転生超越者は胸の穴を埋めたい(書籍版:転生程度で胸の穴は埋まらない)   作:ニテーロン

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第30話 決着

 ──金の鎧と、黒の鎧。

 神の槍と、消滅の拳。

 

 双方は轟音とともにぶつかり合い──

 

「──っ!」

『──■!』

 

 その一合は、互いに横に弾き合う形で決着した。

 

 逸れた槍の穂先と、拳から放たれた漆黒の力。雷と消滅が互いの鎧を抉り、それぞれの薄皮一枚を掠る距離を通過していく。

 力の余波が撒き散らされ、鎧の隙間からコノエの頬を撫でた。

 

 ──コノエは、理解する。

 この戦いは、長くは続かない。

 

 それは目の前の全てを元に出した直感だ。

 彼我の技、力の多寡、残された命の光。

 

『■■■■■■■!!』

 

 分かる。天蓋竜の力は、この最終局面で最大限にまで高まっている。

 まるで蝋燭が燃え尽きる直前、僅かな間だけ強く輝くように。

 

 つまりそれは──。

 

『──コノエ』

「──ああ」

 

 ──互いの条件は、ほぼ同じと言うことだった。

 

 残された時間はなく、後退はありえない。許さない。

 ならば、片方が倒れるまで戦いは続く。

 

 どちらかの、あるいは双方の死だけが、この戦いの決着だった。

 

「──」

『──』

 

 初手は槍と拳、共に弾き合って終わった。その勢いのまま、すれ違うように二人の距離が縮まる。そして、次にコノエが選んだのは、槍を手放しての()き手だった。

 

 意識の隙間を縫うように天蓋竜の胸を右手が狙う。天蓋竜はそれに、同じく貫き手で応じた。

 互いの心臓を狙う一撃。そのまま通れば、相打ちを以て戦いは終わるだろう。

 

 ──しかし、当然そうはならない。

 金の権能で先読みしたコノエの技と、天蓋竜の力。互いの一撃は、またも互角。共に腕の軌道を逸らし合って、顔の横を抜けていく。

 

 二手の拮抗。その結果、双方の距離はさらに縮まる。

 吐息を感じられるような距離。一秒が数百、数千倍にも思えるような極度の加速の中。金と漆黒の瞳が至近で見つめ合う。

 

「──っ!」

『■■■!』

 

 刹那の重なりの後、共に動き出す。天蓋竜が、伸びた腕を薙ぎ払うように力を入れる。

 消滅の力を高め、回転するようにコノエを腕の横で殴ろうとし──。

 

『■■■!』

 

 その瞬間、天蓋竜が僅かにバランスを崩す。

 抗固有魔法の力。固有魔法の部分解除。

 

 天蓋竜の力が外れた方向に流れて──だが、天蓋竜もコノエの力は分かっている。驚かない。

 微かに崩れた体を力で無理矢理修正し、対応しようとする。

 

「──」

 

 しかし、そのときにはコノエの動きは終わっていた。

 鍛え上げた身体操作によって、最小、最速の動きで力を練り上げる。

 

 ――コノエの肘が、天蓋竜に向けて放たれる。

 抗固有魔法を纏った肘打ちが、天蓋竜の脇に迫り。

 

『■■!』

 

 天蓋竜はそれを、無理やり腕を挟むことで防御する。

 コノエの肘を、天蓋竜は二の腕で受けた。

 

 ──バギリ、と。

 結果、天蓋竜の腕が粉砕する。

 

 内部まで完全に砕いた感覚があった。この戦いの間は、もう使えないくらいに。

 コノエは、一歩優位に立ったことを理解しながら、次の一撃を打ち込もうとして。

 

「────!?」

 

 そのとき、コノエの背中に戦慄が走る。

 不味いと思った。それはなにか。金の権能だ。

 

 金の花弁が、砕いた天蓋竜の腕越しに見えて。

 

『■■■■■■!!』

 

 ──次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 理解する。天蓋竜は、もう使えない腕ごとコノエを狙ったのだ。

 破壊された腕がコノエの視線を遮った一瞬、使えない腕になど何の意味もないと言わんばかりに。

 

 ――天蓋竜は、コノエの虚をつくために己の腕を自ら断ち切った。

 

「──!」

 

 金の花弁が、鮮血と共に舞う。

 コノエは、全力で貫き手の軌道から体を逸らし。

 

「──っ」

 

 しかし、天蓋竜の一撃が、コノエの二の腕を深く抉る。

 コノエの腕も一本、機能を停止した。

 

「──」

『──』

 

 双方痛み分け。再度視線が交わる。天蓋竜の顔は、喜悦に歪んでいた。目を細め、口が吊り上がっている。

 コノエに自分の顔は分からない。けれど、胸の奥が強く鼓動していて――。

 

 ──直後、コノエの拳と、天蓋竜の蹴りが交差する。

 コノエの拳を天蓋竜が躱し、天蓋竜の蹴りをコノエが逸らす。

 

 コノエと天蓋竜の攻防が続く。

 力と技の応酬。必殺の一撃のぶつけ合い。

 

 奇妙な拮抗があった。僅かな停滞。

 本気で殺し合いながら、互いの出方をうかがっているが故か。

 

『──コノエ』

「────」

 

 しかし。そんな時間は長くは続かない。

 それは、どこか静かな呼びかけの後。

 

 ──天蓋竜が、動いた。

 

 天蓋竜が、顎を開く。牙の奥に、消滅の黒い球があった。

 そして直後、その黒球が力を放ち──。

 

 ──閃光が奔る。

 黒いブレスが、コノエを世界ごと断ち切るように放たれる。

 

 不意を打つ一撃。

 コノエの体を両断するように横に黒い力が薙ぎ払われて。

 

「……」

 

 ……しかし、コノエは金の権能で予期していた。

 故に、冷静に、的確に。低く屈み、閃光から体を逃がす。

 

 そして反撃に、天蓋竜の体を拳で穿とうとした――。

 

「──!」

 

 ──そのときだった。気付く。

 コノエの一撃を受けようと上げられた天蓋竜の手の中に、()()()()()()()()()()()

 

 金の権能の力に気付いていたのか。天蓋竜は、攻撃の軌道を予知されていると理解していた。だから、攻撃ではなく、防御に使うことで先読みを回避した。

 このまま打ち込めば、コノエの腕は消し飛ぶことになる。

 

 コノエは、咄嗟に攻撃を止め──。

 

『──■■』

 

 その隙に、天蓋竜の腕が動く。冷静に。黒球を放り投げる。

 黒球を攻撃に使わない。使えば既に予知されていただろうからだ。天蓋竜の貫き手が、コノエを狙う。

 

 ──コノエは、体勢が崩れているために避けられない。

 

「────」

 

 コノエに、天蓋竜の一撃が迫る。向かうのは心臓。

 貫かれれば、生きていられるはずもない急所。

 

『――■■』

 

 どこまでも加速した時間の中、天蓋竜の指先が、コノエの鎧に触れる。

 抵抗などないように沈み込み、鎧の奥、胸へと進む。

 

 至近距離でコノエを見る天蓋竜の目には、喜悦があった。しかし、それと裏腹の感情も見えた。どこか、惜しんでいるような。

 けれど、天蓋竜の貫き手は止まらない。そのまま進み──。

 

 ――()()()()()()()()()()

 

『────!?』

 

 ──その瞬間だった。

 

 突如、天蓋竜の顔が、驚愕に凍り付く。

 コノエはそれを近くから見ていた。冷静に。()()()()()()

 

 何故か。当然、コノエが策を打っていたからだ。

 天蓋竜は、今、()()()()()()()()()()驚愕している。

 

 そうだ。それこそが、雷化の応用の一つだ。

 雷化の利点。肉がないこと。コノエは元より、万が一に備えて一撃を受ける準備をしていた。そして、天蓋竜の狙いが心臓であることを理解した瞬間、雷を無理矢理動かして鎧の内側、胸の部分を空洞にした。

 

 ──故に、天蓋竜の一撃は鎧だけを破壊し、貫通していく。コノエの体は傷つかない。

 体の動きが大きく鈍るのであまり使いたくない技ではあるが、この場面では有効に働いてくれた。

 

『──■■!!』

 

 天蓋竜が叫ぶ。慌てて腕に込められた消滅の力を炸裂させようとする。

 ──しかし、そのときにはもう遅かった。

 

 コノエの手刀が天蓋竜の腕を切断する。

 切断された腕を抗固有魔法と雷で焼き尽くす。

 

 あとに残るのは、両腕を失った天蓋竜と片腕を構えるコノエ。

 腕を引き絞るコノエに、天蓋竜は蹴りで相対しようとして──。

 

「──」

『──』

 

 ──コノエの拳が、天蓋竜の心臓を貫く。

 天蓋竜の表情は悔しそうに歪んでいて……けれど、どこか、それ以外の感情も浮かんでいるように見えて。

 

 ――そうして、一秒にも満たない間の、二人の戦いは終わった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……ふむ、あちらも終わったようですね」

 

 そして。コノエから数十キロは離れた先で。

 聖女は、少し目を細めながらそう呟いた。

 

 コノエは生き残り、鎧の天蓋竜は消えた。

 戦闘が長く続くようなら加勢しようと思ったが、無事に勝利できたようで何よりだ。

 

 ──無事にこちらも片付いたことだし。

 聖女は、己の足元を見下ろす。するとそこには、首を落とされた天蓋竜の死体がある。

 

「…………」

「……うぅ」

 

 ……また、その近くには疲れた顔でぐったりしているフランの姿も。

 ……ちょっとだけ無理させたかもしれない。そう思った。

 

 なにがあったのかと言えば、天蓋竜を斬るための剣をフランに作らせた。

 

 聖女が今持っている剣だ。見た目は普通の剣。

 だが、聖女は知っている。もしこの剣を地面に落とせば、凄まじい勢いで地の底に沈んで行くだろうことを。

 

 その剣は、それほどの重量を持っていた。世界最高クラスの身体強化を駆使する聖女でさえ、振るのがやっと、というくらいには。

 

 ──天蓋竜の消滅を破るための、超重量、超密度の剣。本物の天蓋竜には通用しなかっただろうが、弱体化した天蓋竜の首ならば見事に落として見せた。

 現実の物質ではありえないその剣は、フランが夢の力を操作して作り出したものだ。ただ剣を作らせるのではなく、周りの物質を操作して作らせた。

 

「……ふふ」

 

 聖女は、フランが駆使した夢の操作を思い出し、手の中の剣を見て静かに頷く。やはり夢の住人、それもマイコの『もしも』の姿だけあって、夢の操作が得意なようですね、と。

 

 彼女は、これからのことを色々と考えつつ。

 ともあれ、今回の騒動は一段落です、とニッコリと笑い──。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ──そして、コノエは。

 

 戦闘終了後、しばらく残心したり、体の治療をした後。

 マイコを背負って聖女様とフランの元へと向かう。

 

「……ぬぅ」

「……」

 

 コノエの背中でぐったりとしているマイコ。実は、先ほど祝福もどきを作った際、マイコは倒れてしまっていた。

 それは固有魔法の作成という難事を数十秒という短い時間で成し遂げたからであり、祝福もどきに持てる全ての力を注ぎ込んだからでもあった。

 

 なので、コノエとしても、己を助けてくれた結果倒れた彼女に無碍な扱いなど出来るはずもなく、マイコを背負って歩いていて……。

 

「…………」

「…………」

「……ぬ、ねえコノエ」

「……ああ」

 

 そんなとき。ふと、マイコが呟く。

 耳元でささやくような声だった。

 

「ぬ、あのね、あなたに聞いてほしいことがあるの。……私の、恐怖について」

「……ああ」

 

 ……コノエはその言葉に、そういえばと思い出す。

 そうだ、天蓋竜が襲ってくる前はそんな話をしていた。

 

 マイコが帰るために認識を逸らすとか。フランをマイコの恐怖じゃなくするとか。コノエには言っていることがよく分からなかったが。

 ともあれ、マイコが真剣に話しかけてきているので、コノエも真剣に耳を傾ける。

 

 するとマイコは背中で何度か息を吸って、吐いて。

 そして――意を決したように、口を開いた。

 

「あのね、コノエ。──私、あなたに、手を握ってもらえないことが、怖いの」

「…………」

 

 それは、戦いの前、マイコが天蓋竜の叫びと共に口にしたのと同じ言葉だった。

 フランを生み出した、マイコの恐怖の形。

 

 ……聞く限りでは、それほどの恐怖になるとは思えない言葉だ。

 だからコノエには良く分からなくて、少し困惑していて。

 

 すると、マイコはそんなコノエの肩に、顔をうずめるようにした。……マイコの茸の傘が頭に触れる。ぶにっとしていた。

 

「ぬ、コノエ。どういうことかと言えばね。……私ね、きっと、あの日あなたに手を握って貰えなければ──あの固有魔法を完成させることが出来なかったの」

「……あの固有魔法?」

「コノエたちを、邪神の元に送り届けた固有魔法」

 

 それは教官が子供の姿になったときのことだ。

 メルミナとティカと共に、迷宮の底へ向かい──茸に出会ったときのこと。

 

 加護を失い、倒れゆく茸と、手を握ったコノエ。

 知性を奪われ、意識を失いつつあったという。

 

 ……まあ、確かに。

 手を握ったことで当時の茸が意識を保てたのなら、アレのおかげと言えるのかもな、とコノエは呟き。

 

「……ううん、違うの。それだけじゃない」

「……え?」

「ぬ、もちろん、そういう点でも助けてもらった。けど、もっと根本的な部分で、失敗してたかもしれない」

 

 ……それは?

 コノエが首を傾げる。

 

「だって、あの瞬間まで私は知らなかった。あの日、あなたが手を握ってくれるまで。誰かの手の温もりも。他者に寄り添う優しさも」

「……それは」

「──愛。他者の幸福を祈ると言うこと。……頭では、理解できてたよ。遠くから見ていたよ。その輝きに憧れて、恋をした。でも、私は愛を何も分かっていなかった」

 

 ……だから、私は間違えた。

 マイコはそう、静かに言う。

 

「私の願いは、渇望は、全部間違っていた。間違え続けた。正しいことなんて、何もなかった。今回コノエが使っちゃダメって止めてくれた、反渇望の固有魔法のように。間違えて、間違えて、間違え続けた。それが私の全てだった」

「……」

「ぬ。きっとね、そんな私だけじゃ、あの日、正しい願いを元に固有魔法(どうか、しあわせに)を作り出すことは出来なかったの。あなたたちを、地の底へ送り届けることは出来なかった」

 

 ──だって、知らないことは祈れないでしょう? と。マイコは呟く。

 

 そこまで言われて、コノエはなんとなく理解する。

 固有魔法──どうか、しあわせに。それは他者の幸福を祈る魔法で……故に、幸福を知らなければ、具体性のない願いになるのかもしれない。

 

 そうだ。知らなければ、あやふやになる。そしてあやふやな渇望では固有魔法は使いづらいのだろう。

 まず己が幸福を知っているからこそ、それを祈ることができるのだとすれば……。

 

「──だからね、コノエ。あなたのおかげなの。あなたが、私に教えてくれたの」

「……マイコ」

「あの日、あなたが私に幸せ(ぬくもり)を教えてくれたから、幸せを願う固有魔法を作れた」

 

 ──あの瞬間、あなたの温もりが、私の(しるべ)になったの、とマイコは言う。

 ──あなたの掌が、私の幸福の形になったの、と。

 

「……きっと、フランがずっと一人だったのは、それを知らなかったから。彼女は、幸せが分からなかったから、何を求めていいか分からなくて、あれ以上間違えたくなくて、彷徨い続けた」

 

 ……フランの記憶を思い出す。

 何も知らない。そう慟哭し、膝を抱えていた姿を。

 

「だから、今の私があるのは、この温もりのおかげなの。……これだけは絶対に失いたくないの。失うと思ったら、怖くて怖くて仕方なくなるの」

 

 マイコが、背中から抱き着く手に、ぎゅっと力を入れる。

 そして、つまりそれが、私の恐怖の形なのだ、と

 

「あのね、絶対絶対、嫌なの。手を握っていてほしいの。ずっとずっと、傍に居たいの」

「……」

「こうして触れ合ってるだけで、胸の奥からよく分からない気持ちが溢れてきて、止まらなくなるの」

 

 コノエ、とマイコは名前を呼ぶ。

 

「何なんだろう。この気持ちは何なのかな。……分からないよ。私にはこの気持ちが何なのか分からない。……コノエは、分かる?」

「……いや」

「……そっか。あのね、きっと、恋じゃない。焦がれて、焼かれるような想いじゃない。彼女(ノエル)を想う気持ちとは違う。でも──幸せなの」

 

 強く、強く、マイコは力を入れる。

 手放したくないと言うかのように。

 

「……だからお願い、コノエ。偶にでいいの。いつもじゃなくていい。気が向いたときだけでいい。……手を握って欲しい」

「……」

「私を、拒絶しないで。一人にしないで。あなたの温もりを失うことが──私は、怖い」

 

 ……そうして。その言葉を最後に、マイコは口を噤んだ。

 背中から抱き着く手はぎゅうぎゅうと力が籠っていて、コノエは、背中から伝わって来る体温を感じる。きっと、こちらの体温も、マイコに伝わっているのだろう。

 

 ……コノエは、少し迷う。

 彼女に何と言葉を返すべきか。

 

 己の手を幸福の形と言った彼女。先の戦いでは、もどきとはいえ祝福を授けてくれた彼女。フランの記憶と、この夢の中で戦った敵と。

 色々考えて……コノエは、口を開いた。

 

「……マイコ」

「……ぬ」

「僕の恐怖について、伝えておこうと思う」

「……ぬ?」

 

 コノエは、マイコに伝える。

 コノエの恐怖の形。現れたのは、大切な人を殺そうとした魔王や災厄だった。コノエは、恐れている。大切な人を失うことを。大切な日常を失うことを。

 

「……それで、なんだが」

「ぬ」

「……その、少し気恥ずかしいが」

 

 コノエは軽く頬を掻いて。

 そして……。

 

「……僕が日常と思ったとき、浮かんでくる顔がいくつかあるんだが」

「……」

「……その中に、マイコ、君の顔も、入っているよ」

「────!!!!」

 

 背中から、驚くような声。

 ――次の瞬間。

 

「────ぬ!」

 

 マイコがそう言って、さらに手に力を入れる。

 今までで一番強く抱きついて、肩に顔を埋めて。

 

 コノエの横顔に茸の傘が当たって、ぶにぶにとした。

 コノエは、何かを言おうとして──しかし口を噤む。

 

「……」

「ぬ!」

 

 ……そのまま二人で、聖女様のいる方へと歩いて行った。

 




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