FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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 *〈2015年3月3日〉会話間の行を訂正


第e話 剣咬の虎

 やはり、ソウがいない間にとんでもない事態を引き起こしていたナツ達。

 と言っても今回の騒動の原因は意外にもルーシィという。

 けど、誰のせいであろうフェアリーテイルは最終的に関係ないのだからそこの所はあまり問題ない。

 ソウの心残りはまた、自分のいない時に六魔将軍(オラシオンセイス)が現れたことだった。

 ニルヴァーナの時に立ち塞がった六魔将軍(オラシオンセイス)の何人かをメンバー交代して再び、ナツ達に立ち塞がったらしい。

 ………そいつらもぶっ倒したらしいが。

 ソウが居ないときに六魔将軍(オラシオンセイス)が出てきておりソウは一度も対峙していない。

 こうなると戦闘狂になるのだが、一度手合わせしてみたかったのが本音だ。

 過ぎ去ったことはどうしようもないのでこれからのことを考えるとする。

 ひとまず天狼島組は7年というハンディキャップを背負っている。

 さらにこの7年の間にライバル達はメキメキと実力を付けているらしい。

 青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)と言ったギルドも今では巨大なギルドとなっているからだ。

 正直、言うとソウは今でも充分通用するくらい魔導士として強いのだが、油断大敵だった。

 そこで、ソウは軽く魔力を上げるトレーニングをすることにした。

 精神統一みたいなものだ。

 座禅を組んで意識を集中する。すると、周りに魔力の渦が発生する。その状態を出来るだけ歪ませずに保つ。

 これが結構キツいのだ………。

 ソウの場合は大魔闘演武があることを知っているのでトレーニングを始めたのはでいいが、他の天狼島組は知らない。

 ソウが自分から言うつもりは皆無。

 残っていたメンバーに聞けば教えてもらえるがそんな絶好のチャンスがあるとは天狼島組は微塵も思ってもいない。さらに、向こうから話してくれるとは思わない。

 なんでも、今までの大魔闘演武でのフェアリーテイルの成績は常に最下位だったそうだと師匠から告げられた。ソウはあまりショックは受けなかったが、フェアリーテイルの評判が悪いのもそれが要因だったことが分かった。

 フェアリーテイルの評判は最悪でナツ達のこの前の騒動もあまり評議会には高評価されていないらしく現状は変わらないらしい。

 大魔闘演武に参加して優勝でもすれば、一気に評判は良くなる。鰻登りだ。けど、今まで最下位だったことを上げると笑い者にされて、ただの恥さらしみたいなものだ。

 それは殆ど公開処刑に近い。それを四代目マスターを筆頭に耐えてきたのだ。

 フェアリーテイルの意地といったところか。流石だ。

 今年は天狼島組の帰還により、今までのフェアリーテイルとは一味違う。けど、それでも7年というブランクは大きい。

 そんなことをソウは考えているのだが、ナツは勿論、エルザやウェンディは知らないので呑気に過ごしている。

 そんな平和に似たような毎日が変わったの突然だった。

 

「セイバートゥース?」

「剣咬の虎。セイバートゥース。それが天馬やラミアをさし押さえて現在フィオーレ一最強の魔導士ギルドさ」

 

 ナツの疑問に答えたのはロメオだった。

 

「聞いたことねもえな」

「7年前まではそんなに目立っていなかったんだ」

 

 グレイの呟きにアルザックが答える。

 

「てことはこの7年で急成長したってことか?」

「ギルドのマスターが変わったのと物凄い魔導士が5人加入したことがきっかけだね」

「たったの5人でそんなに変わるものなの?」

「はあ?いい度胸じゃねぇか」

「確かに……5人か……」

 

 マックスが片手を広げる。5人を象徴しているのだ。

ルーシィが疑問の声を上げてナツは喧嘩腰になっていた。

 ルーシィと同じことを呟いてはみるが、ソウはそんなことは言えない立場だったことを思い出した。

 トライのメンバーも5人しかいないからだ。

 そんなことをみんなは知らないので何も気づかない。

 

「ちなみに私達のギルドは何番目くらいなんですか?」

「あ……」

 

 ウェンディが率直な疑問を述べた。ソウが気づいたときにはもう既に遅い。

 

「……それ聞いちゃうの…」

「ウェンディ……聞かなくても分かるでしょ」

「え……」

 

 シャルルとハッピーに言われたことにウェンディは気づいたのかはっ!とした表情になる。

 

「最下位さ」

「弱小ギルド」

「フィオーレ1弱いギルド」

「はわわ……ごめんなさい!」

「なははは!そいつはいい。おんもしれぇ!」

「確かに、そうだな」

「はあ?」

 

 ナツとソウの言ったことがよく分からなかったグレイ。

 

「だってそうだろ。上に昇る楽しみが後何回味わえるんだよ、なあソウ?」

「ああ。初めから一番だと面白くないな」

「燃えてきたぁー!」

 

 ナツの言ったことにナツらしいと納得した皆。

 ルーシィは「あはは…」と笑った。

 

「やれやれ……」

「敵わねえな、ナツ兄とソウ兄には」

「そうですよね、うん!楽しみです」

 

 元気よく頷くウェンディ。先程の失言を撤回しようと必死なご様子のようだ。

 

「ねえ、あんたら、ギルダーツを見なかった?」

 

 会話に入ってきたのはカナ。どうやら父親を探しているらしい。

 

「なんだよ、いつもパパが近くにいねえと寂しいのか?」

「ばか!」

 

 グレイがからかおうとするが、自分のした失言により、しまったと表情を歪める。

 父親がいなくなったルーシィの前で言うのは流石にあれだろうとカナは思ったからだ。

 

「わりぃ……」

「ううん。いいよ、気にしなくて」

 

 首を横に振って大丈夫なルーシィの様子を見て安堵の表情をするグレイ。

 それを影から見ていた一人。

 

「ねぇ、ソウ。ジュビアがいるよ……」

 

 レモンが呟く。

 クエストボードに身を隠すようにしてグレイに視線を注ぐジュビアがソウの方からでも確認出来た。

 

 ───グレイ様に気を使われている!

 

 ジュビアが力を込めたせいでクエストボードにひびが入った。

 

「ギルダーツならマスターと旧フェアリーテイルに向かったぞ」

 

 さきほどギルドに入ってきたエルザが答えた。

 カナは喜びの表情になった。

 

「よぉ~し、じゃあ今のうちに仕事に行っちまうか」

 

 そう言うとあっという間にギルドから飛び出して行ったカナ。

 ギルダーツがいるせいで危険な仕事に行かせてくれなかったのだろう。

 そう言うソウもギルダーツのことを言えない。

 ウェンディを一緒に仕事に連れていっていないからだ。

 だから、あえて口にしていない。したら、あんたも連れていけ!と言われそうだからだ。

 すると、ハッピーがシャルルに話しかける。

 

「ギルダーツのカナへとデレッぷりったら凄いもんねぇ~」

 

 近くにいたリリーとレモンは同じことを思った。

 ハッピーのシャルルへの溺愛ぶりも似たようなものだ!………と。

 

「あれでこのギルド最強って言うんだから、変わったギルドよね」

「シャルル、ソウが最強なんだよ~」

「はいはい、分かったからあんたは黙ってなさい」

 

 突っかかってきたレモンをばっさり切り捨てるシャルル。

 

「お兄ちゃんも強いもんねー」

「なあ、ソウとギルダーツ、どっちが強いんだ?」

 

 ナツが聞いた。

 皆も同じことを思っていたのか耳を傾けている。

 

「さあ?あんまり闘う機会がないからな。一回本気でやってみたいものだ」

「駄目だ!とんでもないことになるぞ!」

「私もそう思うわ………」

 

 ………皆から止められてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「ルーシィさん、ありがとうございます」

 

 二人がいるのはギルドの裏庭。

 外は気持ちいいので試しに来てみたのだ。

ウェンディは木箱の上に座り、ルーシィはその後ろに立っていた。ルーシィはウェンディの髪を先程までセットしていたのだ。

 ウェンディの青髪はとても綺麗でルーシィは少しいいなぁ…と思ってしまった。

 

「どういたしまして。流石にキャンサーってわけにはいかないけど私のだってなかなかのものでしょ」

 

 苦笑いを浮かべるルーシィ。

 キャンサーとはルーシィの星霊の一人で巨蟹座の星霊。なぜか語尾に「エビ!」が付いている。

 髪型をセットしたり、カットしたりするのが得意だ。

 

「はい、とっても上手です。それに外でこうしているのも気持ちいいのですよね」

「今日はいつになく静かだし。なんだか平和だね~」

「その平和が長く続かないのがこのギルドなんだけどね」

「あはは……当たってるかも」

「もう私は慣れてるよ~」

 

 ウェンディの隣にいたシャルルのきつい一言。

 レモンは昔からいるので騒がしいのは慣れている。

 

「ねえ、ウェンディ。ソウはあそこで何してるのか分かる?」

 

 ルーシィの視線の先には離れたところで静かにあぐらをして目を閉じているソウがいる。

 ルーシィが気になったのはずっとあの状態から動いていないのだ。

 それになんだか、威圧感が放たれているような気がする。

 

「なんでも魔力を上げるための特訓らしいですよ」

「へぇー、そうなんだ。私もやってみようかな」

「あんたもしてみればいいわ。あれは大変らしいから」

「………やっぱいいわ………」

 

 あのS級魔導士がしている特訓を自分がしてみれば強くなれるかもしれない。

 そう考えたルーシィだったが、シャルルの追撃で思いとどめる。

ルーシィは辺りを見回してみると目を見開くような光景を目にする。

 ナツがいた。それはいい。

 だが、手に握っているのは箒ではないか。そして、ナツは箒を使って掃いている。つまり、掃除している。

 平和過ぎるだろと思ったルーシィ。

 ナツは箒を掃いて、裏庭の掃除をしていると思ったら何を思ったのか、いきなり「おぉい!」と叫んだ。

 

「ほら!」

「ホント…長続きしないわね~ここの平和」

 

 ナツの視線の先にはすやすや切り株の上で寝ているハッピーの姿があった。

 

「おい、ハッピー!」

 

 ナツは起こそうと叫ぶ。

 ハッピーは驚き、その場に立ち上がると「うわぁ!魚!」とよく分からないことを言った。

 まだ寝惚けているようだ。

 

「なんだ……ナツか…」

「“なんだ”じゃねぇーだろ!」

「何怒ってるのさ?───それにしても夢とはいえ、あんなに魚を食べられるもんだんなぁ……おいらビックリしちゃった……」

 

 どうやら、ハッピーは先程まで魚を頬張る夢を見ていたらしく思い返していた。

 そしてそのまま………また寝た。

 

「こらぁ!!」

「だから!なにさぁ!」

 

 昼寝の邪魔をされて、少し声をあらげるハッピー。

 

「お前は俺の相棒だろぉ?」

「そうです」

「んで、おれはこうやって裏庭の掃除をしているわけで」

「そりゃ、そうでしょ。当番だもん」

「俺が当番なら、なんで相棒のお前は手伝ってくれねえんだよ!おかしいだろ!?」

「おかしくないよ!」

「おかしいだろ!」

 

 そのやり取りを見ていたルーシィ達はあきれたように見ていた。

 

「凄い低次元……」

「いつものことだけどね」

「あはは……」

「私、ソウでよかったよ……」

 

 そのソウはまだ特訓をしているので動いていない。

 二人の会話はまだ続く。

 

「それとこれとは別だよ。今日はおいらの当番じゃないんだから」

「お前、いつからそんなに冷たくなったんだ、ハッピー!」

「冷たくないよ」

 

 ハッピーの言うとおりである。逆にナツが熱くなり過ぎなのだ。

 

「ほら、今日はいい天気でしょ。お日様がポカポカして」

 

 ハッピーは空を見上げ小さな両手を優雅に上げた。

 

「何をしょうもないことで揉めてんだよ。掃除ぐらいブーブー言わずにやれってつんだよ」

 

 文句を言ったのはグレイだ。

 ナツがすかさず反論する。

 

「なんだと、グレイ!俺は掃除が嫌だなんて言ってないぞ。ハッピーがだな───」

 

 そう言ってハッピーの方を指差すが既にハッピーはそこにはいない。

 

「いい天気だね。シャルル」

「そうね」

「人の話を聞けーーー!!」

 

 もはや、誰も味方がいなくなってしまったナツ。

 そこにやってきたのはマックスを筆頭に7年で成長した………いや、年取ったギルドのメンバーだ。

 ソウはまだトレーニング中。

 

「やれやれ、7年経った今もまったく変わらないんだな、ナツ」

「そうそう。常、日頃からおいらもそう言ってるんだよ」

「んだと、マックス。お前は変わったんだとでも言うのかよ」

「まあ、気持ちは相変わらずヤングなままだけど」

「気持ちが若ぇやつがヤングとか言うのか~?」

「腕なら相当上がってるぜ~」

 

 すると、ナツが即座に反応した。

 

「ほほう、おもしれぇ!勝負すっか!」

 

 箒を投げ飛ばして戦闘体制に入るナツ。

 掃除をサボる気がバレバレである。

 

「ああ、いいぜ」

「ちょっと何故そうなる!?」

 

 慌ててルーシィが止めに入るが無意味に終わる。

 さらにグレイが悪のりする始末。

 

「やれやれ~。昼飯あとの暇潰しにちょうどいいぜ」

「よし、燃えてきたー!」

 

 そしていきなり始まった謎の勝負。

 ルーシィ達は巻き添えを喰らわないように距離を取って見守る。

 もはや寝ているように見えるソウはその場を動かない。

 ───試合開始。

 ナツは先制とばかりに火竜の鉄拳を発動して、マックスに襲いかかる。

 マックスはひらりとかわしてカウンターにナツの腹に砂を纏った蹴りを喰らわす。

 そして砂を纏ったパンチで弾き飛ばす。

 マックスの魔法は砂を操る魔法だ。

 後ろに吹き飛ばされたナツは体勢を元に戻して口元を拭った。

 

「ま、まじで……!?」

 

 7年前とは実力が全然違うことに驚愕したナツ。

 他のメンバーも同じだった。

 

「おれらだって7年間何もしていなかったわけじゃねえ。それなりに鍛えてたんだ!」

 

 マックスが両手を広げてそう言った。

 そう言えるほど実力は確実に上がっている。

 

「ナツさんが……」

「マックスに勝てないの……!」

 

 少し失礼なことを言っているウェンディとルーシィ。

 

「もう一度!」

 

 今度は魔法を使わずに肉弾戦で突撃したナツ。だが、マックスはナツの拳や蹴りを避けて反撃した。

 

砂の反乱(サウンドリベルオ)!」

 

 大量の砂がマックスの足元から出現。巻き起こる砂がナツに上から被さるように襲う。

 ナツは砂を払おうと炎を出して暴れる。

 そのせいでルーシィ達の方にも砂ぼこりがかかってしまった。

 咳をするルーシィ。目を瞑るウェンディ。

 すると、ハッピーがその場でジャンプしながら叫んだ。

 

「ナツぅー、がんばれー!」

「ちょっと!さっきまで喧嘩してたでしょ!」

「それとこれとは別です!」

 

 キラン!と言いたげにくるりんと1回転するハッピー。

「火竜の鉄拳!」

砂の壁(サウンドウォール)!」

 

 ナツの拳とマックスの砂の壁が衝突。

 どちらも譲るつもりはなく、そのまま均衡状態になる。

 

「7年前とは違うんだぜ」

 

 ニヤリと笑うマックス。ナツは雄叫びを上げて突き破ろうとする。

 

「信じられねぇ……あのマックスが…」

「ナツを押してんのか!?」

「もしかしたら俺達もナツに勝てるかもしれねぇ!」

 

 天狼組に勝てるかもしれない。

 そんな希望が沸いてきたフェアリーテイル7年間残されていたメンバー達。

 より力を拳にこめて雄叫びを上げるナツ。

 そして、ついにナツが本気を出す。

 

「モード!“雷炎竜”!」

 

 全身に力をこめたナツの周りに炎と雷が入り交じったものが、ナツの体を纏う。

 

「まさか……!?」

 

 ルーシィの記憶だといつだったか、ラクサスの魔力を吸収して雷の力を使えるようになった。

 でも、それだと魔力の消費がすごかったはずでナツは使いこなせていなかったはずだ。

 

「ちょっ……なんだよ、それ……!?」

 

 狼狽えるマックス。

 あんな姿は見たことがなく、嫌な予感がしたからだ。

 ナツは息を吸い込んだ。

 

「雷炎竜の…………咆哮ぉぉ!」

 

 巨大なブレスがマックスに向けて放たれた。

 マックスはブレスが横にずれたことで横髪がかすった程度で難を逃れた。

 が、マックスの背後は森が薙ぎ倒され完全に地面が抉れていた。

 驚愕する一同。

 ナツは本来の力を発揮できなかったようで不満そうだった。

 

「あいやーーー!」

「くそぉ……あの時ほどのパワーは出ねぇなぁ……」

「いつの間に自分のものにしたの?」

「今」

 

 ルーシィの質問にあっさり答えたナツ。

 今と言われてもそう簡単に出来るものなのだろうか。

 

「凄い……」

「ま、まいった……降参だ。あんなの喰らったら死ぬって…」

 

 マックスの降参が入り、勝負はナツの勝ちで終わった。

 まだやり足りないのか、辺りを見回すナツ。

 

「次はどいつだ?」

「ひぇぇ……………」

「………化け物だ……」

「やっぱ強ぇ………」

 

 「なはは!」と笑って鼻を高くするナツだが、次の瞬間、バタン!と倒れてしまった。

 

「やっぱり魔力の消費量が半端ないんだ」

「ナツ、それ実戦じゃあ使わないほうがいいよ」

「でも、マックスさんも凄いです!」

「お世辞なんか要らねえよ、ウェンディ」

 

 頭をかいて照れるマックス。

 

「だけどそのくらいの力があったのならオーガ達に好き勝手やられることもなかったんじゃない?」

 

 シャルルが正論を言った。

 マックスほどの実力があればオーガに引けをとるどころか、勝てるはずなのだ。

 

「そうかもしれねぇが……」

「金が絡んでいたからなぁ…」

「力で解決するわけにもいかんでしょ」

「マスター達はやっちゃったけどね……」

「だな」

 

 天狼島から帰還した後すぐにマスターとミラとエルザ、それにソウはオーガのギルドへと直接乗り込んでいった。

 ソウは嫌そうにしていたが、エルザに引っ張られていった。

 話し合いで平和的解決をするはずが、結局派手にオーガのメンバーをボコボコにしてギルドを壊してきてしまった。

 エルザとミラは満足そうに、マスターは顔を暗くしてやってしまったとばかりになっていた。

 ソウはもうどうにでもなれとばかりに諦め顔になっていた。

 

「皆………」

「どうしたの、レモン?そういえばさっきから静かよね」

 

 ルーシィは先程から静かになっていたレモンを発見した。

 レモンはなんで皆は気づかないの?と言いたげな表情になっていた。

 そしてとんでもない一言を告げた。

 

「ナツの放った咆哮の先にソウがいたんだよ………」

「え!」

「お兄ちゃん!?」

「まじかよ!」

 

 誰一人として気付かれていなかったソウの存在。

 唯一気付いていたレモンの視線の先には咆哮で未だに砂ぼこりがたっているソウがいた場所。

 砂ぼこりが晴れて、ようやく視界が良くなった。

 そこには不自然に地面が抉られていない箇条がある。

 その中心には座っているソウがいた。

 皆は安堵の溜め息を吐いた。

 どうやら無事のようだが、ホントに無事だろうか。現に先程からまったく動いていないソウ。

 もしや、今もトレーニングの継続中だったのだろうか。だったら咆哮が飛んできたときに気づくはずだろうに動いていない。

 なんというか度胸がありすぎる。

 あの超過力のナツの咆哮をソウはまともに飲み込まれているのだ。

 ソウの周りだけまったく変わっていないことも不自然だ。もしや、ソウの魔法が発動していたのだろうか。

「お兄ちゃーーん!!」

 ウェンディは涙目を浮かべながらソウの元へと駆け出していった。

 そしてそのまま勢いよく抱きついた。

 いきなりの衝撃に「ぐへぇ!」と呻き声を上げて倒れてしまう。

 軽く地面に頭を打ち付けたソウは頭を軽く振るとようやく目を開けた。

 目の前には何故かうるうる目を潤しているウェンディが乗っかっていた。

 

「な、なに?どうしたんだ、一体?」

 

 周りにはルーシィ達が集まってきてソウは状況が飲み込めずにいた。

 と、ここでようやく辺りを見回したソウは驚く。

 

「うわぁ!なにこれ!?地面が抉れてるぞ!」

「ナツの咆哮のせいだよ」

「ああ………なんで、俺は無傷?」

「こっちが聞きたいわよ……」

「お兄ちゃん!けがないの?大丈夫?私が魔法で───」

「いやいや、大丈夫だから」

 

 軽い混乱状態に陥っているウェンディを落ち着かせて上半身を起こしたソウ。

 どうやら瞑想中にナツの咆哮に飲み込まれたようだ。

 けれど、無傷というとは無意識にでも波動壁が発動していたのだろうか。

 

「いつのまにか魔法が発動していたみたいだな」

「いつのまに………って」

「ソウもナツと同じ化け物だ」

「やっぱすげぇ………」

 

 無意識に発動していた魔法でナツの咆哮を余裕で防いでいたソウ。

 これにより意識を集中さしたら一体どんな防御力に達するのだろうか。

 ソウの強さの一部を痛感したマックス達はただただ感心するのみだった。

 

「………何があった。説明求む」

 

 いい加減離れてほしいが離れてくれないウェンディの頭を撫でながらソウは呟いた。

 

 

 

続く───────────────────────────

 

 

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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