転生超越者は胸の穴を埋めたい(書籍版:転生程度で胸の穴は埋まらない)   作:ニテーロン

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2026/04/01
すみません、突然で申し訳ないんですが、フラン周りの設定をいじりました。どうしても駄目だなって思うところがありまして……
大まかな流れには影響ないですが、よろしくお願いします。
後日談長編20話から後の話で、フランと夢についての設定が変わってます。具体的にどう変わったのかと言うと

「マイコの恐怖を元に、魔王が固有魔法で作り出した存在が、フラン」
 ↓
「マイコの恐怖を元に、魔王が夢の中(夢なので何でもあり。死者も現実に居ない存在もいる)から連れてきて受肉した存在が、フラン」

です。魔王が作ったのではなく、夢の住人……元からいた存在を連れてきたって形ですね。その結果、フランがマイコに怒ってる理由が変わってます。
また、夢の設定も少し変わっています(無限の可能性がある領域)が、こっちも大まかな流れには関係ないのでよろしくお願いします。


第31話 エピローグ

 ──そして、十数日が過ぎた。

 

 その日、コノエは聖国を離れ、神国に戻ることになっていた。

 色々とあった調査や後片付けも一段落し、久しぶりの帰国になる。

 

 転移門の準備も進んでいて、あと数時間もすれば転移できるようになるだろう。

 なので、コノエとマイコは挨拶にと──。

 

【──二人とも、今回は本当にありがとうございました。聖国の民たちが今日も元気に過ごせているのは、あなたたちのおかげなのです】

 

 ──聖国の神様の元を訪れていた。

 神様は、ありがとうございます、とコノエとマイコの手を握って、ぶんぶんと振る。ここしばらく何度も繰り返されている光景に、コノエは少し苦笑しつつ。

 

「……いえ、こちらこそ。色々とお世話になりました」

「ぬ、はい。聖女様にはとても助けて頂きましたし、フランのことも含め、ありがとうございます」

 

 こちらこそ、と二人で頭を下げる。

 そうだ。夢から脱出した後、聖女様には本当に色々とお世話になっていて……。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ──天蓋竜との戦いの後。

 コノエとマイコは、聖女様、フランと合流して、その後のことを色々と話し合った。

 

 まず、フラン以外の三人の脱出は、問題が無かった。

 敵を全員倒したコノエ、途中参加で敵が現れなかった聖女様は元より、マイコも脱出できるようになっていた。

 

 それは、どうやらマイコの恐怖の形が変わったから、らしい。

 これからも手を握ってほしいと言って、それを受け入れた。その結果、フランがマイコの恐怖ではなくなったようだ。

 

 あとは夢の権能に干渉して、認識をずらして。フランとマイコの魔法的なつながりを解除した結果として、マイコも脱出できるようになった、ようだ。

 そして、現実に肉体を持たないフランは……。

 

『フランさん、夢の研究に協力してください。全面的に協力してくれるのなら、悪いようにはしません。今後のことは、私が最大限手を貸しますから。……ね?』

『……は、はい……』

 

 聖女様とそんな話をしていた。そして今は、アデプトの上層部と協力関係を結んで、夢の調査に協力することになっている。

 身分的には、聖国の研究員という扱いになったのだとか。……正直、フランは立場が複雑なので、聖女様の協力がなければ、少し厄介なことになっていたかもしれない。なにせ、夢の住人という前代未聞の存在だ。簡単に受け入れることが出来たかと言えば難しいだろう。

 

 だが、元々夢への対処の必要性は国際会議で叫ばれていたこと、邪神が夢に何を仕込んでいるか分からないこと、実際に夢の魔王によって聖国が滅びる寸前だったこと、などなど色々組み合わさった結果として、フランの存在は正式に受け入れられた。

 

 数日前には聖国主導で夢の研究が始まり、フランが研究員を夢の領域に招待するなどして、調査が始まっている。……ただ。

 

『やっぱり、私が現実に行くのは簡単じゃないみたい。……当然よね。本来、夢と現実は交わらないものよ。普通、夢の中で殺されたからって現実でも死んだりはしないわ』

 

 ……数日前、夢の中で会ったとき、フランは悲しそうにそう言っていた。

 それはそうだとコノエも思う。……というか、夢の魔王の固有魔法の本質とは、現実と夢の間にある、その絶対的な境を取り払うことだったらしい。夢と現実の距離を近づける権能。

 

 つまりは、夢の存在が現実に影響を与えようと思えば、最低でも魔王級の力が必要であるということだ。しかも肉体まで作るとなれば、それ以上の力も必要なようで……。

 

『ぬ、頑張る。私も協力する』

『……ふん』

 

 それで結局、聖国の協力の元、マイコとフランで方法を考えることになった。

 夢の存在が現実に影響を与える方法を研究するということは、逆に夢から現実への影響を防ぐ研究にもつながるので、聖国もかなり乗り気なのだとか。

 

 ──ともあれ、夢の中でならフランとはいつでも会えるし、問題はありつつ順調に進んでもいるようで、コノエとしては安堵していて……。

 

『……ねえ、あなた』

『……なんだ?』

『もし、私が現実に行くことが出来たら……そのときは、一緒に本物の祭りを歩いてくれる?』

『……ああ、もちろん』

 

 ……今は、その約束をいつか果たすことが出来ればいいなと、コノエはそう思っている。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ──また、聖女様とも少し話をしたか。

 ……というか、衝撃的なカミングアウトがあったというか。

 

『コノエさん、夢の中での話を覚えていますか?』

『……? 何の話です?』

『ほら、私の恐怖についてです。私が怖がっているものの話。説明してませんでしたよね?』

 

 それは、夢から帰ってきて数日後のことだ。

 聖女様と二人きりになったときに、聖女様がそう切り出した。

 

『一から説明するとですね。実は、私──レナ姉さまのことを、愛しているのです』

『……え? ……きょ、教官を?』

『はい。それも、親愛ではありません。恋愛、情愛の方面です』

『………………えっ』

 

 突然の言葉に、コノエとしては驚くことしか出来なくて。

 しかし、そんなコノエにかまわず、聖女様は話を続ける。

 

『本当に、愛しているのです。千年前からずっと。姉さまがいてくれるのなら、他には何もいらないくらい』

『………………』

『……ですが、姉様は女同士の恋愛には興味が無いようでして』

 

 これは、決して叶わぬ恋なのです、と。聖女様は言った。

 

『……残念ですが、仕方のないことです。私としても姉さまに不幸になってほしい訳ではありませんので、無理強いすることもできません』

『……は、はぁ』

『私、姉様に幸せになってほしいので。……ただ、そうすると私のこの思いの行き先がないですよね?』

『……ええと、まあ』

 

 コノエが何とか頷くと、聖女様はにっこりと笑う。

 

『──なので、私、姉様のお役に立ちたいと思ったのです。恋が叶わなくても、姉様の視界に入っていたかった。姉様の心の一部に、座っていたかった。だから私、姉様のお役に立つために、剣の腕を鍛えたのです。……強くなりすぎて、一国のトップになってしまったのは想定外でしたが』

『……』

『でも、それでもよかったのでしょう。私は何より、姉様に忘れられるのが、姉様にとって意味がない存在になるのが、嫌だったのです。それが私の恐怖でした』

 

 そして、それが私の()()()でした、と。

 聖女様は静かに呟いた。

 

『恋の代わりに、姉様に必要とされたかった。姉様が困ったとき、一番に頼られる存在でいたかった』

『…………』

『そうやって、私はこの千年を過ごしてきました。……けれど、これからは少し変わるかもしれませんね。……だって、姉様はあなたを……』

『…………え?』

 

 と、そこで聖女様がじっと見つめて来る。

 コノエはそれまでの話で混乱しつつ、目を泳がせて。

 

『……ところで、コノエさん、話は変わりますが』

『……は、はい』

『コノエさんが転移門を潜って、この国に来た時のことを覚えていますか?』

『…………へ?』

 

 それにコノエは、記憶を探る。少し前の記憶。

 そういえば、聖女様が迎えてくれたんだった。

 

『そのとき、色々話をしましたよね? ほら、百年前の話です。研究員時代のコノエさんと私の間に、色々あったのだとか』

『……は、はい』

『私、気になっているんです。よかったら、お茶でもしながらゆっくり聞かせてくださいな。……ふふ、とっておきのお茶を入れますので』

 

 聖女様は、そう言って、ただニコニコと微笑んでいて……

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 と、フランと聖女様との関係はそんな感じだった。

 フランとは何度か夢の中で会って、聖女さまともあれから数回お茶会をしたなと思い出す。

 

 ……まあ、ともあれ。そんな聖国での生活も今日で一区切りだ。

 あとは神様への挨拶を終え、転移門の準備が出来れば、神国に戻り元の生活に戻ることになる。

 

【マイコ、是非、また聖国に来てくださいね。移籍でも旅行でも。待っていますから】

「ぬ、ありがとうございます!」

【コノエもですよ。いつでも来てくださいね】

「……はい、ありがとうございます」

 

 そして今、話も終わって、最後の挨拶をしている所だった。

 最後に握手をして…………うん?

 

【……ところで最後に、なのですが。……うーん】

「……? 神様?」

 

 そこでコノエは気付く。なんだか聖国の神様がこちらを見ている。

 しかもなんだか複雑そうな顔で。

 

 どうしたのだろうかと思っていると。

 

【……正直、今回はとても助けてもらいましたし、言うべきか悩んだのですが】

「……?」

【しかし、やはり言っておいた方がいい気がするのです】

 

 神様が真剣な顔でコノエを見ていた。

 

【──よいですか? これは神託なのです】

「……えっ?」

 

 …………神託?

 その重々しい響きにコノエは目を見開く。

 

【私はこれでも、長い生涯の中で沢山の人を見てきました。また、人に最も近い生命神の分体として、人に詳しい自負もあります】

「……は、はい」

【故に、これから伝える言葉に、間違いはないと思うのです。心して聞くように】

 

 どこまでも真剣な顔の神様と目が合う。

 コノエは、突然の状況に息を呑むことしか出来ない。

 

 ……いったい何が……?

 

【──アデプト、コノエ】

「……はい」

 

 神様は、一度大きく息を吸う。

 そして……。

 

【汝、もう少し女性との距離感を考えた方がいいと思うのですよ……?】

「…………えっ」

 

 ──色んな意味で、距離が近すぎなのです、と。神様はそう言った。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ……女性との距離感を考えた方がいい……? そうなのか……?

 

 コノエは、聖都の街を歩きながら考える。まだ一つ用事が残っていたので、学舎から出て来ていた。

 そして、人通りの多い都の道をマイコと進みながら、ただただ首を捻っていて。

 

(……距離が近いって、本当に……? 僕が……?)

 

 コノエには全く自覚がない。コミュ障の僕が? と思う。遠いと言われることがあっても、近いと言われるとは思っていなかった。

 あまりに想定外すぎて、神様の言葉を疑いそうになってしまう。……いや、不敬だと分かっていても、疑った。

 

「ぬっぬっぬっぬっ~~♪」

「……その、マイコ」

「ぬ?」

「……一つ聞きたいんだが」

 

 コノエは、楽しそうに鼻歌を歌っていたマイコに声をかける。

 そうして……。

 

「……君は、僕の女性との距離感に問題があると思うか?」

「え、うん」

「……………………え?」

 

 ……………………即答…………?

 …………悩む様子すらなく……?

 

「ぬ、そんなことよりコノエ、今から入る店についてだけど」

「…………え?」

 

 ……そんなことより……?

 

「ぬ、確か神様へのお土産を買うんだよね?」

「……え、あ、ああ」

 

 それは、そうだった。色々と探して、ようやく見つけたもの。

 コノエは衝撃から立ち直り、一旦脇に除け──現実逃避──て、思い出す。

 

 聖国に出発する前、神様と約束したお菓子だ。

 百年前に中庭のベンチで食べたそれを、お土産に買ってくると約束した。なので、コノエは人に頼んで探してもらっていて……今日の朝方、連絡があった。帰国の時間も迫り、もう駄目かと思っていたが、何とか見つかってくれたようだ。

 

 テルネリカ、メルミナ、フォニア、教官へのお土産はもう買っているので、後は神様のものだけだった。……よかった、と胸をなで下ろす。

 

「……そっか」

「……? ああ」

 

 と、気付く。なんだかマイコがもじもじとしている。

 なんだろうかと思っていると……。

 

「……ぬ、あのね、実はね。ちょっとお願いがあって」

「……お願い?」

 

 マイコは少し躊躇いながら、ゆっくりと口を開く。そして。

 

「コノエからのお土産、私も欲しい……」

「……?」

「……私も、コノエにお土産を渡すから」

 

 ……お土産が、欲しい?

 コノエは首を傾げる。いろいろ突っ込みどころがあった。

 

 お土産と言われても、そもそもマイコもここにいる訳だし。

 欲しいものを自分で買えばいいのでは、とコノエは思う。

 

 なので、素直にそう返そうとすると。

 

「……ぬ、お願い」

「……ええと」

 

 しかし、マイコが上目遣いでコノエを見上げ、そう言った。わがままを言わせて? とも。

 目が少し潤んでいて……コノエは、そんなマイコに少し悩んだ後。

 

「……まあ、別にかまわないが」

「──! ぬ!」

 

 そこまで言うのならと頷く。するとマイコは、本当に嬉しそうに笑い、じゃあ行こう! とコノエの手を引く。

 

 ──二人は、手を繋ぎながら、聖都の道を歩いていく。

 花の国、聖国の都。どこか甘い匂いに包まれた街を。

 

 活気溢れる街。もしかしたら、マイコが頑張らなければ滅んでいたかもしれない通り。

 そんな道を歩いていくと、マイコがふと、「そうだ!」と言う。

 

「ぬ! お土産交換のお礼に、買った生地で服をたくさん作る!」

 

 コノエはそれに、お土産交換のお礼ってなんだ? とか、お礼が服ってつり合いが取れてないのでは? とか思ったが、マイコがとても嬉しそうに笑っていたので、まあいいのかな、と思った。

 

 そうしている間に、目的の店の前に辿り着いて、二人で並んで店に入る。

 ごく普通の店。神様へのお土産を買った後、二人で他の商品を見て、選んで。店を出て、買った物を早速交換して……。

 

「──ぬ、コノエ、大切にするね」

 

 お土産の置物を胸に抱えて、マイコは笑う。

 決して特別ではない、日常の一ページが、そこにあった。




これで後日談長編は終了です。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
ちょっと設定面でミスがあって、今回も含め、ご迷惑をおかけした話だったと思います。すみませんでした。
矛盾に後から気付きどうすればいいのかと悩んだり、のたうち回ったり、エタりかけたりしましたが、それでも何とか最後までたどり着けて今は安心しています。
これも全て、感想等、皆さんの応援のおかげですね……ありがとうございます。

今後の予定ですが、まず一週間後に人物紹介を更新したいと思っています。4/8ですね。
その後はカクヨムサポーターで先行公開していた短編を公開する予定です。さらにその後は……たぶん、メルミナ編かな。
頻度は下がりますが、しばらくは更新がありますので、是非来ていただければと。

あと今回もXでアンケートするので投票しに来て下さいね……
誰も投票してくれなければ作者が眠れぬ夜を過ごすことになるかもしれません。

そして最後に……四巻発売中です!
フォニアのてこ入れしてますので、応援してもらえると嬉しい!

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