FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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実はテスト期間の途中………でも、いっちまえ!!

────試合開始ぃぃい!!


第p話 砂漠決壊

 大魔闘演武1日目の最終試合。

 選ばれたのは、三首の竜からルーズという少女と妖精の尻尾Bチームからのジュビアだ。

 三首の竜には、元妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士のソウがいる。“元”と言っても1ヶ月後には戻ってくるが、今は妖精の尻尾(フェアリーテイル)にとってライバルの関係に当たる。

 三首の竜はすなわち、ソウのチームでもあり実力は未知数。

 アールは魔導士としての実力をヒドゥンでさらけ出したが、あれでもまだ本気だとは言えない。

 次に出てきたのは、ルーズという少女。

 一度、彼らがフェアリーテイルに尋ねた時一人でいつの間にか迷子になっていたというあの子だろう。

 二人は闘技場に降り立ち、対峙した。

 

「ジュビア、ギルドのために絶対に負けません」

「………ふん、どうでもいいわ」

 

 興味なさそうに呟いたルーズ。

 ジュビアは気になっていたことを尋ねた。

 

「あなたの場合でもあの約束は有効ですか?」

「なんのこと?私は知らないわ」

 

 ルーズの反応から見る限り、嘘をついているようには見えなかった。

 つまり、あの約束が有効となる人物は三首の竜の青年達と予想される。

 ───だが、そんなことは関係ない。

 今、フェアリーテイルどちらのチームもポイントが殆どなく、どうしてもポイントは欲しい。故に今の目の前の少女を倒さないといけない。

 

「それでは~本日最終試合を始めます。制限時間は30分。どちらかが相手を戦闘不能にしたほうが勝ちとなります。それでは始め!」

 

 ゴーン!と銅鑼の轟音が会場一体に轟いた。

 ───幕が開けたのだ。

 

 ────妖精の尻尾A、選手待機席───

 

 妖精の尻尾Aのメンバーは闘技場を見ながら会話していた。

 会話の話題は闘技場に立っている少女についてだ。

 

「あいつは確か………」

「アールと共に行動していたな」

 

 一度、迷子になっていた所をナツ達は遭遇している。

 その時は冷たい態度であしらわれたが。

 

「そういえば、何のドラゴンスレイヤーだ?」

「確か………“砂”だったな」

 

 エルフマンの疑問にエルザが答えた。

 砂というと、相性的には水の魔導士のジュビアが有利と言ったところか。

 

「だが、油断は出来ない。あのソウのギルドだ。容易く勝てるとは思わない」

「あぁ、どんな闘いをするか楽しみだ」

 

 あのソウのギルドだ。実力は分からないが強敵となることだけは間違いがなかった。

 ソウからは聞き出す必要もあるし、フェアリーテイルとしては優勝する必要もある。

 ナツは自然と気持ちが高ぶるのだった。

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

 一方でソウ達の話題もあの少女についてだ。

 

「アール、ルーズの状態は万全か?」

「うん。最高潮じゃないかな」

「ルーズちゃんは強いよー」

 

 アールとサンディーの保証があるから、大丈夫だとは思われるが、ソウはルーズの魔法をそんなに見ていない。

 けれど、そんな心配事も勝負が始まると考える必要もなくなった。

 

「始まった」

 

 始めに動いたのはジュビアだった。

 最初は、小手調べをするだろうと思われたが始めから全力で行く気なのかジュビアは水の竜巻を両手から繰り出した。

 “ウォーター・サイクロン”

 竜巻は不規則にブレながらも確実にルーズの方へと向かっていく。

 ルーズは避ける素振りを見せずにただ冷たい目線で見ているだけ。

 ───衝突。

「当たったか!」

「いや、よく見てみろ」

 

 今のは確実に命中したとナツは思ったがエルザの指摘でよくルーズの方を見ている。

 ルーズは何もしていないのに、水の竜巻を防いでいる。

 防いでいるのは、砂で出来た盾だった。地面から浮かび上がっていく砂はどんどん盾の方へと集まっていく。

 あれで水の竜巻を防いでいるのだ。

 結果、ジュビアの攻撃は呆気なくルーズには命中することはなかった。

 

「あれが“自動防御”ってやつか?」

「そうだよ。まあ、ソウのよりは劣るけど、それでもあれを突破するには一苦労するよ」

「俺でもだいぶ苦戦したぜ」

 

 ルーズの周りには大量の砂が浮かび上がっていた。まるで意識があるかのように動いている。

 ルーズの魔法は砂を操る。さらにルーズは砂を自在に操れるために自分に危害がある攻撃を自然と砂が代わりに防いでくれるのだ。

 それは自動防御と言えるだろう。ソウとはまた違ったタイプだ。

 ジュビアは、これでは通用しないと思ったのか戦法を変えてきた。

 一点集中型より同時攻撃はどうだろうかとジュビアは水をカッター状に操り飛ばしてきた。

 対するルーズも砂を同じようにカッター状に操り、飛ばした。

 二つのカッターが衝突。

 勝ったのはジュビアの方だった。砂は水を含むとどうしても重くなってしまうために鈍くなるために仕方ないことだった。

 けれど、ルーズ本人までそれは届くことがない。またしても自動防御の前に遮られたからだ。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「あれを攻略しないと難しいぞ」

「だけどよ、一体どうすれば?」

「気合いで行くしかねぇだろ!」

 

 ナツの場合は力任せにいくみたいだ。

 

 

 ───戦場───

 

 ルーズは右手を前につきだして手を広げる。

 すると、徐々に砂がルーズの目の前へと集まっていく。やがてそれは、巨大な砂の槍へと変貌した。

 ルーズはそれを掴むと軽々しく投げた。

 

 ───『砂竜の巨槍』。

 

 真っ直ぐにジュビアの所へ直進していく砂の槍。ジュビアは後ろへとジャンプして回避した。

 それが仇となった。

 槍の着弾した所から、砂煙が広い範囲に渡って巻き起こったのだ。観客達も砂が目に入らないように手で顔を隠す。

 

『なんと、会場一体に砂煙が舞い上がる!少女から放たれたとは思えない威力です!』

 

 砂煙が収まるころには、二人とも距離を置いていた。

 

「なかなかやりますね………」

「そう?私としてはこれからだけど」

 

 余裕綽々な態度をとるルーズ。ジュビアは表情に出さないが、内心冷や汗を掻いていた。

 ………あれでまだ準備体操なの………。

 こちらは手など一切抜いているつもりはなかった。セカンドオリジンが解放した今、この時代でも実力は通用するはずなのだが目の前の少女にはそんなことはなかった。

「長引くのも嫌だし………早めに終わらせたいわね」

 

 そんなことを呟くと、ルーズは魔法を発動さした。

 ルーズの周りに現れたのは、砂の球。それも数えきれないほどだ。

 すると、その球が一斉にジュビアの方へと動き出した。ジュビアは水をぶつけてとうにか相殺さしていく。

 続けざまに砂の竜巻が会場の中心に発生した。ルーズが巻き起こしたものだ。

 その威力は先程のジュビアの竜巻よりも凄まじいものだった。というよりも徐々に大きくなっている。今回の竜巻はフィールドが地面であるために砂を取り組むことが可能なのだ。そのためにどんどんと竜巻が大きくなっている。

 

「───っ!」

 

 ジュビアは避けきれずに竜巻に巻き込まれてしまう。彼女を巻き込んだ砂の竜巻は、しばらくして消滅した。 ジュビアは不覚にもダメージを負ってしまう。

 歯を食い縛りながらも立ち上がるジュビア。ルーズは離れた所で傍観している。

 

「まだ立ち上がるのね………」

「………ジュビアは負けるわけにはいきませんから……」

 

 諦めないの一心でジュビアはなんとか足元を保っている。

 今度はジュビアから先制を仕掛ける。

 すると、水の球体がルーズを中に閉じ込めた。

 うまくいった!とジュビアは追撃しようとするが………出来なかった。

 ───足が沈んでる!

 よく見てみると自分の足元の地面が砂でどんどん沈んでいくではないか。

 いつのまに発動したかと思ったが、ルーズはジュビアが魔法を発動したと同時にこちらも発動していたのだ。

 両足が埋まってしまい、出そうと思ってもどうにも出せない。さらにルーズは水の球体の中からさらに追い討ちをかけるように魔法を発動した。

 身動きが取れないジュビアの地面が大きく盛り上がっていく。さらに、彼女の元に砂が集まり、首から下を砂が埋め込んだ。完全にこちらも拘束された。

 やがて、ピラミッドが闘技場に出現して、頂上にジュビアの頭がつきだしていた。

 首から上だけを地面から出しているみたいになっている。

 そして水の球体に閉じ込められているルーズの姿が大量の砂へと変化した。ジュビアが閉じ込めたのは、ルーズが魔法で作った砂の分身だったのだ。

 ジュビアは抜け出そうと水を体から発生させるが、水が砂に浸透しない。魔力も少し込められているのもあるが、最大の要因は別にあった。

 これは………砂鉄。

 表面は砂のようだが、よく見てみると全体が黒くなっていることが分かる。このせいで水が上手く浸透しないのだ。

 

「私お手製の砂鉄はどうかしら?水を弾くように施してあるから、簡単には抜け出せないはずよね」

 

 ルーズ本人はどこかに居たのか、ゆっくりと姿を現しながらピラミッドの前へと歩いてくる。

 

「これで終わりよ」

 

 ルーズは最後の魔法を発動した。

 どん!とピラミッドに衝撃が走る。砂がより一層凝縮したのだ。ジュビアに全身を押さえつけられる痛みが走る。

 そして───

 

「『砂竜の砂漠決壊』!」

 

 ピラミッドの中心部から爆散。砂が辺りに飛び散り、ジュビアは大きく宙に投げ出された。

 ───そして、勝負の決着がついた。

 

『ここで試合終了~!勝者!トライデントドラゴン!ルーズ・ターメリット~!』

 

 会場は一気に盛り上がる。ジュビアは立ち上がることが出来ずに敗北したのだ。

 ………こうして、フェアリーテイルは最悪の1日目を終えるのだった。

 

 ───1日目終了結果───

 

 1位,“剣咬の虎”(20ポイント)

 2位,“大鴉の尻尾”(18ポイント)

 3位,“三首の竜”(16ポイント)

 4位,“蛇姫の鱗”(15ポイント)

 5位,“青い天馬”(14ポイント)

 6位,“人魚の踵”(3ポイント)

 7位,“四つ首の猟犬”(2ポイント)

 8位,“妖精の尻尾B”(1ポイント)

 9位,“妖精の尻尾A”(0ポイント)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜………。

 フェアリーテイルの皆はクロッカスにある酒場『BAR SUN』にてドンチャン騒ぎをしていた。

 カナは情けないと酔いながら言っていた。応援に来なかったやつがそんなこと言うなよと思うが、どの店にもラクリマビジョンが置いてあり、どこからでも観戦可能らしい。

 マカロフは「惨敗記念じゃー!」と盛り上がっていた。レビィが苦笑しながら止める。

 エルザとミラは1日を振り返っており、散々な1日に苦笑を浮かべていた。

 ナツはというと、明日は絶対に出てやると高々に宣言していた。ナツが出るならとガジルが食いかかる。

 すると、レビィがグレイとルーシィがいないことに気付く。

 あんな負けかたをしたのだから、顔を出しづらいのだろう。だったら、あそこで凄い妄想を一人で繰り広げているジュビアはどうなのだろうか。

 そんな心配は余所にグレイとルーシィは普通に皆のところにやって来た。敗北のショックは乗り切ったようだった。

 メンバー全員が揃ったのを確認したマカロフはテーブルの上へと乗り出して高々と語り始める。

 

「今日の敗戦は明日の勝利への糧!!のぼってやろうじゃねえか!! ワシらに諦めるという言葉はない!! 目指せフィオーレ1!!」

「「「オオォォォォォオオ!!」」」

 

 そんなマカロフの言葉にメンバーたちは声を張り上げる応え、宴に更なる盛り上がりを見せる。

 騒いで、飲んで、食べて、笑ってのいつもと変わらない大騒ぎ。そんな彼らの表情には、今日の敗戦のショックなど微塵も感じられなかった。

 

「これ…本当に今日惨敗したギルドかぁ?」

 

 一通り騒いだメンバーは、遊びだした。

 ナツはマックスをKOしており、「次は誰だぁー!」と叫んでいた。その光景にウォーレン達は自分達の立場はどうなってるんだよ………と嘆いていた。

 ガジルが突っかかろうとするが珍しくラクサスが止めた。

 随分と丸くなったとガジルがラクサスに偉そうに指摘するがそれを聞いたレビィが慌てて止めに入る。

 フリードはこれに激怒して、雷神衆を呼ぶがメンバー全員がカナの手によって飲み潰されていた。

 そこに一人の男がやってきて、カナに勝負をふっかける。マカオとワカバは忠告するが、男はそれを聞き入れなかった。

 カナは承諾して早速飲み比べの勝負が始まった。

 ───すると、驚くことにカナが負けた。

 勝利して高笑いを上げる男。カナの酒の強さを知っている者共は愕然としていた。

 戦利品といって男はカナの水着のような服を持っていくが、憤慨したマカオとワカバが襲い掛かる。

 男はフラフラした動きをしながら簡単に二人をあしらって返り討ちにした。

 その騒ぎの一部始終を見てみたエルザが驚愕したように呟いた。

 

「バッカス………」

 

 バッカスと呼ばれた男はエルザと知り合いらしく、話をし出した。

 話を聞く限り、エルザと同等の実力を持つバッカスもクワトロケルベロスのリザーブ枠を使って大魔闘演武に出るらしい。

 それを聞いたルーシィは戦慄していた。

 

「おらぁ!かかってこい!」

 

 ナツはそんなこと問答無用にと、騒いでいた。そこに、ナツの相手になろうと名乗りを上げた人物が出てきた。

 

「じゃあ、次はオレだぁー!」

『ジュン!』

 

 トライのメンバーの一人であるジュンだった。いつの間に現れたのか気になるところだ。

 

「皆さんも久しぶりだね」

 

 遅れるようにアールが現れた。絶界魔法による瞬間移動だ。

 アールの後ろにはルーズとサンディーがいる。サンディーの両腕の中には抱えられているレモンの姿が見られた。

 

「トライの皆………どうしてこんなところに来たの?」

「少し話しておきたいことがあってね」

「それって………」

「あぁ………ソウとお前らの約束ってやつのことについてだ」

 

 息を呑むのがわかった。アールは続ける。

 

「それが有効なのは、僕とジュンそれにソウの3人だってことを言っておきたくてね」

 

 つまり、トライの最強衆である3人の誰かに勝てばいいということ。

 では、サンディーとルーズはどうなるのか。グレイは訊ねた。

 

「つまり、そこの女子二人は関係ないのか?」

「うん!私、そういうのは苦手だし」

「私達も詳しいことは知らないからよ」

 

 てっきりソウ達の目的を知っていたと思っていたルーシィは思わず尋ねてしまった。

 

「知ろうとは思わないの?」

「だって、私はジュン達のこと、信じてるから」

「………私もよ」

 

 顔を赤らめて答えた二人。

 信頼から来る安心というやつだろうか。二人は言われなくても、疑うことをせずにソウ達を信用しているのだ。

 

「おい!ジュン!俺と勝負しやがれぇー!」

「なんでオレ?───まあ、いいや。受けてたつぞ!このやろう!」

「ちょっと二人とも止めなさいよ!」

 

 こんな酒場で二人が暴れる事態になれば、後がどうなる考えたくないことになる。

 

「ソウはどうしたんだ?」

 

 エルザはトライの中で唯一いない人物のソウの現状を問いかけた。

 アールは少し顔を暗くするが、笑顔でこう答えた。

 

「ソウならお見舞いに行ってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソウは、三首の竜のメンバーと別行動を取っていた。

 向かう先は妖精の尻尾の医務室。

 そこには、ウェンディとシャルルが安静にしているだろう。

 大鴉の尻尾によって魔力欠乏病にさらたと師匠から伝えられた時には自分でも信じられないほどに憤怒の気持ちを感じた。

 ───俺の見ていないところで……!

 自分の見ていない所で、襲われたウェンディとシャルル。

 自分は彼女を守ると決めたはずなのに、こういう咄嗟のことになると仇になる。

 ましてや、今回はソウが妖精の尻尾を抜けたという事実にウェンディはまだ頭の中で完全に受け止めれていなかった。

 襲撃について、ウェンディは気にしてないだろうがソウ自身は身に染みていた。

 マカロフから医務室の場所は既に教えてもらっている。その時にマカロフ本人からも「お主が行ってこんかい」と背中を押された。

 医務室に向かって通路を歩いている中、ソウは思考に浸る。

 予想を大きく反したと言えば、ルーズの魔導士としての実力が相当なものだったことだろうか。

 相性の悪いジュビアに見事に勝利をもぎ取っているのだ。

 ………よくよく考えてみるとルーズは水の魔導士には慣れていたかもしれない。何故ならルーズの特訓相手が同じ水の使い手でもあるサンディーだからだ。

 それも実力の内となるのか。

 ヒドゥンでは、終盤になって現れたアール。何故初めから勝負を仕掛けなかったのか訊ねると───

 

『誰も見つけてくれなかったから、僕の方からいくことにしたんだよ』

 

 ………とのことらしい。

 アールを見つけるのはほとんど不可能に近いのだから、そんなこと言われてもどう返事をすれば良いのか分からなかったソウ。隣で聞いていたジュンもただ苦笑いを浮かべていた。

 

「今頃は………ジュンとナツが騒いでいそうだな」

 

 あの二人が何かで競争しそうなのは、目蓋の裏に普通に浮かんでくる。

 それを止めようとルーシィが必死になり、サンディーは「行け行け~!」と煽っていそうな感じがする。

 ───と、どうやら目的地の医務室へと辿り着いたようだった。

 ソウは扉の取手に手を伸ばして掴み………引いた。

 中は、簡素な造りの直方体の部屋。棚が端に置いてあり、中には大量の薬品らしきものが見られた。

 部屋を陣取っているのが、二つのベッドだ。カーテンがベッドを囲むようにセットされているが、今は隅へとまとめられている。

 片方のベッドに誰かが寝ている。

 聞かなくても、見なくても分かる。ウェンディとシャルルだ。

 

「おや、あんたかい」

 

 この声の主はポーリュシカ。

 自称、フェアリーテイルの薬剤師。

 

「自称じゃなくて本物だ!」

「あれ?声に出てたのかな………」

「はっきりと出てたよ!」

 

 ………どうやら、無意識の内に口が開いていたらしい。これからは注意しようとソウは心に決めた。

 

「ウェンディとシャルルの調子は?」

「見ての通り、すやすや眠っている。大魔闘演武には参加できるだろうよ」

 

 余計な心配はどうやら不要だったようだ。ポーリュシカの手によれば病気はあっという間に完治するということらしい。

 

「来たんならあの子の手を握っておやり」

「急だな」

「あの子にとってアンタは特効薬なのさ」

 

 自分は薬か!と思ったが、ソウはウェンディの寝ているベッドの隣へと移動する。そこに置いてあったイスに座りウェンディの手を握る。

 ウェンディの手は冷たかった。

 寝ながらでも感触は伝わるのか、彼女の表情が弛んだような気がした。

 彼女の頭を撫でてみた。

 ………とても心細いような、寂しそうな感じがした。

 

「アンタ、フェアリーテイル辞めたんだって?」

「1ヶ月の間だけの話だけどな」

「そうかい。ウェンディの面倒もちゃんと見てやりよ。じゃないと私が許さないよ」

「肝に命じておくよ」

 

 ポーリュシカはただ何も言わずに笑みを浮かべた。

 ソウは握っている手を優しく離し、ウェンディの頭を一撫でしてから、立ち上がった。

 

「なんだい?もう行くのかい?」

「不安要素はなくなったからな。それにまだウェンディに俺がフェアリーテイルの敵だってことは知られたくないしね」

 

 そう言うとソウは部屋を出ていったのをポーリュシカは黙って見送ると、寝ているウェンディの方を見た。彼女は寝言を呟く。

 

「………お兄ちゃん………」

 

 

続く───────────────────────────

 




裏設定:ルーズの魔法

砂は水を含むと重くなってしまうという弱点を克服するため、海竜の魔導士であるサンディーの協力の元に“砂鉄”を自在に操れるように特訓していた。水を弾くのはルーズ自身の魔力が込められている為だが、効果が及ぶ時間はほんのわずかで、さらに操作出来る量も半分以下となる。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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