FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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 今回は-3-へ進む前の短編集的な回になります。

*2018年も投稿は今日のこれで最後。2019年もよろしくお願いします。ではでは、皆様、良いお年を。



2-4『レモン』

 ◇◇◇

 

 妖精の尻尾。

 

「あい!昔からおいらと同じくらい妖精の尻尾にいるレモンだよ!」

 

 ハッピーの周りには妖精の尻尾に属する小さな猫達―――エクシードが勢揃いしていた。

 ウェンディを相棒に持つ白の"シャルル"。ガジルを相棒に持つ黒の"リリー"。

 

 そして――ソウが相棒、黄の"レモン"。

 

 只今、初対面となるレモンとその他のエクシードによる会合が執り行われている。

 

「私もエクシード?って種族らしいね~。よろしく~」

「まさか、知らなかったのか?」

「全然知らな~い。てか、興味な~い」

 

 のんびりした口調のレモン。

 この世界とは別の世界―――エドラスという地に棲息するエクシードが従事る王国があった。リリーを除くレモン達は親、国の意向によりこの世界に送り込まれた過去を持つ。

 卵のまま送り込まれ、生誕した際に親代わりになってくれたのが滅竜魔導士。今で言う、其々が相棒と信頼して呼べる者達であった。

 

「リリーだ。よろしく頼む」

「ほーい」

「あい。次はシャルルだよ」

「………」

「あれ?シャルル?どうしたの?」

 

 シャルルの居心地が悪そうに見える。

 ハッピーが心配そうに近寄るが、いつもの癖でシャルルは雑にあしらう。

 

「ふむ。いくらプライドが高いとは言え、いつもなら挨拶ぐらいは素直にするのだがな」

「一言余計よ………」

 

 素っ気なく横顔を見せるシャルル。

 と、ずっとその様子をじっと観察していたレモンがふと何かを思い付いたのかニヤリとした笑みを浮かべた。

 きっと先日ウェンディを庇い、わざとではないと分かりつつもレモンに傷付ける罵倒に近い言葉をかけてしまった。今更、仲良くしようとしても脳裏に小さく足掛りが生まれるのは必然となってしまう。

 

「前のあれは気にしてないよ~」

「え?」

「あなたがそういう性格なのはハッピーから聞いたから~。悪気が無いのも承知の助~」

「………ハッピー?」

「お、おいら………!!」

 

 ギロリと睨まれ、蛙の子のように怯える。

 その状況が数秒続けば、先に諦めたシャルルは深く溜め息を吐いた。

 

 ―――シャルルとレモン。

 

 出会った初日にどちらも不本意でありつつ、結果的に確執が生まれてしまったのは事実。

 不器用ながらもハッピーが気にかけてくれて、解消したいと行動に移してくれた事に関しては感謝しなければならない。

 

「えぇ………私も気にしてないわ。これからもよろしくね、レモン」

「ほーい」

 

 黄と白。二人は今、握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ギルド。カウンター。

 

「………なんか雰囲気変わったよな」

 

 前触れもなく俺は呟いた。

 ミラが淹れた紅茶を片手にギルドの騒がしい日常を眺めていた時にふと脳裏をよぎっただけの話だが。

 少し離れた所ではグレイとナツが殴りあってる。

 あ、エルフマンが巻き込まれた。

 

「そう言えば、ソウ君はギルドが改築してから初めて帰ってきたのだったかしら?」

「改築?」

「実は少し前にしたの」

 

 "ミラジェーン"。

 普段はギルドのカウンターで料理を担当する清楚な女の子。その裏、実は俺と同格のS級魔導士であるので彼女を怒らせたらヤバい。

 過去にあった荒ぶる時代の彼女を知る身としては少々戸惑う部分も多かったが今となると、慣れてしまった。

 

 結論―――慣れは怖い。

 

「ソウ君に緊急で連絡した時あったでしょ?」

「あったね」

「その時、ギルド同士の交戦があった余波で建物が壊れちゃって、折角だから新しくしようって」

「なんか………大変だったんだな」

「えぇ………」

 

 またしても物騒な事してる。

 ミラから連絡があったのは事実。その時は確か、十年クエストの依頼対象である化け物を駆逐してた時だ。

 距離的な問題で駆け付けられなかったんだ。勘弁してくれ。

 

「でも、こうして平和な日常を過ごしていられるだけでも………私にとってはありがたいの」

「………だね」

 

 ミラには妹がいた。

 でも、典型的な魔法の事故で亡くしてしまった。ミラの性格が今のように変わったのも妹の死による影響だ。

 

「あっ、ソウだ~。やっほ~」

 

 妹の名前は"リサーナ"。

 ミラと同じ綺麗な白髪のショートヘアーにくっきりとした瞳をした少女だった。

 あの頃はまだお互いに幼かった。今頃に成長すれば、きっと、俺の前で手を振る女の子みたいな感じに―――

 

 ―――あれ?リサーナっぽい人がいる。

 

「覚えてる?私、リサーナだよ?」

 

 俺は無言で彼女のほっぺをつまんだ。

 ぷにぷにと跳ね返る感触は本物に他ならない。だが、彼女は死んだと俺の記憶に刻まれてる訳であって―――

 

「なんだ。ただの幽霊か」

「いきなり頬っぺた掴まれた!!しかも幽霊じゃないよ!?ちゃんと生きてるよ!?」

「俺の知るリサーナはもっと小さい」

「そりゃあ!!数年もすれば私も成長して大きくなったからね!!」

「………生きてる?」

「色々とややこしい事情があったから説明しにくいんだけど………妖精の尻尾に帰ってこれたよ」

「そっか。良かったな」

「うん!!」

 

 ミラの様子を伺う。

 妹のサプライズドッキリが成功したのが余程嬉しいのか、あんなに幸せそうに頬笑むミラを見たのは久しぶりだ。

 やられたらやり返す。それがしがない魔導士の誇り。

 

「それで、足は透明じゃないんだな」

「………うん?はっ!?だから、幽霊じゃ無いってば!!」

「宙に浮いたり出来るのか?」

「違ぁぁぁああああう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ギルド、テーブル席。

 

「この前は………言い過ぎたわ」

 

 お昼の肉を摘まんでると背後から。

 振り向くと、白い猫もといシャルルが視線を逸らしつつも魔法"エーラ"とやらで浮かんでいた。

 空を自在に飛べる魔法。"エーラ"。

 レモンも普段から使用するので、どうやらこの魔法はレモン固有の魔法ではなく、同じ種族に共通して覚えられるタイプらしい。

 

「ふぁんだ?」

「………食べてる最中に話し掛けた事に対して、こっちに比があったのは認める。せめて、ちゃんと飲み込んでから話してくれないかしら………?」

 

 こめかみにシワが走ってる。猫なのに。

 これは随分とお怒りなご様子だと察した俺は口に含んでいたミラ特製の料理をしっかり味わいつつもしっかり飲み込んだ。

 

「この前って………俺が帰ったときの話?」

「えぇ」

「あれに関しては別に気にしてないけどな。仲間思いなのは良いこった」

「アンタが簡単に許してくれても、私自身が納得できないのよ」

「難しい性格してるね」

「余計なお世話」

 

 所謂、プライドが邪魔をする。

 シャルルが俺に告げたウェンディに対しての忠告はきっと彼女を大切に思うからこそ飛び出た言葉。

 それらを真摯に受け止める。俺が出来るのはそれ以上でも以下でもない。

 

「………シャルル。君があの時、俺に言った事はちゃんと理解出来てる。俺だって、ウェンディの事はちゃんと正面から向き合っていくつもりだ」

「………」

「今は信じなくていい」

「え?」

「言葉なんてどうせ言葉止まり。それだけで、シャルルが俺を信用するまでの証拠にならないのなら、そうだな………俺は行動という別の手段で君の信用を勝ち取るだけ」

「………アンタもなかなか難しい性格してるじゃない」

「そっかな?妖精の尻尾の魔導士に比べれば、俺なんてただのしがない魔導士にしかならないけど」

 

 俺の冗談も程ほどに。

 シャルルの目は真剣さを増す。俺も自然と心を構えてしまう。

 

「ウェンディの事………お願い。今は無事でも、私の力だけで今後とも襲ってくるかもしれない障害や敵から守れる可能性は私には殆どないわ。その時は………」

「あぁ、約束する。この魔法に誓って」

 

 俺は迷いなく告げた。

 

「っ!!………ありがとう………」

 

 シャルルは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに安堵した表情を浮かべたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -2- 終




 裏設定:レモン

 前回までは無邪気、元気っ子をイメージしていた。リメイク後では呑気、不思議ちゃんをイメージして書いている。
 理由はソウの相棒として、こちらの方が似合いそうだからというだけ。それと、キャラが立つ。

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