FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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 お久しぶりです!
 夏休みに入り、少し時間が空いたので書きました。
 それはそうと、アニメでウェンディのドラゴンフォース姿が見られる!?という情報を聞いたものの、最近は全然見てない………。
 確か………ナツとルーシィが変身する話までしか………ん?第何話だろう?

 って、本題はそれじゃない!!

 見たい!!すごく見たい!!
 だが見てしまうと、本作の話よりもそっちを書きたくなるかもしれない!!

 あああぁぁぁぁぁ!!(絶叫)

 ────バトルスタート!!


第ag話 兄妹喧嘩

 闘技場、待機通路。

 

「ようやくだぜ!!」

 

 戦場が見える方へと視線を向けるジュン。彼の不屈の戦闘魂はまさに燃え上がろうとしていた。

 対して、彼の相棒となるソウの気分は優れない。

 

「おい、ソウ。なんだ?緊張か?」

「いや………完全に油断してた。まさか、二回目に選ばれるとは………」

「そういやぁ、オレ以外は全員そうなのか。………っ!!オレだけ仲間外れ!!」

 

 ジュンががっくりと項垂れる。

 ソウの懸念は二度目のバトルパート出場以外にもある。

 

「相手がウェンディかぁ………」

 

 ソウが敵対する魔導士として今一番恐れていたのがウェンディであったのだ。彼女には何かと心配をかけてばっかりなので、頭が上がらない。

 同じ妖精の尻尾の魔導士なら、こうして相対することもないが今はソウは三首の竜として、ウェンディは妖精の尻尾として参加しているために兄妹が衝突するという可能性は完全に拭えきれなかった。

 それが現実になるとは思っていなかったが。

 

「どうすんだ?作戦はやっぱし、ガンガン行こうぜにするか?」

「んや………あ、でも………」

 

 ソウは頭を悩ます。

 絶対にあってほしくない展開だったので、一切の作戦、戦法等を考えていなかったソウ。つい考えてしまえば、現実に起こりうるかもしれないと避けたのにその意味も皆無と果たした。

 昨日のウェンディの試合を思い出す。

 そのお陰で彼女の信念は既に承知している。実力もじっくりと見させてもらった。彼女の成長ぶりは目を見張るぐらいのものである。驚くことにいつの間にか滅竜奥義も修得していたほどなのだ。

 後は彼女なりの覚悟を見させてもらうだけ。敵となった兄に妹のとる行動は何なのかを拝見させてもらおうではないか。

 ソウの考えが纏まるのはほんの数秒のことだった。

 

「ジュンはラクサスの相手をしてくれ」

「それでホントに良いんだな?」

 

 ジュンもソウの考えを汲み取ったのか、真剣に聞き返す。

 

「あぁ、ウェンディは俺が直接相手する」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 闘技場、待機通路。

 

「ラクサスさん、よろしくお願いします」

「あぁ。こっちからも頼む」

 

 律儀にラクサスに礼をしたウェンディ。

 彼女の瞳ははっきりと彼を見つめていた。まるで、何かを成し遂げようとしているかのように。

 

「ソウが相手だと不安か?」

 

 ラクサスの急な問いに、ウェンディはきょとんとなった。

 慌ててウェンディはあわあわと答える。

 

「い、いえ!!ルーシィさんやエルザさんに言われた通り、今の私をお兄ちゃんに見てもらう絶好のチャンスなので不安とかはないです………緊張はしてますけど………」

 

 照れたのか、軽く微笑むウェンディ。

 認められたい………ねぇ。ラクサスは彼女なりの決意に口に挟むことはなかった。ソウとウェンディの間に複雑な思い違いが発生しているようだが、自分が手を出す必要はないと判断した為だ。

 

「ならソウの相手は頼むぞ」

「えっ!?ラクサスさんは私と一緒に戦わないんですか?」

 

 ウェンディはてっきりラクサスと組んで試合をするものだと思い込んでいた。が、彼が提案したのは一人に対して一人が対応するマンツーマン形式のものだ。

 

「前にお兄ちゃんがポロっと、ジュンさんは強いって溢していたんです………さらにお兄ちゃんでもジュンさんには勝てないって言ってました」

「───っ!!ははは!!そいつは面白ぇじゃねぇか。あいつがああ言うってことはやりごたえがそれなりにあるってことに違いねぇ」

 

 ジュンはあのソウよりも実力が上。

 その事実を聞いたラクサスは思わず笑いが止まらなくなってしまった。

 

「ウェンディ、アンタは心配しなくていい。今は一先ず兄貴を倒すことだけに専念しろ」

「え?」

 

 唐突に真面目な話をしたラクサスにウェンディは少し戸惑う。

 ラクサスは続ける。

 

「ソウは妖精の尻尾最強滅竜魔導士。オレも一応、雷の滅竜魔導士だが………それでも確実にその称号はソウの手に渡る。つまりは妖精の尻尾誰もが易々と簡単に倒せる敵じゃねぇってことだ。あいつの魔法は油断してたら一発でやられるからな、気を抜くんじゃねぇぞ」

「は、はい!!」

 

 ラクサスの真剣なアドバイス。

 素直に受け止めたウェンディは試合に対する緊張が高ぶる。

 これから兄を倒さなければならない。

 それを果たせることは可能なのだろうか。妖精の尻尾でも最強候補の座を射止めていた彼は一筋縄ではいかないことは承知している。

 それでもやらなければならない。

 

「行くぞ」

 

 ラクサスは先に戦場へと歩く。

 

「あ、はい!!」

 

 ウェンディも後を追う。

 向かう先は、兄が待つ戦場だ。

 

 

 

 ───戦場───

 

『さぁ、全選手が出揃いました!!』

 

 三首の竜、ソウとジュン。

 ジュンは先程からずっとストレッチを行って試合へ向けての体勢を万端にしている。

 そして、ソウは斜め上を向いたまま微動だにしない。

 

『全員が滅竜魔導士という異色の組み合わせの中、どのような展開が行われるのでしょうか!?』

 

 妖精の尻尾、ラクサスとウェンディ。

 ラクサスはソウを睨み付けた後、ジュンを険しい目付きで観察する。

 最後にウェンディはソウを不安そうに見つめていた。

 

「ソウ、ちょっといいか」

 

 ラクサスの一声。

 彼の視線が少し下がり、ラクサスと目が合う。

 

「なんだ」

「初めに言っておく。手加減するな」

「………分かった」

 

 ソウは小さく頷く。

 隣のジュンは腕を伸ばしながら、興味なさげに彼を横目に作業を続ける。

 

「お前も何か言っとくか?」

「えっ!?………あっ、何もないです………」

「そうか」

 

 唐突なふりにウェンディは若干驚きながらも首を横にふる。少し躊躇う様子が見えたが、ラクサスは何も言わなかった。

 何故なら相手に言いたいことは直接拳を交わせて伝えるに限るからだ。彼女はその方法を知っている。

 

「ウェンディ」

「っ!?」

 

 彼が名前を呼んだ。

 肩がビクッと震える。

 

「遠慮するな。本気で楽しもう」

 

 彼は軽く微笑んだ。

 ウェンディは頬を少し赤らめる。

 

「うん」

 

 時間だ。

 

『それでは第三試合スタート!!!』

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

「ウェンディーー!!頑張れー!!」

「絶対に負けんじゃねぇぞぉー!!」

 

 ルーシィとナツは懸命に応援の声を上げる。

 端では、エルザとグレイが戦場を眺めながら話していた。

 

「率直にエルザは勝てると思うか?」

「あの二人に、ということか?」

「あぁ、ラクサスは実力的に互角以上の闘いは出来ると思うが………」

「問題はウェンディか」

「………そうだ」

 

 グレイの懸念。エルザも分からなくなはない。

 ラクサスならまだしも相棒のウェンディではソウ、ジュンというコンビに上手く立ち回れるのだろうか。

 

「だが、ソウとウェンディは必ずぶつかるだろうな」

 

 兄と妹、ソウとウェンディ。

 確実にこの二人は試合で衝突するとエルザは睨んでいた。

 はっきりとした確信はない。

 だが、他に選択肢は思い浮かばないからだ。ウェンディ本人がそれを望んでいたのだから。

 エルザは知っている。兄は必ず答える。

 根拠のない勝手な憶測だが間違うことはないと自負するエルザ。

 故に彼女の口から告げられたのは───

 

「確かに今のウェンディではソウには到底敵わないだろう」

 

 仲間の勝利を否定する言葉であった。

 つまり、ウェンディにとってこの試合は無謀とも言える挑戦。勝ち戦となる可能性は微塵ともない。

 迷いなど一切ないエルザの告げた発言にグレイは少し目を見開いた。

 

「はぁ………だろうな」

 

 少し、間を開けた後に頷く。

 グレイもエルザの言い分に同意した。今の彼女では兄に勝てる所か、魔法が通用するかどうか怪しい。

 妖精の尻尾ではトップクラスの魔導士のソウ。

 ギルドに入り、しばらく経ったとはいえ、魔導士としては未熟なウェンディ。

 ───結果は目に見える。

 

「そんな顔をするな、グレイ」

 

 エルザは笑みを浮かべた。

 その時、グレイはエルザが少しも瞳の希望を損なわれていないことに気付いた。

 

「私からウェンディにあるアドバイスをしておいた」

「アドバイスだぁ?」

「そうだ」

 

 エルザは自慢げに言う。

 

「試合の始まる前にウェンディは私にソウとの対戦の時にどのようにすれば良いかを聞いてきた」

「あの時か」

「ああ。正直、これは秘策にしておきたかったのだがな………実をいうと、長年かけてようやく私が見出だせたものだ」

「っ!?まさか!?」

 

 それは、つまり───

 

「ウェンディには特別にソウの()()()()()を授けた」 

 

 グレイは唖然とした。

 単純にないと思っていた。ソウに弱点の存在があるなど。

 が、エルザは見つけたと言うのだ。

 

「敵わないとは言え、試合に勝てないなんてことは誰が言った?」

 

 エルザはそう告げた。

 

 

 

 

 ◇

 

『試合開始ぃぃいい!!』

 

 銅鐸が木霊する。

 誰も動こうとはしない。

 観客が息を飲んで、静かに見守る。辺りに物凄い緊張感が漂う。

 

「………」

「………」

 

 しばらくして銅鐸が鳴り止む。

 それでもまだ誰も一歩すら動いていない。

 この戦場の中、一人の少女はというと───

 ど、どうしよう………。

 ウェンディは心の中で少し焦っていた。他の三人が微動だにしないのも不思議だが、特に彼女が怯えていたのはこのピリピリとした空間だ。肌身を持って感じる彼女にとって、この空間を破ろうという気にはなれない。

 ウェンディは隣のラクサスの表情を伺おうとした。

 ───その次の瞬間だった。

 

「雷竜の!!」

「───っ!!」

 

 ラクサスが動く。

 拳に雷を纏い、ソウとジュンの懐へと急接近しようとする。

 狙いはソウ。

 

「ジュン」

「おうよ」

 

 冷静に告げたソウに対し、ジュンは右手をソウへと伸ばす。手の甲が彼へと見えるように広げた。

 ラクサスは躊躇うことなく拳をソウへと奮う。

 

「鉄拳!!」

 

 雷の轟音が響く。

 が、ラクサスの拳はソウへとは届くことはなかった。

 

「───っち」

「おー!危ねぇ~!」

 

 ラクサスは舌打ちをした。

 何故なら彼の放った拳は彼の右手にがっしりと止められていたからだ。

 ただ、その右手は岩のような物体で武装されている。雷を纏っていたのにも関わらず止めたのはこれが原因なのだろうか。

 ラクサスは一歩後ろへと下がる。

 

「お前の相手はオレだぜ」

「調子に乗るんじゃねぇぞ、餓鬼が」

 

 ジュンは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 と、一切動いていないソウが彼に声をかけた。

 

「どうだ、ジュン。いけそうか」

「分かんねぇよ。さっきのも予想以上にヤバかったしな」

 

 ラクサスの一撃はジュンにとっても強烈だったようだ。その証拠に彼の足下の地面が少し抉られ亀裂が入っている。

 踏ん張るために足裏に力を込めすぎた結果、そうなってしまったのだ。

 

「だが問題はねぇ。結構楽しめそうだ」

「………なら、頼む」

「おう」

 

 ジュンは力強く頷く。

 その時、平行してラクサスもウェンディへと声をかけていた。

 

「向こうは始めっから一対一でやるつもりだ。こっちもいくぞ」

「は、はい!!」

 

 そして───

 

「ラクサスさん、ちょっとここから離れようぜ」

「………良いだろう」

「なら、行くぜ」

「───っ!!」

 

 刹那、ジュンが膝を曲げて勢いよく地面を蹴り飛ばした。尋常じゃないスピードを上げてラクサスへと近づく。

 不意討ちに近い攻撃にラクサスは咄嗟の防御姿勢へ入るが、ジュンの岩石を纏った右手のパンチが命中。

 ラクサスの体がふわりと浮いたかと思えば、あっという間に吹き飛ばされる。

 ウェンディの真横を彼が通過した。

 

「ラクサスさん!!」

 

 ウェンディが彼を呼ぶ。

 ラクサスは目でウェンディに知らせた。

 大丈夫だ。問題ない、と。

 彼の言いたいことに気づいたウェンディははっと横に向くと、ジュンがラクサスを追いかけて隣を通り過ぎていった。

 

 ──頑張れよ。

 

 ふとそんな言葉が聞こえた気がした。

 空耳かもしれないが、ウェンディはジュンが自分に対して言ったのかもしれないと思った。

 なら、皆の期待を裏切るような真似だけはしたくない。

 戦況はジュンとラクサスが離脱。残っているはソウとウェンディのみ。

 つまり、完全に一対一の戦場が完成していた。

 ソウは少し目を落とす。

 

「………俺とやるのか、ウェンディ」

「………うん」

「………そうか」

 

 少し距離を置いた兄の問いかけに頷く。

 彼はあまり乗り気ではないようだ。

 だが、ウェンディにとって、どうしても彼にやる気を出してもらわないといけない。

 

「お兄ちゃん、私と戦うのが嫌なの?」

「ああ」

「どうして?」

「………俺の魔法はウェンディを傷つけてしまうだろうからな」

「本当にそう言い切れるの?」

 

 ウェンディの返事にソウは彼女の瞳を見た。彼は少し驚いた。

 彼女の瞳はまっすぐソウを見ている。

 本気だ。

 紛れもなく彼女の意思は本気だ。

 

「お兄ちゃんのしていることは逃げることと一緒だと私は思うよ。私がお兄ちゃんの………ううん、ソウの妹だからってことで闘いたくないって言っても、ここでは只の言い訳にしかならない」

()()………か」

 

 ソウは苦笑した。

 

「はは、それを言われたのは二人目だ」

「え………?」 

「分かってる。逃げなんてしないさ。言い訳もしない。ましてや、妹の目の前でなんてな───」

「───っ!!」

 

 ぞくり、とウェンディは感じた。

 ソウの魔力が段々と上昇してきていることに。

 ひやり、と背筋に悪寒が襲う。

 これがS級魔導士本来の、そして兄本来の姿であることをウェンディは察した。

 屈しては駄目だ。

 

「───だが、俺はウェンディを傷つけたくないのもまた俺の気持ちでもある。故にだ、一つ条件をつけてもいいか?」

「つまり、ハンデってこと?」

「言い換えればな」

 

 兄からの提示した条件。

 内容がどうであれ、ハンデということはウェンディが有利になる状況になるということに間違いないようだ。

 だが、何故こんなことをするのだろうか。

 答えはすぐに見つかった。

 ………お兄ちゃん。

 彼はいつだってそうだった。

 自分の敵と断定したものには、まったくもって容赦がない。その反面、仲間や周囲の人々には危害が及ぶことをとことん恐れる、彼の魔法には似つかわしくない性格の持ち主であった。

 そんな彼は優しいとウェンディは心底思う。彼に牽かれた理由の一つがそれであるかもしれない。

 ウェンディは少しの間の思考の後、彼の提示した条件を飲むことにした。

 

「うん、いいよ」

「ウェンディ、俺に攻撃を一度でも当ててみろ。もし当てることが出来たのなら、俺の敗けで構わない。それが条件だ」

「え………後で後悔しても知らないよ?」

 

 無傷での完全勝利。

 言い換えれば、彼はそれを可能と見込んでいるのだ。

 ウェンディの問いに答えたソウに迷いなどは皆無。

 

「上等だ。かかってこい!!」

「うん!!」

 

 ───行くよ、ソウ(お兄ちゃん)

 ───来い、ソウの妹(ウェンディ)

 

 

続く────────────────────────




裏設定:特にない

 ───なので!!

 次回予告。

 ついに始まった妖精の尻尾対三首の竜の直接対決。
 開幕と同時にジュンはラクサス、ソウはウェンディと相対することに!!
 ラクサスはジュンの魔法についての情報が一切ないため、慎重に彼の魔法を探ろうとしていた。
 ジュンの魔法とは何だ!?
 一方、ウェンディはエルザから授かったソウの唯一の弱点をつくため、行動に移そうとしていた。
 ソウの弱点とは何だ!?
 

 あ、もし読者の皆さんの要望があれば、ガンガン感想などで送ってきてください。
 アンケート募集も続行中ですよ。詳しくは活動報告まで!!

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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