この素晴らしい世界で俺だけが祝福されない   作:ZAT  

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第11話

 街の外、俺達以外には誰もいない草原。

 一撃熊の目撃報告を基に捜索を進めているが、成果と言えば数えるほどの痕跡のみ。

 

「自己紹介がまだだったな。私は”クルセイダー”のダクネス。力と耐久力には自信がある」

 

 パーティの盾役を務める”ナイト”の上級職である”クルセイダー”。

 テイラーも同じ職業で、あの時の彼は一手に引き受けた強力なモンスターの攻撃を物ともしない硬さを誇っていた。

 彼女が一撃熊の猛攻を受け止められるならば、頼もしい事この上ない。

 

 ……盾を持っていないのは少々気掛かりだが。

 

「”盗賊”のイチノセだ」

「凄く足が速くてね、気づいたらモンスターの目の前にいて、攻撃したと思ったら戻ってきてるんだよ!」

「ほう、それは頼もしいな」

 

 クリスが補足する。

 その後も暫く歩いたが、一撃熊は一向に姿を見せない。

 

「見つからないもんだねー。もう森に帰っちゃったんじゃない?」

「奴が街の近くまで降りてきたのなら、何か理由があるはずだ。せめてそれだけでも分かればいいのだが」

「餌を探しに来ただけだと思うけど――――!」

 

 敵感知に反応、森の中。

 

「ダクネス、来るよ!」

「あぁ、ようやく出てきたか――、一撃熊!」

 

 ダクネスは剣を構えると、酷く興奮した様子で森を見る。

 俺とクリスもダガーを抜いて、逆手に持つ。

 

 森の中から現れたのは、ダクネスの二倍以上はある図体を持った二足歩行の熊。

 

 狼男に似た体格だが、大きさはその比ではない。

 異常なまでに発達した腕は掠っただけでも致命傷になりかねないと思わせる程の迫力。

 一撃熊は涎を垂らしながら獰猛な目つきでこちらを見る。

 

「さあ来い! 一撃で頭を刈り取ると言われるお前の攻撃を受けてみたかったのだ! ”デコイ”!」

「あっ! やっぱりそれが目的だったんだ!」

 

 スキルに反応した一撃熊の目が途端に血走り、ダクネスに向かって突進。

 後ろに引いた右腕をダクネスの頭にフルスイング。

 風を引き裂く轟音が草原に響き渡ると同時、

 

「ぐっ……! これは凄い! 凄いぞクリス! 」

 

 重い金属音が重なり、ダクネスの両の腕当てがそれを受け止めた。

 

「分かったから! そこ動かないでよ! ”バインド”ッ!」

 

 空いた左腕と胴体が縛られる。

 稼ぐ時間は一瞬でも、それだけあれば十分。

 

 ”潜伏”で背後に回り、頭に狙いを定めるがただ跳ぶだけでは届かない。

 腰に付けたロープの先を左手に持ち、狙うのは首。

 

「”バインド”」

 

 巻き付き始めると同時に跳躍、体はロープに引っ張られ一撃熊の首元へ。

 クリスから貰ったダガーは斬撃主体、高跳びの要領で体を横に捻りながら右腕を振りかぶる。

 

「”フェイタルストライク”!」

 

 頭から一直線。

 一撃熊の背中は二つに引き裂かれた。

 

 

 

「攻撃を受け止めたと思ったら私に覆いかぶさってくるとは……あの毛皮に押しつぶされる感触、中々良いものだ……」

 

 一撃熊が倒れ下敷きになったダクネスを引っ張り出すと、身をよじりながらとんでもないことを口走っていた。

 

「ダクネスっていつもこんな感じなんだけど……悪い子じゃないから!」

「結局、どっちが本心なんだ?」

「ダクネスがこの街を守りたいってのは本当だよ! 一撃熊の攻撃を受けたかったのも、多分本当……」

 

 尻すぼみに答えるクリス。

 彼女が言うなら……まあ、根は優しい人なのだろう。

 ひとしきり興奮し終えた?ダクネスが話し出す。

 

「それにしても、貴方の一撃は実に見事なものだった。あれほどの働きができる者は、アクセルでも数少ないだろう」

「……半分程魔力を使った。連発は出来ない」

 

 それに、”デコイ”無しで奴の背後をとれるとは限らない。

 ”バインド”を使うとなれば猶更だ。

 

「それでも優秀な冒険者であることには変わりないさ」

 

 先程までと同一人物とは思えない立ち振る舞い。

 その後も突然興奮し出すダクネスをクリスが相手しながら、街へ戻った。

 

 

 *

 

 

 日が傾く頃、ギルドにてクエストの完了報告後。

 

「――イチノセさん、上級職への転職が可能です」

 

 受付のお姉さんによると、一撃熊の討伐で転職可能なステータスの基準値を超えたとのこと。

 

「”スティール”や”バインド”、探索系スキルが強化される”マスターシーフ”。攻撃と状態異常を主体とした奇襲特化の”アサシン”。どちらかに転職できます」

 

 どちらを選ぶかは直ぐに決まった。

 

「”アサシン”で、お願いします」

「まあ、そうだよねー」

「あの戦いぶりを見れば納得だな」

 

「――転職、完了しました。冒険者カードをお返しします」

 

 渡されたカードには新たな職業とスキルが記載されていた。

 酒場のテーブルに向かい、貯めておいたポイントで目ぼしいスキルを選別して習得。

 

 クリスとダクネスも報告を終えてこちらに来る。

 

「じゃあ、キミの転職祝いとして、一杯やろうか!」

 席に着くなり嬉しそうにシュワシュワを注文し始める。

「昼も飲んでいただろう……まあ、祝い事ならとやかくは言えないか」

 呆れ顔のダクネス。

 

 三人で乾杯し、二人の会話に耳を傾けながらちびちびとジョッキを傾ける。

 他の冒険者達が続々と酒場にやって来る中、暫くして料理が出揃い、各々が手を付け始めた。

 

「それで、カズマのパーティーはどうなのさ」

「最高のパーティーだ。特にカズマの鬼畜さは私の理想と言っていい」

 興奮したダクネスの返答に複雑な顔をするクリス。

 

 「鬼畜?」

「あぁ、貴方も見ただろう。カズマがクリスのぱんつを”スティール”したのを。あれと同じことをギルド内でパーティーメンバーにやってのけたのだ」

「……。」

 俺も今、複雑な顔をしているのだろう。

 

「私は混ざれなかったが、仲間の二人をジャイアントトードの囮に使って粘液まみれにもしたらしい」

 彼女をパーティーに入れてカズマも大変そうだと思っていたが、彼も相当なくせ者かもしれない。

 初対面の時は、割と常識人に見えたのだが。

 

「……忠告してこれを善道し、不可なれば則ち止む。人間そう簡単には変わらないか」

「それってどう言う意味?」

 シュワシュワを口から離して、クリスが尋ねる。

「カズマの悪い癖を矯正するのは、友人の役割ではないということだ」

 

 彼のパーティーは四人だった筈だが、会ったことの無い残り二人はどんな人なのだろうか。

 その後も続いたダクネスの話を聞いて、カズマの異世界生活に少し興味が湧いていた。

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