘩を止めようとしている女性は『ルーシィ・ハートフィリア』。

 妖精の尻尾ではまだ入ってそんなに過ごしてはいないが今では立派な魔導士の一人だ。

 

「また始まったよ……」

 

 魚を加えながらそう呟くのは『ハッピー』。

 見た目は完全に喋る猫である。ちなみに毛は青い。

 

「そんなことをしてるとエルザが……」

 

 ルーシィの言葉が段々と弱々しくなっていった。その理由はとある席からどす黒いオーラが放たれていたからだ。

 

「貴様らいい加減にしろ!」

 

 第三者の手によってナツとグレイの頭に鉄槌という名の拳骨が落とされた。

 

「いってぇー!!」

「っ!!何すんだよ、エルザ!!」

 

 ナツは強烈な痛みから頭を押さえて、グレイは負けじと言い返した。

 鎧を着て仁王立ちをしている女性の名前は『エルザ』。緋色の髪をしている。またS級魔導士と呼ばれる妖精の尻尾内での実力者でもある。

 

「貴様らのせいで……」

 

 エルザは顔を俯かせて体をプルプル震わせている。

 二人の目線は先程までエルザが座っていたテーブル席へと注がれる。

 ………テーブルには料理が置かれている。

 そこまではいい。問題はさらにその上に何かがあったのだ。

 よく見るとそれは二人の喧嘩によって吹き飛ばされた椅子だった。料理は無惨にも辺りに飛び散り、とても食べれそうにない。

 二人の額に汗がどっと流れ出る。二人は顔を合わせて、同時にこう言った。

 

「「ごめんなさい!!」」

「あい……」

 

 この後の二人にどんな鉄槌が下られるのかハッピーは考えたくもなかった。

 

「よく飽きないわね………」

「でも、シャルル。楽しいね」

 

 離れたテーブル席で会話をしている一人と一匹。

 呆れた目線を送っているのは『シャルル』。ハッピーと同じ喋る猫だがメスである。こちらは白色をしている。

 もう一人は『ウェンディ』。最近、妖精の尻尾にシャルルと入ったばかりで目の前の光景を楽しんでいる青髪の少女。また、天竜の滅竜魔導士でもある。

 

「これがフェアリーテイルなのよ」

「あ、ミラさん!」

 

 ウェンディとシャルルの元にやって来たのは『ミラジェーン』。愛称はミラ。

 妖精の尻尾の看板娘であり、また週刊ソーサラーでグラビアアイドルを務めるほどの美人である。

 他にもフェアリーテイルには様々な人が加入している。

 ───「漢だ!」が口癖の『エルフマン』。

 ───グレイにぞっこんの雨女『ジュビア』。

 ───鉄をバリバリ食べている『ガジル』。鉄竜の滅竜魔導士である。

 それに他にも数えきれないほどの個性的な魔導士が所属しているが一筋縄ではいかない手を焼かす者ばかりだ。そのある意味、超問題児どもをまとめているリーダー的存在、マスターがいる。

 

「普段から騒がしいけど、その内慣れていくわ」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 ミラはテーブルに飲み物を置いた。ウェンディは律儀にお礼を述べる。

 ミラはその場を離れてカウンターへと向かう。

 カウンターの上には一人の背の低い老人が座っていた。

 

「やれやれ、また始まったかのう……」

 

 何を隠そうこの老人こそがフェアリーテイルのマスター『マカロフ』である。

 マカロフはいつもと変わらない光景にため息をついてしまう。

 

「最近はウェンディとシャルルも入って騒がしくなってきましたね」

「そうじゃのう………」

 

 マカロフはマスターだからこそ、彼らの後処理もすべてマスターの手元に回ってくる。故にそのことを考えてしまいあまり元気がない。

 

「あ!そうじゃ、あれを伝えるのを忘れてたおったわい」

 

 「とう!」とマスターが2階の手摺に飛び乗る。

 その際に誤って手摺に頭を打ちつけてしまった瞬間をルーシィははっきりと目撃した。見なかった事にしよう。

 ぴくぴくと小さく震えながら2階の手摺の上に立ち上がる。

 

「貴様ら、注目せーーい!」

 

 マスターの大声がギルド一体に響いた。

 その瞬間、皆の目線がマスターの方へと集まる。

 

「なんとぉ!あいつらが帰ってくるぞぉーい」

 

 その一言にざわめき出す。

 

「あいつらってもしかして……」

「ギルダーツか?」

「いや、まだ早いだろ」

「それにギルダーツは一人だろ」

 

 マスターの一言でギルドの皆は誰なのか話し合いだした。

 が、まだ妖精の尻尾に加入したばかりのルーシィとウェンディ、シャルルにはまったく心当たりがないので首をかしげる。

 

「ねぇ、ナツ。あいつって誰なのよ?」

「分からねぇが、もしかしたら……」

 

 ナツには心当たりがあるみたいだ。

 

「ああ……だったら……」

 

 グレイにも心当たりがあるみたいで、呟いている。

 ナツが叫んだ。

 

「喧嘩だぁぁ!」

「なんで!?そうなるの!?」

 

 思わずハッピーが突っ込んでしまう。

 

「んで、誰なのよ!?」

「しずかにせぇーーい!」

 

 ざわめきが一瞬で収まる。それほど、皆の意識はそちらに向けられているということだ。

 

「『ソウ』と『レモン』が帰ってくるぞ!」

『うおーーーー!』

 

 大絶叫がギルド中に響き渡る。

 

「ソウって誰?」

 

 確か、今までに名前だけは聞いたことがあった。

 あのマカロフの息子のラクサスと同等の強さを誇っているとも。

 

「私と同じS級魔導士だ。私でも勝てるかどうか………」

「え!?エルザが!?」

 

 エルザでも勝てるかどうか分からないとなると相当の実力者ということになる。 

 ルーシィはそう考えると冷や汗が出る。

 

「さらにナツと同じ滅竜魔導士なんだよ」

「本当なの、ハッピー!?」

 

 ルーシィは絶句した。と同時にどんな人なのだろうか不安な気持ちに襲われた。

 妖精の尻尾の奴等は性格に難のある人が多いからだ。

 さらに滅竜魔導士となると、ナツやガジルのように、色んな意味で尊敬し難い人物が多かった。ウェンディは別だが。

 

「あいつ、滅多に帰ってこないからな」

「ああ、早速勝負すっか!」

「どれぐらい強いの?」

「う~ん、町なんて一瞬で破壊してしまうほどだね」

「な………どんな魔法使うのよ………」

「魔法は“波”だ」

「波?」

 

 ルーシィは聞いたことがない魔法に疑問を浮かべる。

 

「あ、あの!」

「ウェンディ?どうしたの?」

 

 ウェンディが話しかけたことに気付いたルーシィ。さらにウェンディの顔も暗くなっていることに気付いた。

 

「そのソウって人は波動竜の滅竜魔導士ですよね!?」

「波動竜?」

「ああ…そうだが…よく知ってるな」

 

 ルーシィの代わりにグレイが答えた。

 

「もしかしたら………」

「ウェンディ!人違いかもしれないのよ!」

 

 ウェンディとシャルルの会話から察するに誰かを探しているかもしれない。

 ルーシィはウェンディがこの前に言っていたことを思い出す。

 確か、ウェンディには昔、いなくなった人を探していると。ウェンディと深く関わりを持つジェラールとは違う人。

 彼女は妖精の尻尾に入るの前に別のギルドにいたのだが、そこで一人の魔導士と出会った。その魔導士は自分の命を助けてくれた恩人でもあるので、どうしてもお礼が言いたいのだと。けれど、その魔導士は次の日には姿を消してしまって、結局言えずじまいになっていたのを気にかけていたのだ。

 ウェンディとシャルルの会話から察するにソウという魔導士が彼女の探している魔導士と同一人物かもしれないということなのだろうか。

 

「はあ─………仕方ないわね」

 

 ここまで言ってしまっては後の祭りだ。シャルルは、キッパリと言うことにした。

 

「その人がウェンディのお兄ちゃんかもしれないのよ!」

『えーーー!!』

 

 その日一番の絶叫が妖精の尻尾内に響いた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ────青年と猫がいた。

 青年と猫がいるのは町から外れたとある場所。数時間前までギルドだった場所だ。

 そのギルドは無法集団の集まりで出来たギルドだった。町に住んでいる人から見れば迷惑極まりない。

 ────だが、それはもう既に昔の話。

 今は無惨にもボロボロになっており今にも崩れ落ちそうだ。

 

「帰るか」

「帰るのは久しぶりだね」

 

 呑気に会話をしている青年と猫。猫は青年の肩に乗っている。

 二人がいるのは先程までギルドだった場所の中心。

 

「さて……どうしますか」

「これのこと?」

 

 猫が指したこれとは、青年の周りに倒れているここのギルドのメンバーのことだろう。ざっと30人はいる。時折、ピクピク痙攣していることから気絶しているようだ。

 

「評議員に任せますか」

 

 青年は自分の手には負えないと判断して投げ出した。いや、ただ単にめんどくさいだけだったのかもしれない。

 

「妖精の尻尾の皆は元気かな?」

「あいつらの元気じゃないとこが想像出来ないから大丈夫だろ」

 

 今後の予定を青年は呑気に決めていく。

 その背後に一つの影が近づく。男だ。

 

「とぉおおったりーー!!」

 

 男は青年の背中に向かって不意打ちを仕掛ける。油断していたところを狙っての一撃だった。

 手に握った剣を振りかざそうと青年に襲いかかる。

 刹那───青年の一歩手前で見えない何かに剣が阻まれた。

 いや、弾かれたと言った方が正しいだろう。

 弾かれた剣は男の手を離れて壁へと突き刺さる。

 男自身もまるで磁石同士が反発したみたいに壁へと吹き飛ばされた。

 壁へと衝突したダメージで男は気を失ってしまう。

 

「あーあ、逃げた方が賢明だと思うがな」

「相変わらず、凄い魔法だね」

 

 折角、起きていたのなら逃げた方が自分を追い込める事態にはならなかったのにと青年は考える。

 

「やっぱ、帰るのはもう少し先にするか」

「え!駄目だよ!さっき、マスターに知らせちゃったよ」

 

 あんな短時間でどうやって知らせたのか疑問に思うところだが、そんなことは青年の思考になかった。

 

「おいおい………早めに帰らないとマスターに怒られるじゃないか………っ!」

 

 そこまで青年は言うと急に何かを思い出したのか思い詰めた表情になる。

 

「あれがあるまでに帰ってこいって言われてたのをすっかり忘れてた………」

「あれはもう少し先じゃない?」

「そうだっけ?なら、いいや。マスターは何か言ってたか?」

「新人がいるから、楽しみにしておけって言ってたよ」

「新人か………俺達、しばらく離れていたから増えてるのか……」

「可愛い子はいるかな?」

「『レモン』は女の子だろ。気にする必要ないだろ」

「だって『ソウ』。彼女いないじゃん」

「妹がいるからいいんだ!」

 

 妹と言っても血の繋がっていない義兄弟だと言うことは向こうも知っている。

 話題に上がったことで、レモンはふと思い返す。

 

「ウェンディとシャルルも元気かな?」

「元気だろうよ」

「また会いたいね」

「会うのは約束を果たしてからだ。シャルルにも話してあるし、それまでの辛抱だ」

「でも、良かったの?」

 

 レモンはあの時にウェンディを置いてきてきたことを言っているのだろう。

 彼女を危険に晒したくない。その一心で、彼女を置いてきてしまった。その決断は今となっても正解なのか、不正解なのかは確かめようがない。

 ただ、これだけは言える。

 

「大丈夫。化猫の宿(ケットシェルター)の皆もいるし、今頃はのんびり過ごしてるだろ」

 

 その化猫の宿も今は無くなっている事実にソウとレモンは知らない。

 そして、彼女達が何の運命の糸による引き合わせかは知らず、妖精の尻尾にいるということも。

 

「今度様子見に行く?」

「機会があればな」

 

 服越しで確認しにくいが、ソウの背中には妖精の尻尾の証である青色の紋章、レモンの背中にも同じく青色の紋章がついていた。

 やがてソウとレモンは歩き出した。

 

 ───妖精の尻尾に帰るために。

 

 

続く─────────────────────────────

 




どうでしたか?
駄文ですが、お付き合い頂ければ………。


………もしかしたら、天狼島編を飛ばして、大魔闘演武編を投稿してしまうかも………。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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