転生超越者は胸の穴を埋めたい(書籍版:転生程度で胸の穴は埋まらない)   作:ニテーロン

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『転生程度で胸の穴は埋まらない』公式Xが開設したので更新です。
書籍、コミカライズの公式Xの開設記念ですが、時間軸は後日談フォニア編の直前です。
後日談テルネリカ編の内容がちょっと入ってるので注意してください、


短編:竜人の本

 それはある日の昼のことだった。コノエが腰のポーチの整理をしているとき。

 中から出てきた一冊の本を見て、コノエは気付いた。

 

「……あ、そういえば本の返却期限が近づいてきてたな」

 

 神都の大図書館から借りてきた本だ。タイトルには『ドワーフと山と鉱物』と書かれている。

 しばらく前に『エルフと樹と子供』の本を借りた後、返却する際に新しく借りてきた本だった。エルフの勉強をしたのだから、次はドワーフかなと思って。

 

 なので、コノエはここしばらく寝る前に読み進めていて……読んだ結論を言えば、メルミナはかなり血が薄くなっているので、人とあまり変わらないらしい。しかし、注意する点はいくつかあったので勉強してよかったと思っている。

 

「……まあ、なにはともあれ、返しに行こうかな」

 

 コノエは本を持って立ち上がる。そして屋敷を出て、そのまま大図書館まで向かった。

 住宅街を抜けて、市場を歩いて、巨大な立方体型の建物へと歩く。

 

 到着すると、気配をちょうどいい感じに薄くしたまま、図書館入り口で手続きをして……。

 

「あら? コノエ様?」

「……うん?」

 

 と、そこで声をかけられた。見ると、そこには緑色があった。

 緑色の角と翼が特徴的な少女が一人(・・)立っている。

 

 彼女は、緑の竜人姉妹の一人――ええと、どっちだろうとコノエは思い……確か最近着る服を分けたと聞いていた。

 目の前の少女はスカートを履いている。そして、スカートがコレットでホットパンツがエレニカだったはずだ。

 

 しかし、間違えたら気まずいので、コノエは名前は呼ばないようにしつつ、とりあえず久しぶりだ、と挨拶をして。

 ……あれ? そこでコノエは気付く。

 

「……君、魔法休暇でアーキノルカに帰ったはずじゃあ」

 

 そうだ。先日学舎で会ったときにそう言っていたはずだった。

 ちょうどアーキノルカが綺麗な季節なので帰るのだとか。

 

「半分ほど休暇の日程が終わりましたので、十日前から一旦エレニカと別れて個別で行動することにしたんです。私は神国に戻って本を。エレニカは、アーキノルカで山登りでもしてるんじゃないでしょうか」

「……なるほど」

「……ふふ、実はこんなに長期間離れて行動するのは初めてでして。すごくドキドキしています」

 

 少し不安ではありますけれど、と彼女は笑った。ただ、不安と言いながらも彼女の表情は明るくて、コノエも思わず表情が緩む。

 ……なお、内心、やっぱりコレットだったか、と安心しつつ。

 

「あ、ところで、なんですが。……コノエ様、入り口の近くで立ち話をしているのもなんですし、中に入りませんか?」

「……ん、ああ」

「……あと、その、折角ですし、ご一緒させていただいても……?」

 

 ……うん? 一緒に?

 突然の誘いにコノエは驚き。

 

「……ええと」

「……」

「……まあ、その、いいけれど」

「――!」

 

 しかし断る理由もなかったので頷く。すると、コレットは嬉しそうに笑う。

 ……その表情が、本当に嬉しそうで、コノエは思わず面食らって。

 

「えへへ、嬉しいです!」

「……あ、ああ」

 

 そして、彼女はコノエを先導して歩きだす。とても軽い足取りで。

 コノエは、そんな彼女に戸惑いながら後ろを歩いて行って……。

 

 ◆

 

「――それで、ついに、アーキノルカの全ての旧衛星都市周辺から魔物を追い出し、都市結界を張ることに成功しまして。今は移住者を集めている所なんです」

「……それはすごい」

 

 図書館に入場したコノエとコレットは、本を返却し、今度は新しい本を借りるために歩いていく。

 

 まずコノエの本をということになって、地図を見ながら進んでいった。

 広い図書館の中。空間魔法で拡張された空間は広大で、しかし図書館である以上、もちろん走るのは厳禁だ。なので、のんびりと会話しながら進んでいき……。

 

 ◆

 

「エレニカがですね。私と同じように髪を伸ばしているんです。先日、コノエ様に救われるまで私がいくら伸ばしたいと言っても絶対に頷かなかったのに。だから私も揃えて肩口で切ってたのに」

「……そうなのか。何かあったのかな」

「……あったと思います。コノエ様は何だと思いますか?」

「……? いや、想像もつかないが……?」

 

 歩いていく。二人は歩いていく。

 

 ◆

 

「……その、実は先日の話なのですが。……私たちコノエ様に、コノエ様は魔法休暇をもらったとき何をしていたんですかと質問させていただいたと思います」

「……! あ、ああ」

「それで、えっと、あのときのコノエ様、すごく困った顔をされていたのが気になっていまして。……もしかして私たち、聞いてはいけないことを聞いてしまったのでしょうか……?」

「……え?」

 

 聞いてはいけないこと? 見ると、コレットは酷く申し訳なさそうな顔で俯いている。申し訳ありません、ご迷惑をかけてしまったのなら、その償いは何をもってしても……、なんて呟いたりしていて。

 

「……あ、いや、違う。聞いてはいけなかったことじゃない。少し言い辛かっただけだから」

「……そうなんですか?」

 

 慌てて否定する。教官の本を読んでたとか教官の前で言えるはずが無かっただけだ。完全にコノエの都合だった。

 なので、そんなに申し訳なさそうにしないでくれ、と頑張って伝える。すると、コレットは安心したように笑ってくれて。

 

 ……なんだか知らないところで困らせていたようで、こっちこそ申し訳ないなと思った。

 

 ◆

 

 そうして、十数分後。長い廊下と階段を移動して、二人は目的地に辿り着く。

 そこは異種族についての本が集まっているコーナーだった。

 

 数十列に渡って本棚が広がっている空間。コノエは本棚の表記を見ながら目的の場所を探していく。何度か行ったことがある場所なので、記憶を探りながら、コノエは本棚の間を潜り抜けて行って……。

 

「……ここか」

 

 辿り着いたのは、『エルフと樹と子供』、『ドワーフと山と鉱物』を見つけた本棚だった。異種族についての情報が基本的なことからマニアックなことまで書かれたシリーズの棚。

 その中から、コノエは目的の単語を探す。それは……。

 

「……あった。竜人の本」

「え? 私たちの本を探していたんですか?」

 

 タイトルは、『竜人と翼とアーキノルカ』。エルフ、ドワーフの次は竜人の本だった。

 ……先のことを考えると、読んでおかなければならない本だ。

 

「コノエ様が私たちのことを知ろうとしてくれるの、嬉しいです」

「……そ、そうか?」

 

 コレットが照れたように笑って、もじもじとする。

 ……そう言われると、目の前の人の種族について書かれた本を手に取るの、少し恥ずかしかったかなと思い。

 

「……」

 

 コノエは困って、目を彷徨わせる。

 何か話を逸らすものはないかと、右の本棚を見て、左の本棚を見た。手元の本に視線を落として……。

 

 そこには、『竜人と翼とアーキノルカ』というタイトルが印刷されている。エルフやドワーフと似た感じのタイトルだ。

 エルフでの樹、ドワーフの山に当たる場所が翼だった。

 

 それにコノエはなんとなく、竜人は翼がタイトルなんだな、と呟くと。

 

「え、はい、そうですよ。竜人にとって翼はとても大事なものですから」

「……そうなのか」

 

 実は、とコレットがざっと竜人の翼について説明してくれる。

 どうやら、竜人にとって翼とは種の成り立ちに関わる部分のようだ。

 

 曰く、竜人とは、かつて空飛ぶ魔物に苦しめられていた人々を救うために、翼を持つ種族として生み出された存在らしい。

 故に、竜人にとって翼とは、神に求められ、生み出された存在理由そのものなのだとコレットは言った。

 

「私たち、数が少ないのであまり知られてませんけどね」

「……そうなのか」

 

 どうやら、竜人は本当に翼を大事にしているらしい。なんでも、女性の竜人の中には肌より翼を大事にしている人も多いのだとか。

 毎日何時間もかけて手入れをする者もいるらしい。

 

「なので、竜人の翼には基本的に他人は触ってはいけません。当然、私たちも、普段から風の防殻を纏って守っています」

「……なるほど」

「その防殻を越えて触れていいのは、家族や恋人、後は緊急時に治癒魔法使いくらいです。それ以外の人が触ったら……()()()()()()()()()()

「……へ、へえ」

 

 声のトーンが「大変なことになります」だけ低く変わったので、どんなことになるんだろうと少し怖くなりつつ。

 コレットは、「詳しくは恐らくその本にも書かれてますので、そちらを読んでいただければと」といって言葉を締める。

 

 コノエは、やっぱり異種族事情っていうのは色々あるんだなと思い……。

 

(……あれ?)

 

 そこで、思い出す。……でも、自分は以前、翼に触れたことが、あるような……?

 コノエの脳裏に、アーキノルカの記憶が蘇って来る。ベンチに隣り合って座った記憶と、青い翼につつかれた記憶。

 

「…………??」

 

 コノエは、フォニアのことを思い出しつつ首を傾げる。

 あれはどういうことなんだろうとコノエは思い……。

 

「ところで、コノエ様――」

 

 ……と、そこでコレットが新しい話題を振って来る

 それにコノエは、コミュ障ながら対応して。

 

 その後は、コレットと一緒にしばらく図書館を歩いて回る。

 何冊かの本を薦めてもらって、逆にコノエも薦めて。

 

 コノエは、コレットと共に図書館をうろつきながら――フォニアのことは、帰って本を読みながら考えよう、と思った。




ここから後日談フォニア編に続いていきます。
更新開始は、もう少し待ってください。

改めて、『転生程度で胸の穴は埋まらない』公式Xが開設しました!
公式Xで限定SS(2000字くらいの短編)を公開しているので、ぜひ見に行ってもらえたらと! 
テルネリカの短編です!

また、一色さんに以前の重版記念イラストを清書して頂きました!
良かったら見に来ていただければと!
こうね、凄いのでね……

公式Xではキャンペーンとか書籍、コミカライズ情報をポストするらしいので、よかったらフォローよろしくお願いします!
短編だけでなくサイン本キャンペーンとかお祝いイラストとかあるので是非見に来てくださいね……
リンク置いておきます……
転生程度公式X
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