FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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予告通り、場面は7年後になっています!!


X791年 七年間の空白編
第a話 我が家への帰還


 商業化都市マグノリア。

 その町のなかにある港───ハルジオン港の桟橋の先に一人の少年が立っていた。

 少年の視線の先は海。青色に染まった海面はただ静かな波音を立てていた。

 

「いつまで海を見てるんだい?」

 

「仕事も終わったし、ギルドに戻ろう」

 

「………………」

 

「ふう……」

 

「やれやれ……」

 

 少年の背後に来た二人はため息をついた。

 まだ、あのことが捨てきれないようだ。

 

「早く帰らないと父さんが心配するよ」

 

「マカオからアンタの事、頼まれてんのよ。ロメオ」

 

「うん」

 

 少年───ロメオはただ、頷いた。

 今では妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員である。

 ロメオに話しかけたのはビスカとアルザックだった。二人は既に結婚しており、今では夫婦である。

 ロメオは一点に海を見つめ、その場からまったく動こうとする気配がない。

 

「ロメオ………気持ちは分かるけど───」

 

「ビスカ」

 

「っ!…………」

 

 ビスカの言い分を遮ったアルザックは首を横に振った。

 ロメオが思い出していたのはあの赤髪のマフラー少年の後ろ姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は替わり、魔導士ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』。

 前にあった場所とはまた別の所にあり、少し昔と違いボロボロになっていた。

 さらに数分前にギルド黄昏の鬼(トライライトオーガ)が借金を取り立てに来て、思うがままに暴れ、去った後。

 ここにいた現在フェアリーテイル4代目マスターのマカオ。

 4代目マスターの補佐ワカバ。

 一員のジェットにドロイ、リーダス、ウォーレン、マックス、ナブ、ラキ、ビジター、そしてキナナがいた。

 皆、リーダスが描いた7年前のナツ達との思い出の絵を数名が見て泣いていた。

 

「あれから7年か………」

 

 ワカバが思い出しながら呟く。

 それに続くようにマックスが煙草の煙を吐きながら言う。

 

「懐かしいな」

 

「グス。あれ以来、何もかも変っちまった」

 

「天狼島が消滅したって話を聞いて、必死にみんなを探したよな」

 

 最強メンバーが消えてから取り残されたギルドのメンバーは必死に居場所を探した。

 だが、それでも見つからなかった。

 ウォーレンやジェットが言ったようにフェアリーテイルはあの日から随分と姿を変えていた。

 

「だけど誰1人見つからねえなんて………」

 

 ビジターは諦め混じりに呟いた。

 

「評議院の話が本当なら、アクノロギアってのに島ごと消されたんだ」

 

「実際、いろいろな機関が捜査に協力してくれたけど、何も手がかりは見つからなかった」

 

 ナブ、リーダスの言葉通りに手掛かりすら見つけれなかった。

 それだけがギルド全員の心残りだった。

 

「そりゃそうだよ。あの日………天狼島近海のエーテルナノ濃度は異常値を記録してる。あれは生物が形をとどめておけないレベルの………」

 

「何て威力なんだ!!!アクノロギアの咆哮ってのは………!!!」

 

「だって………大昔にたった1頭で国を滅ぼしたっていう竜なんだろう!!?人間が………そんなの相手に………生きていられる訳が………!!」

 

 ウォーレンが悲痛の叫びを上げる。

 

「何で俺達の仲間を…………」

 

 ドロイがそう言う。

 

「あいつらがいなくなってから、俺達のギルドは弱体化する一方、マグノリアには新しいギルドが建っちまうし」

 

 その新しいギルドが 黄昏の鬼(トライライトオーガ)である。

 

「“たたむ”時が来たかもな……」

 

「そんな話やめて!!!」

 

 ワカバの言葉に怒鳴るラキ。

 その一言で「うっ……」と唸るワカバ。

 フェアリーテイルがここまでつづけられたのもあいつらが帰ってこれる居場所を残しておく為だ。

「!どうした、マカオ?」

 

 暗い表情のマカオにワカバは気づき、声を掛けた。

 

「…………俺はもう、心が折れそうだ」

 

「お前はよくやってるよ、マスター」

 

 マカオの言葉にワカバはそう言った。

 

「あれ以来……………ロメオは1度も笑わねえんだ………。うえっ、ひっ」

 

マカオはそう言い、泣き顔を晒した。

 

『……………………』

 

 ここにいる全員、ついに無言となった。辺りが静寂を支配した、その時であった。

 ドゴォン!とギルドの外から大きな騒音が聞こえた来たのだ。

「なんの音?」

 

「またオウガが嫌がらせに来たのか?」

 

 取り敢えずギルドの外へと出てみることにした一行。

 そして、外へ出てみるとそこには意外なものが待っていた。

 

「お……おお………!!」

 

「あれは!?」

 

 空には一面を覆うような大きな物体が空に浮かんでいたのだ。

 顔を上に上げてその光景を唖然として見つめる。

 ───巨大な船。

 それは、青い天馬(ブルーペガサス)が7年前にあの化猫の宿(ケットシェルター)が無くなる原因となった六魔将軍(オラシオンセイス)打倒の為に持って来た代物だった。

 船名はクリスティーナ。

 六魔将軍との激闘の末に破壊されてしまったのだが、一緒に共闘した他のギルドのメンバー達の協力により、ニルヴァーナを攻撃し、見事勝利を勝ち取った。

あれから7年の時が経ち、クリスティーナは改良されて、クリスティーナ改となっていた。

 

「くん、くん、くんくん、くんくん。辛気くさい香り(パルファム)はよくないな。とう!」

 

「!」

 

 謎の台詞と共にクリスティーナから一人の男性が空に飛び出してきた。

 そして、そのまま落下。

 

「メェーン!」

 

『落ちんのかよ!!』

 

 上から飛んできた男が地面へと突き刺さった光景を目にして男どもが声を揃えて突っ込む。

 そして、この落ちてきた男は……。

 

「あなたの為の一夜でぇす」

 

 髪の毛が長くなった『青い天馬(ブルーペガサス)』の中でもかなりの実力者、一夜であった。

 

「オマエ………!」

 

「一夜様、気持ちはわかるけど、少し落ち着いたら?」

 

「俺………空気の魔法使えるし」

 

「みんな久しぶり」

 

 空気の魔法によりゆっくりとクリスティーナ改から降り、マカオ達の元へある3人がやって来た。

 

「やあ」「ヒビキ!」

 

「フン」「レン!」

 

「マカオさん、また老けた?」「イヴ!」

 

 六魔将軍(オラシオンセイス)打倒に一夜と共に来たヒビキ、レン、イブであった。

 

青い天馬(ブルーペガサス)、か……かっけー………!!」

 

「何なんだ一体…………」

 

「ラキさん、相変わらず美しい。」

 

「お………お前眼鏡似合いすぎだろ?」

 

「『お姉ちゃん』って呼んでいいかな?」

 

「あの………」

 

 急な展開に困り顔になってしまうラキ。

 

「ナンパなら他でやれ!!」

 

 3人の行動にマックスが怒鳴って言う。しかし今度は───

 

「え?」

 

「キナナさん、今夜時間がある?」

 

「お………お前の服、似合いすぎだろ?」

 

「決めた。僕は君の弟になるよ」

 

「ええっと…………」

 

「何しに来たんだ!オメェ等!!!」

 

 3人は対象を今度はキナナに変えて、マックスはまた怒鳴って言う。

 

「これ!!お前達、遊びに来たんじゃないんだぞ!!」

 

「「「失礼しやした!!」」」

 

 一夜の言葉に3人はラキとキナナに謝る。2人は思わず肩をびくっ!と震わす。

 

「おい、一夜」

 

「一体、何が………」

 

 マカオとワカバは一夜達がなぜここに来たのかを聞こうとした。すると………。

 

「メェーン!」

 

 一夜がそう言うと、3人は一夜の後ろへ移動した。

 

「共に競い、共に戦った友情の香り(パルファム)を私は忘れない」

 

 覚えてもらっていても嬉しくない。

 

古文書(アーカイブ)の情報解析とクリスティーナの機動力をもって、フィオ―レ中のエーテルナノ数値を調べたかいがあったよ」

 

「なっ!」

 

「っ!!」

 

「天狼島は………まだ残っている!」

 

 それは仲間達がまだ生きている可能性のある情報であった。

 一筋の希望の道のりが繋がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 天狼島があった近くの近海に、フェアリーテイルの船は航海していた。

 各々が辺りを見回して天狼島を探している。

 

「ねえ、本当にこの辺なの?」

 

 望遠鏡を覗きながら遠くを眺めているビスカが疑問の声を上げる。

 それに同意するように言ったのが、アルザックだった。

 

「何も見えてこないじゃないか」

 

「天馬の奴等の話じゃ、この海域でエーテルナノが何とか………」

 

「そもそもエーテルナノって何だよ?」

 

「知るかよ。魔力の微粒子的な何かだろ?」

 

 マックスの言葉に適当な事を言うウォーレン。

 こういう専門的な事に詳しい人材がいなかったのは残念だったがしょうがないことだった。

 元々、レビィやルーシィ辺りが担当していたものだったからだ。

 

「本当にロメオを連れてこなくて良かった?」

 

「無理矢理でも連れて来るべきだったかな…」

 

 仲間達の帰還に1番心待ちしているロメオの事にそう思ったアルザックとビスカ。

 

「まだみんな生きてるって決まった訳じゃねえんだ」

 

「ぬか喜びさせる訳には………」

 

「「レビィに会える!!レビィに会える!!」」

 

「やかましい!!」

 

 ジェットとドロイの騒ぎように怒るウォーレン。

 だが二人の気持ちも少しは理解できる。

 

「7年も連絡がねえんだぞ。最悪の場合も考えろよ」

 

「お………おう………」

 

「もしゃ………」

 

「「……………」」

 

 ウォーレンの言葉に沈黙となる仲間達。

 嫌な予感が脳裏に駆け抜ける。

 

 その瞬間だった────

 

「うおっ!」

 

 突然、海面が揺れて船が大きく揺さぶる。落ちないように船に一同はしがみついた。

 

「何が起きた!?」

 

「あっ!あれを見ろ!」

 

 一体誰が言ったのか分からなかったが皆の目線が指差した方向へと注がれる。

 そこは天狼島があった場所だった。

 巨大な水しぶきが起こり波が全方位に進んでいく。

 

「海面が……割れてる!」

 

 そこの海面が穴があくように分断されていた。

 ありえない光景に目を見開いた皆。さらに続いて信じられないことが起きる。

 そこからひとつの影が飛び出してきたのだ。

 その影はやがて、フェアリーテイルの船へと着地した。

 

「おー…良かった、良かった。近くに船があって助かったわ…」

 

「……え?」

 

「ったく……この近くに着地出来る場所なかったら、陸地まで飛んでいかないといけなかったからな、助かったよ」

 

 全員が戸惑いを隠せなかった。

 久しぶりに聴いたこの声はあの懐かしい仲間の声。

 

「お前………ソ…ウ……なのか?」

 

「ん?なんで、俺の名前を?」

 

 アクノロギアによって消滅したと思われる仲間の一人、ソウ・エンペルタント。フェアリーテイルのS級魔導士。

 少し、身だしなみが汚かったりしたことろもあったが、確かにソウだった。

 

『ソーーーウーーー!!!』

 

「え!何!なぬ!」

 

 ソウの魔法の中に相手をカウンターで吹き飛ばす魔法───『波動壁』があることを全員が完全に忘れていた。

 だが、ソウは発動せずに代わりに別の魔法を発動さしていた。

 

「え………この魔力……ジェットか?」

 

「そうだ!!!ジェットだぁー!!」

 

「ええー!変わりすぎだろぉー。それにドロイもいるー!」

 

「ドロイだ!!」

 

「太りすぎだー!」

 

 ソウが発動していたのは相手の魔力を計る魔法だった。

 久しぶりの再会に辺りが混乱に巻き込まれていくのだった。

 

「よし、説明求む」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ───どうにか、落ち着いたところでソウに一通りの説明をする。

ソウはどこかで納得した所があったのか時折、頷いたりしていた。

 

「7年か……そんなに経っていたんだな…」

 

「ああ……でも、他の皆は……」

 

「ん?皆も生きてるが?」

 

 アルザックの悲しげに言ったことにソウはさりげなく否定した。

 アルザック達は驚愕する。

 ソウだけでなく、皆が無事だというのだ。これが夢であっても可笑しくないというぐらいに。

 

「ドロイ、ちょっと頬っぺたを引っ張ってくれないか……」

 

「お、おう…」

 

「い!いたたたっ!」

 

 ジェットが感じた痛みは本物だった。

 つまり、これは夢じゃなくて現実。皆が生きてるということに……。

 

「あ、そうだ。あれをするのを忘れていた」

 

 すると、ソウはその場から船頭へと移動した。

 ソウの視線の先は二つに割けた海面だった。

 

「──────」

 

 ソウが何かを言ったかと思うと、突如海全体が揺れたような錯覚を覚えた。

 しばらくしてソウの目の前に巨大な影が出現した。

 それは天狼島だった。

 バリアみたいなのに覆われていたが先程解除されたようで海面に浮き上がって来るように出てきたのだ。

 

「て、天狼島!?」

 

「さて、皆を起こしにいきますか」

 

 一行は天狼島に上陸しようと船を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

「ほら、あそこにナツが寝てる」

 

 天狼島へと上陸したソウ達は、早速皆の元へと歩いていく。

 ソウの案内の元に進んでいく。しばらくしてソウが指差した先にいたのはナツだった。

 寝ているのか、仰向けになっている。

 ナツの姿を確認した途端、ソウ以外のメンバーが駆け寄った。

 

「ナツ!!しっかりしろ!!オイ!!!」

 

「ナツ!!!目ぇ覚ませ、コノヤロウ!!!」

 

「だーーーーっ!!!うるせえっ!!!!」

 

 あまりのうるささにナツは叫ぶ。

 そこの所はあまり変わっていなかった。少しは変わってほしかったと心の中で思っていたソウ。

 

「ナツーー!!!」

 

「うあああ!!」

 

「ああああ!!」

 

「んがー!!!」

 

 感動のあまり、号泣してナツに抱きつく男ども。

 ナツは身動きが取れずにただただ足掻いていた。

 どんどん状況は落ち着きそうになかった。

 

「どうなってんだ一体………!!?何でオマエらがここに………つーか少し老けてねーか!!?」

 

「おまえは変わらねーな!!」

 

「てかドロイ、太………」

 

 既にドロイが太っていることについてはソウが指摘済みだ。

 

「本当に……生きていたんだ………!」

 

「俺達、さっきのアクノロギアの攻撃をくらって、えーっと……他のみんなは!!?」

 

「皆、他の所にいるはずだ」

 

「ソウ!お前も生きていたのか!!!」

 

「そりゃ、生きてるよ」

 

「それで、他のみんなは………」

 

「こちらです」

 

 答えたのはソウではない。別の誰かだった。

 そこにいたのは女性だった。

 

「あ、もう出てきたんですか」

 

「「「……誰!?」」」

 

「えーと、この人は───」

 

「いえ、私が言います」

 

 女性はソウの言葉を遮り、皆の近くへと歩いていく。

 

「私はフェアリーテイル初代マスター、メイビス。メイビス・ヴァーミリオンです」

 

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 つまり、フェアリーテイルを作った張本人ということになる。

 皆は何度目になるのか分からないくらい驚いている。

 事情を説明する様子のメイビスにソウは既に知っており、聞く必要はないのでその場を離れて別の場所へと移動した。

 ソウがついた先にいたのは、ウェンディ、シャルル、レモンだった。

 

「おーい……ウェンディー……」

 

 ソウがウェンディの肩を揺さぶる。

 しばらくすると、う…と呻き声が聞こえたかと思うと、ウェンディがゆっくりと体を起こした。

 

「起きたか?眠れるお姫様」

 

「……お兄ちゃん?」

 

 まだ意識がはっきりとしていないウェンディ。

 ソウがウェンディの頭を撫でてやると嬉しそうに笑顔になるウェンディだったが、ようやくはっきりとしたのか態度が変わった。

 

「私達……生きてるの……?」

 

「生きてるよ、皆」

 

 無事に生還出来たことに嘘のような感覚を覚えたウェンディだったが目の前の兄の笑顔を見て真実だと直感で分かった。

 想いが沸き上がってきて涙が目に浮かんできた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ソウの胸元へと飛び込むと同時に泣き出してしまったウェンディ。

ソウは黙って受け止めて優しくウェンディの頭を撫でてやる。

 

「ほら、シャルルとレモンも起こさないとな」

 

 その後はシャルルとレモンを起こして皆が集まっている場所へと自分達も向かった。

 皆が無事に目覚めたみたいで一安心したソウ。

 そして初代マスター・メイビスによる説明が始まった。

 

「あの時………私は皆の絆と信じあう心。その全てを魔力へ変換させました。皆の想いが妖精三大魔法の1つ 『妖精の球(フェアリー・スフィア)』を発動させたのです。この魔法はあらゆる悪からギルドを守る、絶対防御魔法。しかし、皆を凍結封印させてしまいました………ごめんなさい………」

 

 頭を下げて皆に謝罪の言葉を述べるメイビス。

 皆は気にしている様子もなく、代表してマカロフが答える。

 

「なんと………初代が我々を守ってくれたのか……………」

 

「いいえ………私は幽体、皆の力を魔法に変換させるので精一杯でした。揺るぎない信念と強い絆は奇跡さえも味方につける。よいギルドになりましたね、三代目」

 

「ありがとうございます………初代………」

 

 初代マスターメイビスと現マスターマカロフはそう言った。

 

「あの………1つ聞いていいですか……?」

 

「はい、何でしょ?」

 

 恐る恐る手を上げて質問しようとしたのはレビィだ。

 メイビスは笑顔で答える。

 

「ジェットとドロイから聞いたのですけど、なんでソウ君だけ先に目覚めたんですか?」

 

「それは本人から、今までに感じたことのない魔力を感じたので私が先に起こしたのです」

 

 メイビスに起こされたのは先に起こされたと言っても数時間前までの話だ。

 ソウが起きて初めに見たのは隣で眠っているウェンディだった。

 起こそうと揺すっても起きない妹に焦りを感じたソウは必死に尽くすが、それも無駄に終わる。

 息はしているので生きているのは確かだった。

 だが、起きる気配がない。まるで生きた屍のようだった。

 どうして自分だけが起きている現状に理解しようと努めていると、誰かの気配を察知した。

 その時にソウの目の前に現れたのがメイビスだった。

 なんでも、ソウからはなんというか普通の魔力とは違う魔力を秘めており眠りが浅くなっていたということで、起こすのは容易いことだったそうだ。

メイビスはソウにこれから皆を起こす準備をするので手伝って欲しいと頼む。

ソウは快く快諾して、まずしたのは外の様子の確認だった。

 その時は海の中だったのでソウは海中から『波動式十七番・断波撃破』を放ち、海面を割った。

 船から目撃したのはそれだったのだ。

 

「なんで俺なんかが皆と違うのか分からないけどな」

 実を言うとソウには心当たりがあったのだが、言うわけにはいかなかった。

 それを言うとなると必然的に“あれ”を話さないと説明がつかないからだ。

 シャルルはソウの言動を怪しいと思ったのかソウの方をじっと見つめていた。

 

「じゃあ戻るか、フェアリーテイルへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 ギルドに残ったメンバーは各々が思考を巡らせていた。

 勿論、それは天狼島に行ったメンバーのことだ。

 しびれを切らしたロメオはナツ達が帰ってくるかどうか口に出した。

 それに反応したのがマカオだった。

 やがてそれは軽い言い争いにまで発展することになり、周りの人達はため息をついていた。

 その時だった───

 

「今日はまた一段と人が少ねえなァ」

 

「キヒヒ」

 

「ギルドってよりコレ何よ?同好会?」

 

「ぶひゃひゃー!」

 

 ギルドへと騒ぎながら入ってきたのは黄昏の鬼(トワイライトオウガ)の者達であった。

 

「ティーボ!!支払いは来月のハズだろ!?」

 

「ウチのマスターがさぁ………そうはいかねって。期日通り払ってくれねーと困るって。マスターに言われちゃしょーがねーんだわ」

 

 ティーボと呼ばれた男はそう言う。

 理由が身勝手すぎる。誰もがそう思った。

 

「お前等に払う金なんかねえよ」

 

「よせ、ロメオ!!」

 

「なんだクソガキ、その態度!」

 

「こんな奴等にいいようにされて、父ちゃんもみんなも腰抜けだ!俺は戦うぞ!!!このままじゃフェアリーテイルの名折れだ!!!!」

 

 決意を秘めて闘志をむき出しにしたロメオ。

 その目は完全にやる気に満ちていた。止めることは出来なさそうだ。

 ロメオは手のひらに炎を出して敵を睨み付ける。

 が、その炎はティーボの「ふっ……」と息を吹き掛けて簡単に消えてしまった。

 

「名なんてとっくに折れてんだろ」

 

 ティーボは背中にかけていた棍棒を手に持った。

 

「や、やめろーー!!」

 

「お前達は一生俺達の上にいてはいけないんだ!!」

 

 ティーボの意図を読んだマカオが叫ぶ。

 それを無視してティーボはロメオに棍棒を降り下ろそうとした。

 

「あ?」

 

 ───その瞬間、ティーボは宙を舞っていた。

 棍棒はロメオに当たることはなく、ティーボは第三者の手によって吹き飛ばされた。

 仲間が吹き飛ばされたかとに驚く残りのメンバーだったが、全員何者かによって気絶させられた。

 

「お~、帰ってきた~」

 

 そこにいたのはあの天狼島に行ったフェアリーテイルの皆だった。

 

 

 

続く──────────────────────────────




一気に飛ばしてしまった。反省も後悔もしてはいないが。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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