FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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z話の次はaa話ですね。26進法ってやつです。

え?だから何?

………はい、~進法って言いたかっただけです。なのでスルーしてもらって構いません。いえ、してくださいX-<

この話は書いていてスッキリとしましたね。作者としては皆さんにもそんな気持ちが共感できたら、と思っております。いつもよりちょい文章の量が多めですが、最後までお付き合いください!!

───スタート!!


第aa話 本当の家族

 第三試合は緊迫した緊張感に包まれていた。妖精の尻尾のメンバー達はより一層気を抜かずに試合を見届けようとしている。

 アールは静かにソウに告げる。

 

「………さっき魔法発動を確認したよ」

「どこからだ」

「戦場………アレクセイって人からだね………いや、あれ自体も偽者のようだよ」

「あぁ………俺もさっき確認した。魔力の位置がずれている」

 

 目に見えているものと、魔法による結果が矛盾している。それはアレクセイが既に不正の準備を進めようとしていたことを意味している。

 随分と用意が周到なことから、大人しく観客席から見ているマスターイワンも既に偽者とすり変わっているだろう。 

 

「どうする?本部に知らせる?」

「いや………」

 

 ソウはその時、ラクサスと目があった。

 知らせたらただじゃ済まねぇぞ、と彼の瞳はしっかりソウを見据えていた。

 ………ハイハイ、了解しましたよ、とソウはやれやれと言わんばかりに首をふる。

 

「いや、いい。俺が後でラクサスに殴られそうだから」

「そうなの?ソウが言うのなら、僕もそれに従うよ」

 

 アールはソウの言うことに納得したようで頷く。ラクサスについてはソウの方がよく知っているからこそ、判断は彼に一任している。

 すると、今度は真逆のジュンから疑問の声が上がってきた。

 

「あそこに妖精の尻尾がいるが、ほっておいても平気か?」

「ん?あ~………大丈夫だろう」

「なら、いいが」

 

 ジュンが指差したのは、妖精の尻尾の出場していない魔導士達が色々と仕度している様子だ。

 彼らは警戒しているのだ。アレクセイが何かをしでかすのを見逃す訳にはいかないと。

 魔法によってある程度の状況を把握。配置からして役割を分担して、見張りをしているようだ。

 仲間の為なら、敵が何であろうと立ち向かう。妖精の尻尾ならではの友情の証だ。

 妖精の尻尾とは赤の他人となったソウ。改めて、彼らの無謀で無茶苦茶な作戦を一人の魔導士として目の当たりにした。

 

「俺は何やってんだろうな………」

 

 ソウはそう思わずにはいられなかった。

 

 

 ───妖精の尻尾、応援席───

 

「イワン………もう二度と卑怯なマネはさせんぞ」

「ウフフ♪」

 

 マカロフがメイビスの方を向く。

 

「どうされましたかな初代」

「いいえ、何でもありません」

 

 優雅に微笑むメイビス。

 

「仲間を守る為ならいかなる事もやる。そして………その状況を少しだけ楽しんでしまっている」

「………!」

 

 マカロフは図星を突かれたような表情になる。まさにその通りだからだ。

 が、マカロフの想像とは裏腹にメイビスは「素敵です」と言って優しく微笑む。

 

「私が目指した究極の形が、今目の前にあるのです。この形を忘れないでくださいね3代目。えと………6代目でしたっけ」

「ぐもぉ~~ありがたきお言葉………そして7代目です」

「6代目であってるよ!!」

「マスター、しっかりしろよ!!」

 

 涙で何も見えないマカロフであった。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

『両者………前へ』

 

 両者が前へと一歩出る。

 中間に位置するマトー君が、両者からの気圧に臆しながらも懸命に右手を上から真下へと降り下ろした。

 

『試合開始ぃ!!』

 

 ドゴォォン、強烈な銅鐸の音がこだまする。と、同時に試合開始を合図していた。

 ごくり、と誰かが息を呑むのを感じたウェンディ。

 両者とも開始早々には動かない。

 今までの試合からしても、開始序盤からいきなり交戦しているパターンは殆んどない。今回も例外にはあたらないようだ。

 

『親父のとこのギルドか………つうか、お前何者───っ!?』

 

 アレクセイの拳がラクサスに刺さる。

 不意打ちに近い一撃だ。

 

「っ!!」

「はぁ!?」

 

 予想外の展開に、ラクサスなら余裕だと慢心していた妖精の尻尾全員が目を見開く。

 殴り飛ばされたラクサスは両手を広げて体勢を整えると、舌打ちをする。

 

『こいつ………ッ!!』

 

 が、ラクサスの目の前には既に攻撃体勢へと構えたアレクセイが待ち構えていた。

 そこから一方的な攻撃が始まった。

 ラクサスに反撃の隙を与えることなく、アレクセイの闇の魔法と肉弾戦によって確実にダメージを与え続けていた。

 

「まさかラクサスが………!!」

「ど………どうなってるんですか………?」

「あの仮面!!何者なんだ!?」

「嘘だろ………!!」

 

 信じがたい光景に唖然とした。

 あの天下のラクサスが負けている。

 

『これはアレクセイ、怒涛の攻撃!!ラクサス手も足もでない!!』

 

 アレクセイの攻撃は止まない。

 仲間達が現状を理解できていなか、ついにラクサスが倒れてしまった。

 

 

 ───戦場───

 

 近くにぐったりと倒れてきた自分を見たラクサスは蔑んだ目になる。

 そして、目の前にいるアレクセイに問う。

 

「……こいつぁ何のマネだ」

「幻影魔法の一種だよ。辺りにいる者には今こうして話している我々の実体は視えてない。視えているのは戦っている幻の方。よくできているだろ? 誰1人として気づいていない。観客はあのラクサスが手も足もでない映像を視ている」

「幻影魔法ねぇ……」

 

 アレクセイに悟られないようにそっとラクサスはとある方向へ視線を向けた。

 ソウとアールが幻影ではなく、はっきりとこちらを視ている。ソウとはレンズ越しのような距離感があるものの、アールは確実に幻影に惑わされていない。

 オレの戦いに手を出すんじゃねぇぞ、と内心で忠告を入れておいてからラクサスは視線をアレクセイに戻した。

 

「お前はギルドでも慕われているようだな。仲間が今これを見てどんな気持ちになっているかな」

「オイオイ、全然意味がわかんねえぜ」

「意味?」

「お前らが幻とやらで勝って何になるってんだ」

「その通り、我々の目的は()()ではない。この幻影は周囲への目くらまし」

「あ?」

「幻影は幻影、結果はいかようにも変更できる」

 

 幻影では、アレクセイの操作によって戦況が変わる。

 偽者のラクサスが反撃に出たのだ。妖精の尻尾の仲間達が喜んだ様子がラクサスの目に写る。仲間達はその光景が偽物とは全く疑っていない。

 戦況の方では、再びアレクセイによってラクサスが追い詰められている光景に移行していた。

 

「今のがその結果………とやらか」

「我々との交渉次第ではお前を勝たせてやる事もできるということだ」

「話にならねえな。幻なんか関係ねえんだよ、今ここで現実のテメェを片づけて終わりだ」

 

 肩に羽織っていたコートを脱ぎ捨る。

 バチバチと身体中に電流が走り、ラクサスの目が臨戦態勢と入る。

 そこに新たな影が乱入してきた。

 

「それは無理」

「現実はキビシイでサー」

 

 フレアとナルプディング。

 

「いかにお前といえど、大鴉の尻尾(レイブンテイル)の精鋭を同時には倒せんよ」

「ククッ」

「……………」

 

 クロヘビとオーブラ。

 大鴉の尻尾メンバーが勢揃いしていた。

 

「そしてもう1つ───オレの強さは知ってんだろォ、バカ息子ォ」

「そんな事だろうと思ったぜ───クソ親父ィ」

 

 アレクセイは仮面を外して、化けの顔を露にした。

 紛れもなく、アレクセイの正体はマスターイワン本人であった。

 

「マカロフは死んでも口を割らん。だが、おまえは違う。教えてもらおうか───“ルーメン・イストワール”の在り処を」

「何の話だ」

「とぼけなくていい………マカロフはお前に教えているハズだ」

 

 確信があるのか、はっきりと告げる。

 だがラクサスには一切の心当たりがない。話が噛み合わない。

 そんな大事な話なら、オレに教える前にソウに教えると思うんだがなぁ………とラクサスはマカロフとソウのことを思い浮かべていた。

 

「本当に知らねぇんだけどな」

「いいや、お前は知ってるハズ」

「まあ………たとえ知っててもアンタには教えねーよ」

「オイオイ………この絶望的な状況下で“勝ち”を譲るって言ってんだぜ?条件がのめねえってんならオメェ………幻で負けるだけじゃ済まねえぞ」

 

 鼻で笑うかのようなイワン。

 ラクサスに敗北するという可能性は微塵も考えていないようだ。

 その慢心が後に失態だと気付く時には既に結果は付いている。ラクサスはこの時、確信した。

 

「いちいちめんどくせえ事しやがって……ジジィが見切りをつけたのもよく分かる」

 

 ラクサスは嘆息した。ギロリ、と睨む。

 

「まとめてかかって来いよ。マスターの敵はオレの敵だからヨ」

 

 すると、ラクサスの脳内に何かが入り込んできた。

 

『大丈夫~?』

『その声はアールとやらか………』

 

 アールが魔法を使って声をかけてきたようだ。

 目の前にいる大鴉の尻尾メンバー全員は誰も気づいた様子はない。

 大鴉の尻尾目線が自分とは妙にずれているような感覚がする。アールの魔法による仕業なのだろう。

 

『僕の魔法で少し大鴉の尻尾を騙して、君が大丈夫かどうかを確めに来たよ。でも、そう長くはもたない。僕のいるここからだと、せめて10秒が限界だから早めにね』

『これはソウの差し金か?』

『違うよ。これは完全に僕自身の独断。僕は君の強さも何も知らないからね。大鴉の尻尾全員を相手に平気なのかなって思ってね』

『甘く見てもらっては困る。これはオレ自身の問題でもあるんだから、他のギルドの奴等が口出ししてくんじゃねぇよ』

『ふふ………ソウと同じことを言うんだね』

『あ?どういうこった?』

『彼もこう言ったよ。“ラクサスの問題なんだから、あいつの性格からして俺達の助けは絶対に求めない”ってね』

『………そうかい』

『まぁ、何か危なくなれば僕はいつでも手助け出来る準備はしているってことだけ覚えておいてくれたら良いかな?』

『肝には命じておくぜ』

 

 アールの魔法の効力はそこで途切れる。

 ソウと同じことを言っていた。ラクサスはアールからそう告げられた時、何もかも見透かした態度をとったソウに呆れた。と同時に自然と口元が上がる。

 アールの魔法が切れたということは、大鴉の尻尾もまた再起動するということを意味している。実際にイワンは笑みを浮かべているラクサスに眉を潜めた。

 

「どうやら教えてやる必要があるみてえだな。対妖精の尻尾(フェアリーテイル)特化型ギルド、大鴉の尻尾(レイブンテイル)の力を」

 

 大鴉の尻尾は臨戦態勢と移行した。

 ラクサスはそんなことをまったく気にした様子はない。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「ざけんなよぉラクサス!!本気出せってのぉぉ!!」

「どうなってやがる………」

「あのラクサスが………」

「どうも気になるな」

「アレクセイさんって人から気配とか………そういうのをまったく感じないんですけど………」

 

 戦場では肩で息をしているラクサスを見下ろしているアレクセイの姿があった。

 

 

 ───戦場───

 

「対妖精の尻尾(フェアリーテイル)特化型ギルドだぁ?」

「その通りぃ」

「我々は妖精の尻尾のメンバーそれぞれの苦手とする魔法の使い手のみで構成されている」

「ボクたちはその中の精鋭4人だ」

「その我々と戦争するつもりか? 弱点は知り尽くしている。我がギルドの7年間ためた力を解放しちゃうぜ?」

 

 イワンはラクサスを脅すように威圧を込めた。

 それでもラクサスは動揺する素振りすら見せない。

 

「ジジィはあんたの事なんぞとっくに調査済みだ」

「調査済み………だとぉ?」

「そう言ったろう。構成人数、ギルドの場所、活動資金、この7年間の動向………全て掴んでいる」

「何っ!?」

 

 今度はイワンが動揺する番であった。

 

「ガジルだ!!あいつが謀ったんだ!!」

「いけすかねぇ奴でしたが、印象通りでやったって訳でさぁ」

「二重スパイだったのか」

「そういう細かいこと苦手そうだけど、裏目に出ちゃったね」

 

 フレアの指摘。情報漏洩の原因はガジルだと判断した大鴉の尻尾。クロヘビの言う通りガジルをスパイとして送り込んだのが、裏目に出たのだ。

 

「でもおかしいんじゃないの」

「筒抜けの割には特にリアクションはなかっでさぁ」

 

 ラクサスははっきりと告げた。

 

「ジジィはそこまでつかんでいながら動かなかった」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 とある日、妖精の尻尾ギルドの庭。

 そこにマスターマカロフとラクサスの姿が見受けられる。

 

「本当に放っておいていいのかよ。親父は妖精の尻尾にとって不利な情報を持ってるとか言ってただろ」

「あれからもう7年も経ってるんじゃぞ」

「けどよ」

「この7年の間、“その情報”が漏洩した形跡がない」

「そんな事言い切れねえだろ」

「いや………間違いない………その情報を他言する危険性を奴は十分に理解しておる」

「何なんだよ、その情報ってのは」

「知らずともよい。どんなギルドにも、触れてはならぬ部分がある」

「………」

「この7年………イワンは悪さもせず、ウチのギルドへのメンバーへの危害等もなかったと聞く。奴が動かぬ限り、ワシも事を荒立てるつもりはない」

 

 

 

 

 

 ◇

 

「たぶんジジィは心のどこかで、アンタの事を信じてたんだろうな───親子だから」

 

 そして、それに反論出来ずに納得してしまった自分もいる。

 イワンは聞く耳を持たない。

 

「黙れェ!!」

「くっ!!」

 

 イワンの手元から手離されたのは大量の人形の紙。それらが束となってラクサスに襲い掛かる。

 ラクサスは防御姿勢をとった。

 

「オレはこの日の為に日陰で暮らしてきたんだよォ!!全てはルーメン・イストワールを手に入れる為!!7年間も危害を加えなかっただぁ!? 当たり前だろ!!残ったカスどもがあれの情報を持ってるハズねえからな!!ギルドの中も!! マグノリアも天狼島も!!ギルドゆかりの場所は全部探した!!それでも見つからねえ!!ルーメン・イストワールはどこだ!? どこにある!!言えぇっ!!ラクサスゥゥ!!オレの息子だろぉがぁぁぁ!!!」

 

 無我夢中と言わんばかりに攻撃を続けるイワン。ラクサスはひたすら耐える。

 留めにイワンは渾身の一撃を浴びせるが、ラクサスはそれを見事に耐え抜いてみせた。

 

「ほほぅ。道理で大人しく立っていると思えば、オレの魔力を確めたってことかよ。変わらねぇな、そういうとこは。それともやっぱり実の親は殴れねぇか?お優しいこったなぁ~ラクサスちゃんよぉ~」

 

 あくまで挑発をするイワン。

 すると、ラクサスの耳にマカロフの声が届いた。そちらを見てみると、マカロフは手の甲を上げて人差し指を真っ直ぐと伸ばしている。

 その姿はラクサスにとって意味のあるものだ。それ故にこれ以上は必要なく、全てを悟った彼は小さく笑みを浮かべた。

 

「オーブラ!!やれ!!魔力を消せ!!今こそ対妖精の尻尾(フェアリーテイル)特化型ギルドの力を解放せよ!!」

 

 イワンの指示と同時にオーブラが動く。

 

「こいつ、ウェンディとシャルルをやった奴か」

 

 だが、目の前に急激な速度で移動したラクサスの出現に足が止まる。

 

「!!」

 

 ラクサスは蹴りを加えて、オーブラを一瞬でノックダウンさせた。

 すぐさまラクサスは次の敵を確認した。

 

「赤髪!!」

「ニードルブラスト!!」

 

 フレアは赤い髪を伸ばし、ナルプディングは鋭いトゲを生やした腕でラクサスを攻撃する。

 けれど、不発に終わる。

 ラクサスは雷を纏ったまま素早い動きで攻撃を回避したのだ。

 

「これはグレイの分だ」

「ぐおぉぉぉおお!!」

 

 狙われたのはナルプディング。

 魔法により雷を纏った拳をナルプディングに勢いよく振り下ろし、地面へと強く叩き付ける。

 ナルプディングを戦闘不能にしたのを横目にしたラクサスだったが、彼の腕に何かが絡み付いてきた。

 

「つかまえたぞっ!!」

 

 ラクサスの腕に絡み付いてきたのはフレアの赤い髪だった。動きを拘束して、ラクサスを捕えたとフレアは得意気に笑う。

 ラクサスは大きく口を開ける。

 

「こいつはルーシィの分」

「───っ!!きゃあああああああ!!」

 

 ラクサスの口から放たれた雷のブレスがフレアを直撃して、吹き飛ばしたのであった。

 

砂の模造(サンドフェイク)

 

 最後にラクサスの背後から現れたのは、“擬態(ミミック)”によって砂系統の魔法を操るクロヘビ。

 

「お前は………よくわからん」

「ぬああああああ!!」

 

 ラクサスは特に誰の敵をとれば良かったのか思い付かなかったので、さっさと一蹴した。

 

「わ………我が精鋭部隊が……!!」

 

 一部始終を特等席で見ていたイワンはまさかの想定外に何とか発する言葉も途切れ途切れになっている。

 ラクサスのあまりの威圧さにイワンは悲鳴を上げた。

 

「ひぃぃ!!」

「クソ親父!!アンタの目的が何だか知らねえが、やられた仲間のケジメはとらせてもらうぜ」

「ま………待て!!オレはおまえの父親だぞっ!!家族だ!!父を殴るというのか!!」

「オレの家族は妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ」

「この親不孝者のクソげどがぁ!!」

 

 イワンはじりじりと一歩下がる。

 最後の悪あがきに出たイワンだが、ラクサスを止めることは不可能。

 きっぱりと宣言したラクサスは最後にこう叫んだ。

 

「家族の敵はオレが潰す!!」

 

 渾身の一撃がイワンに命中。

 それが亀裂となり、会場を覆っていた幻影魔法が解除された。

 壁まで吹き飛ばされたイワンは戦闘不能。ラクサスの完全勝利となった。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

『こ、これは一体!?』

 

 戦場ではいきなり別のラクサスが現れた。会場中が混乱の渦に包まれる。

 

「ラクサス双子だったのか!?」

「どう見てもちげぇだろ、アホ。ラクサスが消えて、別のラクサスが?」

 

 

 ───妖精の尻尾、応援席───

 

「いえ、これは………」

「イワン!!」

「他のやつらまで」

「まさか………」

 

 すると、選手待機席にいた大鴉の尻尾メンバーの姿が消えた。

 

「思念体か」

「やられたわね」

 

 

 ───戦場───

 

 とことこと走ってきたマトー君が確認をとる。

 

『しかし………これは………何が起きたのか

!?』

「この顔は………!!ギルドマスターカボ!!アレクセイの正体はマスターイワンカボ!!」

 

 マトー君が正体を看破して叫ぶ。

 観客達もようやく状況が飲み込めてきた。

 

『先ほどまで戦っていたラクサスとアレクセイは幻だったのか!?立っているのはラクサス!! 試合終了~!!』

『そスて我々の見えぬ所で全員がかりの攻撃………さらにマスターの大会参戦………これはどう見ても反則じゃの』

「あいつ1人でレイブンのメンバー全滅させたのかよ!!」

「さっきのエルザといい、カナといい」

「バケモンだらけじゃねーか妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

『何はともあれ勝者………妖精の尻尾(フェアリーテイル)B、ラクサス!!』

 

 勝者、ラクサス・ドレアー。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「何だかアイツに敵を討ってもらった形になっちまったな」

「だーーっ!!全員倒しただと!れあいつばかり目立ちやがって!!」

「あのフレアって子、またひどい事されなきゃいいけど」

「お前は本当に人がいいな」

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

「アール、勝手に魔法を使ったな」

「あれ?バレちゃった?」

 

 てへへ、とアールは笑って誤魔化す。

 彼が使ったのは『空動・其の弐・絶陰』と呼ばれる魔法。敵の視界に偽の景色を魔法によって作り替え、錯覚を引き起こすもの。今回はさらにイワンの幻影魔法をも彼は土台に仕立てあげていたようだ。

 実質、ラクサスとアールが会話をしていた間に大鴉の尻尾が見ていたのは無言のラクサスだった。

 

「何のこと?」

「さぁな。オレには次元の違ぇ話なんだから、サンディーにはさらにその倍は違ぇ」

「むっ!!どういうこと!!」

「………大人しくしてないさいよ」

 

 抗議を始めたサンディーに対して、ジュンは高笑いしながら逃げる。ルーズは深いため息をついて、他人行儀に二人を見ていた。

 

「ソウの言う通りだったね。彼は一人でやっちゃったよ」

「だろ?ウェンディの敵もとってくれたようだしな。俺直々にやりたかったけど」

「ははは………ソウが本気だしたら、ここがただじゃ済まなくなるよ」

 

 アールは純粋にそう思った。

 

 

 

 

 

 ◇

 

『協議の結果、大鴉の尻尾(レイブンテイル)は失格となりました。大鴉の尻尾の大会出場権を3年間剥奪します』

『当然じゃ』

 

 第三試合で、マスターの大会参加とメンバー全員がかりの攻撃という反則を行った大鴉の尻尾に下された処罰を聞いた観客席はザワザワとどよめく。

 それだけだと良かったのだが、どよめく理由は次のアナウンスにもあった。

 

『そして第四試合ですが………この試合は少し特別ルールを採用させてもらうことになっています。ですが、取り合えず選手の発表としましょう!!』

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

『一人目は三首の竜!!“サンディー・サーフルト”!!』

「あ、ようやく私の出番だね!!」

 

 サンディーは元気よくその場を跳び跳ねる。初出場の彼女にとっては今回の試合は気合いが入る。

 対する対戦相手は────

 

 

 ───蛇姫の鱗、選手待機席───

 

『対するもう一人は蛇姫の鱗から!!“シェリア・ブレンディ”!!』

「相手はサンディーって言う子だね。私、なんだか楽しくなってきちゃった♪」

 

 意気揚々となるシェリア。

 第四試合は女の子同士の対決となった。

 

『さらに!!』

 

 だが、チャパティのアナウンスはこれで終わらなかった。誰もが不思議に思うなか、驚くべきアナウンスが流れた。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「まだ何かあんのか?」

「そうみたいだな。今は黙って聞いてみようではないか」

 

 エルザの言う通り全員が沈黙を守る。

 そこに───

 

『さらにもう一人が乱入!!その名も“妖精の尻尾A”ウェンディ・マーベル!!』

 

 つまりは少女三人による試合となるという認識であっているのだろうか。

 あまりのことに暫くポカーン、としていたウェンディだったが、ハッと我に帰るなり、驚くべき声をあげた。

 

「わわわ私もですかぁぁーー!!!」

 

 ────第四試合。

 

 “三首の竜(トライデントドラゴン)”サンディー・サーフルト対“蛇姫の鱗(ラミアスケイル)”シェリア・ブレンディ対“妖精の尻尾(フェアリーテイル)A”ウェンディ・マーベル。

 

 

続く──────────────────────────




裏設定:第四試合

 作者のやりたかったことの一つ。本来ならウェンディ対シェリアの名勝負となるが、そこにサンディーが介入することでバトルは混乱を極めることになるだろう。
 作者はサンディーがバトルパートではここに入れることを初めから決めていた。競技パートも既に決定している。と言っても、残りは一つしかないのですぐに分かるが。

 海竜の滅竜魔導士が、いざ出陣する。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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