FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

40 / 65
あ、因みにソウ達のギルドは漢字表記で三首の竜、読み方はトライデントドラゴンとなってますよ。

───では、競技パート始め!!


第n話 星降る夜に

 “ヒドゥン”とは、隠れるという意味だがそれとゲームとどう影響してくるかがどうかだった。

 隠れるとなれば、背の低いアール。それに絶界魔法も有効に使えるので有利となればいいのだが、もし見つける側のゲームだったらそれは少し怪しくなる。

 見つける事はソウの方が得意だからだ。

 

「各チーム、ヒドゥンの参加者は前へ」

 

 アナウンス側では誰がお薦めなのか、話していた。ヤジマさんはルーファス。ジェニーは同じギルドのイブらしい。

 

「グレイ様。申し訳ありませんが、手加減しませんよ」

「当たり前だ。全力でこい」

 

 同じギルドが敵になるとはどんな感じなんだろう。

 やはり、妖精の尻尾の魔導士はソウ相手だとやりにくいのだろうか。

 そんなことをアールは考えていた。

 彼の横ではリオンがガッツポーズをとっていた。

 

「悪いが俺も全力でやらしてもらう。ジュビアのために!」

 

 どや顔で言うところか、そこは。

 現にグレイとジュビアは無表情。

 

「ほっとけよ。バカが移る。それと、アールって言ったか?」

「そうだけど、何か用?」

「ソウとさぁ、こっちが勝ったらそっちの目的を教えてもらうって約束してんだが、それはお前でも有効か?」

 

 アールはソウの方へと視線を向けた。

 視線に気付いたソウは頷いた。構わないという意味だ。

 

「うん、いいよ。そこのジュビアさんの場合も同様にね」

「サンキュー。後、予選始まった時から気になってたんだが、お前何?」

「さあ?僕も知らないよ」

 

 ギクッと肩を震えさしたカボチャ。

 誰も突っ込まない辺りからもう当たり前のことなのだろうが、いささか初めての参加なので気になっていた。

 

「見ての通り~、カボチャです~」

 

 どう見ても誤魔化している。

 

「あれ?質問した俺が悪いのか?」

「ジュビアもカボチャに見えますよ」

「いや………見た目はカボチャなんだが、中身は………」

「毎年のことだからね。あまり気にしてなかったけど」

「多分、主催者側の役員だと思うの」

 

 イブとベスは同時に姿勢を正して綺麗な礼をした。

 

「「キャラ作りご苦労様です!」」

「のんのん、楽しんでやっているからいいんだカポー」

「無理矢理キャラを濃くするなよ」

 

 すると、アールが近づき不気味な言葉を放つ。

 

「試しに分解してみるかな?」

「怖いカポ………」

「冗談だよ」

 

 いや、どう見たって本気でしそうな雰囲気だった。グレイは思っていた。

 ()()と言う言葉に何人かが反応していた。

 既に勝負は始まっている。相手の魔法を見極めているのだ。

 

「ちょっと待ってくださいや。これから始まるヒドゥンって競技。どんなもんか知りやせんがね、いやいや今後全ての競技に関することですがね。どう考えても二人いる妖精さんが有利じゃありませんかね?」

 

 確か、彼はナルプディングと言った。

 ソウの目の敵にしているギルドの者である。確かに悪者のようなやつだった。

 

「それは、フェアリーテイルがなし得た特権。そう言うなら自分達がしたら良かったんじゃないの?ルール改正のことはルール書に書いてあったんだし、誰も文句は言えないよ」

 

 アールが弁護した。

 これはフェアリーテイルが手に入れた物で誰も文句は言えないのだ。

 2つのチームが残っていることは異例だが、これもフェアリーテイルだから出来たものと言っていい。

 

「仕方ありませんよ。決勝に同じギルドが2チーム残るなんて凄いことなんですから………カポー……」

「いいのではないのかな。私の記憶が唄っているのだ。必ずしも二人いることが有利とは言えないと」

「オラも構わねぇだ」

「あちきも良いと思うよ」

「勿論、僕もね」

 

 舌打ちをしたナルプディング。作戦は不発に終わったようだ。

 

「流石だねぇ~それが王者の余裕ってやつかい?」

「仲間は君にとっても弱点となりうる。人質、脅迫、情報漏洩。他にもいくつかの不利的情報は構築出来るのだよ。記憶しておきたまえ」

「忘れなかったらな」

 

 随分の余裕がある発言だ。それも王者からの自身から来るものだというのだろうか。

 

「フィールドオープン!!」

 

 カボチャの一声により、突如会場に街と呼べるものが出現した。それも相当の広さを誇っている。

 一体、どれほどの魔力が行使されているのだろうか。

 これがこのヒドゥンの舞台となる場所のようだ。

 具現化が終わると同時にアールは街なかに放り出された。周りには誰の姿も見当たらない。

 皆とは、はぐれたようだ。

 アールは辺りを見回した。特に異変はなく、普通の街だ。

 ここでかくれんぼをすれば、良いと想定する。隠れ場所はいくらでもある。まあ、絶界魔法で生み出した別空間に移動すれば終わりだが。

 そんなことはルール違反になりそうだし、止めておく。まだ詳しいルール説明はまだだが、これは流石に駄目だろう。

 ここで、アールはかくれんぼをするには足りないものを見つけた。

 ()がいないのだ。

 誰かが探さないと同じ場所に隠れているたけで、ただ虚しいだけのものになる。

 

『会場の皆さんは、街の中の様子をラクリマビジョンにてお楽しみください』

 

 空にはたくさんのモニターが映し出されていた。自分もモニターで確認されるみたいだ。

 試しに手を振ろうしたが、こちらからでは向こうが見えないので諦める。

 

『参加している9名はお互いの様子を知ることは出来ません』

 

 出来たらゲームにならないと思う。

 

『ヒドゥンのルールは簡単。互いが鬼であり、追われる側なのです。この街の中で互いを見つけ、どんな魔法でも構いません。一撃を与える。ダメージの有無を問わず攻撃を与えた側が1ポイント獲得です』

 

 すると、道に何かが現れてきた。それは大量のグレイやリオンやジュビア………いや、ヒドゥンに参加している選手全員の偽物だった。勿論、アールの偽物もある。

 

『これは皆さんのコピーです。間違ってコピーに攻撃してしまった場合、1ポイントの減点となります』

 

 このコピーの使い方によっては色んな作戦が組み立てられると言うわけか。

 例えばまったく動かずにコピーの中に紛れて誰かが来るのを待ち伏せたりも出来る。

 

『さあ!消えよ、静寂の中に。闇夜に潜む黒猫の如し!ヒドゥン!開始でーす』

 

 銅鑼の音が鳴り響いて競技が始まった。

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

「うわぁ~アールがたくさん」

「長時間見てると気持ち悪くなってくるわね」

「まだ時間そんなに経ってないだろ」

「冗談よ」

 

 ソウ達は出場者の待機場所から観戦をしていた。

 ルーズの冗談は冗談に聞こえない。アールに似てきたような気がしてきた。

 

「それにしても………厄介だな」

「それはどっちの意味でだ?ソウ。アールを見つけることか?それとも、敵を見つけることか?」

「敵を見つけることは、既にアールは攻略法がついてるだろうからな。気がかりはモニター越しにアールが確認できるかどうか………」

 

 アールの絶界魔法での移動では、どこに現れるかは予測不可能と言ってもいいほどだ。

 けれど、アールが始まってから一歩も動かない様子から彼が本格的に動き出すのはまだまだ先のようだ。

 

「あ……ポイントが減った……」

 

 サンディーの呟きにソウが反応した。

 ポイントが変動したのはジュビアだった。コピーのグレイに耐えきれなかったようで思わず抱きついて減点されたようだ。

 すると、ジュビアが別の場所に転送される。

 ポイントが変動すると、どこかにランダムに転送されるシステムのようだ。

 その後は10秒後にリスタートする。それも制限時間内なら何度でも。制限時間は30分。

 そして次にポイントが変動したのはグレイとナルプディング。

「お!造形のスピードが上がってるな」

 

 グレイの氷のハンマーでナルプディングに攻撃を当てた。

 が、何故かグレイの減点になってしまった。グレイが当てたのは偽物だったのだ。

 ナルプディングはニヤリと笑いグレイを馬鹿にしていた。

 

「ああいうのも有りなのか」

「自分だけの軍団が作れそうだな」

 

 自分と同じ姿のコピーをたくさん従わせたら、楽しそうだとソウは想像する。

 ………やっぱり、自分の顔だけを見るのは流石に遠慮しておきたい。

 

「アールは動かないのかな?」

「遊んでんのよ。終盤になったら動くわ」

「へぇ~、流石、アールのお嫁さん」

「誰がお嫁さんよ!!」

 

 ジュンに突っかかるルーズだが、顔はトマトみたいに真っ赤だ。

 そして、密かにサンディーも顔を赤く染めている。妄想でもしているのだろう。

 すると、ヒドゥンの選手は群衆に溶け込んでしまった。誰が本物か分かりづらい。

 静寂の包む中、またしてもナルプディングがグレイに攻撃を仕掛けた。

 ナルプディングにはグレイの居場所が分かっているかのような行動の素早さだった。

 グレイは1ポイント失い、ナルプディングが1ポイント獲得したことでフェアリーテイルAチームは最下位へ落ちる。レイブンテイルはトップに躍り出る。

 ソウから見てもナルプディングはフェアリーテイル狙いだということが読み取れる。

 

『この自分や敵だらけのフィールドで実体を見つけるにはどうしたら良いのでしょう?』

『色々と方法は色々あるけどねぇ。例えば相手の魔力を探るとかねぇ』

『イブ君ならもっと凄い方法を取ると思うわ~』

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「相手の魔力を探る………大体の方向は分かるだろうが、特定するのは困難だぞ」

「グレイ!何やってんだ!」

「同じやつに2度やられんなよ!」

 

 ルーシィは大鴉の尻尾の待機場所へと目を向ける。

 ウェンディの件のこともあり、どうやらレイブンテイルはフェアリーテイルを徹底的に懲らしめたいようだ。

 

「ソウが出ないのは幸いだと言えるな」

「どうしてだ?エルザ」

「ナツ、ソウの魔法は波動よ。波動を使われたら簡単に居場所が特定され放題になって有利過ぎる状況になるの」

「だが、あのアールってやつも侮れないと思うが」

「あぁ………実力は未知数だが、何をしでかすか分からん」

「それにどんな魔法を使うか、分かってないから油断は出来ないわね」

 

 どうやら、問題は大鴉の尻尾以外にもたくさんあるようだ。グレイはこれらを全部相手に出来るのだろうか。

いや、そうしないといけないのだ。

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

「俺が出た方が良かったか?」

「誰が出ても結果は変わらないんじゃないのか?」

「それもそうだな」

 

 まだ、アールに動く気配は無さそうだった。

 戦況が動いた。

 グレイにニンジンのロケットが地面から飛んでくる。ぎりぎりのところで回避。

 穴から出てきたのはベス。すると、ベスが空に打ち上げられた。サボテンのようなものに打ち上げられたのだ。

 ベス、1ポイント減点。

 グレイの背後には1ポイント獲得したイェーガーがいた。今のサボテンはイェーガーの魔法らしい。

 さらにポイントは変動する。イェーガーを背後からリオンが攻撃した。

 そして、建物の屋上からジュビアがジャンプして飛び降りる。その際、下にいるグレイとリオンはジュビアがスカートなためにあれが見えており、顔を赤くした。

 ジュビアはリオンを蹴飛ばして、着地する。

 その結果、ジュビアのポイントは0ポイントに戻った。

 

「おいおい、手助けは無用だぜ」

「分かっています」

 

 一気にポイントが変動したが、グレイはまったく変わっていない。

 リオンは「眼福………」と言いながらどこかに転送された。

 この場にいるのは、グレイとジュビアの二人。

 

「ジュビアはあなたに勝ちます。マスターと約束しましたから」

「じいさんと約束だぁ?」

 

 マスターと一体何の約束をしたのか、まったく心辺りがないグレイ。

 ジュビアの説明によると、初めのBチームは乗り気ではなかったらしい。なので、マスターがある提案をしたのだ。

 それは勝った方が負けた方を1日好きに出来るというものだった。

 それで、取り敢えず納得してBチームは参加したのだが、Aチームのほうはまったく聞いていない話だった。

 

『ふざけんなぁ!おい、じいさんそんなの聞いてねぇぞ!そのローカルルール、俺らも適応されんだろうなぁ!』

 

 グレイのモニター越しの気迫に押されて、マスターは頷いていた。

 ナツはそれを聞いて、ラクサスとガジルにハッピーの物真似をさせている場面を想像していた。

 だけど、それは面白いのだろうか。

 

「だから、ジュビアは負けません!」

「臨むところだ」

 

 二人は対峙する。と、そこに乱入者が現れる。

 

「二人まとめて、妖精さんをゲットでさぁ!」

 

 ナルプディングだった。どうにか、緊急回避に成功するも、こうもナルプディングが狙ってくるとなると邪魔にならほかならない。

 反撃に出ようとしたグレイだが、足が止まる。

 雪が降ってきた。

 おかしい。今も空は晴れているのに雪なんて降るはずがないのだ。

 可能性として高いのは魔法。

 そして、これを扱うのは───

 

『おっーと!これは一体……?街のなかに雪が降ってきたぁー』

『イブ君ね~』

 

 今まで何の行動にも移っていなかったイブだった。

 

「寒さに強い魔導士がいたのは誤算だったよ」

 

 グレイとリオンのことだ。

 人は寒さに震えると自然と体温が低くなっていく。すると、人は白い息を吐くのだ。それによってコピーと見分けようという訳だ。

 コピーは寒さを感じないので、白い息を吐いているのは本物と言うことになる。

 場所を突き止めたイブは吹雪で攻撃。一気に3ポイントを獲得した。

 そこにすかさず、リオンが追撃した。リオンに寒さは効かない。

 

 状況は乱戦を極めていた。

 誰が首位になるのか、分からない。

 その中でも、ナルプディングはしつこくグレイを襲撃していた。流石にグレイも鬱陶しい他ならない。

 

『それにしても、セイバートゥースのルーファスとトライデントドラゴンのアールはまったく動きませんね。未だに誰も倒さず倒されていません』

 

 刹那───

 

「私は覚えているのだよ」

 

 ようやく、ルーファスが動き出した。だが、ルーファスは驚くことに一番高い建物のてっぺんに立っていたのだ。

 あんなところに居れば目立つ。全員の絶好の標的にされやすい。

 

「私は覚えているのだ。一人一人の行動、足跡、魔力の質」

 

 随分と余裕ぶった行動だ。そんなに自分を狙って欲しいのだろうか。

 

「もう、そろそろアールも動くか」

「そうだな」

 

 未だに姿を現していないアール。このままでは順位はよくない結果になる。

 ルーファスは両方の人差し指と中指を頭にかざした。

 

「覚えている………覚えているのだ………メモリーメイク」

 

 ルーファスの背後に魔方陣が出現。ルーファスの頭上が何かに覆われて、辺りが暗くなる。

 

「“星降ル夜ニ”」

 

 電撃に近いものが、ルーファスの体から8つに分裂して放たれた。それぞれが選手達へと襲いかかり、命中していく。

 さらりと、かわしたナルプディングがルーファスに攻撃を仕掛けるが、それはコピーだった。

 空中に投げ出されたナルプディングにルーファスが追撃を仕掛けて、ナルプディングはポイントを失う。

 

「私にデコイは必要ないのだ」

『一瞬でぜ、全滅………!これがルーファス。セイバートゥース~!』

 

 会場が一気に盛り上がる。だが、誰も気づいていなかった。全滅したはずなら、ルーファスには8ポイントが上がるだが、ルーファスの得点は7ポイント。誰かが攻撃をかわしているのだ。

 

「主催者の皆さん、この競技は面白くない。だって私には隠れる必要がないのだから。私を見つけたところで攻撃は当たらない。そこにあるのは私がいたという記憶だけだ」

 

これが、剣咬の虎の実力だと感心していたルーシィ。と、隣のエルザが異変に気づいた。

「これが、セイバートゥース………」

「おかしい。アールのポイントが変わっていない」

 

 攻撃を当てられるとポイントは減点する。が、アールのポイントはゲーム開始からまったく変わっていない。

 

『ち、ちょっと待ってください!な、なんと!一人だけ、ルーファスの攻撃をかわしている人物がいたぁー!』

「確かにこの競技は面白くないね。だって誰も僕を見つけてくれないんだよ」

 

 ルーファスの背後の空間が歪んだ。そして、そこから一人の人物が出てきた。

 アールだ。

 ルーファスが気づいた時にはもう、遅かった。アールはルーファスの背中に手を伸ばして魔法を発動する。

 

「『空動・其の参・弾』」

 

 ルーファスの背後にアールの魔法が直撃。アールが放ったのは空気砲に似たものだった。

 

「この私が記憶出来ないだと………!」

「油断大敵だよ」

 

 にこりと笑みを浮かべたアール。ルーファスは足を踏み外して落ちながらも振り返ってアールを見た。そして、驚嘆した。

 ───浮かんでいる!

 ルーファスがいたのは建物のてっぺん。他に誰かが立てるスペースは絶対にない。なら、アールはなぜ、立ち止まっているのか。それは宙に浮かんでいるからだ。

 

『おぉっと!ここでルーファスが倒されたぁ!アールにポイントがようやく追加!』

 

 空から辺りを一望したアールは、皆がリスタートしているのを確認した。

 

「さて、計画はもう意味がないんだけど行きますか」

「その前に俺の相手をしてもらおぅーか!」

 

 空中に浮かんでいるアールにグレイが飛びかかっていく。

 ───が、ナルプディングがグレイを妨げるように現れた。

 また、狙われる。そう思ったグレイは目を見開くが、それはまた別の事で驚いたからだ。

 ナルプディングが下に叩きつけられた。

 それをしたのは、アール。魔法で空気の歪みを作り、それをナルプディングの頭上からぶつけたのだ。

 

「邪魔しないでくれるかな?」

 

 笑顔でそう言ったアールには、どこか恐怖が感じられた。

 グレイは両手をかざし、魔法を発動してアールを倒そうとする。

 すると、アールはまたしても一瞬で消えてしまった。グレイは辺りを見回す。

「───っ!背後か!」

 

 気配を後ろから感じたグレイ。けれど、今は空中にいるために思うように動けない。狙われるのには、絶好の的だった。  アールの手元から放たれた空気の歪み。それは、あのルーファスを倒したものと同じものと見受けられた。

 グレイの背中に直撃。

 よって、アールは計3ポイントを獲得していた。

 グレイが転送されたのを確認したアールは、またしてもその場から姿を消した。

 

「今度は僕か!」

 

 イブは直感的に警戒体勢に入るが、横から襲ってくる空気の歪みには気づかない。

 アールが目の前に現れると同時にぐはっ!とイブの脇腹に命中して、1ポイントをアールに取られることになった。

 アールがイブを狙ったのはイブの居場所が一番近いためだった。

 そのお陰で、これでアールは3位まで一気に上り詰めた。ルーファスの7ポイント同時獲得をしたこと。それにナルプディングが地味にポイントを稼いでたのには、影響が大きかったために1位までにはまだ届かない。

 時間があれば、良かったのだがもうほとんどない。

 そして───

 

『ここで、終了~!』

 

 終わりを告げるアナウンスが入り、順位が発表される。

 

 ───1日目途中結果───

 1位,“剣咬の虎”(10ポイント)

 2位,“大鴉の尻尾”(8ポイント)

 3位,“三首の竜”(6ポイント)

 4位,“蛇姫の鱗”(5ポイント)

 5位,“青い天馬”(4ポイント)

 6位,“人魚の踵”(3ポイント)

 7位,“四つ首の猟犬”(2ポイント)

 8位,“妖精の尻尾B”(1ポイント)

 9位,“妖精の尻尾A”(0ポイント)

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

 まあ、アールは不満だろうがトライの方としては良い結果だと言える。

 

『やはり、予想通りに1位はセイバートゥースでしたね』

『だけど、あのアール君も凄い活躍だったよ』

 

 1位になれて喜ぶはずだが、ルーファスは何か満足がいかない顔をしていた。

 アールに裏をとられたことを根に持っているのだろうか。

 

『今回のダークホースはトライデントドラゴンなのでしょうか?』

『私も気になってきたわ』

 

 実力はそんなには示していないのだが、周りからの目線は注目を浴びたようだった。

 

「アール、お疲れだったな」

「うん。楽しかったよ。けど、誰も見つけてくれなかったことには残念かな」

「はは!無理難題だなぁ、それは」

 

 競技の後だと言うのにいつもと何ら変わりない様子でジュンとアールは会話をし出した。

 

「どうしたの、ソウ?」

「………フェアリーテイルがな」

 

 サンディーはどこか、上の空のソウに話しかけた。ソウの目線の先には、最下位を占領している妖精の尻尾の名前があった。

 観客からは罵声が飛び散る。ナツが怒鳴り返すが、逆効果だった。仕方なく笑わせたい奴には笑わせておいて気にしないことにしたナツ達。

 その判断は正しいだろう。

 正直、2チームともあまり実力を出しきれずにいたのだ。

 特にグレイは競技中のほとんどをナルプディングに邪魔されていた。初めから大鴉の尻尾は妖精の尻尾だけを集中的に狙っていたと思われる。

 元妖精の尻尾の魔導士のソウが気にかけるのも仕方ないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

「………くそっ!」

 

 グレイは誰もいない通路にいた。

 ナツやルーシィには見られたくないあまりに競技が終わるなり、さっさとその場を離れたのだ。

 壁に悔しさのあまり、拳を叩きつけた。壁にひびが入る。

 ───レイブンテイルに、セイバートゥースの造型魔導士そして………ソウのギルド。

 敵が多すぎだった。

 だが、グレイもここで易々と引き返すわけにはいかなかった。

 

「………この借りは必ず返す………!」

 

 

続く──────────────────────────────




裏設定:アールの魔法

本来彼は空間魔法の使い手にするつもりだったが、剣咬の虎のミネルバも同じ名前の魔法だということに気付いて変えている。実際にもアールの魔法は空間魔法よりも効能は上である。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。